2024年に行われた「定額減税」で、減税しきれなかった分はありませんか?「自分は満額の恩恵を受けられていないかも…」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。そんな方々のために、国は「定額減税補足給付金(不足額給付)」という制度を用意しています。これは、令和6年度の定額減税や当初の調整給付で補いきれなかった不足分を、令和7年度に追加で給付するものです。この記事では、複雑で分かりにくい定額減税補足給付金について、誰が対象で、いくらもらえて、どうやって申請すればいいのかを、図や具体例を交えながら徹底的に解説します。ご自身が対象かどうかを確認し、申請漏れがないように準備を進めましょう。
この記事のポイント
- 定額減税補足給付金(不足額給付)の全体像と目的がわかる
 - 自分が「不足額給付1」「不足額給付2」のどちらに該当するかがわかる
 - 具体的な給付額の計算方法や事例がわかる
 - 申請手続きの3つのパターン(通知待ち、確認書返送、自己申請)がわかる
 - 申請期限や必要書類など、具体的な準備事項がわかる
 
定額減税補足給付金(不足額給付)の概要
まずは、この制度がどのようなものなのか、全体像を掴みましょう。
制度の目的と背景
この給付金は、国の経済対策の一環として実施されます。賃金上昇が物価高に追いついていない国民の負担を緩和するため、令和6年度に「定額減税」が実施されました。しかし、所得税や住民税が少ない方は、減税額(1人あたり最大4万円)を満額引ききれないケースがありました。
その減税しきれない額を補うために、まず「当初調整給付」が令和6年夏ごろに支給されました。これは、令和5年の所得情報をもとに「見込み額」で計算されたものです。
そして今回解説する「不足額給付」は、令和6年分の所得が確定したことにより、当初調整給付額では足りなかった方や、制度の狭間でどの支援も受けられなかった方などに対して、その不足分を令和7年度に改めて支給する、いわば「最終調整」のための給付金です。
実施組織
この制度は国の施策ですが、実際の給付手続きは、令和7年1月1日時点でお住まいの市区町村が行います。そのため、問い合わせや申請は、お住まいの自治体の担当窓口に対して行うことになります。
給付金額・算定方法
給付額は、対象者の区分によって異なります。「不足額給付1」と「不足額給付2」の2つのパターンに分けて見ていきましょう。
不足額給付1:当初調整給付額との差額を給付
こちらは、令和6年夏に支給された「当初調整給付」の金額が、令和6年の所得確定後に計算した「本来もらうべきだった金額」よりも少なかった場合に、その差額分が支給されるものです。
計算式は以下のようになります。
不足額給付額 = (A) 本来の給付所要額 – (B) 当初調整給付額
※計算結果は1万円単位で切り上げて支給されます。
※(A)が(B)を下回った場合(当初多くもらいすぎていた場合)でも、返還を求められることはありません。
不足額給付2:定額で原則4万円を給付
こちらは、定額減税や低所得者向け給付金のいずれの対象にもならなかった、制度の狭間にいた方を救済するための給付です。
- 原則4万円(所得税分3万円 + 住民税分1万円)
 - 個々の状況に応じて、1万円~3万円となる場合があります。
 
対象者・条件
給付の対象となるには、まず令和7年1月1日時点で日本国内のいずれかの市区町村に住民登録があること、そして納税者本人の合計所得金額が1,805万円を超えていないことが共通の条件です。その上で、以下の「不足額給付1」または「不足額給付2」のいずれかに該当する必要があります。
「不足額給付1」に該当する可能性が高いケース
当初の見込み計算と実績にズレが生じた方が対象です。具体的には以下のようなケースが考えられます。
| ケース | 具体的な例 | 
|---|---|
| 令和6年中に所得が減少した | 退職、転職、産休・育休などで、令和5年より令和6年の収入が減った方。 | 
| 令和6年中に扶養親族が増えた | 子どもが生まれた、親を扶養に入れるなどして、定額減税の対象人数が増えた方。 | 
| 令和6年度から新社会人になった | 令和5年は所得がなく当初調整給付の対象外だったが、令和6年から働き始め所得税が発生した方。 | 
| 税額の修正申告をした | 当初調整給付の算定後に修正申告を行い、住民税所得割額が減少した方。 | 
「不足額給付2」に該当する可能性が高いケース
以下の3つの条件をすべて満たす方が対象です。
- 本人として定額減税の対象外(所得税・住民税所得割がともに0円)
 - 扶養親族としても定額減税の対象外
 - 低所得世帯向けの給付金(非課税世帯向け7万円給付など)の対象でもない
 
具体的には、以下のような方が該当する可能性があります。
- 青色事業専従者や事業専従者(白色)の方
 - 合計所得金額が48万円を超えているが、医療費控除などを適用した結果、所得税・住民税所得割が非課税になった方
 
申請方法・手順
手続きの方法は、お住まいの市区町村があなたの情報をどの程度把握しているかによって、大きく3つのパターンに分かれます。自治体からの通知発送は、令和7年7月~9月頃に順次開始される見込みです。
【重要】申請期限に注意!
多くの自治体では、申請期限を令和7年10月31日(金)としていますが、延長される場合もあります。必ずお住まいの自治体の公式サイトで正確な期限を確認してください。期限を過ぎると給付を受けられなくなります。
パターン1:「支給のお知らせ」が届く方(手続き不要)
自治体が対象者であることと振込口座を把握している場合に届きます。これは「プッシュ型」とも呼ばれ、原則として手続きは不要です。ハガキなどに記載された振込日に、指定の口座へ自動的に振り込まれます。
- 対象者:当初調整給付を同じ自治体から受給した方、公金受取口座を登録している方など。
 - やるべきこと:お知らせの内容(振込口座、金額)を確認するだけ。
 - 注意点:口座を変更したい場合や受給を辞退したい場合は、記載された期日までにコールセンター等への連絡が必要です。
 
