事業承継・M&A補助金 徹底活用ガイド|採択を勝ち取る戦略と申請方法
1. 導入:M&Aを「成長投資」に変える補助金の力
「事業承継を成功させたいが、M&Aのコストが高すぎる」「承継後の設備投資資金をどう工面しようか」――もしあなたが、このような資金面の不安を抱えながら、会社の未来を真剣に考えている中小企業経営者であれば、この記事はあなたのためのものです。
日本の中小企業は今、後継者不足という大きな課題に直面しています。しかし、M&A(合併・買収)や事業承継は、単なる会社の売却や引継ぎではなく、**新たな成長機会を掴むための戦略的な投資**へと変わりつつあります。
本記事で徹底解説するのは、中小企業庁が所管する**「事業承継・引継ぎ補助金(事業承継・M&A補助金)」**です。この制度は、M&Aの専門家費用から、承継後の生産性向上を目的とした設備投資、さらには廃業費用まで、事業の未来を築くためのコストを強力に支援します [1]。
この記事を最後まで読めば、あなたは補助金制度の全体像を把握し、自社がどの類型(トラック)で申請すべきか、そして採択を勝ち取るための具体的な戦略が明確になります。「何をすべきか」が分かり、**今すぐ申請に向けた行動**を起こせるようになるでしょう。
2. 事業承継・引継ぎ補助金とは?その背景と4つの類型
補助金の正式名称と政策目的
この補助金の正式名称は、**「事業承継・引継ぎ補助金」**です。一般に「M&A補助金」とも呼ばれますが、M&Aだけでなく、親族内承継など幅広い事業承継の取り組みを支援します。管轄省庁は中小企業庁です。
この制度が作られた最大の目的は、**「中小企業の生産性向上と、持続的な賃上げの実現」**です [1]。単に事業を引き継ぐだけでなく、M&Aや承継を契機として、より効率的で収益性の高い企業へと変革するための投資を支援することで、日本経済全体の活力を維持しようとしています。そのため、申請時には、M&A後のシナジー効果や投資計画が、いかに生産性向上や従業員の賃上げに繋がるかを論理的に示す必要があります。
制度の最大の特徴:4つの主要類型(トラック)
本補助金が他の補助金と一線を画すのは、事業承継・M&Aのプロセス全体を切れ目なくカバーできるよう、目的別に4つの主要な類型(トラック)で構成されている点です [1]。
| 類型(トラック) | 支援ステージ | 主な補助対象経費 | 戦略的な役割 |
|---|---|---|---|
| 専門家活用枠 | M&A実行フェーズ | M&A仲介手数料、FA報酬、デューデリジェンス(DD)費用など [2] | M&Aのコストリスクを軽減する |
| PMI推進枠 (Post Merger Integration) | M&A後の統合フェーズ | PMI専門家費用、統合に伴う設備・システム投資など [1] | M&A後の統合失敗リスクを防ぐ |
| 事業承継促進枠 | 承継後の成長投資フェーズ | 承継を機にした設備投資、販路開拓、事業再編費など [1] | 承継後の持続的な成長を加速させる |
| 廃業・再チャレンジ枠 | 事業の出口戦略/起業 | 円滑な廃業費用、再チャレンジのための新規事業準備費 [1] | 円滑な事業の新陳代謝を促す |
この多層的な構造を戦略的に活用することで、あなたはM&Aの実行コスト(専門家活用枠)と、その後の成長投資(事業承継促進枠やPMI推進枠)の双方で補助金を受け取る**「併用申請」**が可能となり、補助金予算を最大化できる可能性があります [2]。
この補助金に向いている企業
この補助金は、特に以下のような計画を持つ企業に最適です。
- 後継者問題解決のため、M&A(会社譲渡または譲受)を具体的に検討している企業。
- M&A後の事業統合(PMI)において、ITシステムや設備への大規模投資が必要な企業。
- 親族内承継や従業員承継を機に、新たな成長分野へ進出するための設備投資を行いたい企業。
- 現在の事業を円滑に廃業し、そのリソースを活かして新規事業に再チャレンジしたいと考える起業家。
3. あなたは対象?申請資格をセルフチェック
補助金申請の第一歩は、「対象者」であることを正確に確認することです。本補助金の基本的な対象者は、中小企業基本法に定める**中小企業者または小規模事業者、特定非営利活動法人等**です。
必須要件チェックリスト(5項目)
まずは、あなたが申請資格を満たしているかを確認するための、基本的な必須チェックリストです。詳細は必ず公募要領で確認してください [1]。
- あなたは「中小企業基本法」に定める中小企業者(または小規模事業者)に該当しますか?(法人格、資本金、従業員数で確認)
- M&A関連の枠(専門家活用、PMI推進)を申請する場合、あなたはM&Aの「売り手」または「買い手」当事者ですか?
