【令和7年度】東京都の既存住宅流通促進民間支援事業とは?

東京都では、中古住宅(既存住宅)市場の活性化を目指し、「既存住宅流通促進民間支援事業」を実施しています。この事業は、既存住宅を質の高い住宅へと改修し、その価値を正しく評価して流通させる新たな仕組み作りや、建物のインスペクション(建物状況調査)、瑕疵保険制度の普及に取り組む民間事業者を支援するものです。

令和7年度の募集が開始されており、最大1100万円という手厚い補助が受けられる可能性があります。不動産事業者やリフォーム事業者にとって、事業拡大や新たなサービス開発の大きなチャンスとなります。この記事では、本事業の2つの支援メニューについて、対象者、補助額、申請期間などを詳しく解説します。

事業の概要

本事業は、目的別に2つの支援メニューが用意されています。事業者は自社の取り組みに合わせて、いずれかを選択して応募します。

項目 【1】良質な既存住宅流通の仕組構築支援事業 【2】建物状況調査・瑕疵保険制度に関する普及啓発事業
目的 既存住宅を高品質に改修し、価値を適正に評価・販売する新たな仕組みを構築する取組を支援 インスペクションや瑕疵保険、住宅履歴等の重要性を広める情報発信・普及啓発の取組を支援
補助率 補助対象経費の3分の2 補助対象経費の2分の1
補助上限額 ・仕組み構築検討経費:上限500万円/件
・リフォーム工事費等:上限100万円/戸(政策課題解決型は200万円/戸
※1事業者あたり3戸まで
上限200万円/件
最大選定件数 5件 5件

【1】良質な既存住宅流通の仕組構築支援事業

この事業は、単なるリフォームに留まらず、中古住宅の価値を向上させ、消費者が安心して購入できる市場を創出するための「仕組み作り」を支援するものです。

主な事業要件

補助対象となる事業は、以下の取り組みを組み込んだ新たなスキームや商品開発、体制整備を行う必要があります。

  • 建物状況調査(インスペクション)の実施
  • 既存住宅売買瑕疵保険の検査基準適合または保険への加入
  • リフォームによる性能向上を消費者へ分かりやすく可視化・訴求する取組
  • 維持保全計画の策定
  • 住宅履歴情報の保存

補助対象経費

補助の対象となる経費は幅広く、事業の立ち上げから実行までをカバーします。

  • 仕組み構築検討経費:人件費、外部専門家への報酬、会場使用料、調査委託費、広告費など
  • リフォーム工事費・建物状況調査等費用:性能向上リフォーム工事費、インスペクション費用、瑕疵保険加入のための補修費用、住宅履歴情報の作成費用など

政策課題解決型について

特に都が推進する政策課題の解決に貢献する取り組みは「政策課題解決型」として、リフォーム工事費等の補助上限額が1戸あたり200万円に引き上げられます。対象となるのは以下のリフォームです。

  • 高い省エネ性能化リフォーム(ZEH水準)
  • 東京こどもすくすく住宅化リフォーム
  • 長期優良住宅化リフォーム
  • 団地再生に資する取組

【2】建物状況調査・既存住宅売買瑕疵保険制度に関する普及啓発事業

この事業は、中古住宅の売買における消費者の不安を解消するため、インスペクションや瑕疵保険の認知度向上と利用促進を図る活動を支援します。

具体的な取組例

  • セミナーやイベントの開催
  • YouTubeなどの動画コンテンツ制作・配信
  • Web広告やパンフレットによる広報活動
  • 専門家による相談窓口の設置

補助対象経費

普及啓発活動に直接必要となる経費が対象です。

  • 人件費、外部講師への謝礼金
  • 会場使用料、印刷製本費
  • 広告費、通信運搬費
  • イベント運営等の委託費

公募期間と事業スケジュール

  • 応募受付期間:令和7年5月8日(木) から 令和7年11月28日(金) まで
  • 応募締切日:6月、7月、9月、10月、12月の下旬に事業者選定委員会が予定されており、各開催日の3週間前が締切となります。詳細は公式ホームページで告知されます。
  • 事業期間:
    • 【1】仕組構築支援事業:補助事業者決定日から令和8年3月31日まで
    • 【2】普及啓発事業:補助事業者決定日から令和8年2月28日まで

注意点:各事業とも最大選定件数(5件)に達した時点で受付が終了します。また、予算が上限に達した場合も早期に締め切られる可能性があるため、早めの応募が推奨されます。

申請方法と選定プロセス

申請を希望する事業者は、募集要項に基づき事業提案書等の応募書類を東京都に提出します。選定は、提出書類と提案事業者によるプレゼンテーションを基に、有識者等で構成される事業者選定委員会による審査を経て決定されます。

事業の実現可能性、効果、持続性、波及性などが総合的に評価されるため、質の高い事業計画の策定が重要です。

過去の採択事例紹介

どのような事業が採択されているか、過去の事例を参考にすることで、自社の提案のヒントになります。

令和6年度の採択事例

  • 株式会社リアークスファインド:子育て世帯向けのマンションリフォームモデルを構築。断熱性向上のための内窓設置やインスペクション・瑕疵保険を標準化し、安心な中古マンション流通を目指す。
  • 株式会社さくら事務所:著名人とコラボしたYouTube動画を配信。実際の戸建て住宅でインスペクションを行い、建物の見方やメンテナンスのポイントを解説し、買主の不安解消を図る。

令和5年度の採択事例

  • 株式会社インテリックス:買取再販事業において、リノベーションによる省エネ性能の向上を分かりやすく解説。省エネ性能向上を標準とするブランド開発を目指す。
  • 小田急不動産株式会社:マンションの買取再販において、管理組合への合意形成を支援し、共用部であるサッシを含む窓全体の断熱改修モデルを構築する。

まとめ

東京都の「既存住宅流通促進民間支援事業」は、中古住宅市場の質的向上を目指す意欲的な事業者にとって、非常に魅力的な補助金です。補助額が大きいだけでなく、事業の仕組み作りから支援されるため、新たなビジネスモデルを確立する絶好の機会と言えるでしょう。

公募期間には限りがあり、早期終了の可能性もあります。関心のある事業者は、まずは公式ホームページで詳細な募集要項を確認し、準備を進めることをお勧めします。

→ 詳細は東京都住宅政策本部の公式ホームページへ