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【2025年】移動支援事業とは?障がい者の外出を助けるガイドヘルプの対象者・料金・申請方法を解説

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障がいのある方やそのご家族にとって、「外出」が一つの大きなハードルになっていませんか?「手続きに行きたいけど一人では不安」「たまには映画や買い物に出かけたい」。そんな切実な願いをサポートし、地域での自立した生活と社会参加を後押しするのが「移動支援事業」です。これは、障害者総合支援法に基づき、各市区町村が実施している公的なサービスで、一般に「ガイドヘルプサービス」とも呼ばれています。この記事では、あなたの「行きたい」を現実に変える移動支援事業について、対象となる方、利用できるサービス内容、気になる料金、そして申請から利用開始までの具体的なステップを、誰にでも分かりやすく徹底的に解説します。この制度を正しく理解し、活用することで、あなたの生活の可能性はもっと広がるはずです。

この記事でわかること

  • 移動支援事業(ガイドヘルプ)の基本的な仕組み
  • どんな人がサービスを利用できるのか(対象者)
  • 利用料金の目安と負担を軽減する仕組み
  • 「できること」と「できないこと」(対象となる外出例)
  • 相談からサービス利用開始までの具体的な手順
  • 申請をスムーズに進めるためのポイントと注意点

移動支援事業の概要

まずは、移動支援事業がどのような制度なのか、基本的な部分から見ていきましょう。

移動支援事業の目的と根拠

移動支援事業は、障害者総合支援法に基づく「地域生活支援事業」の一つです。その主な目的は、屋外での移動に困難がある障がい者(児)に対して、ガイドヘルパーが外出の支援を行うことにより、地域での自立した生活と積極的な社会参加を促進することにあります。単なる移動手段の提供ではなく、社会とのつながりを持ち、豊かな生活を送るための重要なサポート制度です。

実施主体

この事業の実施主体は、お住まいの市区町村です。そのため、対象者の詳細な要件や、利用できる時間数、対象となる外出の範囲などは、自治体によって若干異なる場合があります。利用を検討する際は、必ずご自身の市区町村の障害福祉担当窓口に確認することが大切です。

対象者・利用条件

では、具体的にどのような方がこのサービスを利用できるのでしょうか。一般的な対象者は以下の通りですが、前述の通り、詳細はお住まいの自治体にご確認ください。

  • 視覚障がい者: 身体障害者手帳(視覚障害)の1級または2級を所持している方など。
  • 全身性障がい者: 両上肢・両下肢に重度の障がいがある方や、体幹機能障がいで車いすの自走が困難な方など。
  • 知的障がい者: 療育手帳を所持しており、単独での外出が困難な方。
  • 精神障がい者: 精神障害者保健福祉手帳を所持しており、単独での外出に不安がある、または困難な方。
  • 難病患者等: 障害者総合支援法の対象疾患に該当し、外出に支援が必要な方。

【重要】他のサービスとの関係
原則として、障害福祉サービスの「同行援護(視覚障がい者向け)」「行動援護(知的・精神障がい者向け)」「重度訪問介護」の支給決定を受けている方は、移動支援の対象外となることが多いです。どのサービスがご自身の状況に最も適しているか、相談支援専門員や市区町村の窓口で相談しましょう。

利用料金と支給時間

サービスの利用にあたって、費用は最も気になるところだと思います。移動支援事業は、利用者の負担が大きくならないような仕組みになっています。

利用者負担の仕組み

利用者負担は、原則としてサービスにかかった費用の1割です。しかし、所得に応じて1ヶ月あたりの負担上限額が定められており、それを超える金額を支払う必要はありません。これにより、サービスをたくさん利用しても、家計への負担が過大になるのを防いでいます。

負担上限月額の例

負担上限月額は、世帯の所得状況によって区分が分かれています。以下は一般的な例です(金額は自治体により異なります)。

区分 世帯の収入状況 負担上限月額
生活保護 生活保護受給世帯 0円
低所得 市区町村民税非課税世帯 0円
一般1 市区町村民税課税世帯(所得割16万円未満など) 9,300円
一般2 上記以外 37,200円

※障がい児(18歳未満)の場合は、一般1の上限額が4,600円となるなど、異なる区分が適用される場合があります。

支給される時間の上限

利用できる時間は無制限ではなく、1ヶ月あたりの「支給量」として上限が定められます。この時間数は、利用者の心身の状況や生活環境、利用希望などを考慮して市区町村が決定します。例えば、月20時間~50時間程度が一般的ですが、これも自治体や個々の状況によって変動します。

どんな外出に使えるの?(対象サービス)

移動支援は、大きく分けて「社会生活上必要不可欠な外出」と「余暇活動等の社会参加のための外出」に利用できます。具体的にどのような外出が対象になるのか、例を見てみましょう。