- 補助事業の実施期間内に、補助金が求める事業承継(またはM&A)を実行する計画がありますか?
- 補助事業の完了後、原則として5年間、事業化状況報告を行う義務を負うことができますか? [1]
- 暴力団関係者ではない、公序良俗に反する事業ではないなど、公募要領に定められた除外条件に該当しませんか? [1]
【類型別】こんな企業・事業者が対象です(具体例5つ)
あなたの計画がどの類型に適合するかを具体的にイメージしてみましょう。
具体的な対象イメージ
- 【専門家活用枠・売り手支援】
後継者が不在で、廃業を避けるため、M&A仲介業者に事業譲渡の相談をしている製造業のA社。 - 【専門家活用枠・買い手支援】
特定の地域に進出するため、地域に根差した店舗を持つ小規模事業者をデューデリジェンス(DD)費用をかけて買収しようとしているB社。
(※買い手支援類型では、特定の「100億企業要件」を満たす大企業による特例も存在します [2]。) - 【PMI推進枠】
M&Aで統合した2社の異なる在庫管理システムを、統合し一元化するためのITシステム導入投資を行うC社。 - 【事業承継促進枠】
親族から事業を引き継いだばかりのD社が、これを機に新製品開発に必要な高性能な設備機械を導入する。 - 【廃業・再チャレンジ枠】
事業環境の変化で現事業の継続が困難となったE社が、店舗の解体費用を計上し、並行してその経営ノウハウを活かした新規ビジネスの立ち上げ準備を行う。
申請が「対象外」となる典型的なケース
以下のケースに該当する場合は、原則として補助金の対象外となる可能性が高いです。
- 事業承継やM&Aとは無関係な、単なる通常業務の延長上にある投資(例:老朽化設備の維持修繕のみ)。
- 既にM&Aが完了しており、申請の時点で全ての費用支払いも完了している(補助事業実施期間外の費用)。
- 補助金の目的である「生産性向上」や「賃上げ」に貢献する具体的な事業計画を示せない場合 [1]。
- 公募要領に定められた、企業規模や法人格の要件を満たさない場合。
資本金や従業員数の具体的な要件、業種による制限(対象外業種など)の詳細は、公募回ごとに発行される公式の「公募要領」に厳密に定められています [1]。自己判断せず、必ず最新の公募要領(例:13次公募)で確認してください。
4. 補助額、補助率の詳細と対象経費リスト
補助上限額と併用申請による加算のチャンス
補助金の上限額は類型ごとに異なりますが、特にM&Aを検討中の企業が利用する「専門家活用枠」の売り手支援類型では、以下の水準が目安となります(R6補正予算ベース) [2]。
| 類型 | 補助上限額(概算) | 補助率 | 特記事項 |
|---|---|---|---|
| 専門家活用枠(売り手支援) | 600万円(基本) | 公募要領参照 | DD費用を上乗せ申請する場合、800万円が上限となる(200万円加算) [2] |
| 専門家活用枠(買い手支援) | 600万円(基本) | 公募要領参照 | 特定の「100億企業要件」を満たす買い手企業の特例あり [2] |
| 事業承継促進枠 | 公募要領参照 | 公募要領参照 | 成長投資に活用 |
最も重要な戦略ポイントは、**複数の類型を併用できる**ことです。事業承継促進枠、専門家活用枠、PMI推進枠は、それぞれの事業内容と経費が明確に重複しない限り、併用申請が可能です [2]。
あなたがM&Aの「売り手」であり、承継後に残存する事業の生産性向上のための投資も計画していると仮定します。
1. 専門家活用枠(DD費用含む):最大800万円の補助
2. 事業承継促進枠(設備投資):(上限額は公募要領参照)
→ 併用により、単独申請よりもはるかに大きな補助上限額を確保し、M&Aと成長投資の両方を推進できます [2]。
補助対象となる経費と対象外経費
補助の対象となる経費は、補助事業計画の遂行に真に不可欠な費用に限定されます。
| 対象経費の分類 | 具体的な内容(例) | 注意点 |
|---|---|---|
| 専門家費用 | M&A仲介・FAへの成功報酬、着手金、デューデリジェンス(DD)費用 [1, 2] | 公募要領に定められた登録専門家であること。DD費用が優遇されている点に着目 [2]。 |
| 設備費 | M&A後の生産性向上に直結する機械装置、システム、ソフトウェアの導入費用 [1] | 汎用性の高いもの、補助事業以外に転用可能なものは対象外となることが多い。 |
