詳細情報
重度の障害があり、意思疎通に不安を抱える方が入院する際、「自分の気持ちや痛みをうまく伝えられるだろうか」「医療スタッフとのやり取りは大丈夫だろうか」といった心配は尽きないものです。そんな不安を解消し、安心して医療に専念できる環境を整えるため、堺市では独自の支援制度を実施しています。それが「堺市重度障害者入院時コミュニケーション支援事業」です。この制度を活用すれば、利用者負担無料で、ご本人をよく知るヘルパーを「コミュニケーション支援員」として病院に派遣できます。この記事では、制度の詳しい内容から対象者、申請方法、利用のポイントまで、誰にでもわかるように徹底解説します。
この記事のポイント
- 入院時のコミュニケーション不安を解消する堺市独自の制度
- 利用者負担は完全無料で利用可能
- 普段から利用しているヘルパーが支援員となり、安心
- 申請から利用までの流れをステップバイステップで解説
① 堺市重度障害者入院時コミュニケーション支援事業とは?
制度の概要
この事業は、重度の障害によって意思疎通に支援が必要な方が医療機関に入院した際に、ご本人のことを日頃からよく理解しているホームヘルパーやガイドヘルパーを「コミュニケーション支援員」として病院へ派遣する制度です。支援員が患者さんと医療従事者の間の「架け橋」となることで、スムーズな意思疎通を促し、患者さんが安心して適切な医療を受けられる環境を確保することを目的としています。
| 制度概要 | |
|---|---|
| 正式名称 | 堺市重度障害者入院時コミュニケーション支援事業 |
| 実施組織 | 堺市 健康福祉局 障害福祉部 障害福祉サービス課 |
| 目的 | 重度障害者が入院した際の医療従事者との意思疎通を支援し、安心して医療を受けられる環境を確保する。 |
| 根拠法令 | 障害者総合支援法 第77条第1項第6号に基づく地域生活支援事業 |
② 費用と利用時間の上限
利用者負担は無料!
この事業の最大の特長は、利用者の方の自己負担が一切ないことです。手話通訳派遣事業などに準じており、費用は全額堺市が負担します。経済的な心配をすることなく、必要な支援を受けられるのは非常に大きなメリットです。
利用時間の上限
利用できる時間には上限が設けられています。1人あたり1ヶ月あたり50時間が上限となります。入院中の必要な場面で、計画的に利用することが大切です。
事業者への報酬単価(参考)
利用者は無料ですが、支援を行う事業者には堺市から以下の報酬が支払われます。これは、事業者が制度を利用する際の参考情報となります。
| 支援時間 | 報酬額 |
|---|---|
| 30分 | 1,113円 |
| 1時間 | 2,088円 |
| 1時間30分 | 2,925円 |
| 2時間以上 | 3,667円 + 30分を増すごとに742円 |
③ 対象者・条件
この制度を利用するには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 堺市から特定の障害福祉サービスの支給決定を受けていること
対象サービス:「居宅介護」「重度訪問介護」「同行援護」「行動援護」「重度障害者等包括支援」「移動支援」のいずれか。 - 意思疎通に支援が必要であると認められること
障害支援区分認定調査の「コミュニケーション」または「説明の理解」の項目で、一定の支援が必要と判断されている方。
【重要】対象外となるケース
以下のいずれかに該当する方は、この事業の対象外となりますのでご注意ください。
- 施設に入所されている方
- 就学前の児童
- 精神科病院へ入院される場合
- 重度訪問介護の支給決定者で、障害支援区分が4以上の方
→ この場合は、重度訪問介護のサービス内で同様のコミュニケーション支援が受けられるため、本事業の対象外となります。
④ 支援の具体的な内容(できること・できないこと)
支援の範囲(できること)
コミュニケーション支援員の役割は、あくまで「意思疎通の仲介」に特化しています。具体的には、以下のような支援を行います。
- 医師や看護師からの説明を、本人が理解できる方法で伝える。
- 本人の痛み、希望、質問などを、医療従事者に正確に伝える。
- 検査や治療に対する本人の不安な気持ちを代弁し、医療従事者との信頼関係構築を助ける。
支援の範囲外(できないこと)
この事業は身体介護や医療行為の補助を行うものではありません。医療機関の業務との役割分担を明確にするため、以下の行為は支援員の業務に含まれません。
- 医療行為の補助や身体の抑制:注射や点滴の際に抵抗するのを抑えるなど。
- 身体介護:食事介助、トイレ介助、清拭、更衣介助など。
- 移動介助:院内を移動する際に車椅子を押したり、身体を支えたりすること。
- 意思決定の代行:緊急手術の同意や転院の同意など、本人に代わって重要な決定を行うこと。
⑤ 申請方法・利用までの流れ
制度の利用は、以下のステップで進みます。入院が決まる前から準備できることもあるので、早めに確認しておきましょう。
- ステップ1:支給申請
