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白血病などの血液疾患に苦しむ患者さんにとって、骨髄移植は希望の光です。その治療を支えるのが、健康な方からの骨髄・末梢血幹細胞の提供(ドナー)です。しかし、ドナーになるには通院や入院が必要で、仕事への影響や経済的な負担が課題となることも少なくありません。この記事では、そんなドナーの尊い善意を支える「骨髄移植ドナー支援事業」について、制度の概要から具体的な助成金額、申請方法までを徹底的に解説します。ドナー本人だけでなく、ドナーが勤務する事業所も対象となる場合があります。あなたの善意が正当に評価され、負担が軽減されるよう、この制度を最大限に活用しましょう。
この記事のポイント
- 骨髄移植ドナーになると、自治体から助成金が受けられる制度
- ドナー本人には最大14万円程度、勤務先の事業所にも助成金が出る場合がある
- 対象者や金額はお住まいの市区町村によって異なるため、事前の確認が必須
- 申請には日本骨髄バンクが発行する証明書が必要
- 申請期限は提供完了日から1年以内が一般的
骨髄移植ドナー支援事業とは?
骨髄移植ドナー支援事業は、公益財団法人日本骨髄バンクが実施する骨髄バンク事業を通じて、骨髄または末梢血幹細胞を提供した方(ドナー)とその方が勤務する事業所の負担を軽減し、骨髄移植の推進とドナー登録者の増加を図ることを目的とした制度です。
制度の目的:ドナーの負担を減らし、移植医療を推進
ドナーになるためには、事前の健康診断、自己血採血、数日間の入院など、多くの時間と協力が必要です。仕事を休む必要があり、その間の収入減や職場への気兼ねが、提供のハードルになることがあります。この助成金は、そうした経済的・時間的な負担を補い、ドナーが安心して提供に臨める環境を整えることを目指しています。結果として、一人でも多くの患者さんが移植の機会を得られる社会に繋がります。
誰が実施しているの?:お住まいの市区町村が窓口
この事業は、国が統一して行っているものではなく、全国の各市区町村が主体となって実施しています。そのため、制度の有無、助成金額、対象者の詳細な条件などが自治体によって異なります。申請を検討する際は、まずご自身がお住まいの市区町村のウェブサイトを確認するか、保健所や健康増進課などの担当部署に問い合わせることが第一歩となります。
【いくらもらえる?】助成金額と対象者
助成金額は、自治体によって異なりますが、ドナー本人と勤務先事業所の両方が対象となるケースが多く見られます。ここでは、いくつかの自治体の例を挙げて具体的に見ていきましょう。
ドナー本人への助成金
ドナー本人への助成は、骨髄等の提供にかかった通院・入院の日数に応じて支払われるのが一般的です。
| 自治体名 | 助成額(ドナー本人) | 上限 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 東京都練馬区 | 1日につき20,000円 | 通算7日(最大14万円) | 区内在勤・在学者も対象の場合あり |
| 千葉県千葉市 | 1日につき20,000円(※) | 最大14万円 | ※2025年4月1日以降の提供。それ以前は一律10万円。 |
| 神奈川県横須賀市 | 1日につき20,000円 | 通算7日(最大14万円) | ドナー休暇制度がない事業所勤務者が対象 |
| 福島県白河市 | 1日につき20,000円 | 通算7日(最大14万円) | ドナー休暇制度がない事業所勤務者等が対象 |
このように、1日あたり2万円、上限7日間で合計14万円という設定が多くの自治体で見られます。
ドナーが勤務する事業所への助成金
ドナーが安心して休暇を取得できるよう、協力的な事業所に対しても助成金が交付される場合があります。これにより、企業側もドナー休暇制度を導入しやすくなります。
- 助成額の例:ドナーが取得した休暇1日につき10,000円
- 上限日数の例:通算7日(最大7万円)
国や地方公共団体、独立行政法人は対象外となるのが一般的です。
詳しい対象者の条件
助成金を受け取るためには、以下の条件をすべて満たす必要があります(自治体により細部は異なります)。
- 居住要件:骨髄等の提供が完了した日、または申請日に、その自治体に住民登録があること。
- 提供方法:公益財団法人日本骨髄バンクが実施する骨髄バンク事業を通じて骨髄等の提供を完了していること。
- 証明書類:日本骨髄バンクが発行する、提供を証明する書類を持っていること。
- 重複受給の禁止:他の自治体から同種の助成金を受けていないこと。
- その他:市税等の滞納がないこと、暴力団員等でないことなどが条件となる場合があります。
助成の対象となる日数とは?