| 外注費・委託費 | PMI(統合)のためのコンサルティング費用、新たな販路開拓のための専門家費用 | M&A後の組織統合、ITシステム統合支援などに適用。 |
| 廃業費用 | 店舗や工場の解体費用、在庫処分費用、原状回復費用など(廃業・再チャレンジ枠) [1] | 円滑な廃業手続きに要する費用が対象。 |
【要注意】よく間違える対象外経費
以下の費用は、補助事業に必要に見えても対象外となることが多い「非対象経費」です。自己資金で賄う必要があります。
- 汎用性の高いもの:通常の事務用パソコン、タブレット端末、スマートフォンなど。
- 消費税、各種保険料、振込手数料などの金融関係費用。
- 土地・建物の購入費、または事務所家賃などの継続的な経費。
- 補助事業期間外(契約前など)に発生した費用。
補助金は、採択後の「交付決定」を受けてから事業期間内に契約・発注・支払いが行われた経費のみが対象です。交付決定前の契約は基本的に補助対象外となるため、申請スケジュールを厳守してください。
5. 申請をスムーズに進める必要書類チェックリスト
申請で最も時間がかかるのが書類の準備です。書類の不備は形式的な不採択に直結します。公募要領と共に公開される**「必要書類チェックリスト」**(Excel形式)[1]を常に手元に置き、確実に準備を進めましょう。
申請時に必須となる基本書類(3点セット)
すべての申請類型で共通して求められる、企業の基本情報と計画の中核を示す書類です。
- 事業計画書:補助事業の核となる最重要書類。M&Aの背景、具体的な実施内容、投資の効果(生産性向上・賃上げ)、収益見込みを詳細に記述します。
- 直近2期分の決算書:企業の財務状況の健全性や、自己資金で賄える範囲を確認するために必要です。
- 登記事項証明書(履歴事項全部証明書):法人格、設立日、役員構成などを証明する書類。
類型・条件付きで必要となる追加書類
あなたの申請する類型や計画内容に応じて、以下の書類が必要となります。
- M&A関連書類(専門家活用枠):M&A仲介業者やFAとの業務委託契約書、DD契約書など。
- 見積書(設備投資):設備費、システム導入費などを計上する場合、費用の妥当性を証明するための見積書。
- 賃金台帳・労働条件:賃上げ計画を提出する場合、現行の賃金水準を示すための資料。
- 特定事業者の確認書類:個人事業主の場合は開業届、NPO法人の場合は定款など。
よくある書類不備と作成の注意点
書類不備は、内容の審査以前に申請が不受理となる最大の原因です。以下の点に細心の注意を払ってください。
書類作成の要注意ポイント
- 日付の不一致:決算書や登記事項証明書などの提出日が、公募要領の指定する期間外になっていないか。
- 電子申請のファイル形式:jGrantsで提出する場合、指定されたPDF形式やExcel形式以外のファイルは受理されません。
- 書類の網羅性:「必要書類チェックリスト」に記載の書類がすべて揃っているか、枚数や記載事項に漏れがないか。
- 事業計画の具体性:計画書の内容が抽象的すぎると、審査で実現可能性が低いと判断されます。誰が見てもM&A後の効果がイメージできるように、具体的な数値目標(売上目標、生産性向上率など)を盛り込みましょう。
6. 採択までのロードマップ:jGrants申請と全体フロー
補助金の申請プロセスは、単発の作業ではなく、計画的な準備が必要です。全ての申請は、経済産業省が運営する電子申請システム**「jGrants」**を通じて行われます [1]。
最新公募スケジュール(13次公募:R6補正予算)
申請を検討する上で、締切日の正確な把握は必須です。最新の公募情報は以下の通りです [2]。
【13次公募 申請受付期間】
受付開始:2025年10月31日(金) (予定)
締切日:2025年11月28日(金) 17:00 (厳守) [2]
※締切は厳守です。17:00を過ぎるとシステムへの入力・アップロードができなくなります。
申請から採択までの6ステップ
申請を確実に完了させるための、具体的なステップを解説します。
- 公募要領の熟読と計画の策定(事前準備)自社の事業承継計画に最適な類型(専門家活用、PMI推進など)を決定し、公募要領の定義と補助対象経費の範囲を正確に把握します [1]。この段階で、M&A後のシナジー効果と賃上げ・生産性向上の目標値を具体的に設定します。
