昨今の光熱費や食材費、燃料費の急激な高騰は、日々のサービス提供に不可欠なエネルギーや物資を多く消費する介護施設にとって、経営上の大きな課題となっています。安定した介護サービスを継続するため、コスト削減に努めているものの、その影響は避けがたい状況ではないでしょうか。
この記事では、そんな厳しい状況にある愛知県内の介護サービス事業者の皆様を支援するために設けられた「愛知県社会福祉施設物価高騰対策支援金（介護区分）」について、対象施設、支援金額、申請方法などを徹底的に解説します。この支援金を活用し、物価高騰の波を乗り越え、質の高い介護サービスを提供し続けるための一助としてください。
この記事でわかること
- 支援金の目的と誰が対象になるのか
- 施設の種類ごとにいくら支援されるのか
- 申請期間と具体的な手続きの流れ
- 申請する上での注意点や採択のポイント
愛知県社会福祉施設物価高騰対策支援金（介護区分）の概要
まずは、この支援金がどのような制度なのか、基本的な情報を確認しましょう。
正式名称と実施組織
- 正式名称： 令和6年度愛知県社会福祉施設物価高騰対策支援金（介護区分）
- 実施組織： 愛知県
目的・背景
この支援金は、昨今の光熱費、食材費、燃料費の高騰の影響を受けながらも、地域に不可欠な介護サービスの安定的な提供を継続している施設等を支援することを目的としています。物価高騰による経営負担を軽減し、利用者が安心してサービスを受けられる環境を維持するために設けられました。
支援金額・支援単価
支援金額は、施設の類型やサービス種別、定員数、車両台数に応じて算出される定額助成です。以下に対象施設と支援単価をまとめました。
| 類型 | サービス種別 | 光熱費 | 食材費 | 燃料費 |
|---|---|---|---|---|
| 通所系 | 通所介護 | 1定員当たり 3,000円 |
1定員当たり 3,300円 |
要件を満たす 1車両当たり 18,000円 |
| 地域密着型通所介護 | ||||
| 認知症対応型通所介護 | ||||
| 通所リハビリテーション | ||||
| 多機能型 | 小規模多機能型居宅介護 | 1定員当たり 8,000円 (宿泊サービス定員数のみ対象) |
1定員当たり 9,900円 (宿泊サービス定員数のみ対象) |
要件を満たす 1車両当たり 11,000円 (一部サービスは申請台数制限あり) |
| 看護小規模多機能型居宅介護 | ||||
| 入所施設・ 居住系 |
介護老人福祉施設 | – | – | |
| 地域密着型介護老人福祉施設 | ||||
| 介護老人保健施設 | ||||
| 介護医療院 | ||||
| 特定施設入居者生活介護 | ||||
| 地域密着型特定施設入居者生活介護 | ||||
| 認知症対応型共同生活介護 | ||||
| 短期入所生活介護（空床型を除く） | ||||
| 訪問・ 相談系 |
訪問介護 | – | – | 要件を満たす 1車両当たり 11,000円 (一部サービスは申請台数制限あり) |
| 定期巡回・随時対応型訪問介護看護 | ||||
| 夜間対応型訪問介護 | ||||
| 訪問看護 | ||||
| 訪問入浴介護 | ||||
| 訪問リハビリテーション | ||||
| 居宅療養管理指導 | ||||
| 居宅介護支援 |
計算例
例：定員30名の地域密着型通所介護事業所で、送迎車両を3台保有している場合
- 光熱費支援： 3,000円 × 30人 = 90,000円
- 食材費支援： 3,300円 × 30人 = 99,000円
- 燃料費支援： 18,000円 × 3台 = 54,000円
- 合計支援額： 90,000 + 99,000 + 54,000 = 243,000円
対象者・主な要件
支援金を受け取るためには、いくつかの要件を満たす必要があります。自施設が対象となるか、以下の項目をしっかり確認してください。
- 基準日： 令和7年3月1日時点において、愛知県内に所在し、対象となる介護サービスを現に提供していること。
- 運営主体： 国、都道府県、市町村が運営する施設等は対象外です。
- 費用負担： 運営する法人等が自ら光熱費、食材費、燃料費を負担していること。
- 実績要件： 原則として、令和7年2月分サービスの提供に係る介護報酬請求実績のない施設等は対象外です（養護老人ホーム、軽費老人ホームを除く）。
- 事業継続： 申請後、支援金の入金日までの間に廃止する施設等は対象外です。
- 新規開設の特例： 令和7年3月1日に新たに指定を受けた等の特別な事情がある施設等は、対象となる場合がありますので、コールセンターへの相談が必要です。
