埼玉県内で経験豊富なシニア人材の活用をお考えの経営者・人事担当者の皆様へ朗報です。埼玉県では、70歳以上まで働ける制度を新たに導入する企業を支援するため、1社あたり30万円を交付する「70歳雇用確保助成金」を実施しています。深刻化する人手不足への対策、ベテラン社員が持つ貴重な技術やノウハウの継承、そして多様な働き方の実現は、企業の持続的成長に不可欠です。この助成金を活用することで、就業規則の改定など制度導入にかかる負担を軽減し、シニア社員が意欲と能力を最大限に発揮できる職場環境を構築できます。この記事では、助成金の対象条件から申請手順、採択されるためのポイントまで、どこよりも詳しく、そして分かりやすく解説します。ぜひ最後までお読みいただき、貴社の雇用戦略にお役立てください。
この助成金のポイント
- 埼玉県内の企業が対象
- 70歳以上まで働ける「基準を設けた継続雇用制度」の導入を支援
- 1社あたり一律30万円を交付
- 事前の「シニア活躍推進宣言企業」認定が必要
- 申請期間は令和7年6月5日から11月28日まで(予算上限あり)
1. 埼玉県「70歳雇用確保助成金」の概要
まずは、この助成金がどのような制度なのか、全体像を把握しましょう。
制度の目的と背景
埼玉県では、少子高齢化が進む中で、シニア層が持つ豊富な経験や知識を社会の力として活かすことを目指しています。この助成金は、シニアが自身の意欲や希望に応じて働き続け、社会の担い手として活躍できる環境を整備することが目的です。具体的には、企業が70歳以上まで働ける継続雇用制度を導入する際の経済的・手続き的なハードルを下げ、シニア雇用の促進を後押しします。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 埼玉県 70歳雇用確保助成金 |
| 実施組織 | 埼玉県 産業労働部 就業支援課 |
| 目的 | 70歳以上まで働ける制度を導入する企業を支援し、シニアが活躍できる社会を実現する |
| 公式サイト | 埼玉県の公式ページはこちら |
2. 助成金額・補助率
助成金額は非常にシンプルで分かりやすくなっています。
1社あたりの交付額
30万円
(定額支給)
この助成金は、制度導入にかかった経費の何割かを補助する「補助率」の考え方ではなく、要件を満たす制度を導入した企業に対して一律で30万円が交付される「定額助成」です。これにより、計画が立てやすく、申請のハードルも低くなっています。
3. 対象者・申請の必須条件
助成金を受給するには、以下の4つの条件をすべて満たす必要があります。特に「シニア活躍推進宣言企業」の認定が重要なポイントです。
- (1) 埼玉県内の事業所に定年前の正社員がいること
申請日時点で1年を超えて雇用されている正社員が対象です。 - (2) 埼玉県内の事業所に、5年以内に定年または継続雇用の上限年齢に達する従業員がいること
現行制度に応じて、定年を迎える正社員、または継続雇用の上限に達する従業員のいずれかがいる必要があります。 - (3) 過去に埼玉県が実施した類似の助成金を受給したことがないこと
「埼玉県70歳雇用推進助成金」「埼玉県生涯現役実践助成金」などが該当します。 - (4) 「埼玉県シニア活躍推進宣言企業」であり、特定の認定項目を2つ以上実施済みであること
これが最も重要な要件です。次で詳しく解説します。
最重要要件:「シニア活躍推進宣言企業」とは?
