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【2025年】重度訪問介護利用者の大学修学支援事業|通学・学内介護費用を助成

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「重度の障害があっても、大学で専門的な知識を学びたい」
その強い想いを実現するため、経済的な壁や物理的な障壁に悩んでいませんか?特に、通学やキャンパス内での移動、食事、排泄などの身体介護をどう確保するかは、ご本人やご家族にとって大きな課題です。この記事でご紹介する「重度訪問介護利用者等大学修学支援事業」は、そんな悩みを解決し、あなたの学びたいという意欲を力強く後押しする制度です。この事業は、大学の支援体制が整うまでの間、通学や学内での身体介護にかかる費用を自治体が助成してくれるものです。この記事では、制度の詳しい内容から対象者、申請方法、そして利用する上でのポイントまで、どこよりも分かりやすく徹底解説します。あなたの大学生活への第一歩を、この制度と共に踏み出しましょう。

① 重度訪問介護利用者等大学修学支援事業とは?

制度の概要

「重度訪問介護利用者等大学修学支援事業」は、重度の障害を持つ学生が大学等で学ぶ際に必要となる、通学やキャンパス内での身体介護を支援するための制度です。障害のある学生への支援は、本来、大学が「合理的配慮」として提供する責任がありますが、特に重度の身体障害がある学生への常時介護体制をすぐに構築するのは難しい場合があります。この事業は、そうした大学側の支援体制が整うまでの過渡的な期間において、自治体がヘルパー派遣などの費用を助成し、学生の修学機会を保障することを目的としています。

ポイント:この制度は、国の「地域生活支援促進事業」の一環として、各市区町村が実施主体となって運営されています。そのため、お住まいの自治体によって制度の有無や詳細な内容が異なる場合があります。

実施組織と背景

  • 国の役割:厚生労働省が「地域生活支援促進事業」として制度の枠組みを作り、自治体に補助金を交付しています。
  • 実施主体:実際に申請受付や支給決定を行うのは、申請者がお住まいの市区町村です。

この事業が創設された背景には、障害のある学生が教育を受ける権利を保障し、その後の社会参加を促進するという強い国の意志があります。これまで経済的・物理的な理由で大学進学を諦めざるを得なかった重度障害者にとって、大きな希望となる制度です。

② 助成金額・利用者負担

この事業は、直接現金が給付されるものではなく、サービス利用にかかる費用の一部を自治体が負担する「現物給付」の形が基本です。利用者の自己負担は、原則としてサービス費用の1割となります。

利用者負担上限月額について

自己負担が青天井にならないよう、他の障害福祉サービスと同様に、世帯の所得に応じた「利用者負担上限月額」が設定されています。この事業での自己負担額と、他の障害福祉サービス(居宅介護など)の負担額を合算した金額が、この上限月額を超えることはありません。

世帯の収入状況 負担上限月額
生活保護受給世帯 0円
市町村民税非課税世帯 0円
市町村民税課税世帯(所得割16万円未満) 9,300円
上記以外(所得割16万円以上) 37,200円

※この表は一般的な障害福祉サービスの負担上限額です。詳細はお住まいの自治体にご確認ください。

計算例:例えば、上限月額が9,300円の方が、在宅での重度訪問介護で5,000円の自己負担があり、大学修学支援事業で7,000円の自己負担が発生した場合でも、実際に支払う合計額は上限の9,300円となります。

③ 対象者・条件

この事業を利用するには、利用者本人、通学先の大学、サービスを提供する事業者のそれぞれが一定の要件を満たす必要があります。

(1)利用者(学生)の要件

  • お住まいの市区町村から障害福祉サービスの支給決定を受けている、または受ける見込みがあること。
  • 重度訪問介護の対象者であること。(※必ずしも重度訪問介護の支給決定を受けている必要はない場合があります。例:つくば市)
  • 大学、大学院、短期大学、高等専門学校、専修学校等に在学していること。
  • 入学後に停学などの処分を受けていないこと。
  • 病気や留学など正当な理由なく、修得単位数が極端に少ないなど、学習意欲に欠けると判断される状況にないこと。

(2)大学等の要件

  • 障害のある学生の支援について協議・決定する委員会(障害学生支援委員会など)が設置されていること。
  • 障害のある学生からの相談に応じる専門部署や相談窓口(障害学生支援室など)が設置されていること。
  • 大学として、重度障害学生に対する支援体制を構築するための具体的な計画があり、着実に実行されていること。(※初めて利用する場合は「計画を立てる予定」でも可とされる場合があります)

(3)サービス提供事業者の要件

  • 重度訪問介護を実施する指定障害福祉サービス事業者であること。
  • 大学側と連携し、利用者の状況や適切な支援方法について情報提供を行うなど、大学の支援体制構築に協力できること。

④ 補助対象となる支援内容

この事業で対象となるのは、あくまで大学での「修学」に必要な「身体介護」です。学業そのものへの支援(ノートテイクなど)や、修学に関わらない活動は対象外となるため注意が必要です。

対象となる支援(例) 対象とならない支援(例)
自宅から大学までの通学における移動介護 授業中のノートテイクやPC入力代行
キャンパス内の教室移動の介助 図書館での文献調査や資料の代読
昼食時の食事介助 サークル活動や部活動への参加支援
トイレでの排泄介助 通学・帰宅途中の買い物や余暇活動
授業準備のための着替えや姿勢保持 友人との交流や学内イベント参加の支援

重要:対象外となるノートテイクや学業支援は、大学が提供すべき「合理的配慮」に該当します。これらは大学の障害学生支援室に相談しましょう。また、修学に関わらない余暇活動などは、通常の「重度訪問介護」のサービスとして利用できる可能性があります。

