岩手県沿岸地域で事業を営む経営者の皆様へ。東日本大震災からの復興を支える人材の雇用を力強く後押しする「岩手県事業復興型雇用確保助成金」の令和7年度新規申請が開始されます。この制度を活用すれば、最大3年間、1事業所あたり上限2,000万円の助成が受けられます。本記事では、複雑な制度の概要から対象要件、申請手続きまで、専門家が分かりやすく徹底解説します。
岩手県事業復興型雇用確保助成金とは?
この助成金は、東日本大震災津波で被災した岩手県沿岸地域における安定的な雇用創出と経済活性化を目的とした制度です。震災により離職を余儀なくされた方などを新たに雇用する事業主に対し、雇入れに係る費用の一部を最大3年間にわたり助成することで、被災地域の復興を力強く支援します。
助成金 基本情報
助成金名 | 岩手県事業復興型雇用確保助成金(雇入費) |
実施機関 | 岩手県 |
支給上限額 | 1事業所あたり最大 2,000万円 |
対象地域 | 岩手県沿岸12市町村(洋野町、久慈市、野田村、普代村、田野畑村、岩泉町、宮古市、山田町、大槌町、釜石市、大船渡市、陸前高田市) |
申請期間(令和7年度) | 【前期】令和7年5月15日~10月31日 【後期】令和7年11月1日~令和8年3月31日 |
誰が対象?助成金の詳細な要件
本助成金を受給するには、「事業所」と「雇用する労働者」の両方で、定められた要件をすべて満たす必要があります。
対象となる事業所の要件
- ✅ 岩手県沿岸12市町村に事業所があること。
- ✅ 中小企業基本法に規定する中小企業者またはこれに準ずる者であること。
- ✅ 令和7年度に初めてこの雇入費助成金を申請する事業所であること。
- ✅ 以下の「1号事業」または「2号事業」のいずれかに該当する事業を実施していること。
【1号事業】
国や地方公共団体の復興関連の補助金・融資等の支援対象となっている事業。(例:グループ補助金、津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金など)
【2号事業】
1号事業以外で、助成金支給が「産業政策と一体となった雇用支援」と認められる事業。県の認定委員会で個別に審査されます。(例:日本政策金融公庫の復興特別貸付など)
対象となる労働者の要件
雇用する労働者が以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 令和7年3月15日以降に雇い入れた「被災三県求職者」であること。
- 雇用契約が「期間の定めのない雇用」または「更新が可能な1年以上の有期雇用」であること。
- 雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者であること。
- 申請日時点で在職していること。
- 1名以上の新規雇用者を申請すること。(再雇用者のみは対象外)
ポイント:「被災三県求職者」とは?
平成23年3月11日時点で、岩手県、宮城県、福島県に居住していた、または同地域の事業所に雇用されていた失業者などが該当します。学生だった方も一定の要件を満たせば対象となります。詳細は手引きで確認が必要です。
いくらもらえる?支給額と対象期間
支給額一覧
支給額は、事業の種類(1号/2号)と労働者の雇用形態(フルタイム/パートタイム、新規/再雇用)によって異なります。支給対象期間は原則3年間です。
【1号事業】の場合
区分 | 1年目 | 2年目 | 3年目 | 認定総額 |
---|---|---|---|---|
フルタイム・新規 | 60万円 | 40万円 | 20万円 | 120万円 |
フルタイム・再雇用 | 60万円 | 40万円 | 20万円 | 120万円 |
パートタイム・新規 | 30万円 | 20万円 | 10万円 | 60万円 |
パートタイム・再雇用 | 30万円 | 20万円 | 10万円 | 60万円 |
【2号事業】の場合
区分 | 1年目 | 2年目 | 3年目 | 認定総額 |
---|---|---|---|---|
フルタイム・新規 | 60万円 | 40万円 | 20万円 | 120万円 |
フルタイム・再雇用 | 48万円 | 32万円 | 16万円 | 96万円 |
パートタイム・新規 | 30万円 | 20万円 | 10万円 | 60万円 |
パートタイム・再雇用 | 24万円 | 16万円 | 8万円 | 48万円 |
⚠️ 注意!支給額が減額されるケース
労働者を雇い入れた日から2ヶ月を経過した後に申請した場合、経過した日数に応じて支給額が日割りで減額されます。雇入れ後は速やかに申請手続きを行うことをお勧めします。
申請方法と手続きの流れ
申請期間(令和7年度)
申請期間 | 対象となる雇入期間 | |
---|---|---|
前期 | 令和7年5月15日(木)~10月31日(金) | 令和7年3月15日~9月30日 |
後期 | 令和7年11月1日(土)~令和8年3月31日(火) | 令和7年10月1日~令和8年3月31日 |
※予算上限に達した場合、期限前に受付を終了することがあります。
申請から支給までの流れ
- 1新規申請:必要書類を揃え、受付期間内に岩手県定住推進・雇用労働室へ提出します。
- 2審査:県にて書類の精査・審査が行われます。聞き取り調査や追加書類の提出を求められる場合があります。
- 3支給認定通知:審査の結果、要件を満たしていると判断されると、支給認定通知が送付されます。
- 4実績報告・継続申請:各年度ごとに、労働者の稼働実績を報告します。翌年度も助成を希望する場合は継続申請が必要です。
- 5助成金受給:実績報告の審査後、助成金が指定口座に振り込まれます。
申請書類の提出先・問い合わせ
岩手県定住推進・雇用労働室
〒020-8570 岩手県盛岡市内丸10-1
TEL: 019-656-1571 / FAX: 019-656-1572
申請に必要な書類一覧
申請には多くの書類が必要です。岩手県のホームページから最新の様式をダウンロードし、漏れなく準備しましょう。
全事業所が提出する必須書類(一部抜粋)
- 提出書類チェックリスト
- 様式第1号 支給認定申請書
- 様式第2号 支給額決定申請書
- 様式第7号 職務経歴等確認書(労働者ごと)
- 対象産業政策を受けていることを証明する書類(交付決定通知書など)
- 【法人】履歴事項全部証明書の写し
- 直近の決算書の写し
- 労働条件通知書又は雇用契約書の写し(労働者ごと)
- 被災求職者であることが確認できる書類の写し(住民票など)
- 出勤簿、賃金台帳の写し
書類作成・提出時の注意点
書類は全てA4サイズ・片面コピーで統一し、ホチキス留めはせずクリップ等でまとめてください。修正液や消せるボールペンの使用は不可です。訂正する場合は二重線と訂正印が必要です。必ず控え(コピー)を保管しておきましょう。
まとめ
「岩手県事業復興型雇用確保助成金」は、岩手県沿岸地域で復興に取り組む事業者にとって、人材確保と経営安定の大きな助けとなる制度です。要件が細かく設定されており、提出書類も多岐にわたるため、計画的な準備が成功のカギとなります。
この記事を参考に、まずは自社が対象となるかを確認し、申請期間に間に合うよう準備を進めましょう。詳細や最新情報、申請様式のダウンロードは、必ず岩手県の公式ホームページをご確認ください。