「令和6年の定額減税、思ったより手取りが増えなかった…」「全額減税されなかった分はどうなるの?」そんな疑問をお持ちではありませんか?2025年度に実施される「定額減税補足給付金(不足額給付)」は、まさにそのための制度です。この給付金は、令和6年分の所得税・住民税の定額減税で引ききれなかった金額を補う「調整給付」を算定し直した結果、さらに不足が生じた方に追加で支給されるものです。また、定額減税や他の給付金の対象にならなかった方への支援も含まれています。この記事では、複雑に見える定額減税補足給付金(不足額給付)について、誰が対象で、いくらもらえるのか、そしてどうやって手続きするのかを、図や具体例を交えて日本一わかりやすく解説します。ご自身が対象かどうかを確認し、確実に給付を受け取るための準備を進めましょう。
この記事のポイント
- 定額減税補足給付金(不足額給付)の2つのタイプ「不足額給付Ⅰ」「不足額給付Ⅱ」がわかる
- ご自身が給付対象になるかの判断基準がわかる
- 具体的な支給額の計算方法がわかる
- 申請手続きの流れと期限(令和7年10月31日まで)がわかる
定額減税補足給付金(不足額給付)の概要
この給付金は、国の経済対策の一環として、物価高騰による国民の負担を緩和するために実施されるものです。令和6年に行われた定額減税(所得税3万円、住民税1万円)で、納税額が少なく全額を減税しきれなかった方に対し、差額を給付する「調整給付」が行われました。今回の「不足額給付」は、その調整給付の金額を、令和6年分の所得が確定した後に再計算し、それでも不足する分を追加で支給する制度です。
制度の目的と背景
賃金上昇が物価高に追いついていない国民の負担を和らげ、デフレからの完全脱却を目指す経済対策の一環です。定額減税の恩恵を十分に受けられない方々へ、きめ細やかな支援を行うことを目的としています。
実施組織
制度の設計は国(内閣府)が行い、実際の給付手続きは令和7年1月1日時点でお住まいの市区町村が担当します。
支給額と計算方法
本給付金は、対象者の状況によって「不足額給付Ⅰ」と「不足額給付Ⅱ」の2種類に分かれ、支給額の計算方法も異なります。
| 給付金の種類 | 対象者 | 支給額 |
|---|---|---|
| 不足額給付Ⅰ | 当初の調整給付額に不足が生じた方 | (本来の給付額)-(当初調整給付額)の差額 ※1万円単位で切り上げ |
| 不足額給付Ⅱ | 定額減税や他の給付金の対象外だった方 | 原則1人4万円 |
不足額給付Ⅰの計算例
当初の調整給付は、令和5年の所得を基に「推計」で計算されました。不足額給付Ⅰは、令和6年の所得が「確定」したことで生じる差額を支給するものです。
【例】令和6年中に子どもが1人生まれ、扶養家族が増えたAさんの場合
- 当初調整給付時:本人+配偶者 → 所得税の定額減税可能額 6万円(3万円×2人)
- Aさんの令和5年所得に基づく推計所得税額:5.5万円
- 当初調整給付額:6万円 – 5.5万円 = 5,000円 → 1万円(1万円単位に切り上げ)
- 不足額給付算定時:本人+配偶者+子1人 → 所得税の定額減税可能額 9万円(3万円×3人)
- Aさんの令和6年確定所得税額:5万円
- 本来給付すべき額:9万円 – 5万円 = 4万円
- 不足額給付Ⅰの支給額:4万円(本来額) – 1万円(当初給付額) = 3万円
不足額給付Ⅱの支給額
定額減税や低所得者向け給付金のいずれの対象にもならなかった方への支援です。
- 原則:1人あたり4万円(所得税分3万円+住民税分1万円)
- 令和6年1月1日時点で国外居住者だった場合:3万円(所得税分のみ)
- 個々の状況により、1万円~3万円の間で変動する場合があります。
対象者と条件
給付金の対象となるには、令和7年1月1日時点でいずれかの市区町村に住民登録があることが基本条件です。その上で、以下のいずれかに該当する必要があります。
対象外となる主なケース
納税者本人の合計所得金額が1,805万円を超える場合は、定額減税の対象外となるため、本給付金の対象にもなりません。
不足額給付Ⅰの対象となる方の例
- 令和6年中に所得が減少した方:休職や転職などで、令和5年より令和6年の所得が減り、所得税額が当初の推計より少なくなった方。
- 令和6年中に扶養親族が増えた方:結婚や子どもの出生などで、定額減税の対象人数が増えた方。
- 税の修正申告をした方:当初調整給付の算定後に修正申告を行い、住民税所得割額が減少した方。
- 令和6年1月2日以降に入国した方:令和6年中に居住者となり所得税が発生し、かつ定額減税しきれない額が発生した方。
不足額給付Ⅱの対象となる方の例
以下の3つの条件をすべて満たす方が対象です。
- 令和6年分所得税および令和6年度分個人住民税所得割が両方とも非課税の方。
- 税法上の「扶養親族等」に該当しない方。
- 低所得世帯向け給付金(令和5年度または令和6年度実施)の対象世帯の世帯主・世帯員ではない方。
具体的には、以下のような方が該当する可能性があります。
- 青色事業専従者や事業専従者(白色)の方
- 合計所得金額が48万円を超えているため、親族の扶養から外れている方
給付金の使途について
本給付金は、物価高騰に対する生活支援を目的としているため、使途に制限はありません。生活費、教育費、貯蓄など、自由にご活用いただけます。また、この給付金は「物価高騰対策給付金に係る差押禁止等に関する法律」により、差し押さえが禁止されており、非課税所得となります。
申請方法と手順
申請手続きは、お住まいの市区町村が対象者の状況を把握しているかによって、いくつかのパターンに分かれます。多くの自治体では、令和7年7月下旬頃から順次、対象者へ案内書類が発送されます。
