エネルギー価格の高騰や環境問題への対応は、多くの事業者にとって喫緊の課題です。特に埼玉県内で事業を営む中小企業の皆様にとって、省エネ設備の導入はコスト削減と企業の社会的責任を果たす上で非常に重要です。しかし、設備投資には多額の費用がかかるため、二の足を踏んでいる方も多いのではないでしょうか。
そんな皆様にぜひ知っていただきたいのが、埼玉県が実施する「CO₂排出削減設備導入補助金【緊急対策枠】」です。この補助金は、高効率な空調設備やボイラーへの更新、太陽光発電設備と蓄電池の導入など、CO2排出削減に繋がる設備投資を強力に後押しする制度です。補助率は対象経費の1/2、上限額はなんと最大500万円。経営体質の強化とカーボンニュートラルへの貢献を同時に実現できる、またとないチャンスです。
【ご注意】本記事で解説する「令和6年度 CO₂排出削減設備導入補助金【緊急対策枠】(令和7年4月募集開始分)」は、令和7年10月23日をもって受付を終了しました。しかし、例年同様の補助金が募集される可能性が高いため、本記事は次年度の申請に向けた準備資料としてご活用ください。最新情報は必ず埼玉県の公式サイトでご確認をお願いいたします。
補助金の概要
まずは、この補助金がどのような制度なのか、全体像を把握しましょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 令和6年度 CO₂排出削減設備導入補助金【緊急対策枠】 |
| 実施組織 | 埼玉県 環境部 温暖化対策課 |
| 目的 | エネルギー価格変動に対応できる経営体質への転換支援、及びエネルギー使用量・CO2排出量の削減 |
| 対象者 | 埼玉県内で1年以上事業を営む中小企業者・個人事業主 |
| 公式サイト | 埼玉県庁公式サイト |
補助金額・補助率
本補助金の最大の魅力は、その手厚い支援内容です。具体的な金額と補助率を確認しましょう。
補助率と上限額
- 補助率:1/2
- 補助上限額:500万円
補助対象となる経費の半額が、最大500万円まで補助されます。これは、大規模な設備更新を検討している事業者にとって非常に大きな支援となります。
計算例
具体的にどのくらいの補助が受けられるのか、例を見てみましょう。
ケース1:高効率な業務用エアコンに更新
設備費・工事費の合計:800万円
計算:800万円 × 1/2 = 400万円
→ 補助金額:400万円
ケース2:太陽光発電設備と蓄電池を導入
設備費・工事費の合計:1,200万円
計算:1,200万円 × 1/2 = 600万円
→ 補助金額:500万円(上限額適用)
対象者・条件
補助金を利用するには、いくつかの要件を満たす必要があります。自社が対象となるか、ここでしっかり確認してください。
対象となる事業者
- 埼玉県内で1年以上事業活動を営んでいる法人及び個人事業主。
- 法人の場合は、中小企業基本法に定める中小企業者であること。
中小企業者の定義は以下の通りです。資本金か従業員数のどちらかを満たせば対象となります。
| 業種 | 資本金の額又は出資の総額 | 常時使用する従業員の数 |
|---|---|---|
| 製造業、建設業、運輸業など | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
対象外となるケース
以下のいずれかに該当する場合は、残念ながら対象外となります。
- 過去の同補助金(令和4年度・令和5年度の緊急対策枠)を受給した事業者
- 「令和7年度 スマートCO2排出削減設備導入補助金」を受給した、または受給予定の事業者
- 同一の設備で、国など他の補助金と併用する場合
補助対象事業・経費
どのような設備導入が補助の対象になるのか、詳しく見ていきましょう。
対象となる事業
大きく分けて3つのカテゴリーがあります。
- 高効率省エネルギー設備への更新
古い設備をエネルギー効率の高い最新モデルに更新する事業です。
例:空調設備、ボイラー、コンプレッサー、変圧器、冷凍冷蔵設備など。
※重要:既存設備は15年以上使用していることが条件です。照明設備は対象外。 - CO2排出量の少ない燃料等を使用した設備への更新
重油ボイラーを都市ガスボイラーに転換するなど、よりクリーンなエネルギーへ移行する事業です。
例:ボイラーの燃料転換、ヒートポンプ化、コジェネレーション設備の導入など。 - 再生可能エネルギーの利用設備の導入
自社でクリーンなエネルギーを生み出すための設備導入です。
例:太陽光発電設備、バイオマス発電設備、小水力発電設備など。
※重要:太陽光発電設備を導入する場合は、蓄電池の同時導入が必須です。
対象経費と対象外経費
補助金の計算の基となる経費の内訳です。申請前に必ず確認しましょう。
| 区分 | 具体例 |
|---|---|
| 対象経費 |
※補助対象経費の合計が30万円以上であることが条件です。 |
| 対象外経費 |
|
申請方法・手順
申請はすべてオンラインで行います。ここでは、次年度の募集に向けた一般的な流れと準備すべきことを解説します。
最重要ポイント:交付決定前の契約・発注はNG!
