「仕事の残業で子どものお迎えが間に合わない…」「急な病気で、家事や育児がままならない…」「就職活動に集中したいけど、子どもの面倒を見てくれる人がいない…」
ひとり親家庭で頑張るあなたへ。そんな悩みを抱えていませんか?実は、国や自治体が提供する「ひとり親家庭等日常生活支援事業」という、心強いサポート制度があります。この制度を活用すれば、一時的に家事や育児を手伝ってくれる家庭生活支援員(ヘルパー)を、無料または非常に安い料金で派遣してもらえるのです。この記事では、この便利な制度の対象者、支援内容、利用料金、申請方法から注意点まで、具体例を交えながら誰にでもわかるように徹底解説します。あなたの生活の負担を少しでも軽くするための、大切な情報がここにあります。
この記事のポイント
✓ ひとり親家庭が格安(または無料)でヘルパーを頼める制度の全貌がわかる
✓ どんな人が対象で、どんなサービスを受けられるのかが具体的にわかる
✓ 自治体による料金やサービスの違い(横浜市、大阪市など)が比較できる
✓ 申請から利用開始までの具体的なステップと必要書類がわかる
① ひとり親家庭等日常生活支援事業の概要
制度の目的と背景
この事業は、ひとり親家庭や寡婦の方が、仕事や病気、就職活動など、さまざまな理由で一時的に日常生活に支障が出た場合に、生活の安定と自立を支援することを目的としています。国(こども家庭庁)が制度の骨子を定めていますが、実際の運営は各都道府県や市区町村が行っています。そのため、お住まいの地域によってサービス内容や利用料金、申請方法が異なる点に注意が必要です。
実施組織
- 国(所管): こども家庭庁
- 実施主体: 各都道府県、市区町村
申請や相談は、お住まいの市区町村の役所(子育て支援課、こども家庭課など)が窓口となります。
② 利用料金(自己負担額)はいくら?
この制度の最大の魅力は、利用料金が非常に安い、あるいは無料である点です。ただし、料金体系は自治体によって大きく異なります。ここでは代表的な自治体の例を見てみましょう。
重要: 必ずお住まいの自治体の最新情報をご確認ください。下記はあくまで一例です。
| 自治体 | 利用料金(1時間あたり) | 備考 |
|---|---|---|
| 横浜市 | 無料 | 利用証明書の交付を受けた方全員が無料。 |
| 滋賀県 | 無料 | 支援員の交通費等の実費は別途負担。 |
| 大阪市・大分市 | ・生活保護/市民税非課税世帯: 0円 ・児童扶養手当支給水準世帯: 70円~150円 ・上記以外の世帯: 150円~300円 |
所得状況に応じて負担額が変わります。生活援助と子育て支援で料金が異なる場合があります。 |
このように、横浜市や滋賀県のように完全に無料で利用できる自治体もあれば、大阪市のように所得に応じて段階的な料金設定がされている自治体もあります。それでも、民間のベビーシッターや家事代行サービスと比較すると、破格の安さであることがわかります。
③ 対象者・利用できる条件
この制度を利用できるのは、以下の条件に当てはまる方です。
対象となる方
- 母子家庭の母・父子家庭の父: 配偶者がいない状態で、20歳未満の児童を扶養している方。
- 寡婦: かつて母子家庭の母であった方で、現在も配偶者がいない方。
- 離婚調停中の方など: 横浜市のように、離婚調停中で配偶者と別居しており、20歳未満の児童を扶養している方も対象となる場合があります。
利用できる事由(どんな時に使える?)
このサービスは、一時的に支援が必要になった場合に利用できます。恒常的な利用は原則として対象外です。
- 自立促進のため: 技能習得のための通学、就職活動など。
- 社会的な理由: 親自身の病気、家族の看護、冠婚葬祭、出張、学校等の公的行事への参加など。
- 生活環境の激変: 離婚や死別により、ひとり親家庭になって間もない時期で、日常生活を営むのに支障がある場合。
- 残業など: 小学生以下の子どもがいて、仕事の残業で帰宅が遅くなる場合(定期利用が可能な自治体もあり)。
④ 支援内容(何をお願いできる?)
