「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」という病気をご存知ですか?多くの方が子供の頃にかかる「水ぼうそう」のウイルスが原因で、加齢やストレスで免疫力が低下した際に発症します。その症状は、体の片側に激しい痛みを伴う発疹が現れるというもので、皮膚症状が治った後も「帯状疱疹後神経痛」というつらい痛みが長期間続くこともあります。この帯状疱疹は、ワクチン接種で発症や重症化を予防できますが、接種費用が高額なのがネックでした。しかし、2025年度から、国の方針に基づき多くの自治体で帯状疱疹ワクチンの費用助成が開始・拡充されています。この記事では、高齢者向けの「定期接種」と、50歳以上などを対象とした「任意接種」への助成金制度について、横浜市や千葉市などの実例を交えながら、対象者、助成金額、申請方法などを徹底的に解説します。ご自身やご家族の健康を守るため、ぜひ最後までご覧ください。
この記事のポイント
- 2025年度から多くの自治体で帯状疱疹ワクチン接種の費用助成がスタート!
- 65歳などを対象とする「定期接種」と、50歳以上などを対象とする「任意接種への助成」の2種類がある。
- 助成額や自己負担額は自治体によって異なり、最大13,000円/回の助成も。
- 申請方法も「予診票が自動で届く」「事前申請が必要」など様々なので事前の確認が必須。
帯状疱疹ワクチン助成金の概要
2025年度から、帯状疱疹ワクチンは予防接種法に基づく「定期接種(B類疾病)」に位置づけられました。これにより、対象年齢の方は費用の一部助成を受けて接種できるようになります。さらに、この定期接種の対象から外れる年齢層(主に50歳以上)に対しても、独自の助成事業(任意接種への助成)を行う自治体が増えています。
制度の目的と背景
帯状疱疹は80歳までに約3人に1人が発症すると言われる身近な病気です。特に50歳代から発症率が高くなり、加齢とともに重症化しやすくなります。この制度は、ワクチン接種を促進することで、高齢者の帯状疱疹の発症および重症化を防ぎ、健康維持と生活の質の向上を図ることを目的としています。また、高額なワクチン費用の経済的負担を軽減する狙いもあります。
実施組織
この助成事業は、国の⽅針に基づき、各市区町村が主体となって実施しています。そのため、お住まいの自治体によって対象者、助成額、申請手続きなどが異なります。この記事では複数の自治体の例を挙げますが、最終的にはご自身の住民票がある市区町村の情報を確認することが最も重要です。
助成金額・自己負担額
助成の対象となるワクチンは、効果や接種回数が異なる2種類があります。どちらか一方を選択して接種することになります。助成額や自己負担額は、このワクチンの種類と自治体の方針によって決まります。
ワクチンの種類と特徴
医師と相談の上、ご自身に合ったワクチンを選びましょう。
| 項目 | 生ワクチン(ビケン) | 不活化ワクチン(シングリックス) |
|---|---|---|
| 接種回数 | 1回 | 2回(通常2か月間隔) |
| 予防効果 | 約60%(接種後1年) | 90%以上(接種後1年) |
| 持続期間 | 5年程度で効果が減弱 | 10年後も7割程度の効果 |
| 接種費用(自費の場合) | 約8,000円~10,000円 | 約20,000円~25,000円/回(合計4~5万円) |
| 注意点 | 免疫機能が低下している方は接種不可 | 免疫機能が低下していても接種可能 |
自治体別 助成内容の比較例
以下は、いくつかの自治体の2025年度の助成内容の例です。お住まいの地域と制度が異なる場合がありますので、参考としてご覧ください。
| 自治体 | 制度の種類 | 自己負担額(生ワクチン) | 自己負担額(不活化ワクチン) |
|---|---|---|---|
| 横浜市 | 定期接種 | 4,000円 | 10,000円 / 回 |
| 千葉市 | 定期接種 | 4,000円 | 10,000円 / 回 |
| 練馬区 | 任意接種助成 | 4,000円 | 11,000円 / 回 |
| 綾瀬市 | 任意接種助成 | 助成額 3,000円 | 助成額 13,000円 / 回 |
※綾瀬市のように「助成額」が定められている場合、自己負担額は「医療機関の接種費用 – 助成額」となります。
対象者・条件
対象者や条件は「定期接種」と「任意接種への助成」で大きく異なります。ご自身の年齢や状況がどちらに該当するかを確認することが第一歩です。
【重要】過去に帯状疱疹ワクチンの接種(生ワクチン1回、または不活化ワクチン2回)を完了している方は、原則として助成の対象外となります。
① 定期接種の対象者
国の制度に基づくもので、多くの自治体で共通しています。
- 原則:接種する年度内に65歳を迎える方
- 特例:60歳~64歳で、心臓、腎臓、呼吸器の機能またはヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能に重い障害(身体障害者手帳1級相当)を有する方
- 経過措置(令和7年度~11年度):より多くの方に接種機会を提供するため、5年間の経過措置が設けられています。例えば令和7年度は、65歳の方に加えて、70, 75, 80, 85, 90, 95, 100歳となる方なども対象となります(自治体により詳細が異なる場合があります)。
② 任意接種への助成対象者
こちらは自治体が独自に行う事業のため、対象年齢は様々です。定期接種の対象とならない方は、お住まいの自治体でこちらの制度がないか確認しましょう。
- 練馬区の例:接種日現在、50歳から64歳までの方(65歳になる年度の方は定期接種の対象)
- 綾瀬市の例:接種日現在、50歳以上65歳未満の方で、定期接種の対象ではない方
- 三原市の例:令和7年度に限り、定期接種の対象から外れる66歳以上の方
