中級

【2025年】保育所ICT化補助金(業務効率化推進事業)とは?最大130万円!申請方法を解説

0回閲覧

保育現場では、保育士の業務負担の大きさが長年の課題となっています。手書きの指導計画や連絡帳、煩雑な登降園管理など、子どもと向き合う以外の事務作業に多くの時間が割かれているのが現状です。この課題を解決し、保育士がより専門性を発揮できる環境を整えるため、国は「保育所等におけるICT化推進等事業」を推進しています。この補助金を活用すれば、最大130万円の支援を受けながら、保育業務支援システムや関連機器を導入し、劇的な業務効率化を実現できます。この記事では、保育所のICT化を力強く後押しするこの補助金について、対象者、金額、申請方法から採択のポイントまで、どこよりも詳しく、そして分かりやすく解説します。

この記事のポイント
✓ 「保育所等におけるICT化推進等事業」の全体像がわかる
✓ 補助金の対象となる施設や経費、具体的な補助金額がわかる
✓ 申請から受給までの具体的な流れをステップバイステップで理解できる
✓ 申請書作成のコツや採択されるためのポイントがわかる

保育所等におけるICT化推進等事業の概要

まずは、この補助金制度の基本的な情報から確認していきましょう。

正式名称と実施組織

  • 正式名称: 保育対策総合支援事業費補助金(保育所等におけるICT化推進等事業)
  • 実施組織: こども家庭庁(実際の窓口は各都道府県・市区町村)

目的・背景

この事業の主な目的は、保育の周辺業務や補助業務にICT(情報通信技術)を活用した業務システムを導入することで、保育士の事務作業などの業務負担を大幅に軽減することです。これにより、保育士が子どもたちと向き合う時間を増やし、保育の質の向上を図ります。また、働きやすい環境を整備することで、保育人材の定着と確保を目指すことも重要な目的とされています。

令和6年度の補正予算では28億円が計上されており、国を挙げて保育現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進していく強い意志がうかがえます。

補助金額・補助率

この補助金の最大の魅力は、手厚い金額設定です。導入するシステムの機能数や、パソコン・タブレットなどの端末を併せて購入するかどうかで補助基準額が変わります。

保育業務支援システムの導入

補助対象となる主な機能は以下の4つです。

  • 計画・記録: 指導計画や保育日誌の作成支援
  • 登降園管理: 園児の登園・降園時間の打刻や管理
  • 保護者連絡: 保護者へのお知らせ一斉配信や個別連絡
  • キャッシュレス決済: 延長保育料や教材費などの集金業務の効率化

これらの機能をいくつ導入するか、また端末購入の有無によって補助基準額が設定されています。

導入する機能数 補助基準額(端末購入あり) 補助基準額(端末購入なし)
1機能 70万円 20万円
2機能 90万円 40万円
3機能 110万円 60万円
4機能 130万円 80万円

注意点: 原則として、この補助金の利用は1施設1回限りです。ただし、過去に登降園管理システム等で補助金を利用した施設でも、新たにキャッシュレス決済システムを導入する場合に限り、再度対象となります。

その他の補助対象事業

業務支援システム以外にも、多様なICT化の取り組みが支援対象となっています。

  • 翻訳機等の購入: 1施設あたり15万円
  • 認可外保育施設における機器導入: 1施設あたり20万円
  • 病児保育事業のICT化: 1施設あたり100万円
  • 児童館のICT化: 1施設あたり50万円
  • 医療的ケア児向けICT機器導入: 1施設あたり20万円
  • こども誰でも通園制度向けICT機器導入: 1施設あたり20万円

補助率について

補助率は、国と自治体、事業者で負担する形が基本です。

  • 基本の負担割合: 国 1/2、市区町村 1/4、事業者 1/4
  • 嵩上げ措置適用時: 国 2/3、市区町村 1/12、事業者 1/4

嵩上げ措置は、自治体がICT関連事業者や保育事業者と連携して「協議会」を設置し、補助金以外の取り組み(研修会など)を行っている場合に適用される可能性があります。これにより、事業者の自己負担をさらに軽減できます。

対象者・条件

この補助金は、幅広い保育施設を対象としています。自施設が対象になるか、しっかり確認しましょう。

対象となる施設

主に以下の施設が対象となりますが、詳細は所在地の自治体にご確認ください。

  • 認可保育所
  • 幼保連携型認定こども園
  • 地域型保育事業(小規模保育、事業所内保育など ※居宅訪問型を除く)
  • 認可外保育施設(事業内容による)
  • 病児保育事業を実施する施設
  • 児童館
  • こども誰でも通園事業を実施する事業所

補助対象経費

補助金の対象となる経費は、ICT化の推進に直接必要な費用です。何が含まれるのかを正確に把握し、見積もりを取得しましょう。

対象となる経費の例

  • システム導入費用: ソフトウェアの購入費、初期設定費用、クラウドサービスの利用料(初年度分など自治体の規定による)
  • 端末購入費用: パソコン、タブレット、スマートフォン、カードリーダーなど、システム利用に必要な機器の購入費
  • インターネット環境整備費用: Wi-Fiルーターの設置やLAN配線工事など、通信環境を整えるための費用
  • その他: 多言語翻訳機の購入費用など