- GビズIDプライムアカウントの取得(システム準備)jGrantsでの電子申請には、「GビズIDプライムアカウント」が必須です。このアカウントの取得には**2週間以上かかる**場合があるため、申請締切の2ヶ月前には申請を完了させておく必要があります。
- 事業計画書と必要書類の作成・収集(最重要工程)事業計画書を作成し、決算書、登記事項証明書、M&A関連契約書など、申請に必要なすべての書類を収集・作成します。書類の量が多いため、専門家(認定支援機関など)と連携して進めることが推奨されます。
- jGrantsによる電子申請(提出)申請受付期間内にjGrantsシステムにログインし、申請フォームへの入力と、作成・収集した書類をアップロードします。提出前に、添付ファイルがすべて揃っているか、ファイル名が正しいかを最終チェックリストで確認してください。
- 審査の実施と採択発表申請締切後、事務局による形式審査を経て、外部有識者による審査が行われます。審査期間は数ヶ月間かかることが一般的です。採択結果は、原則としてjGrantsシステムや公式ウェブサイトで通知・公表されます。
- 交付申請手続き(採択後)「採択=即入金」ではありません。採択決定後、改めて「交付申請」の手続きを行い、事業内容と経費の最終的な確認を受け、事務局から**「交付決定通知」**を受けて初めて事業を開始できます。この交付決定前の発注・契約は原則補助対象外です。【実務上の教訓】
既に公募が終了した第11次公募においても、交付申請の締切日が設けられています(2025年12月19日(金) 17:00)[1]。採択後も、事務局の指示に従い、迅速に手続きを完了させることが求められます。
7. 採択を勝ち取るための戦略:審査基準と5つの成功ポイント
公式の審査基準:何を評価されるか
補助金は税金で賄われるため、補助金の目的に沿っているかが厳しく審査されます。本補助金の審査において、最も核となるのは「事業の革新性」ではなく、**「M&Aや承継を契機とした、具体的な成果」**です [1]。
| 審査項目 | 評価される視点 | 具体的な記述例 |
|---|---|---|
| 政策目標への貢献度 | 生産性向上、持続的な賃上げ、付加価値創出への貢献度 [1] | 「M&A後の業務効率化で生産性が〇%向上し、その収益増を原資に労働分配率を〇%改善する」 |
| 事業の実現可能性 | 事業計画の具体性、費用対効果の妥当性、実施体制の確実性 | 「必要な設備投資の導入時期と業者の選定済み。資金調達計画も明確である」 |
| M&Aの妥当性 (専門家活用枠) | M&Aが必要な背景(後継者難など)の明確さ、DDの活用によるリスク回避の姿勢 | 「DD費用を上乗せ申請することで、簿外債務リスクを回避し、M&Aの確実性を高める」 [2] |
採択を勝ち取る5つの戦略的ポイント
審査を通過し、採択を勝ち取るためには、以下の戦略を事業計画書に組み込むことが決定的に重要です。
- 【戦略1】生産性向上と賃上げを定量的に示す補助金の最大目的である「生産性向上」と「賃上げ」を、抽象的な表現で終わらせてはいけません。M&Aや設備投資によって、具体的に「売上原価が〇%下がる」「従業員一人当たりの付加価値額が〇円向上する」「増加した収益を基に、基本給を〇%引き上げる」など、**具体的な数値目標**として明記してください [1]。
- 【戦略2】DD費用を申請し、M&Aのリスク回避姿勢を示す専門家活用枠において、デューデリジェンス(DD)費用は補助上限額が加算される形で優遇されています(最大800万円) [2]。これは、リスクを正しく評価する企業を国が評価している証拠です。DDの実施計画を明確に記載し、「リスク管理を徹底した上で、確実なM&Aを実行する」という姿勢をアピールしましょう。
- 【戦略3】複数の類型を組み合わせて相乗効果を出す「専門家活用枠(M&A実行費用)」と「PMI推進枠(統合投資)」や「事業承継促進枠(成長投資)」を併用し [2]、「M&A実行→統合→成長」の一連のストーリーを一つの計画として示すことで、補助事業の全体的なインパクトを高めることができます。併用は補助上限額の加算にもつながります。
