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はじめに:定額減税の「不足額給付」とは?
2024年(令和6年)に実施された「定額減税」。所得税3万円、住民税1万円の合計4万円が減税される制度ですが、「税金が少なくて全額引ききれなかった」という方も少なくありません。そんな方々を支援するために、2024年度には減税しきれない額を給付する「調整給付(当初調整給付)」が行われました。そして2025年(令和7年)、その当初調整給付でも補いきれなかった差額や、新たに対象となった方へ支給されるのが「不足額給付金」です。この制度は、令和6年中の所得が確定したことにより、より正確な金額で支援を行うことを目的としています。この記事では、複雑に思える「不足額給付金」について、対象者、給付金額、申請方法などを、誰にでもわかるように徹底的に解説します。
この記事のポイント
・定額減税で引ききれなかった分を補う「不足額給付金」の仕組みがわかる
・自分が給付の対象になるかどうかの判断基準がわかる
・具体的な給付金額の計算例がわかる
・申請手続きの流れと注意点を完全に理解できる
給付金の概要
まずは、この給付金制度の全体像を把握しましょう。
正式名称と実施組織
- 正式名称: 自治体により「令和7年度物価高騰重点支援給付金(不足額給付)」「定額減税に関する調整給付金(不足額給付)」など名称が異なります。
- 実施組織: 国の経済対策に基づき、実際に給付事務を行うのは、令和7年1月1日時点で住民登録がある各市区町村です。
目的・背景
2024年度に行われた「当初調整給付」は、令和5年の所得を基にした推計額で計算されていました。しかし、実際には令和6年中に所得が変動したり、家族構成が変わったりすることがあります。そこで、令和6年分の所得税額が確定した段階で、当初の給付額との間に差額(不足)が生じた方に対し、その不足分を正確に給付するのがこの制度の目的です。これにより、定額減税の恩恵を公平に行き渡らせることを目指しています。
給付金額と計算方法
給付金額は、対象者の状況によって大きく2つのパターンに分かれます。自分がどちらに該当するか確認しましょう。
| 給付パターン | 対象者 | 給付金額 |
|---|---|---|
| 不足額給付1(差額給付) | 当初調整給付額に不足が生じた方 | (令和6年所得で再計算した調整給付額) – (当初調整給付の支給済額) ※1万円単位で切り上げ |
| 不足額給付2(定額給付) | 定額減税の対象外で、低所得世帯向け給付も対象外だった方 | 原則4万円(定額) |
【計算例】不足額給付1(差額給付)の場合
少し複雑ですが、具体例で見てみましょう。
例:令和6年中に子供が1人生まれたAさんのケース
- 当初調整給付時(扶養親族なし):所得税の定額減税可能額は本人分3万円。Aさんの所得税額が2万円だったため、減税しきれない1万円が当初調整給付として支給された。
- 不足額給付時(扶養親族1人増):所得税の定額減税可能額は本人+子で6万円に増加。Aさんの所得税額が2万円のままなので、減税しきれない額は4万円となる。
- 不足額給付金の額:(再計算後の不足額4万円) – (支給済の当初調整給付1万円) = 3万円
対象者・条件
自分が対象になるか、以下の条件を確認してください。大前提として、令和7年1月1日時点で対象の市区町村に住民登録があることが必要です。
不足額給付1に該当する可能性のある方
- 令和5年より令和6年の所得が減少した方:退職や転職などで所得が減り、所得税額が当初の見込みより少なくなった場合。
- 令和6年中に扶養親族が増加した方:結婚や子供の出生などで、定額減税の対象人数が増えた場合。
- 当初調整給付後に税額が変更された方:修正申告などにより、令和6年度の住民税所得割額が減少し、調整給付額が増える場合。
不足額給付2に該当する可能性のある方
以下のすべての条件を満たす方が対象です。
- 令和6年分の所得税・令和6年度の住民税所得割がともに0円で、本人として定額減税の対象外である。
- 税法上の「扶養親族」の対象外であり、誰かの扶養に入って定額減税を受けることもない。
- 住民税非課税世帯向け給付金(7万円)や均等割のみ課税世帯向け給付金(10万円)などの低所得者向け給付の対象世帯ではない。
具体例:個人事業主の配偶者で事業を手伝う「事業専従者」や、合計所得金額が48万円を超えるものの各種控除で非課税になっている方で、課税されている家族と暮らしているため低所得世帯向け給付の対象外となるケースなどが考えられます。
対象外となる主なケース
- 納税者本人の合計所得金額が1,805万円を超える場合。