派遣される家庭生活支援員(ヘルパー)は、大きく分けて「生活援助」と「子育て支援」の2種類のサポートを提供します。
| 支援の種類 | 具体的な内容 | 支援場所 |
|---|---|---|
| 生活援助 | 食事の世話、住居の掃除、身の回りの世話、生活必需品の買い物、医療機関との連絡など | 利用者の自宅 |
| 子育て支援 | 乳幼児の保育(授乳、おむつ交換、沐浴介助など)、児童の生活指導など | 利用者の自宅、支援員の自宅、職業訓練校など |
注意点:できないこと
・保育園や学校への送迎のみの利用はできない場合が多いです。
・大掃除や庭の手入れなど、日常的な家事の範囲を超える作業は対象外です。
・子どもの安全確保が難しい状況での支援(見守りしながらの調理など)は断られることがあります。
⑤ 申請方法・利用開始までの手順
利用するには、事前の申請と登録が必要です。いざという時にすぐ使えるよう、あらかじめ登録だけ済ませておくことをお勧めします。ここでは横浜市の例を参考に、一般的な流れを解説します。
ステップ1:自治体へ利用申請書を提出
まず、お住まいの市区町村の窓口に「利用申請書(証明書交付申請書など名称は様々)」と必要書類を提出します。郵送で受け付けている自治体も多いです。
ステップ2:利用証明書の発行
提出書類の審査後、問題がなければ自治体から「利用証明書」が郵送で届きます。届くまでには2〜3週間程度かかることが多いようです。
ステップ3:派遣事業者へ登録申し込み
証明書が届いたら、自治体が委託している派遣事業者(社会福祉法人やNPO、民間企業など)の中から1社を選び、登録の申し込みをします。事業者の一覧は自治体のウェブサイトや案内で確認できます。
ステップ4:支援開始
事業者との契約が完了したら、実際に支援が必要な日時や内容を相談し、ヘルパーを派遣してもらいます。希望日時に必ず派遣してもらえるとは限らないため、早めに相談することが大切です。
必要書類の例
- 証明書交付申請書(自治体の様式)
- 本人確認書類のコピー(マイナンバーカード、運転免許証など)
- 世帯全員の住民票の写し(マイナンバー記載のものが必要な場合あり)
- ひとり親家庭であることを証明する書類(児童扶養手当証書のコピー、戸籍全部事項証明書など)
- 離婚調停中の場合は、調停期日呼出状のコピーなど
- その他、自治体が必要と認める書類
⑥ スムーズに利用するためのポイント
この制度を賢く活用するためには、いくつかのポイントがあります。
ポイント1:緊急時に備え、事前に登録を済ませておく
申請から利用開始まで数週間かかるため、「明日、急に必要になった」というケースには対応できません。体調が良い時や時間に余裕がある時に、あらかじめ自治体への申請と事業者への登録まで済ませておくと、いざという時にスムーズに利用できます。
ポイント2:利用期間と上限時間を把握する
この事業はあくまで「一時的な支援」です。自治体ごとに利用できる期間や時間の上限が定められています。
- 横浜市の例: 概ね6か月まで。月10日、年度内240時間まで。
- 大分市の例: 原則年間20時間まで。
- 滋賀県の例: 原則一派遣事由につき10日以内かつ月40時間以内。
長期的な支援が必要な場合は、他の福祉サービス(ファミリー・サポート・センターなど)との併用も検討しましょう。
ポイント3:証明書の更新手続きを忘れない
利用証明書には有効期限(例:申請した年の12月31日まで)があります。翌年も継続して利用する可能性がある場合は、指定された期間内(例:11月中)に更新手続きを行う必要があります。忘れると利用できなくなるため注意しましょう。
⑦ よくある質問(FAQ)
Q1. 保育園への送迎だけでもお願いできますか?
A1. 多くの自治体では、送迎のみの利用はできません。送迎の前後に自宅での保育や家事援助などを組み合わせる形で利用する必要があります。詳細は各自治体や事業者にご確認ください。
Q2. 仕事の残業で毎週利用したいのですが、定期的な利用は可能ですか?
A2. 横浜市のように、小学生以下のお子様がいる方が仕事で残業する場合に限り、定期的な利用を認めている自治体もあります。ただし、利用時間の上限(月10日、年度240時間など)は適用されます。お住まいの自治体のルールをご確認ください。
Q3. 利用期間の6か月を超えて支援が必要な場合はどうなりますか?
A3. 原則として利用は終了となりますが、他の公的サービスへの移行期間中など、やむを得ない事情がある場合は延長が認められることもあります。まずは自治体の担当窓口に相談してみましょう。
Q4. 証明書が発行されれば、必ずヘルパーを派遣してもらえますか?
A4. 証明書はあくまで「事業を利用する資格がある」ことを証明するものです。実際の派遣は、事業者のヘルパーの空き状況によります。希望の日時に必ず派遣されるとは限らないため、複数の日を伝えたり、早めに相談したりすることが重要です。
Q5. 自分の住んでいる市町村でこの制度が実施されているか、どうすればわかりますか?
A5. お住まいの市区町村のウェブサイトで「ひとり親家庭等日常生活支援事業」と検索するか、役所の子育て支援課やこども家庭課などの担当窓口に直接電話で問い合わせるのが最も確実です。
⑧ まとめ:一人で抱え込まず、公的サポートを賢く活用しよう
「ひとり親家庭等日常生活支援事業」は、ひとり親家庭が直面する「ちょっと困った」を解決してくれる、非常に心強い制度です。最後に重要なポイントをまとめます。
- 病気や就職活動など、一時的に困った時に家事や育児のヘルパーを頼める。
- 利用料金は無料または格安。ただし自治体によって大きく異なる。
- 利用するには事前の申請・登録が必要。いざという時のために早めに手続きを。
- 利用期間や時間には上限があるため、計画的な利用が大切。
仕事、家事、育児とすべてを一人で背負い込むのは大変です。利用できる制度は積極的に活用し、心と時間に少しでもゆとりを持つことが、あなた自身とお子さんの笑顔につながります。
次の一歩:
まずはお住まいの市区町村のウェブサイトを確認するか、役所の担当窓口に「ひとり親家庭等日常生活支援事業について聞きたいのですが」と電話で問い合わせてみましょう。そこから、あなたの生活を支える新しい道が開けるはずです。