詳細情報
東京都中央区で移動支援事業を運営されている事業者様にとって、大きな追い風となる新しい制度がスタートします。令和7年度(2025年度)より、移動支援事業に従事する職員の賃金向上と人材確保を目的とした「中央区移動支援事業処遇改善加算」が創設されました。この制度を活用することで、毎月の移動支援基本報酬に実に40.2%もの加算を受けることが可能となり、職員の待遇改善に直接つなげることができます。人材不足が課題となる福祉業界において、この加算は職員の定着とサービス品質の向上に不可欠な要素となるでしょう。本記事では、この画期的な加算制度の概要から、対象となる事業所の要件、具体的な申請手順、必要書類の書き方まで、事業者の皆様が知りたい情報を一つひとつ丁寧に解説していきます。
この制度のポイント
- 令和7年度(2025年度)から開始される中央区独自の制度
- 毎月の移動支援基本報酬に40.2%という非常に高い率で加算
- 対象は中央区に登録済みの移動支援事業所
- 職員の賃金改善(給与・手当・賞与など)に充当することが必須
- 申請には「処遇改善計画書」と「実績報告書」の提出が必要
中央区移動支援事業処遇改善加算とは?
制度の目的と背景
障害のある方の地域生活を支える上で、移動支援サービスは欠かせない存在です。しかし、そのサービスを担う職員の確保や定着は、多くの事業所にとって大きな課題となっています。そこで中央区では、移動支援事業に従事する職員の専門性に見合った賃金水準を実現し、魅力ある職場環境を整備することで人材を確保・定着させることを目的に、この処遇改善加算を創設しました。この制度は、国の障害者総合支援法に基づく居宅介護における「福祉・介護職員等処遇改善加算(令和6年改正後)」に準拠しており、区独自の強力な支援策として位置づけられています。
制度の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 中央区移動支援事業処遇改善加算 |
| 実施組織 | 東京都中央区 |
| 開始年度 | 令和7年度(2025年度) |
| 根拠 | 障害者総合支援法に基づく居宅介護における「福祉・介護職員等処遇改善加算(令和6年改正後)」に準拠 |
驚きの加算率!報酬はどれくらい増える?
加算額は基本報酬の40.2%
本制度の最大の特長は、その高い加算率にあります。毎月の移動支援事業に係る基本報酬の合計額に対して、40.2%が上乗せして支払われます。これは、事業所の収益を大幅に改善し、職員の賃金へ手厚く還元するための強力な原資となります。
具体的な計算例
実際にどれくらいの金額になるのか、具体例を見てみましょう。
例:ある事業所の1ヶ月の移動支援基本報酬が100万円の場合
- 加算額: 1,000,000円 × 40.2% = 402,000円
- 総請求額: 1,000,000円 + 402,000円 = 1,402,000円
この場合、事業所は新たに40万2千円の収入を得ることになります。そして、この40万2千円を原資として、職員の賃金改善を行うことが求められます。
加算を受けられる事業所の条件
この手厚い加算を受けるためには、以下の2つの要件を両方満たす必要があります。
- 要件1:中央区に移動支援事業所として登録していること
加算の対象は、中央区の移動支援事業を実施する事業者として正式に登録されている事業所に限られます。まだ登録がお済みでない事業所は、まず事業所登録の手続きを完了させる必要があります。 - 要件2:処遇改善計画書および処遇改善実績報告書を中央区に届け出ること
加算金が確実に職員の待遇改善に使われることを担保するため、事前に「どのような賃金改善を行うか」を記した計画書を提出し、年度終了後に「計画通りに賃金改善を実施したか」を記した実績報告書を提出することが義務付けられています。
加算金は何に使える?職員への還元が必須
賃金改善が唯一の目的
本加算で得た収入は、移動支援事業に従事する職員の賃金改善に充てることが絶対条件です。事業所の家賃や光熱費、備品購入費など、職員の賃金改善以外の目的で使用することは認められていません。あくまで、現場でサービスを提供する職員へ直接還元するための制度であることを理解しておく必要があります。
賃金改善の具体例
「賃金改善」には、以下のような方法が考えられます。
- 基本給のベースアップ:全職員または特定の職種の基本給を引き上げる。
- 手当の新設・増額:資格手当、役職手当、勤続手当などを新たに設けたり、既存の手当額を増やしたりする。