助成額の計算基礎となる「日数」には、以下のための通院、入院、面談が含まれます。これらはすべて、骨髄バンクが必要と認めたものに限られます。
- 最終同意のための面談
- 健康診断のための通院・入院
- 自己血貯血のための通院
- 骨髄・末梢血幹細胞の採取のための入院
- その他、骨髄バンクが必要と認める通院、入院、面談
注意点:提供後の健康被害による通院や入院は、この助成金の対象日数には含まれません。別途、骨髄バンクの補償制度の対象となります。
【完全ガイド】申請方法と手順をステップ解説
申請手続きは自治体によって多少異なりますが、おおむね以下の流れで進みます。
Step 1: 必要書類の準備
申請に必要な書類は、ドナー本人と事業所で異なります。事前にしっかり準備しましょう。
【ドナー本人が必要な書類】
- 助成金交付申請書(ドナー用):自治体のウェブサイトからダウンロードできます。
- 日本骨髄バンクが発行する、骨髄等を提供したことを証明する書類(原本またはコピー):通院・入院日数が記載されているものが必要です。
- 本人確認書類の写し:運転免許証、マイナンバーカードなど。
- 振込先口座がわかるものの写し:通帳やキャッシュカードなど。
- (自治体による)市税の滞納がないことの証明書。
- (自治体による)ドナー休暇制度がないことを証明する書類(就業規則の写しなど)。
【事業所が必要な書類】
- 助成金交付申請書(事業所用)
- 日本骨髄バンクが発行する証明書の写し
- ドナーとの雇用関係を証明する書類(在職証明書など)
- (自治体による)ドナーが取得した休暇の日数がわかる書類(出勤簿の写しなど)
- 振込先口座がわかるものの写し
Step 2: 申請窓口と申請方法
準備した書類を、お住まいの市区町村の担当窓口(保健所、保健センター、健康増進課など)に提出します。提出方法は主に以下の3つです。
- 窓口持参:担当者と直接話せるので、不備があればその場で修正できます。
- 郵送:遠方の場合や時間が取れない場合に便利です。
- オンライン申請:練馬区や千葉市など、一部の自治体ではオンラインでの申請も可能です。マイナンバーカードや電子証明書が必要になる場合があります。
Step 3: 申請から振込までの流れ
申請後の一般的な流れは以下の通りです。
- 自治体による審査(約2週間~1か月)
- 審査結果の通知(交付決定通知書などが郵送される)
- (必要な場合)請求書を自治体に提出
- 指定口座へ助成金の振込(請求書受付後、約2週間~1か月)
申請期限はいつまで?
申請期限は「骨髄等の提供が完了し、医療機関を退院した日の翌日から1年以内」と定められている場合がほとんどです。期限を過ぎると申請できなくなるため、提供後は早めに手続きを進めましょう。
申請前にチェック!採択のためのポイントと注意点
ポイント1:お住まいの自治体の制度を必ず確認
最も重要なポイントです。繰り返しになりますが、この制度は自治体ごとに内容が大きく異なります。そもそも制度自体がない自治体もあります。インターネットで「(お住まいの市区町村名) 骨髄ドナー 助成金」などと検索し、最新の情報を必ず確認してください。
ポイント2:申請期限を厳守する
提供後は体調の回復を優先し、手続きを後回しにしがちですが、1年という期限は意外と早く過ぎてしまいます。退院したら、なるべく早い段階で申請の準備を始めることをお勧めします。
ポイント3:日本骨髄バンク発行の証明書は必須
申請の根拠となるのが、日本骨髄バンクが発行する証明書です。この書類には、提供が完了したことや、通院・入院の日数などが記載されています。紛失しないよう大切に保管し、申請時に提出できるようにしておきましょう。
注意点:ドナー休暇制度との関係
横須賀市や白河市の例のように、自治体によっては「勤務先にドナー休暇制度がないこと」を助成の条件としている場合があります。ご自身の勤務先の就業規則などを確認し、対象となるか事前にチェックしておくとスムーズです。
よくある質問(FAQ)
Q1: 骨髄提供を途中で辞退した場合も対象になりますか?
A1: 基本的には「提供を完了した」ことが条件のため、対象外となる場合がほとんどです。ただし、千葉市のように2025年4月以降は「最終同意後、提供が中止になった場合」も対象とする先進的な自治体も出てきています。お住まいの自治体の要綱をご確認ください。
Q2: 助成金に税金はかかりますか?
A2: この助成金は、地方公共団体が実施するものであり、心身に加えられた損害の補填を目的とするため、所得税法上、非課税所得として扱われるのが一般的です。詳しくは所轄の税務署にご確認ください。
Q3: 複数の自治体から二重に助成金をもらえますか?
A3: いいえ、できません。多くの自治体で、他の地方公共団体から同種の助成金を受けていないことが条件となっています。
Q4: 自分が住んでいる市に制度があるか、どうやって調べればいいですか?
A4: まずは市区町村の公式ウェブサイトで「骨髄ドナー」「ドナー支援」などのキーワードで検索してみてください。見つからない場合は、保健所や健康づくりを担当する課に電話で問い合わせるのが確実です。
Q5: 事業所の担当者です。申請に必要なことは何ですか?
A5: まずはドナーとなる従業員の方と連携し、自治体の制度内容を確認してください。その上で、申請書(事業所用)のほか、雇用関係証明書や休暇取得を証明する書類など、自治体が指定する書類を準備し、申請手続きを行ってください。
Q6: オンライン申請には何が必要ですか?
A6: 自治体によりますが、一般的にはマイナンバーカードと署名用電子証明書の暗証番号、対応するスマートフォンやICカードリーダーライタが必要です。事業所の場合は、商業登記電子証明書が必要となることがあります。詳細は各自治体の申請フォームでご確認ください。
まとめ:尊い行動を支える制度を活用しよう
骨髄・末梢血幹細胞の提供は、患者さんの命を救うことができる非常に尊い行動です。その一方で、ドナーには少なからず負担がかかります。「骨髄移植ドナー支援事業」は、その負担を社会全体で支え、ドナーの善意に報いるための重要な制度です。
もしあなたがドナーになった、あるいはこれからドナー登録を考えているのであれば、ぜひこの制度の存在を覚えておいてください。そして、提供を終えた際には、お住まいの自治体に問い合わせて、この支援制度を積極的に活用しましょう。あなたの勇気ある行動が、適切にサポートされることを願っています。
ドナー登録や骨髄移植に関する詳しい情報は、日本骨髄バンクの公式サイトをご覧ください。