詳細情報
「施設入所者のマイナンバーカード、手続きが大変…」「支援している方のカード取得を手伝いたいけど、手間がかかる…」そんなお悩みをお持ちの福祉施設や支援団体の皆様に朗報です。現在、全国の多くの自治体で、高齢や障害などによりご自身での手続きが困難な方のマイナンバーカード取得をサポートする施設・団体に対し、1名あたり最大8,000円の謝礼金(報償費)を支払う支援事業が実施されています。この制度を活用すれば、社会貢献と同時に施設運営の新たな収益源にも繋がる可能性があります。本記事では、この「マイナンバーカード取得支援事業」の概要、対象者、申請方法から、手続きをスムーズに進めるためのポイントまで、全国の事例を交えながら徹底的に解説します。
この制度のポイント
- 福祉施設や支援団体が対象
- 入所者等のマイナンバーカード申請代行で4,000円/人
- カードの代理受取で4,000円/人
- 合計で最大8,000円/人の謝礼金
- マイナ保険証への移行に伴い、全国の自治体で実施拡大中
マイナンバーカード取得支援事業とは?
制度の目的と背景
この事業は、高齢、障害、長期入院などの理由で、自ら市区町村の窓口に出向いてマイナンバーカードの申請や受け取りを行うことが難しい方々を支援することを目的としています。国がデジタル社会の基盤としてマイナンバーカードの普及を推進しており、特に2024年12月からの健康保険証との一体化(マイナ保険証)に伴い、すべての国民が円滑にカードを取得できる環境整備が急務となっています。そこで、日頃から高齢者や障害者と接している福祉施設や支援団体が、その専門性を活かして申請・受取を代行する役割が期待され、その協力に対するインセンティブとして、各自治体が謝礼金(報償費・協力金とも呼ばれます)を支払う制度を設けています。
実施している組織
この事業の実施主体は、各市区町村です。そのため、事業の名称、対象期間、申請様式などの細かな点は自治体によって異なります。例えば、埼玉県川越市では「福祉施設・支援団体等によるマイナンバーカード取得支援事業」、福島県会津若松市では「マイナンバーカード取得支援事業」、山梨県甲斐市では「高齢者施設等の福祉施設・支援団体等がマイナンバーカードの申請サポート・代理受取を実施した場合に、協力金をお支払いします」といった名称で実施されています。ご自身の施設が所在する自治体のウェブサイト等で、同様の事業が行われているか確認することが第一歩となります。
謝礼金(報償費)の金額と対象業務
この事業の最大の魅力は、支援業務に対して明確な金額が設定されている点です。多くの自治体で、以下の2つの業務が対象となり、それぞれに謝礼金が支払われます。
| 支援業務 | 謝礼金額(1名あたり) | 主な業務内容 |
|---|---|---|
| ① 申請サポート事業 | 4,000円 | 利用者の顔写真撮影、申請書の記入代行、オンライン申請の入力補助など、交付申請を代行する業務。 |
| ② 代理交付(受取)事業 | 4,000円 | 利用者本人に代わって市区町村の窓口へ行き、マイナンバーカードを受け取り、本人に引き渡す業務。 |
| 合計 | 最大 8,000円 | 申請から受取まで一貫して支援した場合。 |
例えば、施設に入所している10名の方の申請サポートと代理交付の両方を行った場合、8,000円 × 10名 = 80,000円の謝礼金が施設に支払われる計算になります。なお、会津若松市の例のように、新規取得だけでなくカードの更新手続きも対象となる場合があります。
対象者と条件
この事業には、「支援を行う側(施設・団体)」と「支援を受ける側(利用者)」のそれぞれに対象要件が定められています。
対象となる施設・団体
基本的には、事業所が所在する市区町村内の福祉施設や支援団体が対象です。具体的には以下のような施設が挙げられます。
- 高齢者施設(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、グループホームなど)
- 介護保険施設
- 障がい者施設(障害者支援施設、共同生活援助事業所など)
- その他、自治体が認める支援団体(ひきこもり支援団体など)
【注意点】自治体によっては、石巻市や甲斐市のように「法人格を有する施設・団体等に限ります」と定めている場合があります。また、謝礼金の振込先は法人・団体名義の口座に限定され、個人名義口座への振込はできないのが一般的です。事前に自治体の要項を確認しましょう。
支援の対象となる方(利用者)
支援の対象となるのは、その市区町村に住民票があり、施設に入所または団体から支援を受けている方で、かつ自身での手続きが困難な方です。石巻市や甲斐市の例を参考にすると、以下のような方が対象となります。
- 高齢者施設等の入所者
- 要介護・要支援認定者
- 障害のある方
- 長期入院者
- 75歳以上の高齢者
- 成年被後見人、被保佐人、被補助人
- 社会的参加を回避し、概ね家庭にとどまり続けている状態にある方 など
申請方法と手続きの流れ
手続きは、概ね以下のステップで進みます。自治体によって様式や提出方法が異なるため、必ず事前に担当課に確認してください。
ステップ1:自治体への事業参加申込と打ち合わせ
事業を実施したい日の2週間前までに、「事業参加申込書兼打合せ事項確認書」といった書類を自治体の担当課(市民課やマイナンバーカード担当課など)に提出します。提出後、自治体の担当者と実施日時、対象人数、具体的な進め方などについて打ち合わせを行います。