対象となる外出の具体例

  • 公的手続き: 役所での手続き、金融機関での用事など。
  • 買い物: 日用品や衣料品の買い物。
  • 冠婚葬祭: 結婚式やお葬式への出席。
  • 文化・教養活動: 映画鑑賞、コンサート、美術館、図書館、講演会への参加。
  • レクリエーション: プール、ボウリング、カラオケ、散歩など。
  • その他: 理美容院、お墓参り、選挙の投票など。

対象とならない外出の例

一方で、以下のような目的の外出には原則として利用できません。

  • 経済活動: 通勤、営業活動、仕事の会合など。
  • 通年かつ長期にわたる外出: 毎日の通学や福祉サービス事業所への通所(※例外あり)。
  • 定期的な通院: 定期的な通院は、原則として「居宅介護(通院等介助)」の対象となります。ただし、突発的な体調不良による受診などは移動支援の対象となる場合があります。
  • 宿泊を伴う外出: 移動支援は原則として1日の範囲内で完結する外出が対象です。
  • ギャンブルや飲酒が主目的の外出。

申請から利用までの流れ

移動支援サービスを利用するためには、事前の申請と手続きが必要です。ここでは、一般的な利用開始までの流れをステップごとに解説します。

  1. 市区町村の窓口へ相談: まずは、お住まいの市区町村の障害福祉担当課や相談支援事業所に相談します。制度の説明を受け、申請に必要な書類などを確認します。
  2. 支給申請: 教えてもらった必要書類を揃えて、窓口に提出します。申請書には、どのような目的で、月に何時間くらいサービスを利用したいかを記入します。
  3. 審査・支給決定: 市区町村が提出された書類をもとに、サービス利用の必要性を審査し、1ヶ月あたりの支給時間などを決定します。
  4. 受給者証の交付: 支給が決定すると、支給量や利用者負担上限月額などが記載された「福祉サービス受給者証」が自宅に届きます。
  5. 事業者との契約: 受給者証が届いたら、移動支援サービスを提供している事業者(事業所一覧は市区町村からもらえます)の中から利用したい事業者を選び、連絡を取って利用契約を結びます。
  6. 利用開始: 事業者と具体的な外出計画を立て、サービスの利用を開始します。

申請に必要な書類(一般的な例)

  • 支給申請書(窓口で入手)
  • 障害者手帳(身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳など)
  • マイナンバーが確認できる書類
  • 印鑑
  • その他、市区町村が指定する書類

よくある質問(FAQ)

Q1. 家族が運転する自家用車にヘルパーさんが同乗して支援してもらうことはできますか?

A1. これは自治体や事業者の判断によります。安全確保の観点から認めていない場合もあれば、一定の条件下で認めている場合もあります。利用を希望する場合は、契約する事業者や市区町村に事前に確認することが重要です。

Q2. 決められた支給時間を超えて利用したい場合はどうなりますか?

A2. 支給時間を超えてサービスを利用した場合、その超過分は全額自己負担(10割負担)となります。利用時間の管理は非常に重要ですので、事業者と連携しながら計画的に利用しましょう。生活状況の変化などで支給時間の追加が必要な場合は、市区町村に支給量変更の申請を行うことができます。

Q3. ヘルパーさんの交通費や施設の入場料はどうなりますか?

A3. 外出に伴って発生するヘルパーさんの交通費や、有料施設を利用する場合の入場料などは、原則として利用者負担となります。サービス料金とは別にかかる費用ですので、事前に確認しておきましょう。

Q4. プールや銭湯の中での介助もお願いできますか?

A4. 自治体によっては対象としている場合があります。ただし、安全確保の観点から、損害保険への加入や救命講習の受講など、特定の要件を満たした事業者のみが提供できるケースがほとんどです。すべての事業所で対応できるわけではないため、利用したい場合は対応可能な事業所を探す必要があります。

Q5. 複数の事業者と契約することはできますか?

A5. はい、可能です。例えば、「平日はA事業所、土日はB事業所」といったように、目的や都合に合わせて複数の事業所を使い分けることができます。ただし、月の合計利用時間が支給量の上限を超えないように、ご自身と各事業所でしっかりと管理する必要があります。

まとめ:社会参加への第一歩を踏み出そう

移動支援事業は、障がいのある方の行動範囲を広げ、社会とのつながりを深めるための非常に心強い制度です。これまで諦めていた場所へ出かけたり、新しい趣味を見つけたりするきっかけになるかもしれません。

重要ポイントの再確認

  • 目的: 地域での自立生活と社会参加の促進。
  • 対象: 屋外での移動に困難がある障がい者(児)。
  • 費用: 原則1割負担で、所得に応じた月額上限あり。
  • 内容: 公的手続きから余暇活動まで幅広い外出をサポート。
  • 窓口: まずはお住まいの市区町村の障害福祉担当課へ相談。

この記事を読んで「自分も使ってみたい」「家族に勧めたい」と思われた方は、ぜひ最初の一歩として、お住まいの市区町村の窓口に電話をかけてみてください。専門の職員が、あなたの状況に合わせたアドバイスをしてくれるはずです。移動支援事業を賢く活用し、より豊かでアクティブな毎日を送りましょう。