詳細情報
若くしてがんと診断され、人生の最終段階(ターミナルケア)をどこで、どのように過ごすか。多くの方が「住み慣れた自宅で、家族と、自分らしく穏やかに過ごしたい」と願うのではないでしょうか。しかし、在宅での療養生活には、訪問介護サービスや福祉用具の利用など、経済的な負担が伴うことも事実です。特に、公的な介護保険の対象とならない40歳未満の世代にとっては、その負担は大きな課題となり得ます。
そんな不安を抱える毛呂山町在住の18歳から39歳までの方とそのご家族のために、令和7年4月1日から新しい支援制度「毛呂山町若年がん患者ターミナルケア在宅療養生活支援事業」がスタートします。この制度は、在宅療養にかかる費用の一部を助成し、安心して自分らしい生活を送れるようサポートするものです。
この記事では、月最大7.2万円の助成を受けられるこの新しい制度について、対象となる方、助成内容、申請方法などを、どこよりも詳しく、そして分かりやすく解説します。
① 毛呂山町若年がん患者在宅療養支援事業の概要
本事業は、若年の末期がん患者の方が、住み慣れたご自宅で尊厳を保ちながら、希望する療養生活を送れるように経済的な支援を行うことを目的としています。まずは制度の全体像を把握しましょう。
| 制度概要 | |
|---|---|
| 正式名称 | 毛呂山町若年がん患者ターミナルケア在宅療養生活支援事業 |
| 実施組織 | 毛呂山町(担当窓口:保健センター) |
| 開始日 | 令和7年4月1日 |
| 目的 | 若年の末期がん患者が住み慣れた自宅で安心して自分らしい生活を送れるよう、在宅療養にかかる費用の一部を助成する。 |
| 背景(AYA世代の課題) | AYA世代(15歳~39歳)のがん患者は、就学、就労、結婚など様々なライフイベントの時期と治療が重なります。また、40歳未満は介護保険の対象外であるため、在宅での介護サービスを利用する際の経済的負担が大きくなるという課題がありました。この制度は、その隙間を埋める重要な支援策です。 |
② 助成金額・補助率について
この制度の最大のポイントは、経済的支援の具体的な内容です。助成額は、対象となるサービス利用料や購入費の9割が基本となりますが、上限額が設定されています。以下の表で詳しく見ていきましょう。
| 助成対象 | 補助率 | 上限額 |
|---|---|---|
| 1. 訪問介護、訪問入浴介護、福祉用具貸与 | 対象費用の9割 | 合わせて月額72,000円 |
| 2. 福祉用具購入 | 一人当たり90,000円 | |
| 3. 意見書作成料 | 実費 | 上限5,000円 |
具体的な計算例
- 例1:1ヶ月の訪問介護利用料が60,000円だった場合
60,000円 × 90% = 54,000円が助成されます。(月額上限72,000円の範囲内) - 例2:1ヶ月の福祉用具貸与が80,000円、訪問入浴が20,000円で合計100,000円利用した場合
利用料の9割は90,000円ですが、月額上限が72,000円のため、助成額は72,000円となります。 - 例3:12万円の簡易浴槽を購入した場合
購入費の9割は108,000円ですが、購入費の上限が90,000円のため、助成額は90,000円となります。
③ 対象者・利用条件
この制度を利用するためには、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。ご自身が対象となるか、しっかりと確認しましょう。
- 1. 年齢・住所要件:
毛呂山町に住民登録のある18歳以上40歳未満の方。 - 2. 病状・療養要件:
がん患者であり、医師が医学的知見に基づき回復の見込みがない状態(ターミナル期)に至ったと判断された方で、在宅での療養生活に支援や介護が必要な方。 - 3. 他制度との関係:
介護保険や障害福祉サービスなど、他の制度で同等の補助や給付を受けることができない方。
【ポイント】40歳未満の方は、原則として介護保険の対象外です。そのため、在宅で介護サービスが必要になった場合、この制度が非常に重要な支えとなります。ご自身の状況が対象になるか不明な場合は、まずは保健センターへ相談することをお勧めします。
④ 補助対象となるサービス・経費
助成の対象となるのは、在宅療養を支えるための具体的なサービスや福祉用具です。どのようなものが対象になるのか、一覧で確認しましょう。
対象サービス・用具一覧
- 訪問介護:身体介護、生活援助、通院等のための乗降介助など
- 訪問入浴介護:自宅の浴槽での入浴が困難な場合に、専門スタッフが浴槽を持ち込み入浴を介助するサービス
- 福祉用具の貸与:
- 車いす、車いす付属品
- 特殊寝台、特殊寝台付属品
- 体位変換機、床ずれ防止用具
- 歩行器、歩行補助つえ
- 手すり、スロープ(いずれも工事を伴わないもの)
- 移動用リフト(つり具部分を除く)
- 自動排泄処理装置
- 福祉用具の購入:
- 自動排泄処理装置の交換可能部品
- 腰掛便座
- 入浴補助用具
- 簡易浴槽
- 移動用リフト(つり具部分)
対象外となる経費の例
一方で、以下のような費用は助成の対象外となりますのでご注意ください。
- 医療費(診察料、治療費、薬剤費など)
- 入院費用
- 食費、光熱費、家賃などの日常生活費
- 公的医療保険や他の公的制度で給付対象となる費用
- 対象品目以外の福祉用具や介護用品
⑤ 申請方法・手順(ステップ・バイ・ステップ解説)
制度の利用は、申請から助成金の受け取りまで、いくつかのステップを踏む必要があります。慌てずに一つずつ進められるよう、流れを詳しく解説します。