- 【戦略4】事業承継の「必然性」を明確にするなぜそのM&A(または承継)が必要なのか、その必然性を明確にしてください。「後継者が不在で、このままでは地域の雇用が失われる」や「この技術を活かすには、より大きな組織が必要だ」など、公的な意義を伴う明確な理由づけが必要です。
- 【戦略5】認定支援機関(専門家)と連携する事業計画書の論理構成、財務数値の妥当性、そして公募要領への適合性を素早く正確に判断するには、中小企業診断士や会計士などの**認定支援機関**の協力を得ることが最も確実です。専門家の助言を得ることで、申請書の質が飛躍的に向上します。
よくある不採択理由TOP3
多くの申請が不採択となる背景には、共通する理由が存在します。
- 事業計画が抽象的・数値目標がない:「頑張って生産性を上げます」のような精神論で終わり、具体的な数値目標(KPI)や根拠が欠けている。
- 対象経費の適合性が低い:補助金の目的に関係のない汎用性の高い機器(パソコンなど)を計上している、または交付決定前の経費を含めている。
- M&A後のシナジー効果が不明確:買収後の事業統合(PMI)計画や、両社の技術・ノウハウをどう融合して付加価値を生むのかの記述がない。
8. 補助事業実施から入金まで:交付決定後の義務と注意点
採択はゴールではなく、スタートです。採択後、補助金が実際に入金されるまでのプロセスと、事業者が負うべき義務について解説します。
交付決定と事業開始のタイミング
採択通知を受け取った後、事業者は速やかに**「交付申請」**を行い、事務局の審査を経て**「交付決定通知」**を受け取る必要があります。事業活動(経費の発注・契約)を開始できるのは、この「交付決定通知」を受け取った日以降です。これより前に発生した経費は補助対象外となります。
事業実施中の義務とコンプライアンス
補助金は公費であるため、事業者は厳格なコンプライアンス義務を負います。
- 交付規程の厳守:事務局から渡される「交付規程」は、経費の支払い方法、書類の保管方法、事業計画の変更手続きなど、すべてを定めたルールの根拠規定です [1]。必ず熟読し、全ての活動をこれに従って実施してください。
- 経費証拠書類の保管:発注書、納品書、請求書、銀行振込の記録など、すべての経費について、公募要領が求める形式で証拠書類を整備し、厳重に保管する必要があります。
- 変更・中止申請:事業計画の大きな変更(例:設備投資の対象変更、費用の大幅な増減)や、事業を中止する場合は、事務局に無断で行ってはならず、事前に「変更申請」が必要です [1]。
実績報告と補助金の入金時期
補助事業が完了したら、速やかに**「実績報告書」**を提出します。この報告書では、計画通りに事業が実施されたこと、計上した経費が適正であること(証拠書類を添付)、事業目標が達成されたことなどを報告します。
【入金の流れ】
原則として、補助金は「後払い」です。事業者が全額を一旦自己資金で支払い、実績報告を経て事務局の「確定検査」を受けた後、初めて補助金額が決定し、指定の銀行口座に振り込まれます。この確定検査に数ヶ月かかる場合もあり、実際の入金は**事業完了から数ヶ月後**になることを想定しておく必要があります。
最重要:事業化状況報告(5年間の義務)と返還リスク
事業完了後も、これで終わりではありません。補助事業の成果(生産性向上や賃上げ)が継続しているかを検証するため、事業者は原則として**5年間**にわたり、「事業化状況報告」を行う義務が課されます [1]。
また、以下のケースでは補助金の**返還義務**が発生します。
- 不正受給(虚偽の申請、不適正な経費計上など)が発覚した場合。
- 補助事業で取得した財産を、事務局の承認なく補助金の目的に反して使用・処分した場合。
- 事業化状況報告において、収益が大幅に向上し、当初の計画を超える利益が出た場合(収益納付)。
9. 申請者が抱く典型的な疑問を解決(FAQ 10選)
Q&Aで不安を解消し、申請への一歩を踏み出す
- Q1: 個人事業主でも申請できますか?
- A: はい、中小企業者だけでなく、小規模事業者も本補助金の対象に含まれます。個人事業主の方も、公募要領で定められた要件(特定非営利活動法人等)を満たせば、申請が可能です。ただし、申請類型によっては法人格が必須の場合もあるため、必ず公募要領で確認してください。
- Q2: 過去に不採択だった場合、再申請できますか?
