詳細情報
2025年4月1日から、すべての妊婦さんと子育て家庭をサポートする新しい制度「妊婦のための支援給付・妊婦等包括相談支援事業」が全国でスタートします。これは、従来の「出産・子育て応援交付金事業」が法律に基づいて恒久的な制度になったもので、妊娠期から出産・子育て期まで、切れ目のない支援を提供することを目的としています。この制度の大きな特徴は、合計10万円(妊娠時5万円、出産後5万円)の経済的支援と、保健師などの専門家による伴走型の相談支援が一体となっている点です。妊娠や出産、子育てには多くの期待とともに、不安や疑問もつきものです。この新しい支援制度を正しく理解し、最大限に活用することで、安心して新しい家族を迎える準備ができます。この記事では、制度の概要から対象者、申請方法、よくある質問まで、どこよりも詳しく、そして分かりやすく解説します。
この記事のポイント
- 2025年4月1日から始まる新しい国の制度
- 妊娠時と出産後に分けて合計10万円が給付される
- 経済的支援だけでなく、専門家による相談支援(伴走型支援)も受けられる
- 流産・死産を経験された方も対象となる
- 申請はお住まいの市区町村で行う
制度の概要:新しい支援制度は何が変わった?
この制度は、これまでの「出産・子育て応援交付金事業」を、子ども・子育て支援法および児童福祉法に基づき、より安定的・継続的な事業として位置づけたものです。単なる給付金だけでなく、妊娠期から子育て期にわたる様々な不安に寄り添うことを重視しています。
正式名称と実施組織
- 経済的支援の名称: 妊婦のための支援給付
- 相談支援の名称: 妊婦等包括相談支援事業(伴走型相談支援)
- 国の所管: こども家庭庁
- 実施主体: 全国の市区町村
目的と背景
核家族化や地域とのつながりの希薄化が進む中で、妊娠・出産・子育てに関する不安や孤立感を抱える家庭が増えています。この制度は、すべての妊婦・子育て家庭が孤立することなく、安心して子どもを産み育てられる社会を実現するために創設されました。経済的な負担を軽減すると同時に、妊娠届出時から出産後まで継続的に面談や相談の機会を設け、一人ひとりの状況に応じた適切な支援につなげることを目指します。
旧制度(出産・子育て応援交付金)との主な違い
最も大きな違いは、時限的な予算事業から法律に基づく恒久的な制度になった点です。これにより、より安定した支援が期待できます。また、給付対象の定義が明確化され、医師が胎児心拍を確認した後の流産・死産も給付対象となることが明記されました。
給付金額と支給タイミング
給付金は、妊娠時と出産後の2回に分けて支給されます。多胎児(双子など)の場合は、出産後の給付額が増額されます。
| 支給タイミング | 支給額 | 主な申請時期 |
|---|---|---|
| 1回目:妊娠時 | 5万円 | 妊娠届出時の面談後 |
| 2回目:出産後 | 子ども1人につき5万円 | 出生後の家庭訪問(こんにちは赤ちゃん訪問など)の面談後 |
計算例
- 子ども1人を出産した場合: 妊娠時5万円 + 出産後5万円 = 合計10万円
- 双子を出産した場合: 妊娠時5万円 + 出産後(5万円 × 2人) = 合計15万円
対象者と詳しい条件
この給付金を受けるためには、いくつかの要件を満たす必要があります。基本的な条件と、注意すべき点を確認しましょう。
対象となる方
- 共通要件: 申請時点で、お住まいの市区町村に住民登録があり、日本国内に住所を有する方(国籍は問いません)。
- 1回目(妊娠時)の対象者: 令和7年4月1日以降に、産科医療機関で医師等による胎児心拍の確認を受け、妊婦給付認定を受けた妊婦。
- 2回目(出産後)の対象者: 1回目の給付認定を受け、令和7年4月1日以降に出産し、生まれた子どもの養育者。
【重要】流産・死産・人工妊娠中絶をされた方へ
この制度では、医師による胎児心拍確認後に、残念ながら流産・死産・人工妊娠中絶となった場合でも、給付金の対象となります。お辛い状況の中、手続きについて考えるのは難しいかもしれませんが、支援を受けられることを知っておいてください。詳細はお住まいの市区町村の相談窓口へお問い合わせください。
転入・転出する場合の注意点
妊娠中や出産後に引っ越しをする場合は、給付金の取り扱いに注意が必要です。
- 市外から転入した場合: 転入前の市区町村でこの給付金(または同様の給付金)を受給していない場合は、転入先の市区町村で申請することができます。
- 市外へ転出する場合: 転出すると、その市区町村での給付認定は取り消されます。まだ受給していない給付金がある場合は、転出先の市区町村で改めて申請手続きが必要になります。必ず転出先で相談してください。
申請方法と全体の流れ
申請は、伴走型相談支援の一環として行われる面談と連動しています。以下に一般的な流れをステップごとに解説します。※手続きの詳細は自治体によって異なる場合があるため、必ずお住まいの市区町村にご確認ください。
ステップ1:妊娠届出と1回目の面談(妊娠時)
産婦人科で妊娠が確定し、胎児心拍が確認されたら、お住まいの市区町村の窓口(保健センター、子育て世代包括支援センターなど)に妊娠届を提出し、母子健康手帳の交付を受けます。その際に、保健師や助産師などの専門職との面談が行われます。この面談で、出産までの見通しを立てたり、不安なことを相談したりできます。面談終了後、1回目の給付金(5万円)の申請書類が渡されます。