ステップ2:申請サポート・代理交付事業の実施
打ち合わせ内容に基づき、施設内で事業を実施します。
・申請サポート:利用者の顔写真を撮影し、申請書を記入・提出します。オンライン申請を代行することも可能です。申請書IDが記載された個人番号カード交付申請書がない場合は、事前に自治体に連絡して郵送してもらう必要があります。
・代理交付:利用者本人から交付通知書(ハガキ)や本人確認書類等を預かり、予約の上で市区町村の窓口へ代理でカードを受け取りに行きます。受け取ったカードは速やかに本人に引き渡します。
ステップ3:実績報告書の提出
事業が完了したら、実績をまとめて自治体に報告します。提出期限(例:令和8年3月13日までなど)が定められているので注意が必要です。主に以下の書類が必要となります。
- 実績報告書
- 申請サポート実施報告書(対象者リスト)
- 代理交付実施報告書(対象者リスト)
- 口座振込依頼書(または請求書)
- 【添付書類】申請したことがわかる書類の写し(申請書の控え、オンライン申請完了画面のスクリーンショットなど)
ステップ4:謝礼金の振込
提出された実績報告書の内容を自治体が審査し、不備がなければ指定された法人・団体名義の口座に謝礼金が振り込まれます。振込までには報告から1ヶ月程度かかるのが一般的です。
手続きをスムーズに進めるためのポイント
この事業は競争採択型の補助金ではないため、要件を満たして正しく手続きを行えば、原則として謝礼金は支払われます。しかし、手続きを円滑に進めるためにはいくつかのポイントがあります。
① 事前の打ち合わせを丁寧に行う
最も重要なのが、自治体の担当者との事前打ち合わせです。対象者の範囲、必要書類、代理交付時の本人確認方法など、疑問点をすべてクリアにしておきましょう。自治体によっては、職員が施設を訪問して申請受付を行う「出張申請サポート」を併用できる場合(会津若松市の例)もあります。施設側の負担を軽減できる方法がないか、積極的に相談してみましょう。
② 対象者本人・家族への十分な説明と同意
マイナンバーカードは重要な個人情報です。申請や受取を代行するにあたり、必ず対象者本人やそのご家族(成年後見人等)に事業の趣旨を十分に説明し、明確な同意を得ることが不可欠です。トラブルを避けるためにも、同意書などの書面を取り交わしておくことをお勧めします。
③ 書類の管理と証拠の保管を徹底する
実績報告時には、誰の申請をサポートしたかを証明する書類が必要です。申請書の控えをコピーしたり、オンライン申請の完了画面を必ずスクリーンショットで保存したりするなど、証拠となる資料を確実に保管しておきましょう。対象者リストの作成と合わせて、管理を徹底することが重要です。
【補足情報】行政書士による無料サポート
石巻市の例のように、自治体によっては施設・団体での対応が困難な場合に、行政書士が無料で施設を訪問し、申請・受取を代行してくれる制度を用意している場合があります。施設側の負担がゼロになるため、このような制度がないかも併せて確認すると良いでしょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 謝礼金は課税対象になりますか?
A1. はい、法人・団体の収益(雑収入など)として計上する必要があり、課税対象となります。経理処理については、税理士等の専門家にご相談ください。
Q2. 申請サポートだけ、または代理交付だけでも対象になりますか?
A2. はい、ほとんどの自治体で片方のみの実施も対象となります。その場合、実施した業務の謝礼金(4,000円/人)のみが支払われます。
Q3. 施設の職員個人の口座に振り込んでもらえますか?
A3. いいえ、できません。川越市の例にもあるように、謝礼金は事業協力に対する支払いであるため、必ず法人名義または団体名義の口座への振込となります。
Q4. マイナンバーカードの有効期限が切れる方の「更新」手続きも対象ですか?
A4. これは自治体によります。会津若松市のように「更新も本事業の対象となります」と明記している自治体もあります。事前に担当課にご確認ください。
Q5. 私たちの市ではこの事業をやっていないようです。どうすればよいですか?
A5. まずは、市のウェブサイトで「マイナンバーカード 取得支援 福祉施設」などのキーワードで検索してみてください。情報が見つからない場合は、市民課やマイナンバーカード担当課に直接電話で問い合わせてみることをお勧めします。まだ制度化されていなくても、近隣市の事例を伝えることで、新たな制度創設のきっかけになる可能性もあります。
まとめ:まずは自治体への確認から始めよう
福祉施設・支援団体等によるマイナンバーカード取得支援事業は、手続きが困難な方をサポートするという社会貢献に加え、施設・団体にとっても貴重な収入源となりうる、非常に有益な制度です。マイナ保険証への移行が進む今、この取り組みの重要性はますます高まっています。
この記事を読んでご興味を持たれた担当者の方は、ぜひ一度、ご自身の施設が所在する市区町村のウェブサイトを確認するか、マイナンバーカード担当課へ問い合わせてみてください。利用者の利便性向上と、安定した施設運営のために、この制度を積極的に活用してみてはいかがでしょうか。