令和6年能登半島地震をはじめ、近年、台風や豪雨などの自然災害は激甚化し、多くの事業者が深刻な被害を受けています。特に、地域経済の基盤を支える小規模事業者にとって、事業の再建は喫緊の課題です。この記事では、そのような困難な状況にある事業者の皆様を力強く支援する「小規模事業者持続化補助金(災害支援枠)」について、制度の概要から対象経費、申請のポイントまで、専門家が徹底的に解説します。
小規模事業者持続化補助金(災害支援枠)とは?
小規模事業者持続化補助金(災害支援枠)は、台風や地震などの自然災害によって事業に被害を受けた小規模事業者が、事業再建に向けた計画を自ら作成し、その計画に基づいて行う取り組みに要する経費の一部を国が補助する制度です。生産設備や販売拠点の損壊、顧客や販路の喪失といった困難な状況から一日も早く立ち直り、持続的な経営を再開するための「未来への投資」を後押しすることを目的としています。
この制度のポイント
- 事業再建への強い味方: 被災した事業用資産の修繕・購入から、新たな販路開拓の取り組みまで幅広く支援。
- 商工会・商工会議所が伴走支援: 専門家の助言を受けながら、実効性の高い事業再建計画を作成できます。
- 遡及適用も可能: 令和6年能登半島地震のケースでは、発災日以降に発生した経費も特例で対象となる場合があります。
補助金の概要(令和6年能登半島地震の例)
ここでは、直近の事例である「令和6年能登半島地震」の災害支援枠を基に、制度の具体的な内容を見ていきましょう。※公募回によって内容が異なる場合があるため、必ず最新の公募要領をご確認ください。
項目 | 内容 |
---|---|
対象者 | 令和6年能登半島地震による被災区域(石川県、富山県、福井県、新潟県)に所在する小規模事業者 |
補助上限額 | 公募要領をご確認ください。(過去の災害支援枠では100万円~200万円の事例あり) |
補助率 | 補助対象経費の2/3以内 |
申請受付期間 | (例)3次受付締切:令和6年8月27日 ※最新の公募情報を必ずご確認ください。 |
実施機関 | 全国商工会連合会 |
補助対象経費の詳細
事業再建に必要な幅広い経費が対象となります。主な経費区分は以下の通りです。
- 機械装置等費: 被災した機械の修繕や、事業再建に必要な新たな機械の購入費用。
- 広報費: 事業再開を知らせるチラシや、新たな顧客を獲得するためのウェブ広告費用。
- ウェブサイト関連費: ECサイトの構築や、被災したホームページの改修費用。
- 展示会等出展費: 新たな販路を求めるための展示会への出展料や関連費用。
- 委託・外注費: 被災した店舗の改装工事や、専門家への相談費用。
- 設備処分費: 事業再建のために不要となった死蔵設備の廃棄費用。
- 車両購入費: 事業に供する車両が被災した場合の購入費用(特例)。
申請から補助金受給までの流れ
申請プロセスは以下のステップで進みます。計画的な準備が重要です。
- 1事業再建計画の策定と相談
どのような取り組みで事業を再建するかを具体的に計画し、地域の商工会・商工会議所に相談します。 - 2申請書類の提出
公募要領に従い、経営計画書や補助事業計画書などの必要書類を揃えて事務局に提出します。 - 3採択・交付決定
審査を経て採択されると、「交付決定通知書」が届きます。これが事業開始の合図です。 - 4補助事業の実施
交付決定後、計画に沿って発注、契約、支払い等を行います。 - 5実績報告書の提出
事業完了後、期限内に経費の証拠書類を添えて実績報告書を提出します。 - 6補助金額の確定・請求
報告書の内容が検査され、補助金額が確定します。その後、精算払請求書を提出します。 - 7補助金の受給
指定した口座に補助金が振り込まれます。
申請の重要ポイントと注意点
⚠️ 必ず守るべき経費支出の原則
- 交付決定日以降の発注・契約: 原則として、交付決定日より前に発注・契約した経費は対象外です。(※能登半島地震の特例を除く)
- 支払いは銀行振込で: 経費の支払いは原則「銀行振込」です。現金払いは例外的なケースを除き認められません。
- 相見積もりの取得: 税込100万円を超える取引では、原則として2者以上から見積もりを取得する必要があります。
- 証拠書類の保管: 見積書、契約書、請求書、振込控など、すべての取引書類を整理・保管することが必須です。
過去の災害支援事例:令和元年台風第19号
このような災害支援枠は、過去の大規模災害時にも設けられてきました。例えば、令和元年台風第19号では、千葉県を含む広範囲な地域が甚大な被害を受けました。この際も「持続化補助金 台風19号型」が公募され、多くの小規模事業者が事業再建のために活用しました。このことからも、本制度が災害からの復興に不可欠な支援策として定着していることがわかります。
まとめ:未来への一歩を踏み出すために
自然災害からの復興は、決して平坦な道のりではありません。しかし、「小規模事業者持続化補助金(災害支援枠)」は、その困難な道を歩む事業者の皆様にとって、強力な羅針盤となり得ます。この制度を最大限に活用し、事業再建、そして更なる発展への一歩を踏み出してください。
申請にあたっては、地域の商工会・商工会議所が親身に相談に乗ってくれます。一人で悩まず、まずは専門家に相談することから始めましょう。