双子や三つ子など、多胎児の妊娠・出産は大きな喜びである一方、育児の負担が大きく、外出するだけでも一苦労…と感じているご家庭も多いのではないでしょうか。そんな多胎児家庭を力強くサポートするため、多くの自治体で「多胎児家庭支援事業」が実施されています。この制度を活用すれば、タクシー代の助成を受けられたり、格安で家事・育児ヘルパーを依頼できたりと、心身と経済的な負担を大幅に軽減できます。この記事では、杉並区、名古屋市、国分寺市、中野区、堺市などの具体的な事例を交えながら、多胎児家庭支援事業の概要、助成内容、申請方法、そして利用する上でのポイントまで、どこよりも詳しく、そして分かりやすく解説します。あなたのご家庭に合った支援を見つけ、安心して子育てできる環境を整えましょう。

この記事でわかること

  • 多胎児家庭支援事業の全体像(移動支援、ヘルパー派遣など)
  • 自治体ごとの具体的な助成金額やサービス内容
  • 対象となる家庭の条件や利用できる期間
  • 申請からサービス利用までの具体的な流れと必要書類
  • 制度を最大限に活用するためのポイントと注意点

多胎児家庭支援事業の概要

正式名称と実施組織

この支援は、一般的に「多胎児家庭支援事業」と呼ばれ、各市区町村が主体となって実施しています。自治体によって「多胎児家庭移動支援事業」や「多胎児家庭サポーター事業」など、独自の名称が付けられている場合もあります。国のこども家庭庁も多胎児家庭への支援を推進しており、全国の自治体で同様の事業が広がりつつあります。

目的・背景

多胎児の育児は、同時に複数人の乳幼児の世話をするため、保護者の身体的・精神的負担が非常に大きいのが現実です。特に、乳幼児健診や予防接種など、子どもを連れての外出は困難を極めます。この事業は、こうした多胎児家庭特有の困難や育児不安を軽減し、保護者が孤立することなく、安心して子育てができる社会環境を整備することを目的としています。

主な支援内容

支援内容は自治体によって様々ですが、主に以下の3つの柱で構成されています。

  • ① 移動支援(タクシー代助成): 健診や予防接種、子育て支援施設への移動に利用したタクシー料金の一部または全額を助成します。
  • ② 家事・育児支援(ヘルパー派遣): ヘルパーが自宅を訪問し、食事の支度や掃除、沐浴の補助など、日常的な家事や育児を手伝います。
  • ③ 相談・交流支援(ピアサポート): 同じ多胎児を育てる親同士の交流会や、専門家への相談会を開催し、情報交換や仲間づくりの場を提供します。

助成金額・サービス内容(自治体別比較)

ここでは、具体的な支援内容を自治体ごとに比較してみましょう。お住まいの地域にどのような制度があるか、参考にしてください。

① 移動支援(タクシー代助成)

外出時の大きな負担となる移動をサポートする制度です。多くの自治体で年間24,000円を上限に助成しており、3年間利用すれば合計で最大72,000円の支援が受けられます。

自治体名 助成額 対象期間 備考
杉並区 各年齢で24,000円分 0歳、1歳、2歳時 保健師との「さくらんぼ面接」後にタクシー利用券を交付。
国分寺市 各年齢で上限24,000円 0歳、1歳、2歳時 利用後に領収書を提出し、口座振込で助成(償還払い)。
中野区 年1回24,000円 3歳未満 すこやか福祉センターでの面談後に交付。
堺市 年度上限20,000円 令和4年4月2日以降生まれの多胎児 電子申請システムで申請。償還払い。

② 家事・育児支援(ヘルパー派遣)

産後の大変な時期に、専門のヘルパーが家事や育児をサポートしてくれます。利用時間や料金は自治体によって大きく異なります。

自治体名 利用上限時間 利用者負担額 備考
杉並区 妊娠中~1歳未満: 240時間
1歳~2歳未満: 180時間
2歳~3歳未満: 120時間
1時間500円
(非課税世帯は無料)
杉並子育て応援券が利用可能。妊娠中から利用できる。
中野区 0歳~1歳未満: 150時間
1歳~2歳未満: 120時間
2歳~3歳未満: 90時間
1時間800円
(非課税世帯は無料)
妊娠中は「産前家事支援事業」を利用後、本事業を申請。
名古屋市 訪問支援:原則6回まで
同行支援:回数制限なし
所得に応じて0円~1,600円/回 助産師による訪問支援と、健診等への同行支援がある。

対象者・条件

この事業を利用できるのは、基本的に「その自治体に住民票があり、対象年齢(主に3歳未満)の多胎児を養育している家庭」です。多くの自治体では、妊娠中から申請できる場合があります。所得制限は設けられていないことが多いですが、利用者負担額が所得によって変動する場合があります。

【重要】対象となる子どもの年齢や、申請できるタイミングは自治体によって異なります。例えば、杉並区では「妊娠がわかった時点」からヘルパー事業の申請が可能ですが、中野区では出生届提出後の申請となります。必ずお住まいの自治体の最新情報を確認してください。

補助対象経費

支援内容によって、対象となる経費は異なります。特に家事・育児支援ヘルパーは「できること」と「できないこと」が明確に定められています。

対象となる経費・サービス(例)

  • 移動支援: 母子保健事業(健診、予防接種、相談会など)に参加するためのタクシー利用料金。
  • 家事支援: 日常的な食事の支度、洗濯、居室の掃除、日用品の買い物など。
  • 育児支援: 授乳やオムツ交換、沐浴の補助、食事の介助、多胎児やその兄姉の見守り(短時間)。
  • その他: 健診等への付き添い、保育園等の送迎(兄姉)。

