「今の会社に所属しながら、自分のアイデアで新規事業を立ち上げたい」「優秀な社員に経営経験を積ませ、新たな事業の柱を育てたい」そんな想いを持つ大企業の社員や経営者の方へ。その挑戦を力強く後押しする制度が「出向起業」であり、それを支援するのが「大企業人材等新規事業創造支援事業費補助金」です。この記事では、制度の概要からメリット、申請要件までを分かりやすく解説します。
「出向起業」とは?新しい挑戦のカタチ
出向起業とは、大企業などに所属する人材が、会社を辞めることなく外部資本を主体として新たに会社を設立し、その新会社へ出向して経営者として新規事業開発に取り組む仕組みです。個人のリスクを抑えつつ、大企業の枠を超えた自由度の高い事業展開が可能になる、新しい起業スタイルとして注目されています。
出向起業のポイント
- リスク低減: 所属企業を退職しないため、収入や福利厚生などのセーフティネットが確保される。
- 高い自由度: 親会社からの出資比率が低いため(原則20%未満)、子会社経営よりも迅速で自由な意思決定が可能。
- 成長機会: 経営者としての経験を通じて、実践的なスキルや経営能力が飛躍的に向上する。
出向起業のメリットを徹底解説
出向起業は、挑戦する社員本人と、送り出す企業の双方に大きなメリットをもたらします。
出向する社員側のメリット
- 安定した基盤での挑戦: 退職リスクを負うことなく、新規事業の立ち上げにフルコミットできます。
- 経営者としての経験: 資金調達から事業計画、人材採用まで、経営に関するあらゆる実務を経験し、キャリアの幅を広げられます。
- スキルと人脈の獲得: スタートアップのエコシステムに身を置くことで、新たなスキルや多様な人脈を築くことができます。
出向元企業側のメリット
- 新規事業の創出: 社内の制約(ガバナンスや高い売上目標)にとらわれず、スピーディーに新規事業の可能性を検証できます。
- 経営人材の育成: 座学研修とは比較にならない実践的な経験を通じて、将来の経営を担うリーダーを育成できます。
- 企業PRと採用力強化: 社員の挑戦を支援する先進的な企業として、採用市場での魅力向上につながります。
「大企業人材等新規事業創造支援事業費補助金」概要
この補助金は、出向起業における新規事業開発(試作品開発や実証実験など)にかかる経費の一部を支援するものです。過去に複数回公募されており、今後も同様の事業が期待されます。
項目 | 内容(過去の公募事例を含む) |
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目的 | 大企業の経営資源を活用したエコシステムを構築し、多様な経営人材の育成と新規事業創造を促進する。 |
補助対象者 | 「出向起業」のスキームを活用して新規事業を立ち上げる事業者(設立された新会社) |
補助額 | 上限500万円〜2,000万円程度(事業内容により変動) |
補助率 | 原則1/2以内(MBO等を活用する場合は2/3以内となるケースも) |
補助対象経費 | 試作品開発費、実証実験費、外注費、委託費、材料費など(※出向者の人件費は原則対象外) |
公募時期 | 過去には5月〜6月頃に公募された実績あり(※最新情報は公式サイトで要確認) |
補助金の対象となる「出向起業」の3つの要件
この補助金の対象となるためには、主に以下の3つの要件を満たす「出向起業」である必要があります。
必須要件チェックリスト
- 資本要件: 新会社の設立にあたり、所属企業以外の資本が80%以上であること(所属企業の出資比率が議決権ベースで20%未満)。
- 業務要件: 所属企業の人材が、設立した新会社へ出向等によりフルタイムで経営者として新規事業創造に従事すること。
- 将来のオプション: 新会社や経営者に対して、そのまま独立する、または所属企業へ戻る(事業を買い戻す)計画や選択肢が用意されていること。
申請プロセス(一般的な流れ)
本事業は過去の公募が終了していますが、今後の申請に備え、一般的な補助金申請の流れを把握しておきましょう。
-
1
公募情報の確認
実施機関の公式サイトで最新の公募要領、申請期間などを確認します。 -
2
事業計画の策定・書類準備
公募要領に基づき、事業計画書や経費の見積書など、必要な申請書類を作成します。 -
3
申請
指定された方法(メール提出など)で、期間内に申請を完了させます。 -
4
審査・交付決定
事務局による審査が行われ、採択されると交付決定通知が届きます。 -
5
事業実施と実績報告
事業計画に沿って補助事業を実施し、期間終了後に実績報告書を提出します。
まとめ
「出向起業」は、個人のキャリアと企業の事業開発の両面で大きな可能性を秘めた制度です。「大企業人材等新規事業創造支援事業費補助金」は、その挑戦を実現するための強力な追い風となります。本制度は既に公募を終了していますが、同様の支援事業が今後も実施される可能性があります。出向起業に関心のある方は、経済産業省や関連機関の情報を定期的にチェックし、次のチャンスに備えましょう。
お問い合わせ先(過去の事業)
担当: 令和元年度 大企業人材等新規事業創造支援事業費補助金 (出向起業等創出支援事業) 担当
メール: co-hr-innovation-info@sii.or.jp
※お問い合わせの際は、件名に必ず【質問】と記載してください。
※本情報は過去のものです。最新の事業については、経済産業省等の公式サイトをご確認ください。