- A: はい、一般的に再申請は可能です。ただし、不採択となった原因(例:事業計画の具体性不足、政策目標への貢献度不足)を特定し、その点を大幅に改善した事業計画書を作成する必要があります。同じ内容のまま再申請しても、採択される可能性は低いでしょう。
- Q3: M&Aの相手先がすでに決まっている場合でも、専門家活用枠の補助対象となりますか?
- A: はい、対象となります。専門家活用枠は、M&A実行に必要な費用(仲介・FA報酬、DD費用など)を支援するものであり、相手先が決まっているかどうかに関わらず、補助事業実施期間内に専門家への依頼と支払いが発生する費用であれば対象です [2]。
- Q4: 申請書は自分で書けますか? それとも専門家に頼むべきですか?
- A: 申請書はご自身で作成することも可能ですが、**認定支援機関(中小企業診断士、公認会計士など)**への依頼を強く推奨します。採択を勝ち取るには、公募要領の意図を汲み取った論理的な構成、厳密な数値計画、経費の適格性判断が不可欠であり、専門家のノウハウが不可欠です。
- Q5: 補助金をもらったら、税金はどうなりますか?
- A: 補助金は「益金(収益)」として計上されるため、**課税対象**となります。補助金を受け取った事業年度の法人税、事業税、住民税の計算に影響します。税理士と事前に相談し、「圧縮記帳」などの適用可能性を含めて検討することが重要です。
- Q6: 他の補助金と併用できますか?
- A: 同一の事業(同一の経費)に対して、国または独立行政法人からの複数の補助金を受けることはできません。しかし、事業承継・M&A補助金と、事業再構築補助金など、**事業内容と経費が明確に分離できる場合**は併用が可能です [2]。経費の重複は厳しくチェックされます。
- Q7: 汎用性の高いパソコンやタブレットの購入費用は補助対象ですか?
- A: いいえ、原則として対象外です。本補助金は「生産性向上に資する特定の投資」を目的としており、補助事業以外にも容易に転用可能な汎用性の高い機器(通常の事務用パソコンなど)は、補助対象外経費とされています。
- Q8: M&A後のPMI(統合)費用は、どの枠で申請しますか?
- A: **PMI推進枠**で申請します。この枠は、経営統合計画策定の専門家費用や、統合に伴うITシステム導入などの投資を支援するために特化しています [1]。M&Aの実行コストとは切り離して考えます。
- Q9: 採択されなかった場合、理由を教えてもらえますか?
- A: 申し訳ありませんが、事務局から個別に詳細な不採択理由が開示されることは原則ありません。ただし、申請書類のフィードバックや、不備の有無については、問い合わせ窓口や専門家を通じて確認できる場合があります。
- Q10: 申請にかかる費用(自己負担)はどのくらいですか?
- A: 自己負担額は、「補助対象経費の総額」から「補助金の額」を引いた残りの額となります。専門家への着手金や、補助対象外となる経費(例:消費税、汎用機器の購入費)は、すべて自己負担となります。補助率(例:2/3)も考慮して、資金計画を立ててください。
10. まとめ:今すぐ行動を起こし、M&Aを成功へ
事業承継・引継ぎ補助金は、単なる資金援助ではなく、あなたの会社がM&Aや承継をバネに、生産性向上と持続的な賃上げという国策目標を達成するための「戦略的なパートナー」です。この補助金は、M&Aの実行、統合、そしてその後の成長投資のすべてのフェーズを強力に支えます [1]。
【本記事の最重要ポイント3点】
- 4つの類型を理解し、**併用申請**で補助金予算を最大化する [2]。
- M&A後の**生産性向上と賃上げ**を、具体的な数値目標で明確に示す [1]。
- 「GビズIDの取得」と「事業計画書の作成」は時間がかかるため、**締切に間に合うよう今すぐ準備を開始**する [2]。
今すぐできる3つのアクション
採択を勝ち取るために、今日から以下の行動を開始してください。
- 最新の公募要領(例:13次公募)[1]をダウンロードし、自社がどの類型に適合するかを判断する。
- jGrants申請に必須の**GビズIDプライムアカウント**の取得手続きを行う。
- 認定支援機関(中小企業診断士など)に連絡を取り、事業計画書の作成サポートを依頼する。
あなたの事業の未来を拓く一歩を、今、踏み出しましょう。
