詳細情報
「24時間、子どものそばを離れられない」「少しだけでいいから、自分の時間がほしい…」医療的ケアが必要なお子さんを育てるご家族は、絶え間ない緊張とケアの中で、心身ともに大きな負担を抱えていることが少なくありません。実際に、厚生労働省の調査では、多くのご家族が休息の必要性を感じているというデータもあります。そんな江戸川区在住のご家族のために、区が提供する心強いサポートが「医療的ケア児養育者支援事業」です。この制度は、ご家族が休息を取ったり、自分の時間を持ったりするために、一時的にお子さんを病院で預かってもらえる「レスパイトケア」を提供します。この記事では、江戸川区の医療的ケア児養育者支援事業について、対象者や利用方法、申請の流れまで、どこよりも分かりやすく徹底解説します。この制度を活用し、ご家族の心と身体の健康を守りながら、お子さんとの大切な時間をより豊かに過ごすための一歩を踏み出しましょう。
この制度のポイント
- 江戸川区が委託した病院でお子さんを一時的に預かるレスパイト入院制度
- 年間最大14日間、1回あたり最大6泊7日まで利用可能
- 保護者の休息、リフレッシュ、きょうだい児との時間確保などが目的
- 医療的ケアの知識や技術を学ぶ訓練・相談も受けられる
医療的ケア児養育者支援事業とは?
制度の目的と背景
この事業は、日常的に医療的ケアが必要なお子さん(医療的ケア児)の健康を守るとともに、日々介護を行っているご家族の身体的・精神的な負担を軽減することを目的としています。医療技術の進歩により、在宅で高度な医療的ケアを受けながら生活するお子さんが増えています。しかし、そのケアは24時間365日続くことが多く、ご家族、特に主な介護者である保護者の方の休息時間が確保しにくいのが現状です。この事業は、ご家族が安心して休息を取れる時間(レスパイト)を提供することで、介護を継続していくための活力を養い、家族全体の生活の質(QOL)を向上させることを目指しています。
実施組織
この事業は、東京都江戸川区が主体となって実施しています。実際のサービス提供は、江戸川区と委託契約を結んだ東京都内の病院が行います。申請や相談の窓口は、江戸川区役所の障害者福祉課が担当しています。
支援内容と利用者負担
この事業は金銭的な給付ではなく、サービスを直接提供する「現物支給」の形をとります。具体的な支援内容と、利用者が負担する必要がある費用について解説します。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 支援内容 |
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| 利用日数 |
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| 利用者負担(自己負担) |
(注)事業の利用自体に料金はかかりませんが、上記の実費は自己負担となります。 |
対象者・利用条件
この事業を利用するには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。ただし、要件を満たしていても、お子さんの健康状態や病院の受け入れ状況によっては利用できない場合があるため、事前の相談が重要です。
- 要件1: 江戸川区民であり、年齢が15歳未満であること。
- 要件2: 身体状況が寝たきりであること。
- 要件3: 下記のいずれかの医療的ケアを必要とすること。
対象となる医療的ケアの詳細
要件3で定められている具体的な医療的ケアは以下の通りです。いずれか一つ以上に該当する必要があります。
- ア. 人工呼吸器管理(カフマシン、NIPPV、CPAP等を含む)
- イ. 気管内挿管又は気管切開
- ウ. 鼻咽頭エアウェイ
- エ. 酸素吸入
- オ. 1日につき6回以上の頻回の吸引
- カ. 1日につき6回以上又は継続したネブライザーの使用
- キ. 中心静脈栄養(IVH)
- ク. 経管栄養(経鼻・胃ろう含む)
- ケ. 腸ろう・腸管栄養
- コ. 継続する透析(腹膜灌流を含む)
- サ. 1日につき3回以上の定期導尿(人工膀胱を含む)
- シ. 人工肛門
申請方法と利用までの流れ
利用開始までには、いくつかのステップがあります。スムーズに進めるために、全体の流れを把握しておきましょう。
Step 1:相談(利用希望月の3か月前から)
まずは、江戸川区の担当窓口に電話で相談します。この段階で、お子さんの状況や利用希望日などを伝えます。相談の受付は、利用したい月の3か月前の1日から開始されます(1日が閉庁日の場合は翌開庁日)。早めに相談することで、その後の手続きがスムーズになります。