補助金は、埼玉県から「交付決定通知書」を受け取った後に契約・発注した事業のみが対象です。フライングで契約してしまうと補助金が受けられなくなるため、絶対に注意してください。
申請ステップ
- Step 1: 準備(募集開始前)
導入したい設備を選定し、施工業者から見積書を取得します。CO2削減量の計算も必要になるため、業者と協力して準備を進めましょう。 - Step 2: 申請(募集期間中)
埼玉県の指定する電子申請システムから、必要事項を入力し、準備した書類をアップロードして申請します。 - Step 3: 交付決定
審査を経て、採択されると「交付決定通知書」が届きます。 - Step 4: 事業実施
交付決定通知書を受け取った後、業者と正式に契約し、設備の設置工事を開始します。 - Step 5: 実績報告
工事完了後、業者への支払いを済ませ、期限内に実績報告書と関連書類(契約書、請求書、支払証明、写真など)を提出します。 - Step 6: 補助金交付
実績報告書の内容が確定した後、指定の口座に補助金が振り込まれます。
必要書類リスト(主なもの)
申請には多くの書類が必要です。早めに準備を始めましょう。
- 補助金交付申請書(様式第1号)
- CO2削減量算定シート
- 事業所の位置図、平面図
- 導入する設備の仕様がわかるカタログ等の写し
- 既存設備の仕様がわかる資料及び設置状況がわかる写真
- 導入する設備の設置に係る経費の見積書の写し
- 【法人の場合】履歴事項全部証明書
- 【個人事業主の場合】開業届の写し又は直近の確定申告書の写し
採択のポイント
人気の補助金であるため、確実に採択されるためにはいくつかのポイントを押さえることが重要です。
- 募集開始後、速やかに申請する:令和6年度の募集は原則「先着順」でした。予算額に達した時点で受付終了となるため、募集が開始されたらすぐに申請できるよう、万全の準備をしておくことが最も重要です。
- 書類の不備をなくす:申請書類に不備があると、修正に時間がかかり、その間に予算が上限に達してしまう可能性があります。募集要領を隅々まで読み込み、提出前に何度もチェックしましょう。
- CO2削減効果を明確にする:申請書にはCO2削減量の算定シートの添付が必要です。削減効果が高い事業ほど、補助金の目的に合致していると評価されます。業者と協力し、正確な数値を算定しましょう。
- 信頼できる施工業者を選ぶ:見積書の作成やCO2削減量の計算など、申請準備には施工業者の協力が不可欠です。補助金申請の実績が豊富な業者を選ぶと、スムーズに手続きを進めることができます。
よくある質問(FAQ)
ここでは、申請を検討する事業者からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
- Q1. LED照明への更新は対象になりますか?
- A1. いいえ、残念ながら照明設備は本補助金の対象外です。
- Q2. リース契約で設備を導入する場合も対象になりますか?
- A2. いいえ、リース契約は対象外です。購入(所有権が申請者に移転するもの)が条件となります。
- Q3. 申請前に業者と契約してしまいました。補助金は受けられますか?
- A3. いいえ、受けられません。必ず埼玉県の「交付決定通知書」を受け取った後に、契約・発注を行ってください。これは最も重要な注意点です。
- Q4. 中古の設備を導入する場合は対象になりますか?
- A4. いいえ、中古品は対象外です。新品の設備を導入する場合に限ります。
- Q5. 実績報告までに「埼玉県環境SDGs取組宣言企業制度」への宣言が必要とありますが、これは何ですか?
- A5. これは、埼玉県が実施している制度で、企業がSDGsの達成に向けた取組を宣言するものです。オンラインで簡単に手続きができますので、実績報告の期限までに忘れずに宣言書の提出を済ませてください。
まとめ・次年度への準備
今回は、埼玉県の中小企業向け「CO₂排出削減設備導入補助金【緊急対策枠】」について詳しく解説しました。最後に重要なポイントを再確認しましょう。
- 対象者:埼玉県内の中小企業者・個人事業主
- 補助額:最大500万円(補助率1/2)
- 対象設備:高効率な空調・ボイラー、太陽光発電+蓄電池など
- 重要ルール:交付決定前の契約・発注は絶対NG!
- 申請方法:原則先着順(令和6年度実績)のため、事前準備が鍵!
令和6年度の募集は終了しましたが、この補助金は県の重要な施策であり、来年度以降も同様の募集が行われる可能性が高いです。省エネ設備の導入を検討している事業者の皆様は、今から情報収集を開始し、信頼できる業者探しや導入設備の検討を進めておくことを強くお勧めします。次年度の募集が開始された際に、最高のスタートを切れるよう、この記事を参考に準備を進めていきましょう。
最新情報は、埼玉県の公式サイトで定期的にチェックしてください。