名古屋市で長年にわたり事業を継続し、地域経済を支えてきた企業の皆様へ朗報です。市内でさらなる成長を目指すための大規模な設備投資や工場・研究所の新増設を力強く後押しする「名古屋市内企業再投資促進補助金」が、令和7年度(2025年度)も実施されます。この制度は、最大10億円という非常に高額な補助が受けられる点が大きな魅力です。特に、愛知県の補助金制度と連携することで、中堅・大企業も手厚い支援を受けられるのが特徴です。この記事では、名古屋市内企業再投資促進補助金の概要から、複雑な対象要件、補助率、申請の具体的なステップ、そして採択されるためのポイントまで、専門家が徹底的に解説します。貴社の未来への投資を成功させるため、ぜひ最後までご覧ください。

この補助金の最重要ポイント

  • 対象者: 名古屋市内に20年以上立地する企業が対象。
  • 補助額: 中小企業は最大10億円、中堅・大企業は最大5億円。
  • 前提条件: 愛知県の「新あいち創造産業立地補助金(Aタイプ)」に採択されることが必須。
  • 申請タイミング: 工事着工の30日前までに申請が必要。
  • 手続き: まずは名古屋市と愛知県への事前相談(ヒアリング)からスタート。

名古屋市内企業再投資促進補助金の概要

本補助金は、名古屋市経済の持続的な発展を目的として、市内で長期間事業を営む企業の再投資を支援する制度です。企業の市外流出を防ぎ、雇用の維持・拡大と経営基盤の強化を図ることを目指しています。以下に制度の基本情報をまとめました。

制度概要
正式名称 名古屋市内企業再投資促進補助金
実施組織 名古屋市(経済局 イノベーション推進部 産業立地交流課)
目的 20年以上市内に立地する工場等を有する企業が市内で再投資を行う場合に、その経費の一部を助成し、企業の流出防止、雇用の維持拡大及び経営基盤の強化を図る。
連携制度 愛知県「新あいち創造産業立地補助金(Aタイプ)」への採択が必須条件となります。

補助金額・補助率

本補助金の最大の魅力は、その手厚い支援内容にあります。企業規模によって補助率や限度額が異なります。特に中堅・大企業は、名古屋市と愛知県からそれぞれ補助が受けられるため、合計すると非常に高い補助率になります。詳細は以下の表をご確認ください。

企業規模別の補助率と限度額

企業規模 名古屋市 補助率 愛知県 補助率 合計補助率 限度額(市)
中小企業 10%以内 5%以内 10%以内※ 10億円
中小企業(みなし大企業) 8%以内 4%以内 8%以内※ 10億円
中堅企業 5%以内 5%以内 10%以内 5億円
中堅企業(みなし大企業) 4%以内 4%以内 8%以内 5億円
大企業 4%以内 4%以内 8%以内 5億円

※中小企業の場合、愛知県の補助金は市町村を通じた間接補助となり、合計の補助率は名古屋市の補助率(10%以内)が適用されます。

【具体例】補助金額の計算

仮に、名古屋市内の中堅企業が30億円の設備投資(補助対象経費)を行った場合、補助金額は以下のようになります。

  • 名古屋市からの補助額: 30億円 × 5% = 1.5億円
  • 愛知県からの補助額: 30億円 × 5% = 1.5億円
  • 合計補助額: 3億円

※ただし、限度額は名古屋市分で5億円、愛知県分で5億円です。この例では限度額の範囲内となります。

対象者・条件

本補助金を利用するには、いくつかの重要な要件を満たす必要があります。特に「立地期間」と「愛知県の補助金採択」は必須条件ですので、事前に必ず確認してください。

ご利用いただける企業

  • 20年以上、名古屋市内に工場等を有している企業
  • 市内で工場、研究所の新設または増設を行う企業
  • 愛知県の「新あいち創造産業立地補助金(Aタイプ)」に採択されること

対象となる事業分野

以下の次世代成長分野、または愛知県が定める集積業種に該当する事業である必要があります。

  • 次世代自動車関連分野(自動車関連を含む)
  • 航空宇宙関連分野
  • 環境・新エネルギー関連分野
  • 健康長寿関連分野
  • 情報通信関連分野
  • ロボット関連分野
  • その他市長が認める分野
  • 愛知県の産業集積の推進に関する基本指針の集積業種(東尾張地域)

投資規模・雇用要件

企業規模 投資規模要件(土地取得費等除く) 雇用要件(常用雇用者数の維持)
中小企業・中堅企業 1億円以上 25人以上
大企業 25億円以上 50人以上

補助対象経費

補助の対象となるのは、事業計画の実施に不可欠な固定資産の取得にかかる費用です。何が対象になり、何が対象にならないのかを正確に把握することが重要です。

  • 対象となる経費の例:
    • 建物及び附属設備の取得費用
    • 構築物(製造施設、研究開発施設等)の取得費用
    • 機械及び装置の取得費用
    • 事業に直接必要なソフトウェアの取得費用
  • 対象とならない経費の例:
    • 土地の取得費及び造成費
    • 消費税及び地方消費税
    • 中古品の購入費用
    • 汎用性があり目的外使用になりうるもの(パソコン、事務机、車両など)
    • 既存設備の撤去費用

申請方法・手順

本補助金の申請は、一般的な補助金とは異なり、まず名古屋市と愛知県への事前相談(ヒアリング)から始める必要があります。いきなり申請書を提出することはできませんのでご注意ください。

