詳細情報
「住み慣れた自宅で、自分らしく最期まで過ごしたい」そう願う若い世代のがん患者様とそのご家族を、経済的な面から力強く支える制度が新座市にあります。それが「新座市AYA世代がん患者在宅療養支援事業助成金」です。AYA世代(15歳〜39歳)は、就学、就職、結婚、子育てなど、ライフステージが大きく変化する大切な時期です。その中でがんと向き合うことは、身体的、精神的な負担に加え、経済的な不安も非常に大きくなります。この助成金は、在宅療養に必要な訪問介護や福祉用具の費用を月最大72,000円まで支援し、患者様が安心して療養生活を送れる環境を整えることを目的としています。この記事では、制度の対象者から申請方法、必要書類まで、どこよりも詳しく、そして分かりやすく解説します。ご自身や大切なご家族のために、ぜひ最後までお読みください。
この助成金のポイント
- 新座市在住の18歳〜39歳のがん患者様が対象
- 訪問介護や福祉用具レンタル費用などを最大9割補助
- 月々のサービス利用料は上限72,000円まで助成
- 福祉用具の購入は最大90,000円まで助成(1回限り)
- 介護保険の対象外となる若い世代を強力にサポート
1. 助成金の概要
まずは「新座市AYA世代がん患者在宅療養支援事業助成金」がどのような制度なのか、全体像を把握しましょう。
正式名称
新座市AYA世代がん患者在宅療養支援事業助成金
実施組織
埼玉県 新座市(担当窓口:保健センター 健康計画係)
目的・背景
AYA世代(Adolescent and Young Adult:思春期・若年成人)と呼ばれる15歳から39歳の世代は、成人のがんとも小児がんとも異なる特有の課題を抱えています。特に、40歳未満の方は介護保険制度の対象外となるため、在宅で療養生活を送る際の公的なサービスが限られていました。
この助成金は、そのような制度の狭間にいるAYA世代の終末期がん患者様が、経済的な心配を少しでも和らげ、住み慣れた自宅で尊厳を保ちながら安心して過ごせるよう支援することを目的としています。ご本人とご家族の負担を軽減し、穏やかな時間を支えるための大切な制度です。
2. 助成金額・補助率
この助成金は、利用するサービスに応じて助成額や上限が設定されています。ここでは、具体的な金額と補助率について詳しく見ていきましょう。生活保護受給世帯の場合は、さらに手厚い支援が受けられます。
助成内容(通常の場合)
自己負担は原則1割です。上限額を超えた分は全額自己負担となります。
| 助成対象となる内容 | 助成率 | 助成上限額 |
|---|---|---|
| (1) 訪問介護 (2) 訪問入浴介護 (3) 福祉用具貸与 |
サービス利用料合算額の10分の9 | 月額 72,000円 |
| (4) 福祉用具購入 | 購入額の10分の9(1回限り) | 90,000円 |
| (5) 意見書作成料 | 作成料の10分の10(1回限り) | 5,000円 |
【計算例】
ある月に訪問介護で40,000円、福祉用具貸与で10,000円、合計50,000円のサービスを利用した場合。
助成額:50,000円 × 9/10 = 45,000円
自己負担額:50,000円 – 45,000円 = 5,000円
助成内容(生活保護受給世帯の場合)
生活保護受給世帯の方は、自己負担なしでサービスを利用できます。
| 助成対象となる内容 | 助成率 | 助成上限額 |
|---|---|---|
| (1)~(3) 訪問サービス・貸与 | サービス利用料合算額の10分の10 | 月額 80,000円 |
| (4) 福祉用具購入 | 購入額の10分の10(1回限り) | 100,000円 |
3. 対象者・条件
この助成金を利用するには、以下の4つの条件をすべて満たす必要があります。ご自身が対象となるか、一つずつ確認していきましょう。
- 1. 18歳以上40歳未満の新座市民であること
申請時点で新座市に住民登録がある方が対象です。年齢は、利用申請を行う時点での満年齢で判断されます。(ただし、小児慢性特定疾病医療給付制度の対象となる方は除きます。) - 2. 終末期がん患者であること
医師が医学的知見に基づき、回復の見込みがない状態に至ったと判断した方が対象となります。この判断は、申請時に提出する「意見書」によって証明されます。 - 3. 在宅療養生活への支援及び介護が必要な方であること
