埼玉県内で事業を営む中小企業の経営者の皆様へ。昨今のエネルギーコストの高騰や、カーボンニュートラルへの対応は喫緊の課題ではないでしょうか。そんな中、埼玉県では県内中小企業の省エネ・脱炭素化を強力に後押しする「令和7年度 スマートCO2排出削減設備導入事業」の最終募集を開始します。この補助金は、高効率な空調やボイラー、太陽光発電設備などの導入費用を最大1,000万円まで補助する、非常に魅力的な制度です。設備投資の負担を大幅に軽減し、コスト削減と環境貢献を両立できる絶好の機会です。この記事では、補助金の詳細な内容から、対象設備、申請方法、そして採択されるための重要なポイントまで、専門家が徹底的に解説します。最終募集となりますので、このチャンスを逃さぬよう、ぜひ最後までご覧ください。

「スマートCO2排出削減設備導入事業」とは?

まずは、本補助金の全体像を掴みましょう。どのような目的で、誰を対象にしているのかを理解することが、申請への第一歩です。

補助金の目的と背景

この事業は、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、スマートなエネルギー利用を進める埼玉県内の中小企業等を支援することを目的としています。エネルギー使用量とCO2排出量を削減するため、省エネルギー性能の高い設備への更新や再生可能エネルギー設備の導入にかかる経費の一部を補助することで、企業の経営体質強化と地球温暖化対策の両立を目指します。

実施組織と正式名称

  • 正式名称: 令和7年度 スマートCO2排出削減設備導入事業
  • 実施組織: 埼玉県

補助金額・補助率|最大1,000万円!

本補助金の最大の魅力である補助額と補助率について詳しく見ていきましょう。事業内容によって2つの枠組みが用意されており、補助率と上限額が異なります。

ポイント:エネルギー管理システム(EMS)を同時に導入することで、補助率と上限額が大幅にアップします!

事業区分 補助率 補助上限額
1. 高効率省エネルギー設備への更新
3. CO2排出量の少ない燃料等を使用した設備への更新等
補助対象経費の1/3以内 300万円
2. 再生可能エネルギーの利用設備の導入 500万円
4. エネルギー管理システム(EMS)と上記1~3の設備整備の同時導入 補助対象経費の1/2以内 1,000万円

計算例

  • ケース1(高効率空調への更新):
    補助対象経費が900万円の場合 → 900万円 × 1/3 = 300万円。補助額は上限の300万円となります。
  • ケース2(太陽光発電+蓄電池の導入):
    補助対象経費が1,200万円の場合 → 1,200万円 × 1/3 = 400万円。補助額は400万円となります。
  • ケース3(EMS+高効率ボイラーへの更新):
    補助対象経費が2,200万円の場合 → 2,200万円 × 1/2 = 1,100万円。補助額は上限の1,000万円となります。

対象者・申請条件

自社が補助金の対象となるか、詳細な条件を確認しましょう。

対象となる事業者

  • 埼玉県内で事業活動を営んでいる法人及び個人事業主。
  • 法人の場合は、中小企業基本法に規定される中小企業者であること。

対象となる事業所

  • 対象事業者が所有又は使用する埼玉県内の事業所であること。
  • 申請時点で1年以上(再生可能エネルギー利用設備を設置する場合は1か月以上)営業していること。

事業ごとの申請条件

  • 高効率省エネ設備等への更新(事業1~3):
    設備導入による年間CO2削減量が3t以上であること。
  • EMSと設備更新等の同時導入(事業4):
    以下の全てを満たすこと。
    • EMS導入による年間CO2削減量が3t以上
    • 同時導入する設備(事業1~3)による年間CO2削減量が3t以上
    • 対象事業所の原油換算エネルギー使用量が年間50KL以上

補助対象となる設備と経費

どのような設備や経費が補助の対象になるのか、具体的に解説します。

対象事業と設備の例

対象事業 具体例
1. 高効率省エネルギー設備への更新 空調設備、ボイラー、コンプレッサー、変圧器、冷凍冷蔵設備等の高効率タイプへの更新
※照明設備は対象外
2. 再生可能エネルギーの利用設備の導入 太陽光発電設備、バイオマス発電設備、小水力発電設備、再エネ設備と組合せた蓄電池
※太陽光発電は蓄電池の設置が必須
※全量売電目的は対象外
3. CO2排出量の少ない燃料等を使用した設備への更新等 ボイラーの都市ガスやLPG等への燃料転換、ヒートポンプ化、コジェネレーション設備の導入など
4. エネルギー管理システム(EMS)の同時導入 上記1~3の設備と併せて、エネルギーの「見える化」と自動制御を行うEMSを導入

補助対象経費

  • 設備費: 設備本体、必要不可欠な付属機器の購入費用
  • 工事費: 労務費、設計費、材料費、試験調整費、機器搬入費など、設置に必要な工事費用

対象外経費

  • 既存設備の能力を超える能力増強に係る経費
  • 既存設備の撤去費、移設費、処分費
  • 通信費、光熱水費、旅費
  • 消費税及び地方消費税
  • その他、公募要領で定められた経費

注意:申請対象となるのは、補助対象経費の合計が30万円以上の事業です。

申請方法とスケジュール

申請の締め切りは厳守です。スケジュールをしっかり確認し、計画的に準備を進めましょう。

申請受付期間【最終募集】

令和7年10月29日(水曜日)9時 ~ 11月14日(金曜日)

