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【2025年】埼玉県の花き農家向け「県産花き生産持続化支援事業」を解説|種苗費・販促費を1/2補助

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埼玉県の気候も年々温暖化が進み、夏の猛暑は花き生産者にとって大きな課題となっています。これまで通りの栽培方法では、品質の維持や安定生産が難しくなっていると感じる方も多いのではないでしょうか。そんな中、埼玉県では温暖化に対応するための新たな挑戦を後押しする「県産花き生産持続化支援事業」を実施しています。この制度は、耐暑性を持つ新しい品種の花きの導入や、その販売促進にかかる費用を補助するものです。未来を見据えた持続可能な花き経営への転換を考えている生産者団体や農業法人にとって、非常に価値のある支援策です。この記事では、県産花き生産持続化支援事業の概要から申請方法、採択されるためのポイントまで、どこよりも詳しく解説します。

この補助金のポイント

  • 耐暑性のある新品種の種苗費を補助
  • チラシ作成や展示会出展などの販売促進費も対象
  • 補助率は経費の最大2分の1
  • 対象は埼玉県内の生産者団体・農業法人
  • 申請は随時受付(予算がなくなり次第終了)

① 県産花き生産持続化支援事業の概要

まずは、この事業がどのようなものなのか、基本的な情報を確認しましょう。

正式名称と実施組織

  • 正式名称: 令和7年度 県産花き生産持続化支援事業
  • 実施組織: 埼玉県

目的・背景

この事業の目的は、近年の温暖化の影響により、花きの高品質・安定生産が困難となりつつある状況に対応することです。将来のさらなる温暖化を見据え、生産者団体や農業法人が耐暑性を持つ新しい品目や品種の生産に挑戦し、その市場価値を高めるための販売促進活動を支援することで、埼玉県の花き産地全体の振興を図ることを目指しています。単に新しい品種を導入するだけでなく、それを市場に定着させるまでの一連の取り組みをサポートする、意欲的な生産者のための制度です。

② 補助金額・補助率

事業計画を立てる上で最も重要な補助金額と補助率について詳しく見ていきましょう。

補助率

補助対象となる経費の2分の1以内が補助されます。自己負担が半分で済むため、新しい取り組みへの初期投資リスクを大幅に軽減できます。

【重要】販売促進費の上限
補助対象経費のうち、「販売促進費」は「種苗費」の額を超えることはできません。あくまで主役は新品種の導入であり、販売促進はその付随的な支援という位置づけです。

補助金額の計算例

具体的なイメージを持つために、計算例を見てみましょう。

項目 ケース1 ケース2(販促費が種苗費を超過)
耐暑性品種の種苗費 100万円 80万円
販売促進費 60万円 100万円
補助対象経費の合計 160万円 160万円(販促費は種苗費の80万円が上限)
補助金額(1/2) 80万円 80万円

ケース2のように、販売促進費が種苗費を上回った場合、補助対象となる販売促進費は種苗費と同額(この場合は80万円)までとなります。計画を立てる際は、このバランスに注意が必要です。

③ 対象者・条件

この事業の対象となるのは、個人の農業者ではなく、特定の組織に限られます。ご自身の組織が該当するかどうか、以下の定義をよく確認してください。

支援対象者

  • 生産者団体
    以下の要件をすべて満たす組織を指します。
    • 代表者の定めがあること
    • 組織及び運営、会計についての団体の規約が定められていること
    • 3つ以上の農業経営体で構成されていること
    • 県内に住所のある組織であること
    • 構成員全員の住所が県内であること
  • 農業法人
    以下のいずれかに該当する法人を指します。
    1. 農事組合法人
    2. 花きの生産を主たる業務とし、県内に本社機能を有する会社法人(株式会社、合同会社など)

個人で活動されている花き農家の方は、近隣の農家仲間と3者以上でグループ(生産者団体)を結成し、規約などを整備することで対象となる可能性があります。ぜひ検討してみてください。

