企業立地促進助成金とは?工場新設や設備投資のコストを大幅削減!
新たに工場を建設したり、事業所を移転・増設したりする際には、多額の初期投資が必要となります。そんな企業の負担を軽減し、地域経済の活性化と雇用創出を目的として、多くの都道府県や市区町村が「企業立地促進助成金(補助金)」制度を設けています。これらの制度をうまく活用することで、設備投資や事業拡大にかかるコストを大幅に削減できる可能性があります。
この記事では、全国の自治体が提供する企業立地促進助成金について、その種類、対象要件、申請の流れなどを網羅的に解説します。自社の事業計画に合致する制度を見つけ、有利な条件で事業を展開するための一助となれば幸いです。
この記事のポイント
- 企業立地助成金の目的とメリットがわかる
- 全国の助成金制度の種類と特徴を比較できる
- 対象となる事業者の要件や投資規模がわかる
- 申請から受給までの具体的な流れと注意点を解説
【全国共通】企業立地助成金の主な種類と支援内容
企業立地助成金は、自治体によって様々な種類がありますが、主に以下のタイプに分類されます。複数の支援を組み合わせている自治体も多く存在します。
1. 税制優遇・補助型
最も一般的な支援形態で、事業所を新設・増設した際にかかる税負担を軽減するものです。
- 内容:工場や研究所などの新設・増設に伴い発生する固定資産税、都市計画税、不動産取得税などの相当額を、数年間にわたって補助金として交付します。
- 具体例:
- 滋賀県草津市「企業立地促進助成制度」: 対象施設に課された固定資産税・都市計画税相当額の1/2を5年間助成。
- 滋賀県野洲市「企業立地促進助成金制度」: 投下固定資産(土地除く)に課税された固定資産税相当額の50%を3年間助成(上限あり)。
2. 設備投資補助型
生産性向上や事業拡大を目的とした設備投資に対して、直接的に補助金を交付するタイプです。
- 内容:建物や償却資産の取得に要した費用(投下固定資産額)の一部を補助します。
- 具体例:
- 千葉県「立地企業補助金」: 大規模投資(投下固定資産額500億円以上)の場合、建物・償却資産に係る税相当額に加え、特定地域では土地に係る不動産取得税相当額なども加算。最大70億円の補助限度額。
3. 雇用創出支援型
新規に雇用した従業員の数に応じて補助金を交付するタイプで、地域の雇用促進を直接的な目的としています。
- 内容:新規正規雇用者1人あたり〇万円、といった形で補助金が交付されます。特に高度人材の雇用には手厚い支援がなされる場合があります。
- 具体例:
- 千葉県「雇用創出支援」: 新規正規雇用者1人あたり5万円、高度人材の場合は30万円を上乗せして補助(上限1億円)。
4. 賃料補助型
自社で建物を所有せず、オフィスや工場を賃借して事業を開始する企業向けの支援です。
- 内容:事業所の賃借料の一部を一定期間(例:12ヶ月分)補助します。スタートアップや本社機能の移転などで活用しやすい制度です。
- 具体例:
- 千葉県「賃借型企業立地」: 新たに設置する本社や研究所などの建物賃借料の1/2(12ヶ月分)を補助(上限500万円~1,000万円)。
助成金の対象となる事業者と主な要件
助成金を受けるためには、各自治体が定める要件を満たす必要があります。ここでは、多くの制度で共通して見られる主要な要件を解説します。
| 要件項目 | 詳細内容 |
|---|---|
| 対象業種 | 製造業、情報通信業(データセンター等)、自然科学研究所など、自治体が特に誘致したい成長産業分野が指定されていることが多いです。(日本標準産業分類に基づく) |
| 投下固定資産額 | 土地取得費を除いた建物や償却資産の取得費用の総額。企業規模によって最低額が設定されています。 (例:中小企業は5,000万円以上、大企業は5億円以上など) |
| 新規雇用者数 | 操業開始にあたり、一定数以上の新規雇用(特に正規雇用)が求められる場合があります。 (例:10人以上、特定地域では3人以上など) |
| 事業所の規模 | 敷地面積や延床面積に最低基準が設けられていることがあります。 (例:敷地面積1,000㎡以上など) |
| 納税状況 | 国税および地方税の滞納がないことが絶対条件です。 |
【最重要】申請タイミングに注意!
企業立地助成金において最も重要な注意点は、「必ず建物の建設着工前または取得前に申請し、自治体から事業計画の認定を受ける必要がある」ということです。
工事を着工した後や、建物を取得した後に申請しても、原則として対象外となります。計画段階のできるだけ早い時期に、立地を検討している自治体の担当部署へ事前相談を行うことが成功の鍵です。
申請から助成金受給までの一般的な流れ
手続きの詳細は自治体によって異なりますが、おおむね以下の流れで進みます。
- 事前相談:立地を検討している自治体の商工課や企業誘致担当課に、事業計画の概要を伝えて相談します。
- 指定申請・計画認定:(工事着工前)指定の様式で「助成対象事業者指定申請書」や「立地計画認定申請書」を提出します。審査を経て、助成対象として認定(指定)されます。
- 工事着工・完了報告:認定を受けた後、計画通りに工事を着工します。工事が完了し、操業を開始したら、完了報告書を提出します。
- 交付申請:固定資産税などが課税された後、または操業開始から一定期間が経過した後、交付申請書兼請求書を提出します。
- 審査・交付決定:申請内容が審査され、交付額が確定します。
- 助成金受給:指定の口座に助成金が振り込まれます。
まとめ:計画的な情報収集と早期相談が成功の鍵
企業立地促進助成金は、工場新設や本社移転といった大規模な投資を行う企業にとって、非常に強力な支援策です。固定資産税相当額の補助や設備投資への直接補助など、その内容は多岐にわたり、財務的な負担を大きく軽減します。
成功のポイントは以下の3点です。
- 早期の情報収集:立地を検討する地域の候補が決まったら、早い段階で都道府県および市区町村のウェブサイトで優遇制度を確認しましょう。
- 着工前の事前相談:計画が固まったら、必ず「工事着工前」に自治体の担当部署へ相談してください。これが最も重要なステップです。
- 専門家の活用:申請手続きは複雑で、事業計画書の作成も求められます。必要に応じて、中小企業診断士や税理士などの専門家のサポートを受けることも検討しましょう。
自社の成長戦略と自治体の支援制度をうまく結びつけ、事業の成功確度を高めていきましょう。
対象者・対象事業
指定地域に工場、研究所、本社などを新設、増設、または移転する事業者(大企業、中小企業)。製造業、情報通信業、自然科学研究所などが主な対象。
必要書類(詳細)
・立地計画認定申請書
・事業計画書
・法人登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
・定款の写し
・直近の決算報告書
・納税証明書(国税・地方税)
・見積書、契約書の写し
※自治体により必要書類は異なります。必ず事前に確認してください。
対象経費(詳細)
・建物及び償却資産の取得に要する費用(投下固定資産額)
・事業所の賃借料
・新規雇用者の人件費の一部
※土地の取得費用は対象外となる場合がほとんどです。詳細は各制度の要綱をご確認ください。