※本補助金は先着順ではありません。期間内に応募のあった申請について書類審査を行い、予算の範囲内で選定されます。

申請から補助金受給までの流れ

  1. 準備:公募要領の熟読、導入設備の選定、施工業者からの見積書取得。
  2. 申請:必要書類(申請書、CO2削減量算定シート等)を準備し、県の電子申請システムから期間内に申請。
  3. 審査・交付決定:埼玉県による審査後、交付決定通知書が発行されます。
  4. 事業着手:交付決定通知書を受け取った後に、設備の発注・契約・工事を開始します。
  5. 事業完了・支払い:工事を完了させ、施工業者への支払いを済ませます。
  6. 実績報告:事業完了後、期限内に実績報告書と関連書類(契約書、領収書、写真等)を提出します。
  7. 金額確定・補助金交付:実績報告の審査後、補助金額が確定し、指定口座に振り込まれます。

【最重要】交付決定前の着手は絶対NG!
補助金の交付決定前に、設備の発注や工事契約などを行うと、補助金の対象外となってしまいます。必ず交付決定通知書が届いてから事業を開始してください。

主な必要書類

  • 補助金交付申請書(様式第1-1号 or 1-2号)
  • CO2削減量算定シート
  • 導入する設備の仕様がわかるカタログ等の写し
  • 補助対象経費の内訳がわかる見積書の写し
  • 事業所の現況写真
  • (法人の場合)履歴事項全部証明書
  • (個人事業主の場合)開業届の写し又は直近の確定申告書の写し

※その他、事業内容に応じて追加書類が必要になる場合があります。必ず公式の募集要領をご確認ください。

採択されるための3つのポイント

本補助金は、申請すれば必ず採択されるわけではありません。審査では「費用対効果の高い事業」が優先されます。採択率を高めるための重要なポイントを3つご紹介します。

ポイント1:CO2削減効果の根拠を明確にする

審査の核となるのが「CO2削減量算定シート」です。なぜその削減量になるのか、計算の根拠を誰が見ても理解できるように、正確かつ丁寧に作成することが不可欠です。既存設備と新設設備のエネルギー消費効率などをカタログ等で正確に把握し、説得力のある数値を示しましょう。

ポイント2:費用対効果を最大化する計画を立てる

「費用対効果」とは、投資する費用(補助対象経費)に対して、どれだけ大きなCO2削減効果が得られるか、という指標です。複数の設備を比較検討し、同じ投資額でもより多くのCO2を削減できる設備を選ぶことが採択への近道です。申請書の中で、なぜこの設備が最も費用対効果に優れているのかをアピールできると良いでしょう。

ポイント3:申請書類の完璧な準備

どんなに優れた事業計画でも、書類に不備があれば審査の土俵にすら上がれません。募集要領やQ&Aを隅々まで読み込み、記入漏れや添付書類の不足がないか、複数人で何度もチェックしましょう。特に、様式のバージョンが最新であるか、押印(電子申請の場合は不要な場合も)が必要な箇所はどこかなど、細部まで注意を払うことが重要です。

よくある質問(FAQ)

申請を検討する際に出てきやすい疑問点をまとめました。

Q1. 照明をLEDに交換する工事は対象になりますか?
A1. いいえ、照明設備は本補助金の対象外です。
Q2. 太陽光発電設備だけを導入したいのですが、可能ですか?
A2. いいえ、太陽光発電設備を導入する場合は、蓄電池を同時に設置することが必須条件となります。
Q3. 申請は先着順ですか?急いで申請した方が有利ですか?
A3. 先着順ではありません。募集期間内に申請されたすべての案件を審査し、費用対効果の高い事業から予算の範囲内で採択されます。焦らず、内容をしっかり練り上げた申請書を提出することが重要です。
Q4. 国が実施している他の省エネ補助金と併用できますか?
A4. 同一の設備に対して、国等の他の補助金と併用することはできません。
Q5. リースで設備を導入する場合も対象になりますか?
A5. リース契約での導入も対象となる場合がありますが、要件が複雑なため、必ず事前に公式の募集要領を確認するか、問い合わせ先に相談してください。

まとめ:最終募集のチャンスを活かして省エネ投資を加速させよう!

今回は、埼玉県の「令和7年度 スマートCO2排出削減設備導入事業」について詳しく解説しました。最後に重要なポイントを振り返ります。

  • 埼玉県内の中小企業が対象で、最大1,000万円の補助。
  • 高効率空調、ボイラー、太陽光発電+蓄電池など幅広い省エネ設備が対象。
  • EMSを同時導入すると補助率が1/3から1/2にアップ
  • 最終募集の申請期間は令和7年10月29日~11月14日
  • 採択の鍵は「費用対効果」「完璧な書類準備」
  • 交付決定前の契約・発注は厳禁

エネルギーコストの削減は、企業の競争力強化に直結します。この補助金を活用すれば、通常では難しい大規模な設備投資も現実的なものになります。最終募集となりますので、この機会を最大限に活用し、持続可能な企業経営への一歩を踏み出しましょう。

まずは、埼玉県の公式サイトで最新の募集要領をダウンロードし、自社の計画が要件に合致するか確認することから始めてください。

お問い合わせ先

埼玉県 環境部 温暖化対策課 計画制度・排出量取引担当
電話番号: 048-830-3021
メールアドレス: a3030-27@pref.saitama.lg.jp
公式サイト: 令和7年度 スマートCO2排出削減設備導入事業