④ 補助対象経費

補助の対象となる経費は、大きく分けて「種苗費」と「販売促進費」の2つです。具体的にどのような費用が認められるのか、詳細を確認しましょう。

1. 耐暑性を持つ花きの新品目等の種苗費

事業の核となる経費です。重要なのは「新品目等」の定義です。

  • 定義: 事業実施主体(申請者)が、事業実施要望書を提出する時点で生産・販売の実績がない品目または品種を指します。
  • 条件: 補助を受けて導入した種苗は、設定した目標年度までに販売を開始できるものである必要があります。

2. 新品目等の販売促進費

導入した新品種を市場に広めるための活動費用です。以下の経費が対象となります。

  • 消耗品費: PR活動で使用する文房具や資材など
  • 印刷製本費: 商品カタログ、チラシ、パンフレットの作成費用
  • 通信費: PR活動に関わる郵便料金や通信費用
  • 会場借上費: 展示会や商談会、PRイベントの会場レンタル費用
  • 交通費: 販売促進活動のための移動にかかる費用

対象外となる経費の例

要綱に明記されていないものの、一般的に補助金の対象外となりやすい経費は以下の通りです。計画に含めないよう注意しましょう。

  • 人件費、団体の運営費
  • 土地の購入・賃借料
  • 汎用性の高いパソコンや事務機器の購入費
  • 通常の栽培管理に必要な肥料代や農薬代
  • 飲食・接待費

⑤ 申請方法・手順

申請は随時受付ですが、予算がなくなり次第終了となります。スムーズに手続きを進めるため、全体の流れを把握しておきましょう。

申請期間

随時受付(期間の定めなし、県の予算がなくなり次第終了)

「いつでも良い」と考えるのではなく、「早い者勝ち」と捉え、活用を決めたらすぐに行動を開始することが重要です。

申請のステップ

  1. 事前相談: まずは、管轄の農林振興センターや市町村の農政担当課に事業活用の意向を相談します。ここで事業内容の確認や申請の進め方についてアドバイスをもらうことが非常に重要です。
  2. 事業計画の策定: 採択要件に基づき、導入する品種、生産・販売目標、販売促進計画などを具体的にまとめた事業計画を作成します。
  3. 必要書類の準備: 埼玉県の公式サイトから実施要領や様式をダウンロードし、必要事項を記入します。見積書など添付書類も準備します。
  4. 申請書(要望書)の提出: 準備した書類一式を、指定された提出先に提出します。
  5. 審査・採択決定: 提出された書類に基づき、県による審査が行われます。採択要件を満たしているか、計画に実現可能性があるかなどが評価されます。
  6. 交付申請・決定: 採択された後、正式な交付申請手続きを行い、交付決定通知を受け取ります。
  7. 事業実施: 交付決定後に、計画に沿って種苗の購入や販売促進活動を開始します。(注意:交付決定前の発注・購入は補助対象外です)
  8. 実績報告: 事業が完了したら、実績報告書を作成し、経費の支払いを証明する領収書などを添えて県に提出します。
  9. 補助金額の確定・交付: 実績報告の内容が審査され、補助金額が確定した後、指定の口座に補助金が振り込まれます(精算払い)。

必要書類リスト

申請には多くの書類が必要です。公式サイトで最新の様式をダウンロードし、漏れなく準備しましょう。

  • 県産花き生産持続化支援事業実施要領(別記様式第1号、第2-1号、2-2号)
  • 県産花き生産持続化支援事業交付要綱(様式第1号~5号、別紙誓約書)
  • 団体の規約、構成員名簿(生産者団体の場合)
  • 法人の定款、登記事項証明書(農業法人の場合)
  • 導入する新品目等の耐暑性を客観的に説明できる資料(品種カタログ、試験データなど)
  • 生産と販売の目標を記載した書類
  • 販売促進計画書
  • 経費の内訳がわかる見積書(2社以上が望ましい)
  • その他、県が求める書類

⑥ 採択のポイント

申請すれば誰でも採択されるわけではありません。審査を通過し、事業を成功に導くための重要なポイントを3つ解説します。

1. 採択要件を具体的に示す

審査では、以下の3つの採択要件をすべて満たしているかが厳しくチェックされます。申請書では、これらの要件をいかに具体的に、説得力をもって説明できるかが鍵となります。

