詳細情報
「若手人材を確保したいが、大手企業との競争が厳しい…」「採用した社員に長く定着してほしい」——。埼玉県内の中小企業の経営者様、人事担当者様、このようなお悩みはありませんか?奨学金の返還は、多くの若手社員にとって大きな経済的負担です。企業がこの負担を支援することで、採用活動における強力なアピールポイントとなり、従業員のエンゲージメント向上にも繋がります。
今回ご紹介する「埼玉県中小企業等奨学金返還支援事業補助金」は、まさにそのための制度です。従業員の奨学金返還を支援する県内の中小企業に対し、1人あたり年間最大12万円、最長6年間にわたって補助を行います。この記事では、制度の概要から対象要件、申請方法、採択のポイントまで、どこよりも詳しく、分かりやすく解説します。ぜひ最後までお読みいただき、貴社の人材戦略にお役立てください。
補助金の概要
まずは、本補助金の全体像を把握しましょう。どのような目的で、誰が実施している制度なのかをまとめました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 埼玉県中小企業等人材確保奨学金返還支援事業補助金 |
| 実施組織 | 埼玉県(申請窓口・運営:埼玉県中小企業団体中央会) |
| 目的 | 埼玉県内の中小企業等の人材確保と定着を促進し、若者から選ばれる魅力ある企業を支援する。 |
| 対象者 | 従業員の奨学金返還支援制度を設ける埼玉県内の中小企業等 |
| 申請期間 | 令和7年6月1日~令和7年11月30日 ※予算上限に達し次第終了 |
| 申請方法 | 電子申請システム「jGrants」によるオンライン申請のみ |
補助金額・補助率
本補助金の大きな魅力は、手厚い補助内容です。特に、埼玉県の「多様な働き方実践企業」に認定されている場合は、補助率・上限額ともに優遇されます。
補助率と補助限度額
| 企業区分 | 補助率 | 補助限度額(従業員1人あたり/年) |
|---|---|---|
| 通常の中小企業等 | 2分の1 | 9万円 |
| 埼玉県多様な働き方実践企業 | 3分の2 | 12万円 |
支援対象となる従業員1人につき、最大6年間、補助を受けることが可能です。
【具体例】補助額の計算方法
従業員1名に対し、毎月15,000円(年間180,000円)の奨学金返還支援手当を支給する場合の計算例を見てみましょう。
- 通常の中小企業の場合
企業負担額 180,000円 × 補助率 1/2 = 90,000円
→ 補助限度額9万円の範囲内なので、90,000円が補助されます。 - 埼玉県多様な働き方実践企業の場合
企業負担額 180,000円 × 補助率 2/3 = 120,000円
→ 補助限度額12万円の範囲内なので、120,000円が補助されます。
対象者・条件
補助金を利用するには、企業側(補助対象者)と従業員側(支援対象者)の両方で、定められた要件を満たす必要があります。ここでは詳細な条件を解説します。
① 企業側の要件(補助対象者)
まず、申請する企業が満たすべき主な要件は以下の通りです。
- 埼玉県内に事業所を有していること。
- 従業員への奨学金返還支援制度を設けていること(就業規則や賃金規程等で明文化)。
- 中小企業等経営強化法に規定される中小企業者等であること(詳細は下表)。
- 「みなし大企業」に該当しないこと。
- 国又は地方公共団体から出資を受けていないこと。
- 労働関係法令違反や税の滞納、反社会的勢力との関わりがないこと。
対象となる中小企業等の定義は、業種ごとに資本金または従業員数で定められています。
| 業種・組織形態 | 資本金の額 又は 出資の総額 | 常時使用する従業員数 |
|---|---|---|
| 製造業、建設業、運輸業 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| サービス業 | 5千万円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5千万円以下 | 50人以下 |
| その他(医療法人、学校法人、社会福祉法人等も含む) | (業種による) | (業種による) |
※上記は一部抜粋です。詳細は公式サイトの実施要領をご確認ください。
② 従業員側の要件(支援対象者)
企業から支援を受ける従業員も、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 正社員であること(期間の定めのない労働契約)。
- 申請年度の4月1日時点で、その企業で正社員となってから6年以内であること(中途採用も含む)。
- 申請日において、本人が奨学金を返還中であること(返還開始予定も含む)。
- 申請日において、埼玉県内の事業所に勤務していること。
- 他の団体から重複して奨学金返還支援を受けていないこと。
- 事業主と同居する親族等ではないこと(一定の条件を満たす場合は対象)。
補助対象経費
補助の対象となるのは、企業が従業員の奨学金返還を支援するために支給する「手当」です。就業規則や賃金規程などで制度として定め、給与に上乗せして支給する形が一般的です。企業が従業員に代わって奨学金機構へ直接支払う「代理返還」も対象となります。
【注意点】
企業から従業員への貸付金は本事業の対象外です。あくまで、返済不要の手当として支給する必要があります。