日常生活を送る上で、訪問介護や福祉用具などのサポートが必要な状態であることが要件です。こちらも医師の意見書で判断されます。 - 4. 他の制度で同等の補助を受けていないこと
介護保険法や障害者総合支援法など、他の公的制度で同じ内容のサービス(訪問介護や福祉用具購入など)の給付を受けられる場合は、そちらが優先されます。この助成金は、それらの制度の対象とならない方を支えるためのものです。
4. 補助対象経費
助成の対象となるサービスや物品は具体的に定められています。どのようなものが対象になるのか、詳しく見ていきましょう。
対象となるサービス・物品
- 訪問介護:ホームヘルパーが自宅を訪問し、食事や入浴、排泄などの介助を行う「身体介護」や、調理、掃除、洗濯などを行う「生活援助」、通院時の乗降介助などが含まれます。
- 訪問入浴介護:自宅の浴槽での入浴が困難な場合に、専門のスタッフが浴槽を自宅に持ち込んで入浴の介助を行います。
- 福祉用具貸与(レンタル):車いす、特殊寝台(介護用ベッド)、床ずれ防止用具、体位変換器、手すり、スロープ、歩行器などが対象です。
- 福祉用具購入:腰掛便座、自動排泄処理装置の交換可能部品、入浴補助用具(シャワーチェアなど)、簡易浴槽などが対象です。貸与と異なり、衛生上の観点からレンタルに適さないものが中心です。
- 意見書作成料:申請に必要な医師の意見書を作成してもらう際にかかった費用です。
【重要】対象福祉用具について
対象となる福祉用具は詳細なリストが定められています。購入やレンタルを検討する前に、必ず新座市の公式サイトにある「福祉用具一覧」を確認するか、保健センターに問い合わせて対象品目かを確認してください。
対象外となる経費
- 医療保険が適用される訪問看護や訪問リハビリテーション
- 助成対象外の福祉用具
- 交通費、宿泊費
- インターネット通販などで購入した物品(原則として、指定の事業者からの購入・貸与が対象です)
5. 申請方法・手順
申請は大きく分けて「①利用申請」と「②助成金請求」の2段階に分かれています。手続きが少し複雑に感じられるかもしれませんが、一つずつ丁寧に進めれば大丈夫です。ここでは、申請から助成金が振り込まれるまでの流れを6つのステップで解説します。
申請者について
申請は、利用者ご本人のほか、ご家族などを「受任者」として指定し、代理で手続きを進めてもらうことが可能です。体調が優れない場合も多いため、市は受任者を指定することを推奨しています。
ステップ1:利用申請(事前申請)
まず、在宅サービスを利用する前日までに、「この助成金制度を利用します」という意思表示(利用申請)を市に行う必要があります。
- 提出書類:
- 新座市AYA世代がん患者在宅療養支援事業利用申請書
- 新座市AYA世代がん患者在宅療養支援事業意見書(主治医に作成を依頼)
- 利用者及び受任者の本人確認書類の写し(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- (該当者のみ)生活保護受給者証の写し
- 提出先:新座市保健センター(窓口または郵送)
- ポイント:医師の意見書は作成に時間がかかる場合があります。早めに主治医に相談しましょう。意見書作成料の請求は、この利用申請と同時に行うことも可能です。
ステップ2:利用決定通知の受領
提出された書類を市が審査し、問題がなければ「利用決定通知書」が郵送で届きます。この通知を受け取ってから、正式にサービス利用が開始できます。
ステップ3:サービスの利用開始
利用したいサービスを提供している事業者と契約し、サービスの利用を開始します。どの事業者を選べばよいか分からない場合は、ケアマネージャーや市の窓口に相談しましょう。
ステップ4:サービス利用料の支払い
サービスを利用したら、まずは利用料の全額(10割)を事業者に支払います。この時点では助成金は適用されません。支払後、必ず「領収書」と「明細書(サービス内容や回数がわかるもの)」を受け取ってください。これらは後の請求手続きで必須となります。
ステップ5:助成金の請求(事後請求)
サービスを利用した年度内(3月末まで)に、立て替えて支払った費用を市に請求します。請求は月単位で行うことが推奨されています。
- 提出書類:
- 新座市AYA世代がん患者在宅療養支援事業助成金交付申請兼請求書
- サービス提供事業者等が発行する領収書(原本)
- サービス等の内容、利用回数、金額等が記載された明細書
- 申請者の振込先が分かる通帳等の写し