  • 新品目等の耐暑性を客観的に説明できること: 「暑さに強いらしい」といった曖昧な表現ではなく、種苗会社のカタログに記載されている耐暑性のデータや、公的機関の試験結果などを引用し、なぜこの品種が埼玉県の夏の気候に適しているのかを論理的に説明します。
  • 新品目等の生産と販売の目標を設定すること: 「たくさん作って売りたい」ではなく、「初年度は1,000ポットを生産し、うち800ポットを県内市場へ出荷、売上目標50万円を目指す。3年後には生産量を3,000ポット、売上150万円を目標とする」のように、数値を用いた具体的で達成可能な目標を設定します。
  • 新品目等の市場性を獲得するための販売促進計画を作成すること: 誰に(ターゲット)、何を(商品の魅力)、どのように(PR手法・販路)売るのかを明確にします。例えば、「県内の高級スーパーをターゲットとし、高品質をアピールする専用POPを作成。また、地域の園芸イベントに出展し、消費者への直接PRを行う」といった具体的な計画が求められます。

2. 事業の継続性と発展性を示す

この補助金は、一度きりのイベントで終わる取り組みを支援するものではありません。補助期間が終了した後も、導入した品種の生産を継続し、経営の柱の一つとして育てていく意欲と計画を示すことが重要です。事業計画書の中で、補助終了後の自走化に向けた展望(例:次年度以降の作付け計画、販路拡大戦略など)にも触れると、評価が高まります。

3. よくある不採択理由を避ける

不採択となるケースには共通点があります。以下の点に注意して申請書を作成しましょう。

  • 計画の具体性不足: 目標や計画が曖昧で、実現可能性が低いと判断される。
  • 要件の誤解: 対象外の経費を含めている、対象者の定義に合致していないなど、公募要領の読み込みが不十分。
  • 書類の不備: 記入漏れや添付書類の不足。提出前に複数人でダブルチェックすることが大切です。

⑦ よくある質問(FAQ)

Q1. 個人農家は対象になりますか?
A1. いいえ、この事業は原則として「生産者団体(3経営体以上)」または「農業法人」が対象です。個人で申請することはできません。近隣の農家の方と団体を設立して申請をご検討ください。
Q2. 既に栽培している品種の種苗費は対象になりますか?
A2. いいえ、対象外です。補助の対象となるのは、申請時点で生産・販売の実績がない「新品目」または「新品種」の種苗費に限られます。
Q3. 補助金はいつ受け取れますか?
A3. 補助金は、事業がすべて完了した後に実績報告書を提出し、その内容が検査・承認されてから支払われる「精算払い(後払い)」が一般的です。事業期間中の資金繰りは自己資金で賄う必要がありますのでご注意ください。
Q4. 販売促進費だけで申請することはできますか?
A4. いいえ、できません。この事業は耐暑性を持つ新品種の導入が前提です。したがって、「種苗費」の計上が必須であり、販売促進費はその導入を支援するための経費という位置づけです。
Q5. 申請前に種苗を発注してしまいました。これも対象になりますか?
A5. いいえ、対象外となります。補助金の対象となるのは、県の「交付決定通知」を受けた日以降に契約・発注した経費のみです。絶対に交付決定前に発注や購入を行わないでください。

⑧ まとめ・行動喚起

埼玉県の「県産花き生産持続化支援事業」は、温暖化という避けられない環境変化に対応し、未来の花き経営を築くための強力なサポート制度です。耐暑性のある新品種の導入と、その販路開拓にかかる費用を最大1/2補助してくれるこの機会を、ぜひ有効に活用してください。

次に行うべきアクション

この記事を読んで興味を持たれた方は、今すぐ以下の行動に移りましょう。

  1. 公式サイトで最新情報を確認: まずは埼玉県の公式ウェブサイトで、実施要領や様式をダウンロードし、内容を熟読してください。
  2. 担当窓口へ事前相談: 次に、管轄の農林振興センターまたは市町村の農政担当課へ電話し、「県産花き生産持続化支援事業の活用を検討している」と伝えて相談のアポイントを取りましょう。

申請は随時受付ですが、予算には限りがあります。温暖化に負けない強い産地づくりへの第一歩を、この補助金と共に踏み出しましょう。

お問い合わせ先

事業に関するご不明点は、下記または最寄りの担当窓口へお問い合わせください。