愛知県内で災害や大規模な感染症発生時に医療従事者を派遣する体制を強化するため、愛知県では「災害・感染症医療業務従事者派遣設備整備事業費補助金」を実施しています。この制度は、知事と派遣に関する協定を締結している医療機関を対象に、派遣活動に必要な設備の購入費用の一部を補助するものです。最大で3,168万5,000円という手厚い支援が受けられるため、対象となる医療機関にとっては、災害対応能力を大幅に向上させる絶好の機会となります。この記事では、補助金の概要から対象経費、申請方法、採択されるためのポイントまで、担当者が知りたい情報を網羅的に解説します。申請期限は令和7年11月21日(金曜日)と迫っておりますので、早めの準備を進めましょう。
この補助金のポイント
- 対象者: 愛知県知事と災害・感染症医療業務従事者派遣に関する協定を締結している医療機関
- 補助額: 最大3,168万5,000円 / ヵ所
- 補助率: 対象経費の1/3以内
- 目的: 災害・感染症発生時の円滑な医療活動に必要な設備の整備支援
- 申請期限: 令和7年11月21日(金曜日)まで
1. 愛知県災害・感染症医療業務従事者派遣設備整備事業費補助金の概要
まずは、本補助金の基本的な情報について確認しましょう。どのような目的で、誰が実施している制度なのかを理解することが、申請準備の第一歩です。
正式名称と実施組織
- 正式名称: 愛知県災害・感染症医療業務従事者派遣設備整備事業費補助金
- 実施組織: 愛知県(担当課:保健医療局 健康医務部 医務課 看護対策グループ)
目的と背景
この補助金は、大規模な災害や感染症のパンデミックが発生した際に、被災地等へ迅速かつ円滑に医療従事者を派遣し、効果的な医療活動を展開できる体制を構築することを目的としています。近年、自然災害の激甚化や新興感染症のリスクが高まる中、有事に備えた医療提供体制の強化は喫緊の課題です。本事業は、派遣協定を結ぶ医療機関が、活動に必要な資機材を事前に整備することを支援し、愛知県全体の防災・減災能力、そして医療レジリエンスの向上を図るものです。
2. 補助金額・補助率について
本補助金の最大の魅力は、その手厚い支援内容にあります。ここでは、具体的な補助金額や補助率、算出方法について詳しく解説します。
補助上限額と補助率
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助上限額 | 3,168万5,000円 / ヵ所 |
| 補助率 | 1/3以内 |
| 備考 | 対象となる設備の種類によって、個別の基準額が設定されています。詳細は交付要綱の「別表」をご確認ください。 |
交付額の算出方法
補助金の交付額は、以下の手順で算出されます。少し複雑ですが、正確な申請のために理解しておきましょう。
- 基準額と実支出額の比較: 導入したい設備ごとに定められた「基準額」と、実際にかかる「対象経費の実支出額」を比較し、いずれか少ない方の額を選定します。
- 事業費との比較: (1)で選定された額と、「総事業費から寄付金などの収入を差し引いた額」を比較し、いずれか少ない方の額を選定します。
- 補助額の決定: (2)で選定された額に補助率(1/3)を乗じて得た額が交付額となります。(1,000円未満の端数は切り捨て)
【計算例】
基準額600万円の設備を、寄付金なしで750万円で購入する場合
1. 基準額(600万円) < 実支出額(750万円) → 600万円を選定
2. (1)の額(600万円) = 総事業費(750万円) – 寄付金(0円) → 600万円を選定
3. 600万円 × 1/3 = 200万円(交付額)
3. 対象者・条件
この補助金は、どの医療機関でも申請できるわけではありません。明確な対象者要件が定められています。
対象となる医療機関
補助金の対象となるのは、以下の条件をすべて満たす医療機関です。
- 愛知県内に所在する医療機関であること。