対象外となる経費・サービス(例)

  • 専門的な作業: 大掃除、換気扇掃除、庭仕事、引っ越しの手伝いなど。
  • 託児: 保護者が不在の状況で子どもだけを預かること(あくまで育児の「補助」です)。
  • その他: 食事の作り置き、学齢期の子どもの送迎、通院の付き添いなど。

申請方法・手順

申請から利用までの流れは自治体や支援内容によって異なりますが、ここでは杉並区のヘルパー事業を例に、一般的なステップをご紹介します。

  1. 利用申請: 区役所の子育て支援課などに必要書類を提出します。電子申請、郵送、窓口での申請が可能です。
  2. 承認通知書の受領: 申請内容が審査され、区から「利用承認通知書」や事業者一覧などの書類が郵送されます。
  3. 事業者へ申し込み: 受け取った事業者一覧の中から希望する事業者を選び、直接連絡してサービス内容や日時の調整を行います。
  4. サービス利用開始: 調整した日時にヘルパーが訪問し、サービスが開始されます。利用時間の上限は自己管理となるため注意が必要です。

必要書類リスト

申請には以下の書類が必要となるのが一般的です。事前に準備しておくとスムーズです。

  • 事業利用申請書(自治体のウェブサイトからダウンロード可能)
  • 母子健康手帳のコピー(表紙や出産予定日のわかるページ)
  • 申請者の本人確認書類のコピー(運転免許証、マイナンバーカードなど)
  • (タクシー代助成の場合)利用したタクシーの領収書
  • (助成金振込の場合)振込先口座情報がわかるもの(通帳のコピーなど)
  • (非課税世帯の場合)世帯全員分の住民税非課税証明書など

制度利用のポイントと注意点

この種の支援は、要件を満たせば基本的に誰でも利用できる福祉サービスです。そのため、競争に勝つための「採択のポイント」というよりは、制度を漏れなく、賢く活用するための「利用のポイント」が重要になります。

  • 妊娠中からの情報収集: 妊娠がわかった段階で、お住まいの自治体にどのような支援があるかを確認しましょう。産後は慌ただしくなるため、事前に調べておくと安心です。
  • 申請期限と年齢区分を把握する: 多くの支援は子どもの年齢(0歳、1歳、2歳など)で区切られており、その都度申請が必要です。申請忘れがないように注意しましょう。
  • 利用上限時間を計画的に使う: ヘルパー派遣には年間の利用上限時間が設定されています。「特に大変な時期」を見越して、計画的に利用することが大切です。
  • キャンセルポリシーを確認する: ヘルパー派遣の予約を直前にキャンセルすると、キャンセル料が発生したり、利用時間としてカウントされたりする場合があります。ルールを事前に確認しておきましょう。
  • 他の支援制度と組み合わせる: 「産後ケア事業」や「育児支援ヘルパー派遣事業」など、他の子育て支援と併用できる場合があります。総合的に活用することで、さらに負担を軽減できます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 里帰り出産をしますが、里帰り先でこの制度は使えますか?

A1. 原則として、住民票のある自治体の制度を利用することになります。そのため、里帰り先で住民票のある自治体のサービス(例えば、提携しているヘルパー事業者が里帰り先にあれば)を利用できるかは、自治体への確認が必要です。タクシー代助成は、住民票のある自治体に戻ってからの利用が対象となる場合がほとんどです。

Q2. ヘルパーさんに子どもだけを預けて外出することはできますか?

A2. できません。この事業は「託児(ベビーシッター)」サービスではないため、サービスの利用中は必ず保護者が在宅していることが条件となります。あくまで育児の「補助」と位置づけられています。

Q3. タクシー代の助成は、どんな目的の移動でも対象になりますか?

A3. 対象となる目的は自治体によって定められています。主に、乳幼児健診、予防接種、親子交流会、子育て相談など、市が実施する母子保健事業への参加が対象です。私的な買い物やレジャーでの利用は対象外となります。

Q4. 申請は母親でないとダメですか?

A4. いいえ、多胎児を養育している保護者であれば、父親などでも申請可能です。自治体によっては、窓口に代理人が行くことも認められていますので、詳細はご確認ください。

Q5. 年度の途中で引っ越した場合、支援はどうなりますか?

A5. 転出した時点で、その自治体での利用資格は失われます。転入先の自治体で同様の事業を実施していれば、新たに申請することで利用できる可能性があります。引っ越しが決まったら、転出元と転入先の両方の自治体に問い合わせて手続きを確認しましょう。

まとめ・次のアクション

多胎児家庭支援事業は、双子や三つ子を育てる家庭にとって、非常に心強い味方となる制度です。最後に、この記事の重要なポイントをまとめます。

  • 多くの自治体で「移動支援(タクシー代助成)」「家事・育児支援(ヘルパー派遣)」が提供されている。
  • タクシー代は年間24,000円程度、ヘルパーは1時間500円~800円程度の自己負担で利用できる場合が多い。
  • 対象は主に3歳未満の多胎児を養育する家庭で、妊娠中から利用できることも。
  • 利用には事前の申請が必須。年齢ごとに申請が必要な場合もあるため注意が必要。
  • 制度の内容は自治体によって大きく異なるため、まずは自分の住む街の情報を確認することが第一歩。

【次へのステップ】
この記事を読んだら、早速、お住まいの市区町村の公式ホームページで「(自治体名) 多胎児 支援」と検索してみてください。詳しい情報が見つからない場合は、区役所や市役所の「子育て支援課」や「保健センター」に電話で問い合わせてみましょう。利用できる支援を最大限に活用し、笑顔あふれる多胎児育児を実現してください。