- 賞与(一時金)の支給・増額:賞与の支給月数を増やしたり、決算賞与として支給したりする。
- その他:時間外手当の割増率を引き上げるなど、各種手当を改善する。
申請から加算金受領までの完全ガイド
加算を受けるための手続きは、大きく分けて「計画書の提出」と「実績報告書の提出」の2つのステップで構成されます。
ステップ1:処遇改善計画書の提出
年度の初め、または加算を受けたい月の前に、賃金改善の計画を立てて中央区に提出します。
- 提出物:
- 中央区処遇改善計画書
- (該当する場合)都道府県に提出した「福祉・介護職員等処遇改善加算処遇改善計画書」の写し
- 提出期限:毎年度、加算を開始したい月の月末まで
- ポイント:計画書には、具体的な賃金改善の内容、対象職員、改善見込額などを詳細に記載する必要があります。中央区の公式サイトで公開されている見本を参考に、不備のないように作成しましょう。
ステップ2:処遇改善実績報告書の提出
年度が終了したら、計画通りに賃金改善が実施されたかを報告します。
- 提出物:
- 中央区処遇改善実績報告書
- (該当する場合)都道府県に提出した「福祉・介護職員等処遇改善加算処遇改善実績報告書」の写し
- 提出期限:毎年度、翌年5月末まで
- ポイント:この報告は非常に重要です。加算金の総額を上回る賃金改善が行われていることを証明する必要があります。報告内容に虚偽があった場合、加算金の返還を求められる可能性もあるため、正確な報告を心がけてください。
必要書類ダウンロードと提出先
各種様式は中央区の公式サイトからダウンロードできます。
| 書類名 | リンク |
|---|---|
| 中央区処遇改善計画書様式 | 公式サイトよりダウンロード |
| 中央区処遇改善実績報告書様式 | 公式サイトよりダウンロード |
| 特別な事情に係る届出書 | 公式サイトよりダウンロード |
提出先・お問い合わせ先
福祉保健部障害者福祉課給付指導係
〒104-8404 東京都中央区築地一丁目1番1号 本庁舎4階
電話:03-3546-5697
ファクス:03-3248-1322
Q&A よくある質問
Q1: この加算はいつから始まりますか?
A1: 令和7年度(2025年4月)のサービス提供分から開始されます。
Q2: 国の「福祉・介護職員等処遇改善加算」とは別に受けられるのですか?
A2: はい、これは中央区独自の移動支援事業に対する加算です。国の加算を算定している居宅介護等のサービスとは別に、移動支援事業の報酬に対して加算されます。ただし、計画書や報告書の考え方は国の制度に準拠しているため、関連性は非常に高いです。
Q3: 加算されたお金は、必ず全額職員に還元しないといけませんか?
A3: はい、その通りです。加算額を上回る賃金改善を実施し、実績報告書でその内容を報告する必要があります。なお、賃金改善に伴い増加する法定福利費の事業者負担分については、賃金改善額に含めることが可能です。
Q4: まだ中央区で移動支援事業の登録をしていません。どうすればよいですか?
A4: 加算を申請する前に、まず中央区への事業所登録を完了させる必要があります。中央区の公式サイトに事業者登録に関する手続きの詳細が掲載されていますので、そちらをご確認の上、登録を進めてください。
Q5: 計画書の書き方がわかりません。相談できますか?
A5: はい、中央区の担当課(福祉保健部障害者福祉課給付指導係)が問い合わせ先となっています。不明な点があれば、早めに相談することをおすすめします。公式サイトで公開されている記入見本も非常に参考になりますので、まずはそちらを確認してみましょう。
まとめ:職員の未来のために、今すぐ準備を始めよう
「中央区移動支援事業処遇改善加算」は、移動支援事業を支える職員の待遇を大きく改善し、事業所の経営安定にも寄与する画期的な制度です。最後に、重要なポイントを再確認しましょう。
- 令和7年度からスタートする中央区独自の制度
- 基本報酬に40.2%という高い加算率
- 対象は中央区に登録済みの移動支援事業所
- 「処遇改善計画書」と「処遇改善実績報告書」の提出が必須
この加算を最大限に活用することは、職員のモチベーション向上、人材の定着、ひいては利用者へのサービス品質向上に直結します。対象となる事業者の皆様は、ぜひこの機会を逃さず、令和7年度からの算定に向けて計画書の準備を進めてください。不明な点があれば、ためらわずに中央区の担当窓口へ問い合わせ、万全の体制で申請に臨みましょう。