- 多機能型の注意点： 小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護については、宿泊サービスの利用定員数のみが対象となります。
補助対象経費
この支援金の対象となる経費は、介護サービスの提供に要する以下の費用（高騰相当分）です。
- 光熱費： 電気代、ガス代、水道代など、施設の運営にかかる光熱水費。
- 食材費： 利用者への食事提供にかかる材料費。
- 燃料費： 利用者の送迎や訪問サービスに使用する車両のガソリン代、軽油代など。
申請方法・手順
申請は法人単位で取りまとめ、原則として電子申請で行います。スムーズに手続きを進めるために、手順と期間をしっかり把握しておきましょう。
申請受付期間
令和7年4月21日（月曜日）から 令和7年6月20日（金曜日）午後5時まで
【重要】 申請期間は短く、期限を過ぎると一切受理されません。早めの準備と申請を心がけてください。
申請ステップ
- 事前準備：公式サイトから「申請マニュアル」「質疑応答集」「電子申請マニュアル」をダウンロードし、内容を熟読します。
- 情報整理：法人内で対象となる全施設の情報を整理・集約します（施設名、サービス種別、定員数、車両台数など）。
- 電子申請：申請マニュアルに記載された専用申請フォームにアクセスし、必要事項を入力して申請を完了させます。
- 申請書保管：申請完了後、確認用の申請書を必ずダウンロードし、適切に保管してください。
交付決定と振込
申請内容の審査後、適正と認められると指定口座に支援金が振り込まれます。個別の交付決定通知書は発送されず、口座への振り込みが交付決定の通知を兼ねます。振込は令和7年5月末から8月上旬頃が予定されています。
確実に受給するためのポイント
この支援金は、要件を満たしていれば基本的に交付されるものですが、手続きのミスで対象外とならないよう、以下の点に注意しましょう。
- 法人単位での申請を徹底する： 施設ごとにバラバラに申請すると受理されません。必ず法人の代表者が取りまとめて申請してください。
- 対象要件を再確認する： 基準日時点でのサービス提供状況や、公的機関運営でないかなど、対象要件を再度チェックしましょう。
- 入力情報に誤りがないか確認する： 特に振込先口座の情報（金融機関名、支店名、口座種別、口座番号、口座名義）は、通帳を見ながら正確に入力してください。
- 申請期間を厳守する： 締め切り直前はアクセスが集中する可能性もあります。余裕を持ったスケジュールで申請を完了させましょう。
よくある質問（FAQ）
Q1. 複数の施設を運営していますが、申請はどのようにすれば良いですか？
A1. 申請は法人単位で行う必要があります。同一法人で運営している対象施設すべての情報をまとめて、1回の申請で手続きしてください。
Q2. 申請すれば必ずもらえますか？
A2. 交付要綱に定められた要件をすべて満たしていれば、基本的に交付されます。ただし、申請内容に不備や虚偽があった場合は対象外となりますので、正確な情報で申請してください。
Q3. 申請期間を過ぎてしまいました。
A3. 理由の如何を問わず、期限を過ぎた申請は一切受理されません。必ず期間内に手続きを完了させてください。
Q4. 交付決定通知書は送られてきますか？
A4. 交付決定通知書の発送はありません。申請時に指定した口座への支援金の振り込みをもって、交付決定の通知となります。通帳には「アイチカイゴブッカコウトウ」と印字される予定です。
Q5. 申請内容についてどこに問い合わせれば良いですか？
A5. 本支援金に関する専用のコールセンターが設置されています。不明な点があれば、こちらにお問い合わせください。
【専用ダイヤル】052-990-6359
【専用メールアドレス】kaigo-taisaku_hr@athuman.com
（業務委託先：ヒューマンリソシア株式会社）
まとめ
今回は、「愛知県社会福祉施設物価高騰対策支援金（介護区分）」について詳しく解説しました。この支援金は、物価高騰に直面する介護事業者の経営を支える重要な制度です。
重要ポイントの再確認
- 対象： 愛知県内の対象介護サービスを提供する施設（公的機関運営は除く）
- 支援内容： 光熱費、食材費、燃料費の高騰分を定額で支援
- 申請単位： 法人単位での一括申請
- 申請方法： 原則、電子申請
- 申請期間： 令和7年4月21日～6月20日（期限厳守）
申請期間は限られています。対象となる事業者の皆様は、公式サイトで最新情報を確認し、早めに準備を進めてください。この支援金を有効に活用し、今後も利用者のための質の高いサービス提供を継続していきましょう。