お住まいの区役所の担当窓口へ「堺市重度障害者入院時コミュニケーション支援費支給申請書」を提出します。
ポイント:原則として、居宅介護などの障害福祉サービスの更新申請と同時に行うことになっています。いざという時に備え、事前に申請を済ませておくとスムーズです。 - ステップ2:支給決定
堺市(区役所)が申請内容を審査し、対象者であると決定されれば「支給決定通知書」が自宅に郵送されます。この通知書がサービスの利用許可証となります。 - ステップ3:事業者との契約
実際にサービスを提供してもらう事業者(普段利用しているヘルパーステーションなど)に「支給決定通知書」を提示し、サービス利用に関する契約を締結します。 - ステップ4:入院と医療機関との調整
入院が決まったら、事業者と連携し、入院先の医療機関にこの事業を利用したい旨を説明し、許可を得ます。その際、堺市が作成した説明資料「医療機関の皆様へ」を活用するとスムーズです。 - ステップ5:サービス利用開始
医療機関の許可のもと、契約した事業者がコミュニケーション支援員を派遣し、支援が開始されます。利用者は、サービス提供後に事業者が作成する「サービス提供実績記録票」の内容を確認します。
⑥ スムーズに利用するためのポイント
事前の申請が鍵
入院は突然決まることもあります。慌てないためにも、対象となる可能性のある方は、障害福祉サービスの更新時期などに合わせて、あらかじめこの事業の支給申請を済ませておくことを強くお勧めします。「支給決定通知書」を手元に持っておけば、いざという時すぐに事業者や病院との調整に入れます。
医療機関への丁寧な説明と連携
この制度は堺市独自の事業であるため、すべての医療機関が内容を熟知しているわけではありません。利用にあたっては、病院側の理解と協力が不可欠です。サービス提供事業者と協力し、堺市が用意している説明資料を使って、事業の目的や支援員の役割(特に「できないこと」)を丁寧に説明し、良好な連携関係を築くことが重要です。
コミュニケーション支援員の要件
派遣される「コミュニケーション支援員」は、誰でもなれるわけではありません。以下の要件を満たす必要があります。
- ホームヘルパーやガイドヘルパーの資格を持っていること。
- 対象者の方へ、普段からヘルパーとして支援実績があること。
- 対象者の方との意思疎通に熟達していること。
つまり、いつも利用している事業所の、気心の知れたヘルパーさんが支援に入ってくれるということです。これは利用者にとって、非常に大きな安心材料となります。
⑦ よくある質問(FAQ)
- Q1. 本当に費用はかからないのですか?
- はい、利用者の方の自己負担は一切ありません。無料です。費用は全額、堺市がサービス提供事業者に支払います。
- Q2. 堺市民であれば誰でも利用できますか?
- いいえ、対象者には要件があります。堺市在住であることに加え、「居宅介護」などの特定の障害福祉サービスを利用していること、意思疎通に支援が必要と認定されていることなどが条件となります。詳しくは本文の「対象者・条件」の項目をご確認ください。
- Q3. 支援員に食事やトイレの介助もお願いできますか?
- いいえ、できません。この事業はあくまで「意思疎通の支援」に特化しています。食事介助やトイレ介助などの身体介護は、病院の看護師や看護助手の業務範囲となるため、支援員の業務には含まれません。
- Q4. 入院が急に決まったのですが、今からでも申請できますか?
- はい、申請は可能です。ただし、申請から支給決定までには一定の時間がかかります。緊急の場合は、まずお住まいの区役所の障害福祉担当窓口や、利用中のサービス事業所、相談支援専門員(ケアマネージャー)にすぐに相談してください。
- Q5. 家族の付き添いとどう違うのですか?
- ご家族ももちろん大切な支えですが、コミュニケーション支援員は、障害特性を理解し、専門的なコミュニケーション技術を持つプロのヘルパーです。客観的な立場で、医療従事者とご本人の間を正確につなぐ役割を果たします。また、ご家族の付き添い負担を軽減するという側面もあります。
⑧ まとめと問い合わせ先
「堺市重度障害者入院時コミュニケーション支援事業」は、障害のある方が入院する際の大きな不安を和らげ、安心して治療に専念するための非常に重要な制度です。
重要ポイントの再確認
- 費用は無料:経済的な負担なく利用できます。
- いつものヘルパーが支援:気心の知れた支援員がサポートしてくれるので安心です。
- 月50時間まで利用可能:必要な場面で計画的に活用できます。
- 事前の申請がおすすめ:サービスの更新時などに、あらかじめ申請を済ませておきましょう。
この制度についてさらに詳しく知りたい方、利用を検討されている方は、まずはかかりつけの相談支援専門員や現在利用しているサービスの事業所、またはお住まいの区役所の担当窓口にご相談ください。
問い合わせ先
- 担当部署:堺市 健康福祉局 障害福祉部 障害福祉サービス課
- 電話番号:072-228-7510
- ファクス:072-228-8918
- 所在地:〒590-0078 堺市堺区南瓦町3番1号 堺市役所本館7階