【相談先】江戸川区福祉部障害者福祉課権利擁護係 電話:03-5662-1993
Step 2:申請書類の提出
相談後、必要な申請書類を準備して提出します。書類は区のホームページからダウンロードするか、窓口で受け取れます。郵送での取り寄せも可能です。
【必要書類】
- 医療的ケア児養育者支援事業申請書
- 診療情報提供書(江戸川区宛) ※かかりつけ医に作成を依頼
- 本人状況票
申請は、窓口持参、郵送のほか、電子申請(ぴったりサービス)も利用できます。
Step 3:利用決定と病院への受診予約
区での審査後、利用が決定すると「江戸川区医療的ケア児養育者支援事業利用決定通知書」が自宅に届きます。通知書を受け取ったら、記載されている方法に従って、ご自身で病院へ受診の予約をしてください。
予約後、事前に病院へ「診療情報提供書(病院宛)」を送付する必要があります。この書類もかかりつけ医に作成を依頼してください。初めて利用する場合や、お子さんの状況に変化があった場合は、事前の受診が必要です。
利用決定のポイントと注意点
かかりつけ医との連携が鍵
この事業の利用には、かかりつけ医が作成する「診療情報提供書」が2種類(区宛と病院宛)必要です。お子さんの日頃の健康状態や医療的ケアの内容を正確に把握しているかかりつけ医との連携が不可欠です。事業の利用を検討し始めたら、早めに医師に相談し、書類作成の協力をお願いしておくとスムーズです。
スケジュールには余裕を持つ
相談から実際の利用までには、書類の準備、区の審査、病院の予約など、複数のステップがあり、時間がかかります。特に、医師に書類を依頼してから作成してもらうまでにも日数を要することがあります。利用したい時期が決まっている場合は、受付開始(利用月の3か月前)と同時に相談を開始するなど、余裕を持ったスケジュールで進めることをお勧めします。
重要:書類の準備について
申請に必要な書類は、江戸川区の公式サイトからダウンロードできます。記入例も用意されているので、参考にしながら正確に記入しましょう。書類に不備があると、手続きが遅れる原因になりますので、提出前によく確認してください。
よくある質問(FAQ)
- Q1. 緊急の場合でもすぐに利用できますか?
- A1. この事業は緊急利用を想定したものではありません。利用には事前の相談、申請、審査、病院の予約が必要です。急な預け先が必要な場合は、他のサービス(障害福祉サービスの短期入所など)の利用も併せてご検討ください。まずは担当窓口にご相談ください。
- Q2. 預かってくれる病院は選べますか?
- A2. サービスを提供する病院は、江戸川区が委託契約を結んだ東京都内の特定の病院となります。利用決定通知書に記載された病院の中から、空き状況に応じて調整される形になります。ご自身で自由に病院を選べるわけではありません。
- Q3. 利用中に子どもの体調が急変した場合はどうなりますか?
- A3. 病院でお預かりするため、医師や看護師が常駐しており、医療的な管理下で安全に過ごせます。万が一体調が急変した際も、迅速に適切な医療処置が行われます。もちろん、緊急時には保護者の方へ速やかに連絡が入ります。
- Q4. 年間の利用日数14日を使い切らなかった場合、翌年に繰り越せますか?
- A4. 利用日数の繰り越しはできません。年度ごとにリセットされますので、計画的にご利用ください。
- Q5. 申請すれば必ず利用できますか?
- A5. 申請内容を審査した上で利用の可否が決定されます。また、利用が決定しても、委託先病院のベッドの空き状況によっては、ご希望の日に利用できない場合もあります。そのため、複数の希望日を考えておくと良いでしょう。
まとめ:まずは一歩、相談から始めましょう
江戸川区の「医療的ケア児養育者支援事業」は、日々お子さんのケアに奮闘されているご家族にとって、心と身体を休めるための貴重な機会を提供する制度です。介護者が休息を取ることは、決して贅沢なことではありません。むしろ、お子さんとのより良い関係を築き、長期的な在宅療養生活を続けるために不可欠なことです。
「うちの子は対象になるのかな?」「手続きが難しそう…」と感じるかもしれませんが、まずは江戸川区の窓口に電話で相談することから始めてみませんか。専門の職員が丁寧に説明し、あなたの状況に寄り添ってくれます。この制度を上手に活用して、ご自身の時間を取り戻し、明日への活力を充電してください。