- 所得税・住民税の両方とも定額減税が適用されない方(元々非課税の方など)。
申請方法・手順
手続きは、お住まいの市区町村から送られてくる書類によって異なります。多くの場合、令和7年7月下旬から8月上旬頃に通知が発送されます。
パターン1:「支給のお知らせ」(はがき等)が届いた方
過去の給付金などで振込口座が自治体に登録されている場合、この通知が届きます。
原則、手続きは不要です。記載された口座に自動的に振り込まれます。口座変更や受給辞退を希望する場合のみ、指定された期日までに連絡が必要です。
パターン2:「支給要件確認書」が届いた方
自治体が振込口座を把握していない場合などに送付されます。
申請手続きが必要です。確認書に必要事項(氏名、口座情報など)を記入し、本人確認書類や口座確認書類のコピーを添付して、同封の返信用封筒で返送します。自治体によっては、確認書に記載のQRコードからオンライン申請も可能です。
パターン3:通知が届かず、自分で申請が必要な方
以下のような方は、自治体が対象者として把握できていない可能性があるため、ご自身での申請が必要になる場合があります。
- 不足額給付2(事業専従者など)に該当すると思われる方
- 令和6年1月2日以降に現在の市区町村へ転入してきた方
この場合、お住まいの市区町村のホームページから申請書をダウンロードするか、給付金窓口で入手し、必要書類を添えて郵送または窓口で提出します。
申請期限に注意!
多くの自治体では、申請期限を令和7年10月31日(金曜日)としています。期限を過ぎると、いかなる理由があっても受け付けられないため、必ず期限内に手続きを完了させましょう。
確実に給付金を受け取るためのチェックポイント
スムーズに給付を受けるために、以下の点に注意しましょう。
- 書類の不備をなくす:記入漏れや添付書類の不足があると、手続きが大幅に遅れます。提出前にもう一度確認しましょう。
- 振込口座情報を正確に記入:金融機関名、支店名、口座番号、口座名義(カナ)を正確に記載してください。
- 転居した場合の確認:不足額給付は、原則として令和7年1月1日時点の住民登録地から支給されます。令和6年中に転居した方は注意が必要です。
- 郵便物を必ず確認:自治体からの重要なお知らせを見逃さないよう、郵便物はこまめにチェックしましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 昨年の当初調整給付を受け取っていなくても、今回の不足額給付はもらえますか?
A1. はい、対象要件を満たせば受け取ることができます。例えば、令和5年時点では所得が高く当初調整給付の対象外だった方が、令和6年に所得が減少し、不足額給付の対象となるケースなどがあります。
Q2. 申請してから、いつ頃振り込まれますか?
A2. 自治体によって異なりますが、一般的に申請書(確認書)を提出してから約3週間~1か月半後が目安です。書類に不備があるとさらに時間がかかる場合があります。
Q3. この給付金は課税対象になりますか?
A3. いいえ、この給付金は「物価高騰対策給付金に係る差押禁止等に関する法律」に基づき、課税対象外であり、差し押さえも禁止されています。
Q4. 自分が対象かどうかわからない場合、どこに問い合わせればいいですか?
A4. お住まいの市区町村が設置している「給付金コールセンター」や担当窓口にお問い合わせください。電話番号や受付時間は、各自治体のホームページで確認できます。
Q5. 給付金に関する詐欺が心配です。注意点はありますか?
A5. 自治体や国の職員が、ATMの操作をお願いしたり、給付のために手数料の振込みを求めたりすることは絶対にありません。また、メールやSMSでURLをクリックさせて申請手続きをさせることもありません。不審な電話や郵便物、メールが届いた場合は、すぐに警察相談専用電話(#9110)や最寄りの警察署に相談してください。
まとめ:忘れずに手続きをしましょう
定額減税の不足額給付金は、令和6年の所得状況を反映した、より公平な支援制度です。対象となる可能性がある方は、ご自身の状況を再確認し、自治体からの通知を見逃さないようにしましょう。
最後に確認!次に行うべきアクション
- 1. 自治体からの通知を待つ:令和7年7月下旬以降、郵便物を注意深く確認する。
- 2. 届いた書類の種類を確認:「お知らせ」なら手続き不要、「確認書」なら要返送。
- 3. 期限内に手続きを完了する:申請が必要な場合は、令和7年10月31日などの期限を厳守する。
- 4. 不明点はすぐに問い合わせる:お住まいの市区町村の給付金コールセンターを活用する。
この給付金は、申請しなければ受け取れないケースもあります。この記事を参考に、ご自身が対象かどうかを確認し、忘れずに手続きを進めてください。