「シニア活躍推進宣言企業」とは、シニアが活躍するための取組を積極的に行う企業として埼玉県が認定する制度です。この助成金を申請するためには、まずこの認定を受ける必要があります。
認定には、下記の7項目のうち3つ以上が「実施予定」または「実施済み」であることが必要です。さらに、助成金の申請には、項目(2)~(6)のうち、2つ以上が「実施済み」として認定されている必要があります。
<認定のための7項目>
- シニアの定年や継続雇用の制度を見直す
- シニアの雇用、働く場所・機会を増やす
- シニアが安心して働ける環境を整える
- シニアの技術・経験を生かす
- シニアの能力を伸ばす
- 福利厚生を充実する
- シニアの活躍推進の取組を情報発信する
※助成金申請には、赤字の(2)~(6)のうち2つ以上が「実施済み」である必要があります。
注意:まだ認定を受けていない企業は、助成金申請の前に別途申込みが必要です。認定には県職員によるヒアリング(40~60分程度)があるため、時間がかかります。助成金の申請を検討している場合は、一日でも早く県の担当課へ連絡し、認定手続きを進めることを強くお勧めします。
4. 助成の対象となる取組(対象経費)
この助成金は、特定の経費を補助するものではなく、以下の取組(制度導入)自体を対象としています。
対象となる取組
就業規則を改正し、企業が独自に定める基準に該当する従業員を、70歳以上まで継続して雇用する制度を新たに導入する場合が対象です。
この「企業が定める基準」がポイントで、希望者全員を対象とする必要はありません。企業の状況に応じて柔軟な制度設計が可能です。
<基準の例>
- 過去〇年間の出勤率が〇%以上の者
- 直近の健康診断の結果、業務遂行に支障がないと判断された者
- 会社が必要とする特定の技能や資格を有する者
- 人事評価が一定基準以上の者
対象外となる取組
以下の取組は、この助成金の対象外となりますのでご注意ください。
- 定年年齢を70歳以上に引き上げる
- 定年制度そのものを廃止する
- 希望者全員を対象とした継続雇用制度を導入・引き上げる
- すでに70歳以上まで働ける制度を就業規則等で定めている
国の助成金との違い
定年の引き上げや希望者全員を対象とする制度を導入する場合は、この助成金の対象外ですが、厚生労働省が管轄する「65歳超雇用推進助成金」の対象となる可能性があります。自社が目指す制度がどちらの助成金に合致するか、事前に確認することが重要です。
5. 申請方法・手順
申請から受給までの流れは以下の通りです。特に、就業規則の改正は「交付決定後」に行うという順番を間違えないようにしましょう。
申請期間
令和7年6月5日(木) ~ 11月28日(金)
※申請順に審査が行われ、予算額の上限に達した場合は期間中でも募集が締め切られます。早めの申請が鍵となります。
申請から受給までのステップ
- 【事前準備】シニア活躍推進宣言企業の認定
未認定の場合は、まず県の担当課に連絡し、認定手続きを進めます。 - 【申請】電子申請サービスで申請書類を提出
原則として「埼玉県電子申請・届出サービス」から申請します。就業規則の改正案の提出が必要です。 - 【審査】埼玉県による審査・交付決定
県が申請内容を審査し、問題がなければ「交付決定通知書」が送付されます。 - 【取組実施】就業規則の変更・労働基準監督署への届出
交付決定通知書を受け取った後に、実際に就業規則を改正し、労働基準監督署へ届け出ます。 - 【報告】実績報告書の提出
改正後の就業規則(届出印のあるもの)の写しなどを添付して、実績報告書を提出します。 - 【確定・受給】交付額確定・助成金の振込
実績報告の内容が確認され、交付額が確定した後、指定の口座に助成金が振り込まれます。
主な必要書類
申請時には、主に以下の書類が必要となります。詳細は必ず公式の募集要項で確認してください。
- 交付申請書
- 事業計画書
- 現行の就業規則(労働基準監督署の受付印があるもの)の写し
- 就業規則の改正案
- 正社員名簿
- 継続雇用者名簿(該当する場合)
- 誓約書
- その他、県が指定する書類(法人登記事項証明書など)
6. 採択されるための3つの重要ポイント
