介護・福祉事業所の人材不足は深刻な課題です。この記事では、過去に国土交通省が実施した「介護職員等緊急確保事業」を事例として取り上げ、どのような事業者が、どのような経費で、いくら補助を受けられたのかを徹底解説します。本事業は受付を終了していますが、今後の同様の補助金に備えるための重要な情報が満載です。
介護職員等緊急確保事業とは?
介護職員等緊急確保事業は、自動車事故によって重度後遺障害を負われた方を受け入れている障害福祉サービス事業者を対象とした補助金です。新型コロナウイルス等の流行期においても、利用者が手厚い介護を受け、安全・安心な日常生活を送れるよう、介護人材の確保にかかる経費を支援することを目的としていました。
💡 この補助金の重要ポイント
この補助金の最大の特色は、対象が「自動車事故による重度後遺障害者」のケアに関わる事業者に限定されている点です。一般的な介護人材確保の補助金とは異なる、非常に専門性の高い制度でした。
補助金の概要(令和4年度二次公募事例)
項目 | 内容 |
---|---|
事業名 | 自動車事故対策費補助金(介護職員等緊急確保事業) |
実施機関 | 国土交通省 |
公募期間(二次) | 令和5年2月10日(金)~ 令和5年2月20日(月)※受付終了 |
補助上限額 | 最大80万円(経費・事業形態により異なる) |
対象地域 | 全国 |
補助対象となる事業者と要件
補助金を受け取るためには、事業者の種類と、受け入れている利用者の両方で特定の要件を満たす必要がありました。
対象事業者
以下のいずれかに該当する障害福祉サービス事業者が対象でした。
- 居宅介護事業者
- 重度訪問介護事業者
- 障害者支援施設
- グループホーム(共同生活援助)
利用者の要件
上記の事業所において、自動車事故による重度後遺障害者が既に入所・利用していること、または具体的な利用見込みがあることが必須条件でした。具体的には、以下のいずれかを満たす方が対象です。
- (独)自動車事故対策機構(NASVA)の介護料受給資格者
- 自動車損害賠償保障法施行令 別表第1第2級 以上の者
補助対象となる経費と補助上限額
対象となる経費は、事業者の種類によって異なりました。自社がどの経費を申請できるのか、正確に把握することが重要です。
⚠️ 注意点
申請できる経費は事業形態によって明確に分かれていました。例えば、居宅介護事業者は「人材雇用費」を申請することはできませんでした。
【居宅介護・重度訪問介護事業者向け】
- 求人情報発信費
就職情報サイトへの掲載料など。
補助上限:1事業所あたり80万円 - 職業紹介利用費
転職エージェントなどの利用料。
補助上限:1事業所あたり1名70万円(3名分まで)
※職業紹介利用費には、従前から求人情報を発信していることなどの要件がありました。
【障害者支援施設・グループホーム向け】
- 人材雇用費
令和4年12月2日から令和5年3月31日までに新たに雇用された従業員の給与総支給分。
補助上限:対象期間の給与総支給分
申請手続きの流れ【過去の事例】
申請は、事業者登録と電子申請の2段階で行われました。今後の参考に、当時の流れを確認しておきましょう。
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ステップ1:事業者登録
指定のメールアドレス宛に、事業者名、担当者名、連絡先などの必要事項を送り、事業者登録を行いました。
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ステップ2:登録完了と電子申請の案内
事務局で登録内容が確認された後、担当者宛に登録完了メールが届きました。このメールに、電子申請システムの利用方法が記載されていました。
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ステップ3:電子システムによる申請書類の提出
公募要領で定められた申請様式一式を、指定の電子システムを通じて提出しました。
まとめ:今後の公募に備えるポイント
「介護職員等緊急確保事業」は終了しましたが、介護・福祉分野の人材確保を支援する補助金は、国や地方自治体から今後も公募される可能性があります。今回の事例から、以下のポイントを押さえておくことが重要です。
- 対象者の要件を正確に理解する:自施設が補助金の対象となるか、特に利用者の条件などを細かく確認しましょう。
- 対象経費を事前に把握する:どのような経費が補助対象になるかを知り、計画的に人材確保活動を行いましょう。
- 公募情報を定期的にチェックする:国土交通省や厚生労働省、各都道府県のウェブサイトを定期的に確認し、情報を見逃さないようにしましょう。