申請ステップ

  1. 事前相談・ヒアリング: まず、名古屋市経済局産業立地交流課に連絡し、事業計画について相談します。この段階で、愛知県の担当者も交えたヒアリングが設定されます。
  2. 申請書類の受領: ヒアリングの結果、補助金の対象となる見込みが立てば、名古屋市から正式な申請書の様式が提供されます。
  3. 事業認定申請書の提出: 必要書類を揃え、工事着工の30日前までに事業認定申請書を提出します。この期限は厳守です。
  4. 審査・認定: 提出された書類に基づき、愛知県と名古屋市で審査が行われます。審査会を経て、採択されると事業認定通知が届きます。
  5. 事業の実施: 認定通知を受けた後、計画に沿って設備投資や工場建設を開始します。
  6. 実績報告・交付申請: 事業が完了したら、実績報告書と補助金交付申請書を提出します。
  7. 額の確定・補助金交付: 書類審査や現地確認を経て補助金額が確定し、指定の口座に補助金が振り込まれます。

必要書類(想定)

正式な様式はヒアリング後に配布されますが、一般的に以下のような書類が必要となります。早めに準備を進めておきましょう。

  • 事業認定申請書
  • 事業計画書(事業内容、投資計画、資金計画、雇用計画など)
  • 投資内容がわかる書類(建物の設計図、機械装置の見積書など)
  • 直近3期分の決算報告書
  • 会社の登記事項証明書
  • 市税の納税証明書
  • 20年以上の市内立地を証明する書類(過去の登記情報、固定資産税台帳など)

採択のポイント

本補助金は大規模な公的資金が投入されるため、審査は厳格に行われます。採択を勝ち取るためには、以下のポイントを押さえた事業計画の策定が不可欠です。

審査で重視される視点

  • 地域経済への貢献度: 新たな投資が名古屋市や愛知県の産業振興、技術力の向上にどれだけ貢献するか。サプライチェーンへの波及効果なども評価されます。
  • 雇用の維持・創出効果: 計画期間中、要件で定められた雇用者数を維持できるか、また、新規雇用を創出できるかが重要なポイントです。
  • 事業の成長性・将来性: 投資によって企業の競争力がどう強化され、将来的にどれだけの成長が見込めるか。市場の動向や技術的な優位性を具体的に示す必要があります。
  • 計画の実現可能性: 資金計画に無理はないか、スケジュールは現実的かなど、計画全体の実現可能性が厳しく審査されます。

よくある不採択理由

  • 要件不備: 「立地期間が20年に満たない」「投資規模が要件に達していない」など、基本的な要件を満たしていない。
  • 事前相談なしの申請: 本制度は事前相談が必須です。
  • 着工後の申請: 事業認定を受ける前に工事に着手してしまった場合、原則として補助対象外となります。
  • 事業計画の具体性不足: なぜこの投資が必要なのか、投資によってどのような効果が生まれるのかが具体的に説明できていない。

よくある質問(FAQ)

Q1: 愛知県の「新あいち創造産業立地補助金」と両方に申請が必要ですか?

はい、その通りです。名古屋市の補助金は、愛知県の「新あいち創造産業立地補助金(Aタイプ)」に採択されることが大前提となっています。手続きは愛知県と名古屋市が連携して進めますので、まずは名古屋市の窓口にご相談ください。

Q2: 「20年以上の市内立地」はどのように証明すればよいですか?

会社の設立登記からの履歴事項全部証明書や、過去からの固定資産税(家屋)の課税台帳などで証明することが一般的です。具体的な証明方法は、事前相談の際に担当課にご確認ください。

Q3: 申請前にコンサルタントに相談した方が良いですか?

必須ではありませんが、本補助金は投資規模が大きく、事業計画書の作り込みが採択を大きく左右します。補助金申請の専門家や経営コンサルタントに相談することで、客観的な視点から事業計画をブラッシュアップでき、採択の可能性を高めることが期待できます。

Q4: 「みなし大企業」とは何ですか?

資本金や従業員数では中小企業に分類されても、発行済株式の総数や出資総額の一定割合を大企業が所有しているなど、実質的に大企業の支配下にあると判断される企業のことです。該当する場合、補助率が中小企業とは異なるため注意が必要です。

Q5: 採択率はどのくらいですか?

採択率は公式には公表されていません。しかし、予算規模が大きく、要件が明確であるため、しっかりと要件を満たし、地域経済への貢献度が高い優れた事業計画を提出できれば、採択の可能性は十分にあると考えられます。

まとめと次へのアクション

「名古屋市内企業再投資促進補助金」は、名古屋市で事業を継続してきた企業にとって、未来への大きな飛躍を可能にする強力な支援策です。最後に、この制度を活用するための重要なポイントを再確認しましょう。

  • 対象の確認: まず自社が「市内立地20年以上」の要件を満たすか確認する。
  • 計画の策定: 投資規模や雇用要件を満たす、具体的で実現可能な事業計画を練る。
  • 事前相談の予約: 計画の骨子が固まったら、すぐに名古屋市の担当課へ連絡し、事前相談のアポイントを取る。

大規模な投資には、周到な準備が不可欠です。この機会を最大限に活用し、貴社のさらなる発展を実現するために、まずは第一歩として下記問い合わせ先へのご連絡から始めてみてはいかがでしょうか。

お問い合わせ先

名古屋市経済局 イノベーション推進部 産業立地交流課
電話番号: 052-972-2423
ファクス番号: 052-972-4135
Eメール: a2423@keizai.city.nagoya.lg.jp
公式サイト: https://www.city.nagoya.jp/keizai/page/0000173792.html