- 愛知県知事と「災害・感染症医療業務従事者派遣に関する協定」を締結していること。
- 上記協定を締結した施設のうち、知事が適当と認めた施設であること。
重要なのは、事前に派遣協定を締結していることが絶対条件となる点です。また、愛知県から本補助金に関する交付申請の通知が対象事業者宛てに送付されているため、通知を受け取った医療機関が対象となります。もし協定を締結済みで通知が届いていない場合は、一度担当課へ確認することをお勧めします。
4. 補助対象となる経費
補助金の対象となるのは、「災害・感染症医療業務従事者派遣に必要な設備の購入に要する経費」です。具体的にどのような設備が対象になるのか、例を挙げて解説します。
対象経費の具体例
交付要綱の別表に詳細が記載されていますが、一般的に以下のような設備が想定されます。自院の派遣計画に基づき、必要な設備を検討してください。
- 情報通信機器: 衛星電話、トランシーバー、モバイルルーターなど、被災地での通信手段を確保するための機器
- 電源関連設備: ポータブル電源、発電機、バッテリーなど、停電時にも医療機器を稼働させるための設備
- 活動拠点用資機材: テント、簡易ベッド、寝袋、照明器具など、派遣先での活動拠点を設営するための資機材
- 衛生・感染対策用品: 個人防護具(PPE)、消毒液、簡易トイレ、浄水器など、劣悪な環境下での活動を支える用品
- 医療機器: ポータブル超音波診断装置、携帯用生体情報モニタなど、派遣先で使用する小型・可搬式の医療機器
- その他: 派遣活動に必要であると知事が認める設備
対象外となる経費
一方で、以下のような経費は補助の対象外となるため注意が必要です。
- 土地や建物の取得費、造成費
- 既存設備の撤去・処分費用
- 消耗品(ただし、初度備付分は対象となる場合がある)
- 消費税及び地方消費税
- 振込手数料などの事務経費
5. 申請方法と手順
申請は定められた期間内に、必要な書類をすべて揃えて提出する必要があります。ここでは、申請の具体的な流れと必要書類について詳しく解説します。
申請期間とスケジュール
- 申請受付期間: 通知受領後 〜 令和7年11月21日(金曜日)まで【必着】
- 提出部数: 1部
申請のステップ
申請から補助金交付までの大まかな流れは以下の通りです。
- 必要書類の準備: 愛知県の公式サイトから様式をダウンロードし、記入例を参考に作成します。購入予定の設備の見積書も取得します。
- 交付申請書の提出: 準備した書類一式を、期限までに担当課へ郵送または持参します。
- 交付決定通知: 県による審査後、採択されると「交付決定通知書」が届きます。事業(設備の発注・購入)は必ずこの通知書が届いた後に行ってください。
- 事業の実施: 交付決定内容に基づき、設備の購入・設置を行います。
- 実績報告書の提出: 事業完了後、30日以内または翌年度4月5日のいずれか早い日までに、実績報告書を提出します。
- 補助金額の確定・交付: 実績報告書の審査後、補助金額が確定し、指定の口座に補助金が振り込まれます。
- 消費税仕入控除税額報告: 補助事業完了後、消費税の申告により仕入控除税額が確定した場合、報告が必要です。
必要書類一覧
申請には以下の書類が必要です。公式サイトで最新の様式をダウンロードして使用してください。
- 交付申請書(別紙様式1)
- 事業計画書(別紙様式1-1)
- 所要額調書(別紙様式1-2)
- 歳入歳出予算書
- 購入予定の設備の見積書の写し
- 設備の仕様がわかるカタログ等の写し
- 【初回または変更時のみ】愛知県受取人届出書
6. 採択されるためのポイント
本補助金は、要件を満たした対象機関からの申請を予算の範囲内で支援するものですが、申請内容の妥当性は審査されます。採択の可能性を高めるために、以下の点を意識して申請書類を作成しましょう。
事業計画の具体性と妥当性