パターン2:「確認書」が届く方(返送が必要)
自治体が対象者であることは把握しているものの、振込口座が不明な場合に届きます。内容を確認し、必要事項を記入・添付書類を添えて返送する必要があります。
- 対象者:公金受取口座の登録がなく、過去の給付金受給実績もない方など。
 - やるべきこと:確認書に必要事項を記入し、本人確認書類と口座確認書類のコピーを添付して、同封の返信用封筒で郵送する。
 - 必要書類:
- 本人確認書類の写し(マイナンバーカード、運転免許証など)
 - 振込先口座がわかる通帳やキャッシュカードの写し
 
 
パターン3:自分で「申請書」を提出する必要がある方
自治体が対象者である可能性を把握できていないため、自分から能動的に申請する必要があるケースです。この場合は、自治体のホームページから申請書をダウンロードするか、窓口で入手して提出します。
- 対象者:
- 令和6年1月2日以降に引っ越してきた(転入した)方
 - 「不足額給付2」の対象となる可能性が高い方(事業専従者など)
 - その他、何らかの理由で自治体から通知が届かないが、対象になると思われる方
 
 - やるべきこと:申請書を入手し、必要事項を記入。状況に応じた添付書類を揃えて、郵送または窓口で提出する。
 - 主な必要書類:
- 申請書
 - 本人確認書類の写し
 - 振込先口座がわかる通帳やキャッシュカードの写し
 - 令和6年分の所得を証明する書類(源泉徴収票や確定申告書の写しなど)
 - (転入者の場合)転入前の自治体での課税情報や当初調整給付の受給状況がわかる書類
 
 
支給されるためのポイント
この給付金は、要件を満たせば基本的に支給されますが、手続きのミスで遅れたり、最悪の場合受け取れなくなったりすることもあります。以下の点に注意しましょう。
- 書類の不備をなくす:記入漏れや添付書類の不足がないか、提出前によく確認しましょう。特に本人確認書類や口座情報のコピーは鮮明に。
 - 申請期限を厳守する:いかなる理由があっても、期限後の申請は受け付けられません。早め早めの行動を心がけましょう。
 - 通知が来なくても諦めない:「自分は対象のはずなのに通知が来ない」という場合は、待っているだけではいけません。9月頃になっても音沙汰がなければ、お住まいの自治体のコールセンターに問い合わせてみましょう。
 
よくある質問(FAQ)
Q1. 私は給付の対象になりますか?
A1. まずは本記事の「対象者・条件」のセクションをご確認ください。対象と思われる方には、お住まいの自治体から「支給のお知らせ」または「確認書」が届きます。9月頃を過ぎても書類が届かない場合は、ご自身が対象と思われる理由(例:令和6年に退職した、子どもが生まれたなど)を整理した上で、自治体のコールセンターへお問い合わせください。
Q2. 令和6年中に引っ越した場合、どこから給付されますか?
A2. 原則として、令和7年1月1日時点で住民登録がある市区町村から支給されます。手続きについては、その市区町村にお問い合わせください。
Q3. 振込はいつ頃になりますか?
A3. 手続きのパターンによって異なります。
・「支給のお知らせ」が届いた方:お知らせに記載された振込日(9月中旬以降が目安)
・「確認書」や「申請書」を提出した方:市が書類を受理してから、審査を経て概ね1ヶ月~2ヶ月程度が目安です。書類に不備があるとさらに時間がかかります。
Q4. この給付金は課税対象ですか?
A4. いいえ、この給付金は非課税です。また、法律により差し押さえも禁止されています。
Q5. 給付金詐欺が心配です。注意点はありますか?
A5. 市区町村や国の職員が、ATMの操作をお願いしたり、手数料の振込みを求めたり、キャッシュカードや暗証番号を聞き出したりすることは絶対にありません。不審な電話、メール、訪問があった場合は、すぐに警察(相談専用窓口#9110)やご家族に相談してください。
まとめ:ご自身の状況を確認し、手続きを進めましょう
定額減税補足給付金(不足額給付)は、定額減税の恩恵を十分に受けられなかった方をサポートするための重要な制度です。最後に、この記事の重要ポイントを再確認しましょう。
- 制度の目的:令和6年の定額減税や当初調整給付で補いきれなかった不足分を「最終調整」として給付するもの。
 - 対象者の2類型:当初調整給付との差額が生じた「不足額給付1」と、制度の狭間にいた方向けの「不足額給付2」がある。
 - 手続きの3パターン:「お知らせ待ち(手続き不要)」「確認書返送」「自己申請」のいずれかに該当。
 - 期限の確認:申請期限は令和7年10月31日(金)が目安だが、必ずお住まいの自治体で確認すること。
 - 行動喚起:まずは自治体からの通知を待つ。9月頃になっても届かず、対象と思われる場合は、ためらわずに自治体のコールセンターへ問い合わせましょう。
 
ご自身の状況を正しく把握し、必要な手続きを期限内に済ませることで、受けられるはずの給付を確実に受け取りましょう。