ステップ1:自治体からの通知を確認する
届く書類は主に以下の3種類です。どの書類が届くか確認しましょう。
- 【パターンA】「支給のお知らせ」が届いた方:
原則、手続きは不要です。当初調整給付金を受け取った口座や、公金受取口座に自動的に振り込まれます。振込口座の変更や受給辞退を希望する場合のみ、記載の期限までに手続きが必要です。 - 【パターンB】「支給確認書」が届いた方:
手続きが必要です。自治体が振込口座を把握していない場合に送付されます。内容を確認し、必要事項を記入、本人確認書類や口座確認書類のコピーを添付して、同封の返信用封筒で返送します。電子申請が可能な自治体も多いです。 - 【パターンC】「申請書」が届いた方(または自分で取得する方):
申請が必要です。令和6年1月2日以降に転入してきた方など、自治体が課税情報を把握していない場合に送付されます。ご自身で給付額を算定し、必要書類を添えて申請します。
ステップ2:申請期限とスケジュール
申請期限:令和7年10月31日(金曜日)まで
※多くの自治体でこの日に設定されていますが、必ずお住まいの自治体の情報を確認してください。期限を過ぎると、いかなる理由があっても受け付けられません。
- 書類発送時期:令和7年7月下旬から順次
- 支給開始時期:(手続き不要の方)令和7年8月中旬~下旬頃から順次
(手続きが必要な方)書類提出後、不備がなければ3週間~1か月半程度で振込
必要書類リスト
「確認書」や「申請書」を提出する場合、一般的に以下の書類が必要です。
- 申請・請求者本人確認書類の写し(マイナンバーカード、運転免許証、健康保険証など)
- 振込先金融機関口座確認書類の写し(通帳やキャッシュカードの、金融機関名・支店名・口座番号・口座名義人がわかる部分)
- (代理人が申請する場合)代理人の本人確認書類の写し、委任状など
- (転入者などの場合)令和6年度の課税証明書や、前住所地での当初調整給付の支給額がわかる書類など
確実に給付金を受け取るためのチェックポイント
この給付金は、要件を満たせば基本的に全員が受け取れます。しかし、手続きのミスで支給が遅れたり、受け取れなくなったりするケースも考えられます。以下の点に注意しましょう。
- 住所変更の確認:案内は住民票の住所に届きます。引っ越しをした方は、郵便物の転送手続きなどを確認しておきましょう。
- 書類の記入漏れ・不備:提出前に、記入漏れや添付書類の不足がないか、複数回チェックしましょう。特に口座情報の書き間違いには注意が必要です。
- 申請期限の厳守:期限は絶対です。書類が届いたら後回しにせず、早めに手続きを済ませましょう。
- 特殊詐欺に注意:市区町村や国の職員がATMの操作をお願いしたり、手数料の振込を求めたりすることは絶対にありません。不審な電話やメールには応じず、警察や自治体の窓口に相談してください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 自分が給付金の対象になるか、事前に確認できますか?
A1. 個人情報に関わるため、電話やメールでの個別の対象確認はできない自治体がほとんどです。まずは7月下旬以降に自治体から送付される通知をお待ちください。ご自身の令和6年の所得状況(源泉徴収票や確定申告書)と、この記事の対象者要件を照らし合わせて、ある程度の目安をつけることは可能です。
Q2. 令和6年中に引っ越した場合、どこから給付金が支給されますか?
A2. この給付金は、令和7年1月1日時点で住民登録のある市区町村から支給されます。例えば、令和6年11月にA市からB市へ引っ越した場合、B市が申請先となります。その際、A市での当初調整給付の受給状況などを証明する書類が必要になる場合があります。
Q3. 当初調整給付の対象外でしたが、不足額給付の対象になることはありますか?
A3. あります。例えば、令和5年分の所得が1,805万円を超えていたため当初調整給付の対象外だった方が、令和6年分の所得は1,805万円以下になり、かつ定額減税しきれない額が発生した場合などは、不足額給付Ⅰの対象となる可能性があります。
Q4. 申請を忘れて期限が過ぎてしまいました。今からでも申請できますか?
A4. 申請期限(令和7年10月31日など)を過ぎた場合、どのような理由があっても申請を受け付けてもらうことはできません。給付金を受け取る権利を辞退したものとみなされますので、必ず期限内に手続きを完了させてください。
Q5. この給付金を受け取ると、扶養から外れたりしますか?
A5. いいえ、この給付金は非課税所得であり、税法上の合計所得金額には含まれません。したがって、この給付金を受け取ったことが原因で、配偶者控除や扶養控除の対象から外れることはありません。
まとめと次のアクション
定額減税補足給付金(不足額給付)は、定額減税の恩恵を十分に受けられなかった方への重要な支援策です。ご自身が対象になるかを確認し、期限内に適切な手続きを行いましょう。
重要ポイントの再確認
- 対象者:令和6年の定額減税で不足が生じた方、またはどの支援策の対象にもならなかった方。
- 通知時期:令和7年7月下旬頃から順次、お住まいの市区町村から案内が届きます。
- 申請期限:令和7年10月31日(金)が目安。期限厳守です。
- 手続き:「支給のお知らせ」なら手続き不要、「確認書」「申請書」なら手続きが必要です。
まずは、お住まいの市区町村のウェブサイトで「定額減税補足給付金」や「不足額給付」に関する情報が公開されていないか確認してみてください。不明な点があれば、各自治体が設置する給付金専用のコールセンターに問い合わせましょう。