- (福祉用具購入の場合)購入した用具のパンフレット等
- (受任者による請求の場合)受任者の本人確認書類の写し
- 提出期限:原則、サービス利用年度の3月末日。期限に間に合わない場合は事前に相談が必要です。
ステップ6:助成金の交付
請求書を提出後、市で審査が行われます。審査完了後、まず「交付決定通知」が送付され、その後、指定した口座に助成金が振り込まれます。請求書の提出から振込までは、約2ヶ月程度かかります。
6. 申請をスムーズに進めるためのポイント
この助成金は、要件を満たしていれば基本的に交付されるものですが、手続きを円滑に進めるためにはいくつかのコツがあります。
- 早めに主治医と相談する:申請には医師の意見書が不可欠です。制度の利用を検討し始めたら、すぐに主治医や病院のソーシャルワーカーに相談し、協力をお願いしましょう。
- 受任者を決めておく:ご本人の体調によっては、手続きが負担になることがあります。ご家族など、信頼できる方を「受任者」として指定しておくことで、申請や請求をスムーズに進めることができます。
- 書類はこまめに整理する:領収書や明細書は、請求時に必ず必要になります。月ごとにクリアファイルにまとめるなど、紛失しないように大切に保管しましょう。
- 不明点はすぐに窓口へ相談する:「このサービスは対象になる?」「書類の書き方がわからない」など、少しでも疑問に思ったら、ためらわずに新座市保健センターに電話で問い合わせましょう。丁寧に教えてくれます。
7. よくある質問(FAQ)
- Q1. 申請から助成金の振込まで、どのくらいの期間がかかりますか?
- A1. 助成金の請求書を市が受理してから、振込まで約2ヶ月が目安です。まず請求から約1ヶ月で交付決定通知が届き、そこからさらに約1ヶ月後に振り込まれます。
- Q2. 年度の途中で40歳になりました。助成は受けられなくなりますか?
- A2. 利用申請の時点で39歳であれば、その年度末までは助成の対象となるのが一般的です。ただし、40歳になると介護保険の第2号被保険者となり、要介護認定を受けられる可能性があります。状況によって対応が異なるため、速やかに新座市保健センターにご相談ください。
- Q3. 新座市から転出した場合はどうなりますか?
- A3. この助成金は新座市民であることが条件のため、市外に転出された場合は資格を喪失します。速やかに「利用変更・廃止届」を提出する必要があります。転出先の自治体で同様の制度があるか確認することをお勧めします。
- Q4. ケアマネージャーがいないのですが、申請できますか?
- A4. はい、申請できます。ただし、どのようなサービスをどのくらい利用するか計画を立てる(ケアプラン作成)際に、専門家であるケアマネージャーがいると非常にスムーズです。サービスの利用について、まずは市の窓口や病院の相談員に相談してみましょう。
- Q5. 意見書を書いてもらうのに、5,000円以上かかりました。差額はどうなりますか?
- A5. 意見書作成料の助成上限額は5,000円です。そのため、もし作成費用が7,000円かかった場合、助成されるのは5,000円で、差額の2,000円は自己負担となります。
8. まとめと行動喚起
今回は、新座市が実施する「AYA世代がん患者在宅療養支援事業助成金」について詳しく解説しました。
【重要ポイントの再確認】
- 対象者:新座市在住の18歳~39歳の終末期がん患者様。
- 支援内容:在宅療養サービス費用の最大9割を補助(月上限7.2万円など)。
- 手続き:「利用申請(事前)」→「サービス利用・支払い」→「助成金請求(事後)」の流れ。
- 注意点:利用申請はサービス開始前日までに!請求は年度内に!
がんと闘う日々の中で、煩雑な手続きは大きな負担に感じられるかもしれません。しかし、この制度は、ご本人とご家族が少しでも穏やかな時間を過ごすために用意された、新座市からの力強いメッセージです。
もし、ご自身やご家族が対象かもしれないと思われたら、まずはこの記事を参考に、新座市保健センターへ一本お電話をしてみてください。「AYA世代の助成金のことで」と伝えれば、専門の職員が親身に相談に乗ってくれます。一人で抱え込まず、利用できる制度は積極的に活用していきましょう。
お問い合わせ先
新座市 保健センター 健康計画係
〒352-0011 埼玉県新座市野火止二丁目9番37号
電話番号:048-481-2211
Fax番号:048-481-2215