対象外となる経費の例

  • システムの月額利用料や保守費用(自治体により初年度のみ対象の場合あり)
  • 消費税
  • 振込手数料
  • 汎用性が高く、事業に直接関係しないと判断される機器(デジタルカメラ、プリンターなど)
  • 交付決定前に契約・購入したもの

申請方法・手順

申請手続きは各自治体によって異なりますが、一般的な流れは以下の通りです。必ず事前に自治体のホームページを確認するか、担当課に問い合わせましょう。

  1. 情報収集と事前相談: 所在地の市区町村の保育担当課に連絡し、補助金の公募状況、申請期間、要綱などを確認します。
  2. システム選定・見積取得: 複数のICTシステム事業者の製品を比較検討し、自園の課題解決に最適なシステムを選びます。導入するシステムと機器が決まったら、事業者から見積書を取得します。
  3. 事業実施計画書の作成・提出: 自治体の指定する様式で「事業実施計画書」を作成します。なぜICT化が必要か、導入によってどのような効果が見込めるかを具体的に記述します。見積書などの必要書類を添付して、期間内に提出します。
  4. 交付決定通知の受領: 自治体による審査後、採択されると「交付決定通知書」が届きます。この通知を受け取る前に契約や発注を行うと補助対象外になるため、絶対に注意してください。
  5. 事業の実施(契約・導入・支払い): 交付決定後、システム事業者と正式に契約し、システムの導入や機器の購入を進めます。支払いは自治体が定める期間内に完了させる必要があります。
  6. 実績報告書の作成・提出: 事業が完了したら、「実績報告書」を作成します。契約書、領収書、納品書などの証拠書類を添えて、期限内に自治体へ提出します。
  7. 補助金額の確定・交付: 実績報告書の内容が審査され、補助金額が最終的に確定します。その後、指定した口座に補助金が振り込まれます。

必要書類の例

  • 事業実施計画書
  • 収支予算書
  • 導入するシステムの機能や価格がわかる見積書・内訳明細書
  • システムの仕様書やカタログ
  • (実績報告時)契約書、領収書、納品書などの写し

採択のポイント

補助金を確実に受給するためには、申請書類で事業の必要性と効果を明確に伝えることが重要です。

申請書作成のコツ

  • 現状の課題を具体的に示す: 「毎日、全園児分の連絡帳を手書きで記入するのに平均2時間かかっている」「延長保育料の集計と請求書作成に毎月10時間以上を要している」など、具体的な数値を用いて課題を明確にします。
  • 導入後の効果を数値化する: 「システム導入により、連絡帳作成時間が1日30分に短縮され、1.5時間分の時間を子どもとの関わりに充てられる」「キャッシュレス決済で集金業務がゼロになり、保育士の心理的負担も軽減される」など、改善後の姿を具体的に示します。
  • 費用対効果をアピールする: 補助金を活用することで、どれだけ効率的に業務改善が図れるかを説明します。
  • 書類の不備をなくす: 見積書やカタログなど、必要な添付書類がすべて揃っているか、提出前に何度も確認しましょう。

よくある質問(FAQ)

Q1. リース契約は補助対象になりますか?
A1. 自治体の要綱によりますが、対象外となることが多いです。一般的には購入(買い切り)が対象となります。必ず事前に自治体にご確認ください。
Q2. どの保育業務支援システムを選べば良いですか?
A2. 補助金自体は特定のシステムを推奨していません。自園の課題(例:保護者連絡を効率化したい、書類作成を楽にしたい)を洗い出し、複数のシステムを比較検討することが重要です。無料のデモや説明会に参加し、操作性やサポート体制を確認することをおすすめします。
Q3. 申請すれば必ず採択されますか?
A3. 予算には限りがあるため、申請期間の早い段階で予算上限に達する可能性があります。また、書類に不備があったり、事業の必要性が十分に説明できていない場合は不採択となることもあります。公募が開始されたら、早めに準備を進め、丁寧な書類作成を心がけましょう。
Q4. 補助金はいつもらえますか?
A4. 補助金は精算払い(後払い)が原則です。つまり、一度事業者が全額を立て替えて支払い、事業完了後の実績報告と審査を経てから、補助金が振り込まれます。資金繰りには注意が必要です。
Q5. 複数の施設を運営していますが、それぞれで申請できますか?
A5. はい、補助金は施設ごとに適用されるため、運営する各施設で要件を満たせばそれぞれ申請することが可能です。

まとめ・行動喚起

「保育所等におけるICT化推進等事業」は、保育現場の長年の課題である業務負担を軽減し、保育士が子どもたちとより豊かに関わる時間を生み出すための強力な支援策です。最大130万円という手厚い補助を活用することで、これまで導入をためらっていたICTシステムへの投資が現実的なものになります。

この記事を読んで興味を持たれた方は、まず最初の一歩として、ご自身の施設がある市区町村の保育担当課のウェブサイトを確認するか、直接電話で問い合わせてみましょう。自治体ごとに公募期間や申請要件の詳細が異なりますので、最新の正確な情報を得ることが成功への鍵となります。

この機会を最大限に活用し、ICTの力で保育の未来をより明るいものにしていきましょう。