詳細情報
この記事のポイント
- 重度障害者等の通勤困難を解消するための8つの助成金メニューを解説
- 住宅賃借、バス・自動車購入、駐車場代など幅広い支援内容
- 支給額は最大700万円、支給期間は最長10年間のメニューも
- 対象となる障害者や事業主の要件、申請手続きの流れを網羅
障害者の雇用を促進・継続する上で、「通勤」は大きな課題の一つです。特に重度の障害を持つ方にとって、毎日の通勤は大きな負担となる場合があります。「重度障害者等通勤対策助成金」は、こうした課題を解決するため、事業主が講じる通勤支援の取り組みを経済的にサポートする制度です。
この記事では、障害者雇用に取り組む事業主様に向けて、重度障害者等通勤対策助成金の8つの支援メニュー、対象者、支給額、申請方法まで、わかりやすく解説します。
重度障害者等通勤対策助成金とは?
重度障害者等通勤対策助成金は、障害特性により通勤が困難な障害者を雇用する事業主が、通勤を容易にするための措置を行った場合に、その費用の一部を助成する制度です。この助成金は、障害者の雇用の促進と継続を目的としており、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が管轄しています。
本助成金は、事業主が実施する支援内容に応じて、以下の8つのメニューに分かれています。
- Ⅰ. 重度障害者等用住宅の賃借助成金
- Ⅱ. 指導員の配置助成金
- Ⅲ. 住宅手当の支払助成金
- Ⅳ. 通勤用バスの購入助成金
- Ⅴ. 通勤用バス運転従事者の委嘱助成金
- Ⅵ. 通勤援助者の委嘱助成金
- Ⅶ. 駐車場の賃借助成金
- Ⅷ. 通勤用自動車の購入助成金
対象となる事業主と障害者
対象となる事業主
本助成金を受給できる事業主は、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 助成対象となる措置を実施しなければ、対象障害者の雇用や雇用の継続が困難であると認められること。
- 過去に障害者雇用納付金制度関連の助成金で不正受給による不支給措置がとられていないこと。
- 不正受給による返還金がある場合、その返還が完了していること。
※通勤用バスの購入・運転手委嘱の助成金は、事業主団体も対象となります。
対象となる障害者
本助成金の対象となるのは、事業主に雇用される、以下のいずれかに該当する方です。
- 重度身体障害者
- 3級の体幹機能障害者
- 3級の視覚障害者
- 3級または4級の下肢障害者
- 知的障害者
- 精神障害者
- 3級または4級の乳幼児期以前の非進行性の脳病変による移動機能障害者
- 5級の下肢障害、体幹機能障害、乳幼児期以前の非進行性の脳病変による移動機能障害のうち2つ以上を重複する者
※注意:「通勤用自動車の購入助成金」については対象障害者が異なります。詳細は管轄の都道府県支部へお問い合わせください。
8つの助成金メニュー詳細(支給額・期間)
各助成金の支給額や期間について、一覧表でご紹介します。
| 助成金メニュー | 支給額(助成率:原則3/4) | 支給期間 |
|---|---|---|
| Ⅰ. 住宅の賃借助成金 | 上限:月10万円(世帯用)/ 月6万円(単身用) | 10年間 |
| Ⅱ. 指導員の配置助成金 | 上限:月15万円 | 10年間 |
| Ⅲ. 住宅手当の支払助成金 | 上限:月6万円(1人あたり) | 10年間 |
| Ⅳ. 通勤用バスの購入助成金 | 上限:700万円(1台) | 一時金 |
| Ⅴ. バス運転従事者の委嘱助成金 | 上限:6,000円(1回あたり) | 10年間 |
| Ⅵ. 通勤援助者の委嘱助成金 | 上限:委嘱費用2,000円/回 + 交通費3万円 | 1か月 |
| Ⅶ. 駐車場の賃借助成金 | 上限:月5万円 | 10年間 |
| Ⅷ. 通勤用自動車の購入助成金 | 上限:150万円(1台) ※両上肢障害1・2級の場合は250万円 |
一時金 |
申請手続きの流れと期限
助成金を受給するための手続きは、大きく分けて2つのステップがあります。
ステップ1:受給資格認定申請
まず、助成金の受給資格を得るために「障害者助成金受給資格認定申請書」と必要書類を、管轄の都道府県支部へ提出します。申請期限は助成金メニューによって異なり、措置の開始前(例:バスの購入予定日の前日)や、措置開始から一定期間内(例:住宅の賃貸借契約日から3か月以内)など様々です。 事前に必ず確認し、期限内に申請することが重要です。
ステップ2:支給請求
受給資格の認定を受けた後、実際に費用を支払い、措置を実施した上で「障害者助成金支給請求書」と必要書類を提出します。支給請求の期限もメニューごとに定められており、多くは6か月ごとの期間で区切って請求するか、認定日から1年以内などとなっています。
申請時の重要注意点
- 事前申請が原則:バスや自動車の購入など、多くのメニューでは措置を開始する前に受給資格認定申請が必要です。事後申請は認められない場合が多いため、計画段階で相談・申請しましょう。
- 対象外のケース:親会社や子会社、役員、対象障害者本人などが所有する物件の賃借や、中古品の購入は原則として対象外です。詳細はパンフレット等でご確認ください。
- 問い合わせ先:申請手続きや要件の詳細は複雑です。計画段階で必ず事業所の所在地を管轄する都道府県支部高齢・障害者業務課へ相談することをお勧めします。
まとめ
重度障害者等通勤対策助成金は、障害者の通勤に関する負担を軽減し、安定した雇用を実現するための強力な支援策です。住宅、移動手段、人的サポートなど、8つの多様なメニューが用意されており、企業の状況に合わせて活用できます。
障害者一人ひとりが安心して働き続けられる職場環境を整えることは、企業の社会的責任を果たすだけでなく、多様な人材の活躍による組織の活性化にも繋がります。この助成金を活用し、障害者雇用の推進を一歩前に進めてみてはいかがでしょうか。
詳細な要件や申請書類については、必ず公式サイトをご確認いただくか、最寄りの都道府県支部へお問い合わせください。