埼玉県内で優秀な若手人材の確保と定着にお悩みの経営者様・人事担当者様へ朗報です。埼玉県では、従業員の奨学金返還を支援する中小企業を対象とした「埼玉県中小企業等奨学金返還支援事業補助金」を実施しています。この制度を活用することで、企業は従業員1人あたり最大で年間12万円、最長6年間の補助を受けることが可能です。若手従業員の経済的負担を軽減し、企業の魅力を高めることで、採用競争力を強化し、離職率の低下にも繋がります。この記事では、制度の概要から対象要件、申請方法、採択のポイントまで、どこよりも詳しく、そして分かりやすく徹底解説します。ぜひ最後までご覧いただき、貴社の人材戦略にお役立てください。
この補助金のポイント
- 従業員1人あたり最大年12万円を補助
- 対象者1人につき最大6年間の長期支援
- 若手人材の採用力強化と定着促進に直結
- 「多様な働き方実践企業」は補助率・上限額が優遇
- 申請はオンライン(jGrants)で完結
① 補助金の概要
まずは、本補助金の全体像を把握しましょう。どのような目的で、誰が実施している制度なのかを解説します。
正式名称と実施組織
- 正式名称: 埼玉県中小企業等奨学金返還支援事業補助金
- 実施組織: 埼玉県
- 申請窓口: 埼玉県中小企業団体中央会
目的と背景
この補助金は、埼玉県内の中小企業における人材確保と若手従業員の定着を促進することを目的としています。多くの若者が抱える奨学金の返還負担を企業が支援する制度を導入することで、「若者から選ばれる魅力ある企業」を増やし、県内産業の活性化を図る狙いがあります。企業にとっては福利厚生の充実が採用活動における大きなアピールポイントとなり、従業員にとっては経済的・精神的な負担軽減が仕事へのモチベーション向上や長期勤続に繋がります。
② 補助金額・補助率
本補助金の最大の魅力である補助金額と補助率について詳しく見ていきましょう。特に「埼玉県多様な働き方実践企業」に認定されている場合は、優遇措置が受けられます。
| 区分 | 補助率 | 補助限度額(従業員1人あたり) |
|---|---|---|
| 通常の中小企業等 | 2分の1 | 年 9万円 |
| 埼玉県多様な働き方実践企業 | 3分の2 | 年 12万円 |
計算例
具体的なイメージを掴むために、計算例を見てみましょう。
【ケース1】 通常の中小企業が、従業員Aさんに年間18万円の奨学金返還支援手当を支給した場合
- 企業負担額:180,000円
- 補助額:180,000円 × 1/2 = 90,000円(上限額通り)
- 企業の実質負担額:180,000円 – 90,000円 = 90,000円
【ケース2】 多様な働き方実践企業が、従業員Bさんに年間18万円の奨学金返還支援手当を支給した場合
- 企業負担額:180,000円
- 補助額:180,000円 × 2/3 = 120,000円(上限額通り)
- 企業の実質負担額:180,000円 – 120,000円 = 60,000円
③ 対象者・条件
補助金を利用するには、企業側(補助対象者)と従業員側(支援対象者)の両方が、定められた要件を満たす必要があります。ここでは、それぞれの要件を詳しく解説します。
補助対象者(中小企業等)の要件
以下のすべてを満たす必要があります。
- 埼玉県内に事業所を有していること。
- 従業員への奨学金返還支援制度を設けていること(就業規則や賃金規程等で明文化されている必要があります)。
- 下記の表に定める中小企業等の定義に該当すること。
- 「みなし大企業」に該当しないこと。
- 国又は地方公共団体から出資を受けていないこと。
- 労働関係法令違反や税金の滞納、反社会的勢力との関わりがないこと。
▼中小企業の定義(資本金または従業員数のいずれかを満たせば可)
| 業種・組織形態 | 資本金の額 又は 出資の総額 | 常時使用する従業員数 |
|---|---|---|
| 製造業、建設業、運輸業 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| サービス業 | 5千万円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5千万円以下 | 50人以下 |
| 医療法人、学校法人、社会福祉法人等 | - | 100人以下 |
※上記は一部抜粋です。詳細は公式サイトの実施要領をご確認ください。
支援対象者(従業員)の要件
企業から支援を受ける従業員も、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 正社員であること。
- 申請年度の4月1日時点で、その企業で正社員となってから6年以内であること(中途採用も含む)。
- 申請日において、貸与された奨学金を本人が返還中であること。
- 申請日において、埼玉県内の事業所に勤務していること。
- 他の団体から重複して奨学金返還支援を受けていないこと。
- 事業主と同居する親族(法人の役員等)ではないこと(一定の例外あり)。
④ 補助対象経費
補助の対象となる経費は非常にシンプルです。
対象となる経費:
企業が就業規則や賃金規程などに基づき、従業員の奨学金返還を支援するために支給した手当等。
対象とならない経費:
企業から従業員への貸付金は対象外です。
重要なのは、この支援が企業の公式な制度として定められていることです。申請前に、就業規則や賃金規程に関連する条項を追加・整備しておく必要があります。公式サイトには規程のサンプルも用意されているため、参考にすると良いでしょう。
⑤ 申請方法・手順
申請は、国の補助金電子申請システム「jGrants」を利用してオンラインで行います。郵送や持参での申請は受け付けていないため注意が必要です。
