詳細情報
東京都内で事業を営む中小企業の経営者の皆様、若手社員の早期離職にお悩みではありませんか?人材の確保と定着は、企業の持続的な成長に不可欠な要素です。東京都では、若者の職場定着を強力に後押しするため、最大116万円が支給される「若者世代職場定着促進助成金」を実施しています。この制度は、計画的な育成制度の導入や、退職金制度の整備、賃上げなど、若者が安心して長く働ける環境づくりに取り組む企業を支援するものです。本記事では、この魅力的な助成金の概要から、具体的な申請要件、手続きの流れ、そして採択されるためのポイントまで、専門家が徹底的に解説します。この記事を読めば、制度を最大限に活用し、貴社の未来を担う人材を育てるための第一歩を踏み出せるはずです。
この助成金のポイント
- 最大116万円の大型助成で企業の負担を軽減
- 若手社員の計画的な育成と定着を促進
- 退職金制度や結婚・育児支援制度の導入で企業の魅力向上に貢献
- 賃上げも加算対象となり、人材確保・定着に直結
① 助成金の概要
正式名称と目的
本助成金の正式名称は「東京都若者世代職場定着促進事業(東京都若者世代職場定着促進助成金)」です。その目的は、若者世代の就職者に対して、計画的な育成計画の策定や各種制度の整備、賃上げといった労働環境の改善を行った事業主を支援することにより、若者の早期離職を防ぎ、職場への定着を促進することにあります。
実施組織
この事業は、東京都産業労働局 雇用就業部が主体となって実施しています。申請窓口は「東京都正規雇用化推進窓口」が担当しています。
② 助成金額・補助率
本助成金は、基本となる助成額に、企業の取り組みに応じた3種類の加算措置が用意されており、これらを組み合わせることで最大116万円の受給が可能です。
基本助成額
対象となる労働者の人数に応じて、以下の金額が交付されます。1年度につき1事業所3人(60万円)が上限です。
| 対象労働者数 | 交付金額 |
|---|---|
| 1人 | 20万円 |
| 2人 | 40万円 |
| 3人以上 | 60万円(上限) |
3つの強力な加算措置
基本助成額に加えて、以下の取り組みを行うことで助成額が加算されます。
- 退職金制度整備加算:10万円
支援期間中に、新たに退職金制度(中退共制度への加入も含む)を整備し、就業規則を労働基準監督署へ届け出た場合に加算されます。※1事業主あたり1回のみ - 結婚・育児支援制度整備加算:10万円
支援期間中に、結婚、妊娠・出産、育児に関する休暇や一時金制度を新たに整備し、就業規則を労働基準監督署へ届け出た場合に加算されます。※1事業主あたり1回のみ - 賃上げ加算:1人あたり12万円(最大36万円)
支援期間中に、対象労働者の時間単価を60円以上賃上げした場合に加算されます。最大3人まで対象です。
【シミュレーション】最大116万円を受け取るには?
例えば、対象となる若者を3人採用し、必須の育成計画等を実施した上で、新たに退職金制度と育児支援制度を導入し、さらに採用した3人全員の時間単価を60円以上引き上げた場合、以下の計算で最大額が支給されます。
基本助成(3人分) 60万円 + 退職金制度加算 10万円 + 結婚・育児支援制度加算 10万円 + 賃上げ加算(3人分) 36万円 = 合計 116万円
③ 対象者・条件
本助成金を受給するには、事業主と採用する労働者の両方が特定の要件を満たす必要があります。
対象となる事業主(3つの必須要件)
- 中小企業事業主であること。
- 東京労働局管内に雇用保険適用事業所があること。
- 【最重要】以下に掲げる都の就職支援事業を利用し、対象労働者を正規雇用労働者として採用すること。
対象となる労働者
- 令和6年4月1日以降に正規雇用労働者として雇用されていること。
- 都が実施する下記のいずれかの就職支援事業に参加し、職業紹介を受けて採用された者であること。
- 採用後、3か月間の支援期間終了日まで継続して雇用され、都内の事業所に勤務・在籍していること。
【重要】前提となる東京都の就職支援事業
この助成金の申請には、以下のいずれかの事業を利用していることが絶対条件となります。事前にこれらの事業を通じて人材を採用する必要があります。
- ものづくり産業人材確保支援事業(34歳以下の利用者が対象)
- 成長産業人材雇用支援事業
- キャリアチェンジ再就職支援事業
④ 助成対象となる取り組み
本助成金は、特定の経費を補助するものではなく、定められた取り組みを実施することに対して定額が支給される仕組みです。
必須の取り組み(基本助成の要件)
基本助成額(20万円~60万円)を受け取るためには、対象労働者に対して3ヶ月の支援期間中に以下の全ての支援を行う必要があります。
- 指導育成計画(3年間)の策定:対象労働者のキャリアパスを見据えた具体的な育成計画を作成します。
- チューター(指導育成者)の選任及び指導:身近な相談役として先輩社員などをチューターに任命し、定期的な指導や面談を実施します。
- 指導育成計画に基づく研修の実施:策定した計画に沿って、OJTやOff-JTなどの研修を実施します。
加算対象となる取り組み
前述の通り、以下の取り組みを支援期間中に新たに実施することで、助成額が加算されます。
- 退職金制度の新規整備
- 結婚・育児支援制度の新規整備
- 対象労働者の賃上げ(時間単価60円以上)
⑤ 申請方法・手順
申請から受給までの全体フロー
申請手続きは、大きく分けて以下のステップで進みます。
- 交付申請:定められた受付期間内に、事業実施計画書兼交付申請書等を提出します。