ステップ1:利用申請
まず、サービスの利用を開始する前に、町へ利用申請を行います。以下の書類を毛呂山町保健センターへ提出してください。
- 毛呂山町若年がん患者ターミナルケア在宅療養生活支援事業意見書(様式1号):主治医に作成を依頼します。
- 毛呂山町若年がん患者ターミナルケア在宅療養生活支援事業利用申請書(様式2号)
- 申請者と利用者の本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
※申請書類は保健センターで受け取るか、毛呂山町の公式ウェブサイトからダウンロードできます。
ステップ2:利用決定の通知
提出された申請内容を町が審査し、利用が決定されると「決定通知書(様式3)」が郵送で届きます。
ステップ3:サービスの利用と支払い
決定通知書を受け取ったら、ご自身でサービス提供事業者と契約し、サービスの利用を開始します。利用料は、一旦全額を事業者に支払います。その際、必ず「領収書」と「利用サービス内容がわかる明細書」を発行してもらい、大切に保管してください。
ステップ4:助成金の交付申請(請求)
サービス利用料を支払った後、町へ助成金の請求を行います。以下の書類を保健センターへ提出してください。
- 毛呂山町若年がん患者ターミナルケア在宅療養生活支援事業助成金交付申請書兼請求書(様式7号)
- サービス提供事業者が発行した領収書(原本)
- サービス提供事業者が発行した利用サービスに関する明細書(原本)
- 意見書作成料の領収書(原本)(該当する場合)
- 振込先が確認できるもの(通帳の写しなど)
【重要】4月から翌年3月までのサービス利用料は、原則として同年度内(3月中)に請求する必要があります。請求が遅れる場合は、必ず事前に保健センターへ連絡してください。
ステップ5:助成金の振込
請求内容が審査され、適当と認められると、指定した口座に助成金が振り込まれます。
⑥ スムーズに利用するためのポイント
この制度は、要件を満たす方を支援するためのものであり、競争して採択を勝ち取るものではありません。しかし、手続きを円滑に進めるためにはいくつかのポイントがあります。
- 早めに相談を開始する:「対象になるかも?」と思ったら、まずは毛呂山町保健センターに電話で相談してみましょう。必要な手続きや書類について事前に確認できます。
- 主治医との連携を密にする:本制度の利用には、医師による「意見書」が不可欠です。在宅療養の希望を主治医に伝え、制度を利用したい旨を相談し、スムーズな書類作成に協力してもらいましょう。
- 書類の不備をなくす:申請書や請求書の記入漏れ、押印忘れ、添付書類の不足などがないか、提出前に何度も確認しましょう。不備があると手続きが遅れる原因になります。
- 領収書・明細書を確実に保管する:助成金請求の根拠となる重要な書類です。サービスを利用するたびに必ず発行してもらい、ファイルなどで整理して保管しましょう。
⑦ よくある質問(FAQ)
Q1. 申請は本人以外でもできますか?
A1. はい、ご家族など代理の方による申請も可能です。その際は、申請者(代理の方)と利用者(ご本人)両方の本人確認書類をご提示いただく必要があります。
Q2. 40歳の誕生日を迎えたら、すぐに利用できなくなりますか?
A2. この制度は40歳未満の方が対象です。40歳になると介護保険の第2号被保険者となり、要介護認定を受けることで介護保険サービスを利用できる可能性があります。制度の切り替えについては、事前に保健センターやケアマネジャーにご相談ください。
Q3. 助成金の申請(請求)は、毎月行う必要がありますか?
A3. 毎月でなくても、数ヶ月分をまとめて請求することも可能です。ただし、4月から翌年3月までの利用分は、その年度の3月中までに請求するのが原則です。請求忘れがないようご注意ください。
Q4. 埼玉県内の他の市町村でも同様の制度はありますか?
A4. はい、埼玉県内の多くの市町村で同様のAYA世代向け在宅療養支援制度が実施されています。助成内容や条件は市町村によって異なる場合がありますので、詳しくはお住まいの自治体にご確認ください。埼玉県のウェブサイトにも一覧が掲載されています。
Q5. 生活保護を受けていますが、利用できますか?
A5. 利用できる可能性がありますが、助成額の調整など通常と異なる場合があります。申請前に必ず保健センターまたは担当のケースワーカーにご相談ください。
⑧ まとめと相談窓口
今回は、令和7年4月1日から始まる「毛呂山町若年がん患者ターミナルケア在宅療養生活支援事業」について詳しく解説しました。
重要ポイントの再確認
- 対象者:毛呂山町在住の18歳~39歳の末期がん患者の方
- 助成内容:在宅サービス・福祉用具貸与(月最大7.2万円)、福祉用具購入(最大9万円)などの費用を9割助成
- 手続き:①利用申請 → ②決定 → ③サービス利用・支払 → ④助成金請求 の流れ
- 相談窓口:毛呂山町保健センター
この制度は、若くしてがんと向き合う患者さんとそのご家族が、経済的な不安を少しでも和らげ、住み慣れた場所で大切な時間を穏やかに過ごすための大きな支えとなります。ご本人やご家族だけで抱え込まず、まずは専門の窓口に相談することが第一歩です。
対象になるかもしれない、話だけでも聞いてみたいと思われた方は、下記の問い合わせ先までお気軽にご連絡ください。
お問い合わせ・申請窓口
毛呂山町保健センター
〒350-0436 埼玉県入間郡毛呂山町川角305番地1
電話番号:049-294-5511
ファクス番号:049-295-5850