申請方法・手順
申請は、国の電子申請システム「jGrants」を利用します。郵送や持参での申請は受け付けていないため、注意が必要です。申請から補助金受領までの大まかな流れは以下の通りです。
- 【事前準備】GビズIDプライムの取得
jGrantsの利用には「GビズIDプライムアカウント」が必須です。取得には2〜3週間程度かかる場合があるため、申請期間が始まる前に必ず取得しておきましょう。 - 【事前準備】社内制度の整備
就業規則や賃金規程に、奨学金返還支援手当に関する規定を設けます。公式サイトに規程例があるので参考にできます。 - jGrantsで申請(令和7年6月1日~11月30日)
申請期間内に、jGrants上で必要情報を入力し、必要書類をアップロードして申請を完了させます。 - 交付決定
書類審査が行われ、要件を満たしていれば交付決定通知が届きます。 - 事業実施
交付決定に基づき、対象従業員へ手当を支給します。 - 実績報告・請求(当該年度の2月末まで)
年度末に、実際に支給した額を証明する書類(賃金台帳の写し等)を添えて実績報告を行います。その後、請求手続きを経て補助金が振り込まれます。
主な必要書類
- 補助金交付申請書(様式第1号)
- 暴力団排除に関する誓約事項(様式第1号の2)
- 補助対象中小企業等確認書
- 事業計画書
- 支援対象者勤務地一覧
- 奨学金返還支援制度の内容がわかる書類(就業規則、賃金規程の写し等)
※その他、状況に応じて追加書類が必要になる場合があります。必ず公式サイトの募集要項で最新情報をご確認ください。
採択のポイント
本補助金は、要件を満たしていれば比較的採択されやすい制度ですが、予算には限りがあります。確実に採択されるために、以下のポイントを押さえておきましょう。
- ① 早期の申請を心がける
申請は受付順に審査され、予算の上限に達した時点で受付終了となります。申請準備は早めに開始し、受付開始後、速やかに申請を完了させることが重要です。 - ② GビズIDを事前に取得する
申請のボトルネックになりがちなのがGビズIDの取得です。「申請しようと思ったらIDがなくて間に合わなかった」という事態を避けるため、今すぐにでも取得手続きを始めましょう。 - ③ 書類の不備をなくす
申請書類に不備があると、審査が遅れたり、最悪の場合不採択となったりする可能性があります。公式サイトで公開されている記入例をよく確認し、正確に作成しましょう。 - ④ 「多様な働き方実践企業」の認定を目指す
もし未認定であれば、この機会に「多様な働き方実践企業」の認定取得を検討するのも一手です。補助率・上限額がアップするため、長期的に見て企業にとって大きなメリットがあります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 新卒採用の従業員だけでなく、中途採用の従業員も対象になりますか?
A1. はい、対象になります。申請年度の4月1日時点で、貴社に正社員として入社してから6年以内であれば、新卒・中途を問わず対象となります。
Q2. 「多様な働き方実践企業」とは何ですか?
A2. 埼玉版「働き方改革」を推進するため、仕事と家庭の両立支援や女性の活躍推進に積極的に取り組む企業等を埼玉県が認定する制度です。認定されると、本補助金で優遇措置が受けられるほか、県のホームページで企業名が公表されるなどPR効果も期待できます。
Q3. 従業員への支援は現金手当でないとダメですか?代理返還は対象ですか?
A3. 企業が従業員に代わって日本学生支援機構などに直接返還する「代理返還」も補助の対象となります。その場合も、社内規程で制度を定めておく必要があります。
Q4. 年度途中で対象となる従業員が増えた場合、どうすればよいですか?
A4. 速やかに「変更承認申請」を行うことで、新たに対象者を追加することが可能です。同様に、支給額を増やす場合も変更承認申請が必要です。手続きはjGrantsから行います。
Q5. 川口市など、市町村が実施している個人向けの奨学金返還支援制度との違いは何ですか?
A5. 本補助金は、埼玉県が「企業」に対して行う支援制度です。企業が従業員に手当を支給する際の負担を県が補助するものです。一方、一部の市町村では、要件を満たす「従業員個人」に対して直接補助金を交付する制度を実施しています。両者は全く別の制度ですのでご注意ください。
まとめ・行動喚起
「埼玉県中小企業等奨学金返還支援事業補助金」は、人材確保と定着という中小企業の根幹的な課題に対し、非常に有効な支援策です。この制度を導入することで、貴社は「社員を大切にする企業」として、求職者や従業員から選ばれる存在になることができます。
【今すぐやるべきこと】
- GビズIDプライムアカウントの取得申請を行う。
- 公式サイトで詳細な実施要領やQ&Aを確認する。
- 社内で奨学金返還支援制度の導入を検討し、規程の準備を始める。
申請期間は令和7年6月1日から11月30日までですが、予算がなくなり次第終了となります。この機会を逃さず、ぜひ活用をご検討ください。
ご不明な点は、下記の問い合わせ先にご確認ください。
■ 申請に関する問合せ先
埼玉県中小企業団体中央会(奨学金返還支援室)
TEL:048-700-4600
■ 制度に関する問合せ先
埼玉県 産業労働部 就業支援課
TEL:048-830-4538