- 交付決定:書類審査後、都から交付決定通知が届きます。
- 支援の実施:交付決定後、3ヶ月間の支援期間中に、育成計画に基づく指導や制度整備等を実施します。
- 実績報告:支援期間終了後、定められた受付期間内に実績報告書等を提出します。
- 額の確定・助成金支給:実績報告の審査後、助成金額が確定し、指定口座に振り込まれます。
申請期間とスケジュール
本助成金は、第1回から第6回まで申請受付期間が設定されています。第1回の受付は令和7年5月1日(木)から開始されます。各回の詳細なスケジュールは公式サイトで必ず確認してください。予算の範囲を超えた場合は申請受付が終了となるため、早めの準備が重要です。
申請方法(電子申請 or 郵送)
申請は以下のいずれかの方法で行います。一度選択した方法は、実績報告まで変更できないため注意が必要です。
- 電子申請:国の補助金申請システム「Jグランツ」を利用します。24時間申請可能で便利ですが、事前に「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要です。
- 郵送申請:必要書類を揃え、受付窓口へ郵送します。送達記録の残るレターパック等の利用が推奨されています。
必要書類一覧
申請には多くの書類が必要です。公式サイトから最新の様式をダウンロードし、手引きやセルフチェックリストを活用して不備なく準備しましょう。
- 【交付申請時】事業実施計画書兼交付申請書、誓約書、同意書、支払金口座振替依頼書など
- 【実績報告時】実績報告書、指導育成計画書、チューター選任・指導報告書、研修実施報告書など
- 【加算申請時】結婚・育児支援制度整備確認票、賃金支払実績確認表など
⑥ 採択のポイント
ポイント1:前提条件のクリアが大前提
繰り返しになりますが、都の指定就職支援事業を利用して対象者を採用していることが絶対条件です。この条件を満たしていなければ申請自体ができません。まずは自社の採用プロセスが該当するかを確認しましょう。
ポイント2:公募要領(手引き)の徹底的な読み込み
助成金の申請で最も重要なのは、公式の「手引き」を隅々まで読み込むことです。対象要件、必要書類、記入例など、全ての情報が記載されています。自己判断せず、手引きの記載に忠実に従うことが採択への近道です。
ポイント3:具体的で実現可能な指導育成計画の作成
実績報告時に提出する「指導育成計画書」は、審査の重要なポイントです。単なる形式的なものではなく、3年間の成長を見据えた具体的で、実行可能性の高い計画を作成しましょう。どのようなスキルを、いつ、どのように習得させるのかを明確に記述することが求められます。
ポイント4:加算要件を積極的に活用する
せっかくの機会ですので、加算要件の活用を積極的に検討しましょう。退職金制度や育児支援制度の導入は、助成金受給だけでなく、長期的な人材定着と企業のブランドイメージ向上にも繋がります。これを機に、働きやすい環境整備を進めることで、受給額の最大化を目指せます。
⑦ よくある質問(FAQ)
- Q1: 都内の中小企業ならどこでも対象ですか?
- A1: いいえ、最も重要な要件として、都が指定する3つの就職支援事業(ものづくり産業人材確保支援事業など)を利用して若者を採用していることが必須です。この条件を満たさない場合は申請できません。
- Q2: 賃上げ加算の「時間単価60円以上」はどのように計算しますか?
- A2: 月給制、日給制、時給制など給与形態ごとに計算方法が定められています。例えば月給制の場合は、月給額を月の所定労働時間で割って時間単価を算出します。詳細は必ず公式の手引きでご確認ください。
- Q3: 申請は1年に1回だけですか?
- A3: 申請受付期間は、年度内に複数回(第1回~第6回)設定されています。ただし、助成金の申請は1年度につき1事業所あたり対象労働者3人までという上限があります。
- Q4: 既に退職金制度がありますが、加算対象になりますか?
- A4: いいえ、加算の対象となるのは、支援期間中に「新たに」制度を整備した場合に限られます。支援期間開始以前から既に導入されている制度は対象外となりますのでご注意ください。
- Q5: 申請について相談できる窓口はありますか?
- A5: はい、本助成金の担当窓口である「東京都正規雇用化推進窓口(電話: 03-6205-6730)」で相談が可能です。不明な点があれば、申請前に問い合わせることをお勧めします。
⑧ まとめ・行動喚起
「東京都若者世代職場定着促進助成金」は、若手人材の育成と定着に本気で取り組む中小企業にとって、非常に価値のある制度です。
重要ポイントの再確認
- 対象者:都の指定就職支援事業経由で若者を採用した都内中小企業
- 助成額:基本助成最大60万円+加算措置で最大116万円
- 必須要件:3年間の育成計画策定、チューター選任、研修実施
- 申請期間:令和7年5月1日から第1回受付開始(複数回あり)
若手人材への投資は、企業の未来を創るための最も重要な投資です。この助成金を活用して育成・定着の仕組みを構築し、企業の競争力を高めていきましょう。
まずは、公式サイトで最新の「手引き」をダウンロードし、自社が対象要件を満たしているかを確認することから始めてください。ご不明な点は、下記の問い合わせ先に連絡してみましょう。
お問い合わせ先
東京都正規雇用化推進窓口(東京都若者世代職場定着促進助成金担当)
〒160-0021 東京都新宿区歌舞伎町2-42-10 ハローワーク新宿5階
電話:03-6205-6730
受付時間:平日の午前8時30分から午後5時15分まで