申請期間
令和7年度の申請期間は以下の通りです。
- 令和7年6月1日(日)~ 令和7年11月30日(日)
※予算の上限に達し次第、受付終了となる可能性があるため、早めの申請をおすすめします。
申請のステップ
- GビズIDプライムの取得: jGrantsを利用するには「GビズIDプライムアカウント」が必須です。取得には2〜3週間程度かかる場合があるため、申請期間が始まる前に準備しておきましょう。
- 必要書類の準備: 公式サイトから申請様式をダウンロードし、記入します。就業規則など、添付書類も準備します。
- jGrantsで申請: 申請期間内にjGrantsにログインし、必要事項を入力、準備した書類をアップロードして申請を完了させます。
- 交付決定: 審査後、交付決定通知が届きます。
- 事業実施: 交付決定に基づき、従業員へ支援手当を支給します。
- 実績報告: 年度末(2月末まで)に、支給実績を証明する書類(賃金台帳の写し等)を添えて実績報告書をjGrantsで提出します。
- 補助金の交付: 実績報告の内容が確認された後、請求に基づき補助金が振り込まれます。
主な必要書類
- 交付申請書(様式第1号)
- 暴力団排除に関する誓約事項(様式第1号の2)
- 補助対象中小企業等確認書
- 事業計画書
- 支援対象者勤務地一覧
- 奨学金返還支援制度の内容がわかる書類(就業規則、賃金規程等の写し)
- (該当する場合)埼玉県多様な働き方実践企業認定書の写し
※最新の情報、全リストは必ず公式サイトでご確認ください。
⑥ 採択のポイント
この補助金は、要件を満たしていれば比較的採択されやすいと考えられますが、確実に採択されるためにはいくつかのポイントがあります。
- 早めの申請を心がける: 予算には限りがあります。「予算の限度額に達するまで」と明記されているため、事実上の先着順となる可能性があります。準備が整い次第、速やかに申請しましょう。
- 書類の不備をなくす: 申請書類に不備があると、審査が遅れたり、最悪の場合不採択となったりする可能性があります。公式サイトの記入例をよく確認し、提出前に複数人でダブルチェックすることをおすすめします。
- 「多様な働き方実践企業」の認定を目指す: 補助率・上限額が優遇されるため、まだ認定されていない企業は、この機会に認定を目指すのも一つの戦略です。働きやすい職場環境の整備は、この補助金だけでなく、企業の持続的な成長にも繋がります。
- 対象要件を正確に確認する: 申請前に、自社が中小企業の定義に合致しているか、対象従業員の要件(正社員になってからの期間など)をすべて満たしているかを再度確認しましょう。思い込みによる申請ミスがよくある不採択理由です。
⑦ よくある質問(FAQ)
Q1. 「埼玉県多様な働き方実践企業」とは何ですか?
A1. 仕事と家庭の両立支援や女性の活躍推進など、従業員が多様な働き方を選べる職場環境づくりに取り組む企業等を埼玉県が認定する制度です。認定されると、県のホームページでPRされたり、本補助金のような優遇措置を受けられたりするメリットがあります。詳しくは埼玉県の公式サイトをご確認ください。
Q2. 従業員が年度の途中で退職した場合、補助金はどうなりますか?
A2. 退職した月までに企業が支給した手当分は、補助の対象となります。実績報告の際に、実際に支給した金額を報告してください。
Q3. 新卒採用者で、まだ奨学金の返還が始まっていません。対象になりますか?
A3. 申請日において返還中、または申請日の属する年度から返還開始予定であれば対象となります。また、新規学卒者等で返還が猶予される期間がある場合、その期間は6か月を上限として補助対象期間(最大6年間)に含まれません。例えば、猶予期間が6か月ある場合、正社員になってから7か月目~78か月目が補助対象期間となり、従業員にとって有利な扱いとなります。
Q4. 企業が従業員に代わって奨学金機構に直接振り込む「代理返還」も対象ですか?
A4. はい、対象です。企業が従業員に代わって返還機関に直接支払う代理返還制度も、補助対象期間中のものであれば補助金の交付対象となります。
Q5. 個人事業主でも申請できますか?
A5. はい、対象となります。中小企業の定義(従業員数など)を満たしていれば、個人事業主も申請可能です。
⑧ まとめ・行動喚起
今回は、「埼玉県中小企業等奨学金返還支援事業補助金」について詳しく解説しました。
重要ポイントの再確認
- 目的: 埼玉県内中小企業の人材確保と定着促進。
- 補助額: 最大年12万円/人、最長6年間。
- 対象企業: 奨学金返還支援制度を持つ埼玉県内の中小企業等。
- 申請期間: 令和7年6月1日~11月30日。
- 申請方法: jGrantsによるオンライン申請のみ。
この補助金は、企業の金銭的負担を軽減しながら、従業員エンゲージメントを高め、採用市場での競争力を向上させる絶好の機会です。若手人材に「この会社で長く働きたい」と思ってもらえる魅力的な制度を、県の支援を受けて導入してみませんか?
まず最初に行うべきは、jGrants申請に必要な「GビズIDプライム」の取得です。まだお持ちでない場合は、すぐに手続きを開始しましょう。そして、公式サイトで詳細な実施要領やQ&Aを確認し、自社が対象となるか、どのような準備が必要かを把握してください。
ご不明な点があれば、下記の問い合わせ先に相談することをおすすめします。
お問い合わせ先
- 申請手続きに関する問合せ:
埼玉県中小企業団体中央会(奨学金返還支援室)
TEL:048-700-4600 - 制度全般に関する問合せ:
埼玉県 産業労働部 就業支援課
TEL:048-830-4538