この助成金を確実に受給するために、押さえておくべきポイントを3つご紹介します。
ポイント1:とにかく早めに動き出す
最大のポイントはスピードです。前述の通り、この助成金は予算の上限に達し次第、受付が終了します。また、前提条件である「シニア活躍推進宣言企業」の認定には、県のヒアリングなどを含め一定の時間がかかります。助成金の公募が開始されたら、すぐに認定手続きの相談を始めることが採択への第一歩です。
ポイント2:無料の専門家派遣制度をフル活用する
埼玉県では、70歳以上まで働ける制度の導入を検討する企業に対し、社会保険労務士を無料で派遣する「70歳雇用制度導入アドバイザー派遣」制度を実施しています。助成金申請には就業規則の改正案が必要となるため、専門家のアドバイスを受けながら自社に合った制度を設計できるこの制度は、非常に有用です。費用負担なく専門家の支援を受けられる絶好の機会ですので、必ず活用しましょう。
ポイント3:手続きの順番を厳守する
繰り返しになりますが、就業規則の改正は、必ず県の「交付決定」を受けた後に行ってください。焦って先に改正してしまうと、助成金の対象外となってしまいます。「申請 → 交付決定 → 制度導入(就業規則改正)」という流れを絶対に守ることが重要です。
7. よくある質問(FAQ)
- Q1. パートタイマーや契約社員の継続雇用制度を導入する場合も対象になりますか?
- A1. 対象となりません。この助成金は、正社員の就業規則を改正する場合が対象です。
- Q2. 「シニア活躍推進宣言企業」の認定にはどれくらい時間がかかりますか?
- A2. 申込み後、県職員との訪問ヒアリングの日程調整などが必要なため、数週間から1ヶ月以上かかる場合もあります。助成金の申請期間は限られているため、可能な限り早く認定の申込みを行ってください。
- Q3. 従業員が10人未満で、これまで就業規則を作成していませんでした。申請できますか?
- A3. 申請のためには、まず現行制度(65歳までの雇用確保措置を含む)を定めた就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出る必要があります。その上で、70歳以上の継続雇用制度を導入する改正案を添えて申請することになります。
- Q4. 交付決定前に就業規則を改正してしまいました。もう申請は無理ですか?
- A4. 残念ながら、交付決定前に実施した取組は助成の対象外となります。これから申請を検討される企業は、この点をくれぐれもご注意ください。
- Q5. 助成金はいつ頃振り込まれますか?
- A5. 就業規則の改正後、実績報告書を提出し、県による内容確認と交付額の確定手続きが行われます。すべての手続きが完了してから振り込まれるため、申請から受給までには数ヶ月かかるのが一般的です。
8. まとめと次のアクション
埼玉県「70歳雇用確保助成金」は、シニア人材の活用と定着を目指す企業にとって、非常に魅力的な制度です。最後に、重要なポイントを再確認しましょう。
- 目的: 企業が定める基準を満たす従業員を70歳以上まで継続雇用する制度の導入を支援。
- 金額: 1社あたり一律30万円。
- 必須条件: 事前に「シニア活躍推進宣言企業」の認定を受けることが絶対条件。
- 注意点: 予算がなくなり次第終了。交付決定後に就業規則を改正すること。
- 強力なサポート: 無料の社会保険労務士派遣制度を活用できる。
この助成金に関心を持たれたら、まず最初に行うべきアクションは、埼玉県の就業支援課に連絡し、「シニア活躍推進宣言企業」の認定と「70歳雇用制度導入アドバイザー」の派遣について相談することです。専門家の力を借りながら、貴社の未来を支えるシニア雇用の仕組みを構築していきましょう。
お問い合わせ先
埼玉県 産業労働部 就業支援課 シニア活躍推進担当
電話番号:048-830-4538(※公式サイトの別ページ等から類推した番号です。正確な情報は公式サイトでご確認ください)
(参考:埼玉県庁代表電話番号:048-824-2111)
公式サイト:https://www.pref.saitama.lg.jp/a0813/joseikin/joseikin.html