⑤ 申請方法・手順

申請手続きは、関係者との調整が必要なため、時間に余裕を持って進めることが重要です。入学が決まったら、できるだけ早く動き始めましょう。

  1. ステップ1:事前相談・調整
    まず、お住まいの市区町村の障害福祉担当課に、この事業を利用したい旨を相談します。同時に、進学先の大学の障害学生支援室、利用を希望する重度訪問介護事業者とも連絡を取り、三者間で支援内容や計画について調整を開始します。
  2. ステップ2:必要書類の準備
    自治体の指示に従い、申請に必要な書類を準備します。主な書類は以下の通りです。(自治体により異なります)
    • 支給申請書
    • 事業利用計画書(どのような支援がいつ必要か具体的に記載)
    • 大学の承諾書
    • 在学証明書または合格通知書
    • 大学の障害学生支援体制に関する資料
    • 障害福祉サービス受給者証のコピー
  3. ステップ3:申請
    すべての書類が揃ったら、市区町村の担当窓口に提出します。
  4. ステップ4:支給決定・通知
    自治体で審査が行われ、利用が認められると「支給決定通知書」が交付されます。支給期間は、原則として申請日から年度末(3月31日)までとなることが多いです。
  5. ステップ5:サービス利用開始
    支給決定後、事業者と契約を結び、計画に沿ってサービスの利用を開始します。

申請期限と支給期間

申請は随時受け付けている自治体がほとんどですが、調整に時間がかかるため早めの行動が肝心です。支給期間は年度末までで区切られ、次年度も継続して利用する場合は更新手続きが必要となります。更新の際には、大学の支援体制構築の進捗状況などが確認されます。

⑥ 支給決定のポイント

この事業は要件を満たせば基本的に利用できますが、スムーズに支給決定を受けるためにはいくつかのポイントがあります。

  • 大学との強固な連携:最も重要なポイントです。大学側が障害学生支援に前向きで、具体的な支援計画を持っていることを示す書類を提出できるかが鍵となります。申請前から大学の担当者と密にコミュニケーションを取りましょう。
  • 具体的で現実的な利用計画書:「いつ、どこで、どのような身体介護が、何時間必要か」を時間割などに沿って具体的に示した利用計画書を作成することが重要です。事業者と相談しながら、現実的な計画を立てましょう。
  • 早めの相談と行動:合格が分かった時点、あるいは受験を検討している段階から、自治体や大学に情報収集を始めることをお勧めします。関係各所との調整には予想以上に時間がかかることがあります。
  • 修学への強い意欲:面談などがある場合、なぜその大学で学びたいのか、将来どうしたいのかといった、修学への強い意欲を伝えることも大切です。

⑦ よくある質問(FAQ)

Q1. まだ重度訪問介護のサービスを使ったことがなくても申請できますか?

A1. はい、申請できます。多くの自治体では「重度訪問介護の対象者」であることが要件であり、必ずしも事前にサービスの利用実績が必要なわけではありません。詳しくは、お住まいの市区町村の障害福祉担当課にご確認ください。

Q2. どの大学に進学しても利用できますか?

A2. 大学側が障害学生支援の体制(委員会や窓口の設置)を整え、今後の支援体制構築計画を示すことが要件となっています。そのため、大学側の協力が不可欠です。進学を希望する大学の障害学生支援室などに、この事業を利用したい旨を事前に相談することが重要です。

Q3. 卒業までずっと利用し続けられますか?

A3. この事業は、あくまで「大学の支援体制が構築されるまで」の支援と位置づけられています。そのため、年度ごとの更新審査があり、大学側の支援体制の進捗状況が確認されます。大学の支援体制が整ったと判断された場合は、事業の利用が終了し、大学の支援に移行することになります。

Q4. 自分の住んでいる市町村でこの事業が実施されているか、どうすればわかりますか?

A4. 最も確実な方法は、お住まいの市区町村のウェブサイトで「重度訪問介護 大学修学支援」などのキーワードで検索するか、障害福祉担当課に直接電話で問い合わせることです。千葉市、神戸市、つくば市など多くの自治体で実施されています。

Q5. 一人暮らしをして大学に通う場合も対象になりますか?

A5. はい、対象になります。住民票がある市区町村が申請先となります。一人暮らしを始める場合は、転居先の市区町村で障害福祉サービスの支給決定を受け、その自治体で本事業の申請を行うことになります。手続きに時間がかかるため、引越しの計画と並行して早めに相談を開始してください。

⑧ まとめと次のステップ

「重度訪問介護利用者等大学修学支援事業」は、重い障害があっても大学で学ぶことを諦めないための、非常に重要なセーフティネットです。この制度を最大限に活用し、充実したキャンパスライフを送るためのポイントを再確認しましょう。

  • 対象:重度訪問介護の対象者で、大学等で学ぶ意欲のある方。
  • 支援内容:通学や大学内での身体介護(移動、食事、排泄など)。
  • 自己負担:原則1割(所得に応じた上限額あり)。
  • 重要ポイント:大学・事業者・自治体の三者連携が不可欠。

【次に行うべきアクション】
1. まずは、お住まいの市区町村の障害福祉担当課に電話し、この事業の実施状況と詳細について問い合わせましょう。
2. 次に、進学希望の大学の障害学生支援室(または学生課)に連絡し、重度障害学生の受け入れ実績や支援体制について確認し、この事業を利用したい旨を伝えましょう。

あなたの学びへの挑戦は、決して一人ではありません。この制度を活用し、多くの関係者と連携することで、道は必ず開けます。この記事が、あなたの輝かしい未来への一助となることを心から願っています。