「なぜその設備が必要なのか」を明確に説明することが最も重要です。事業計画書(別紙様式1-1)には、自院の災害派遣計画や役割と関連付けて、導入する設備がどのように派遣活動の質を向上させ、円滑な医療提供に貢献するのかを具体的に記述してください。「とりあえず高性能なものを」ではなく、「我々のチームが〇〇という状況で活動するために、このスペックの△△が不可欠である」という論理的な説明が求められます。
経費の妥当性と透明性
補助対象経費の見積もりは、適正でなければなりません。複数の業者から見積もりを取得(相見積もり)し、最も経済合理性の高いものを選択した経緯を示すことが望ましいです。高額な設備を選定した場合は、その理由(性能、耐久性、サポート体制など)を明確に説明できるように準備しておきましょう。所要額調書(別紙様式1-2)には、単価や数量を正確に記載し、積算根拠を明確にしてください。
書類の正確性と整合性
申請書類に不備や記載漏れがあると、審査が遅れたり、不採択の原因になったりします。提出前には、記入例と照らし合わせながら、すべての項目が正しく埋められているか、各書類間で金額や内容に矛盾がないかを複数人でダブルチェックすることをお勧めします。特に、申請額の計算ミスには十分注意してください。
7. よくある質問(FAQ)
Q1. これから派遣協定を締結すれば、この補助金に申請できますか?
A1. この補助金は、既に協定を締結している施設のうち、県が適当と認めた施設へ個別に通知を送付しています。そのため、これから協定を締結して本年度の申請に間に合わせることは難しいと考えられます。まずは県と協定を締結し、次年度以降の公募に備えることをお勧めします。
Q2. 補助金はいつもらえますか? 先に設備代金を支払う必要がありますか?
A2. 補助金は、事業完了後の実績報告書を提出し、県による検査と金額の確定を経てから支払われる「精算払い」です。したがって、一旦は医療機関側で設備購入費用を全額立て替える必要があります。
Q3. 交付決定前に発注してしまった設備は対象になりますか?
A3. 対象になりません。補助事業の対象となるのは、必ず県の「交付決定通知」を受けた日以降に契約・発注した設備に限られます。フライング発注は絶対に行わないでください。
Q4. 申請後に事業内容や経費の変更は可能ですか?
A4. やむを得ない理由で事業内容を変更する場合は、事前に県の承認(変更承認申請)が必要です。ただし、経費の20%以内の軽微な配分変更など、承認が不要なケースもあります。変更が生じる可能性が出た時点で、速やかに県の担当課へ相談してください。
Q5. 補助金で購入した設備の管理に制約はありますか?
A5. はい。補助金によって取得した財産は、善良な管理者の注意をもって管理し、補助金の交付目的に沿って効率的に運用する義務があります。また、法定耐用年数の期間内において、知事の承認なく補助目的外の使用、譲渡、交換、貸付、担保に供することはできません(財産処分の制限)。
8. まとめと問い合わせ先
「愛知県災害・感染症医療業務従事者派遣設備整備事業費補助金」は、有事に備える協定締結医療機関にとって、体制強化に直結する非常に重要な制度です。最大3,168万5,000円の支援を活用し、災害・感染症発生時に県民の命と健康を守るための備えを万全にしましょう。
重要ポイントの再確認
- 対象は派遣協定を締結済みの医療機関です。
- 申請期限は令和7年11月21日(金曜日)です。
- 事業の開始(発注)は必ず交付決定通知後に行ってください。
- 申請書類は、事業計画の妥当性と経費の透明性を意識して作成しましょう。
申請に関して不明な点がある場合は、下記の担当課へ早めに問い合わせることをお勧めします。
お問い合わせ先
- 担当部署: 愛知県 保健医療局 健康医務部 医務課 看護対策グループ
- 所在地: 〒460-8501 名古屋市中区三の丸3-1-2
- 電話番号: 052-954-6276
- 公式サイト: 愛知県災害・感染症医療業務従事者派遣設備整備事業費補助金について