申請方法・手順
助成を受けるための手続きは、自治体によって大きく異なります。間違えると助成が受けられない場合もあるため、必ず事前に確認しましょう。
助成を受けるまでの一般的な流れ
- STEP 1: 対象者・制度の確認
お住まいの自治体の公式サイトや広報誌で、ご自身が対象者であるか、どのような制度があるかを確認します。 - STEP 2: 予診票・接種券の準備
自治体によって対応が異なります。
・自動送付:横浜市のように、対象者に予診票が郵送されるケース。
・事前申請が必要:綾瀬市や三原市のように、電話や窓口、インターネットで申し込み、後日予診票や助成券が送られてくるケース。
・申請不要:千葉市のように、接種券の送付はなく、直接協力医療機関に予約するケース(医療機関で予診票を受け取る)。 - STEP 3: 医療機関の予約
自治体が指定する協力医療機関に連絡し、帯状疱疹ワクチン接種の予約をします。その際、助成制度を利用したい旨を伝えましょう。 - STEP 4: 接種・支払い
予約日に医療機関へ行き、接種を受けます。窓口で自己負担額を支払います。
接種当日の持ち物リスト
- 予診票・接種券・助成券(自治体から交付されたもの)
- 本人確認書類(健康保険証、運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 接種費用(自己負担額)
- (該当者のみ)費用免除の対象であることがわかる書類
- (該当者のみ)身体障害者手帳など
- (不活化ワクチン2回目の方)1回目の予防接種済証
自己負担額が免除されるケース
多くの自治体では、以下の条件に該当する方は自己負担額が免除(無料)になります。
- 生活保護を受給している世帯の方
- 市民税非課税世帯の方
- 中国残留邦人等支援給付を受給している方
【注意!】費用免除を受けるには、接種前に申請手続きが必要な場合がほとんどです。また、接種当日に証明書類の提示が必要です。後からの払い戻しはできないため、該当する方は必ず事前に自治体の担当課へお問い合わせください。
助成を受けるためのポイント
この助成制度をスムーズに活用するために、押さえておきたいポイントをまとめました。
ポイント1:ご自身の対象年度を必ず確認する
特に定期接種の経過措置は、対象となる年齢が年度によって決まっています。ご自身の生年月日から、どの年度が対象になるのかを正確に把握し、接種の機会を逃さないようにしましょう。
ポイント2:不活化ワクチンは年度内に2回接種完了を目指す
助成期間は通常、年度末(3月31日)までです。不活化ワクチンは2回の接種が必要で、2回目の接種も期間内に終える必要があります。1回目と2回目の間隔(通常2か月)を考慮し、遅くとも1月までには1回目の接種を開始するなど、計画的に進めることが重要です。
ポイント3:償還払い(払い戻し)制度の有無を確認する
やむを得ない事情(入院、施設入所など)で、自治体が指定する協力医療機関以外で接種した場合、一度全額自己負担で支払い、後から申請することで助成額分が払い戻される「償還払い」制度を設けている自治体があります。この場合も接種前の手続きが必要なことが多いので、事前に相談しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 過去に帯状疱疹にかかったことがあっても接種できますか?
A1. はい、接種できます。帯状疱疹は再発することがあるため、接種が推奨されています。ただし、現在帯状疱疹の治療中の方は、症状が落ち着いてから接種する必要がありますので、医師にご相談ください。
Q2. 助成を使わずに自費で1回目を接種した場合、2回目は助成対象になりますか?
A2. はい、多くの自治体で対象となります。不活化ワクチンの1回目を自費で接種し、2回目を接種する時点で助成対象者である場合、2回目の接種分について助成を受けることが可能です。
Q3. どのワクチンを選べば良いですか?
A3. 生ワクチンと不活化ワクチンには、それぞれ効果の高さや持続期間、費用、副反応、接種できない条件などに違いがあります。ご自身の健康状態やライフプランなどを考慮し、かかりつけの医師とよく相談して決定することをおすすめします。
Q4. 住民票がある市町村以外で接種できますか?
A4. 原則として、住民票のある市区町村が指定する協力医療機関での接種となります。ただし、前述の「償還払い」制度などを利用できる場合もありますので、希望する場合は事前に自治体へご確認ください。
Q5. インフルエンザワクチンなど、他のワクチンと同時に接種できますか?
A5. 医師が必要と認めた場合、インフルエンザワクチンや新型コロナワクチンなどとの同時接種が可能です。ただし、生ワクチンを接種した場合、次に別の種類の生ワクチンを接種するには27日以上の間隔をあける必要があります。詳しくは接種医にご確認ください。
まとめ:まずは自治体の情報を確認しましょう
2025年度から本格的に始まった帯状疱疹ワクチンへの費用助成は、つらい痛みや後遺症から身を守るための大きな一歩です。最後に、重要なポイントを再確認しましょう。
- 制度は自治体ごとに様々:対象者、助成額、申請方法が大きく異なります。
- 対象年齢の確認:ご自身が「定期接種」か「任意接種助成」のどちらの対象になるか、または対象外かを確認しましょう。
- 事前の手続きを忘れずに:特に費用免除や償還払いを希望する場合は、接種前の手続きが不可欠です。
- 計画的な接種を:特に2回接種が必要な不活化ワクチンは、年度内に完了できるよう早めに計画を立てましょう。
ご自身の健康を守るための大切な制度です。この記事を参考に、まずはお住まいの市区町村の公式サイトで「帯状疱疹ワクチン」と検索するか、保健センターや予防接種担当課に電話で問い合わせてみましょう。正しい情報を得て、この機会を有効に活用してください。