ステップ2:妊娠後期のアンケート
多くの自治体では、妊娠7〜8か月頃に、出産準備や産後の生活に関するアンケートが郵送またはオンラインで案内されます。体調や心配事などを回答し、希望すれば追加で面談を受けることも可能です。
ステップ3:出産後の家庭訪問と2回目の面談(出産後)
赤ちゃんが生まれたら、出生届を提出します。その後、「こんにちは赤ちゃん訪問(乳児家庭全戸訪問事業)」などで、保健師や助産師がご自宅を訪問します。赤ちゃんの体重測定や発育の確認、お母さんの体調や育児の悩み相談などを行います。この訪問時に、2回目の給付金(子ども1人あたり5万円)の申請案内があります。
必要書類リスト
- 妊婦支援給付認定申請書兼請求書: 自治体の窓口で配布されます。
- 本人確認書類のコピー: マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど。
- 振込先口座が確認できる書類のコピー: 申請者本人名義の通帳やキャッシュカードなど。
- (自治体により)母子健康手帳のコピー
- (流産等で母子手帳がない場合)医師の診断書など妊娠の事実がわかる書類
申請期限(時効)
申請には期限(時効)がありますので、ご注意ください。
- 1回目(妊娠時): 産科医療機関で胎児心拍を確認した日から2年が経過する日の前日まで。
- 2回目(出産後): 出産予定日の8週間前の日から2年が経過する日の前日まで。
確実に給付を受けるためのポイント
この制度は審査で落とされる「補助金」とは異なり、要件を満たせば原則として誰もが受けられる「給付金」です。しかし、手続きをスムーズに進めるために、以下の点に注意しましょう。
- 面談やアンケートには必ず応じる: 給付金の申請は、伴走型相談支援と一体で案内されます。面談やアンケートは、支援を受けるための重要な機会であり、スムーズな申請につながります。
- 申請期限を忘れない: 2年という時効があります。特に産後は忙しくなりがちなので、案内のあったタイミングで早めに手続きを済ませましょう。
- 書類の不備に注意する: 申請者と口座名義人が一致しているか、本人確認書類のコピーは鮮明かなど、提出前によく確認しましょう。
- 引っ越したらすぐに相談: 転居した場合は、給付金の管轄が変わります。速やかに新しい住所地の市区町村役場に相談してください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 夫(パートナー)名義の口座に振り込んでもらえますか?
A1. 原則として、申請者である妊婦・産婦ご本人の名義の口座への振込となります。自治体によっては特別な事情がある場合に限り対応することもありますが、基本的にはご本人名義の口座をご用意ください。
Q2. 里帰り出産をする場合、どこに申請すればよいですか?
A2. 申請は、申請時点で住民票がある市区町村に対して行います。里帰り先の自治体ではありませんのでご注意ください。里帰り先で家庭訪問を受けたい場合などは、事前に住民票のある市区町村と里帰り先の市区町村の両方に相談しておくとスムーズです。
Q3. 給付金の使い道に制限はありますか?現金以外でもらえますか?
A3. 給付金の使い道に制限はなく、自由です。出産準備品や育児用品の購入、産後ケアサービスの利用など、幅広くご活用いただけます。支給方法は原則として現金振込ですが、自治体によっては受給者の希望に応じて、育児用品やサービスのクーポン、電子マネーなどで支給する選択肢を用意している場合があります。
Q4. 外国籍でも対象になりますか?
A4. はい、日本国内に住所(住民登録)があれば、国籍を問わず対象となります。
Q5. 令和7年3月31日までに出産した場合はどうなりますか?
A5. 令和7年3月31日までに出生したお子さんについては、旧制度である「出産・子育て応援交付金事業」の対象となります。手続きが済んでいない方は、お早めにお住まいの市区町村にお問い合わせください。
まとめ:不安な時は一人で抱え込まず相談を
2025年4月から始まる「妊婦のための支援給付・妊婦等包括相談支援事業」は、これからの子育て世代にとって心強い味方となる制度です。重要なポイントをもう一度おさらいしましょう。
- 経済的支援: 妊娠時に5万円、出産後に子ども1人あたり5万円、合計10万円が支給されます。
- 相談支援: 妊娠届出時から出産後まで、保健師などの専門家が面談を通じて継続的にサポートします。
- 対象者: 日本に住所のあるすべての妊婦・産婦が対象で、流産・死産の場合も含まれます。
- 手続き: お住まいの市区町村の窓口で、面談とあわせて申請します。
妊娠や出産、子育ては素晴らしい経験ですが、時には不安や困難に直面することもあります。この制度は、そうした時に一人で抱え込まず、気軽に専門家に相談できる環境を提供することも大きな目的としています。給付金の申請はもちろんのこと、ぜひ伴走型相談支援を積極的に活用してください。まずは妊娠がわかったら、お住まいの市区町村の保健センターや子育て支援課に連絡し、この新しい制度について尋ねてみましょう。
お問い合わせ先
この制度に関する具体的な手続きや相談は、お住まいの市区町村の保健センターや子育て支援担当課が窓口となります。自治体のウェブサイト等で連絡先をご確認ください。