詳細情報
尼崎市で老朽化した木造アパートや長屋をお持ちのオーナー様へ朗報です。倒壊の危険性や維持管理コストにお悩みではありませんか?尼崎市では、危険な木造賃貸住宅の解体(除却)にかかる費用の一部を補助する制度を実施しています。この制度を活用すれば、最大500万円の補助を受けられる可能性があります。本記事では、この「不良木造賃貸住宅の除却に係る補助金」について、対象条件から申請手順、採択されるためのポイントまで、専門家が分かりやすく徹底解説します。
尼崎市「不良木造賃貸住宅の除却に係る補助金」とは?
この補助金は、兵庫県尼崎市が、老朽化し危険な状態にある木造の賃貸住宅(共同住宅や長屋)の解体費用を支援することで、地域の防災性を高め、安全で良好な住環境を形成することを目的とした制度です。所有者の経済的負担を軽減し、空き家問題の解決や土地の有効活用を促進します。
制度の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 尼崎市不良木造賃貸住宅の除却に係る補助金 |
| 実施組織 | 尼崎市 都市整備局 住宅部 空家対策担当 |
| 目的・背景 | 老朽化した不良木造賃貸住宅の除却を促進し、倒壊等の危険を解消するとともに、跡地の有効活用を通じて良好な住環境の形成を図る。 |
| 申請期間 | 令和7年5月27日(火曜日)から令和7年12月26日(金曜日)まで |
【重要】申請期間内であっても、市の予算上限に達した場合は受付が終了します。検討されている方は、お早めに準備・相談を開始することをおすすめします。
補助金額と補助率について
補助金額は、実際の解体工事費と国の基準額を基に算出され、上限が設けられています。計算方法をしっかり理解しておくことが重要です。
補助金額の計算方法
補助金額は、以下の(1)と(2)のうち、いずれか低い方の額に3分の2を乗じた額(1,000円未満切り捨て)となります。
- (1) 実際に解体事業者に支払う解体工事費用
- (2) 国が定める標準除却工事費(1平方メートルあたり33,000円 × 延床面積)
補助上限額
| 区分 | 上限額 |
|---|---|
| 住戸数が9戸以下の場合 | 50万円 × 住戸数 |
| 住戸数が10戸以上の場合 | 1棟あたり 500万円 |
【具体例】補助金額の計算シミュレーション
ケース1:8戸建てアパート(延床面積250㎡)、解体費用600万円の場合
- 補助対象経費の比較
- (1) 実際の解体費用:600万円
- (2) 標準除却工事費:33,000円/㎡ × 250㎡ = 825万円
- → 低い方の600万円が補助対象経費となります。
- 補助額の計算:600万円 × 2/3 = 400万円
- 補助上限額の確認:50万円/戸 × 8戸 = 400万円
- → 補助額(400万円)が上限額(400万円)以下のため、最終的な補助金額は400万円となります。
ケース2:12戸建てアパート(延床面積400㎡)、解体費用900万円の場合
- 補助対象経費の比較
- (1) 実際の解体費用:900万円
- (2) 標準除却工事費:33,000円/㎡ × 400㎡ = 1,320万円
- → 低い方の900万円が補助対象経費となります。
- 補助額の計算:900万円 × 2/3 = 600万円
- 補助上限額の確認:10戸以上のため、1棟あたり500万円
- → 補助額(600万円)が上限額(500万円)を超えるため、最終的な補助金額は上限額の500万円となります。
補助の対象となる住宅・対象者
補助金を利用するには、対象となる「住宅」と「人(所有者)」の両方が、定められた要件をすべて満たす必要があります。
対象となる住宅の要件
以下のすべての要件に該当する木造の共同住宅または長屋が対象です。
- 建築時期:昭和56年5月31日以前に建築されたもの(旧耐震基準の建物)
- 状態:市の定める不良住宅の判定基準に該当するもの(損傷箇所など)
- 利用状況:申請日時点で、居住者や使用者がいない空き家状態であること
- 規模:以下のいずれかに該当すること
- 敷地面積が300平方メートル以上
- 住戸の数が5戸以上
跡地利用に関する要件(非常に重要)
この補助金は、単に解体するだけでなく、跡地を良好な住環境の形成に資するように活用することが条件となっています。違反した場合は補助金の返還を求められるため、計画的に進める必要があります。
- 解体完了から3年以内に、「ゆとりある広さの住宅の建築」または「その他の良好な住環境の形成に資する利用」を開始すること。
- 利用開始後、市が定める期間(最低1年以上)はその利用を継続すること。
- 跡地に住宅を建てる場合は、住戸の面積に以下の基準が設けられています。
- 共同住宅:1住戸30㎡以上、かつ総戸数の半数以上が40㎡以上など。
- 長屋住宅・戸建住宅:1住戸80㎡以上。
- 跡地を売却する場合は、買主にも同様の要件を引き継ぐ契約が必要です。
対象となる申請者の要件
以下のすべての要件を満たす方が対象です。
- 対象住宅の所有者(個人または法人)であること。
- 共有者がいる場合は、原則として全員の同意を得ていること。
- 借地の場合は、土地の権利者の同意を得ていること。
- 空家特措法などに基づく命令を受けていないこと。
- 暴力団員等でないこと。
補助対象となる経費
補助の対象となる経費と、対象にならない経費を明確に区別しておくことが大切です。
| 区分 | 具体例 |
|---|---|
| ⭕ 対象となる経費 |
|
| ❌ 対象とならない経費 |
|
申請方法と補助金交付までの流れ
補助金を受け取るには、正しい手順で申請を進める必要があります。特に、工事を始める前に必ず事前協議と交付申請を完了させることが絶対条件です。
【絶対に守るべきルール】
市の「交付決定通知」を受け取る前に解体工事の契約や着工を行った場合、補助金は一切受け取れません。必ず市の指示に従って手続きを進めてください。
- STEP 1事前協議
- STEP 2交付申請
- STEP 3交付決定通知
- STEP 4解体工事の実施
- STEP 5工事完了報告
- STEP 6補助金額の確定・交付請求
- STEP 7補助金の受領
まず、補助対象になるか、跡地利用計画は適切かなどを市と協議します。この段階で計画を固めることが重要です。
事前協議後、正式に補助金の交付を申請します。解体業者の見積書など、多くの書類が必要です。
市が申請内容を審査し、問題がなければ「交付決定通知書」が届きます。この通知を受け取って初めて、工事の契約・着工ができます。
交付決定の内容に従って、解体工事を行います。
工事完了後、30日以内または令和8年1月30日のいずれか早い日までに、契約書や領収書の写し、完了後の写真などを添えて市に報告します。
市が完了報告を審査し、補助金額を確定します。確定通知を受け取ったら、交付請求書を提出します。
請求書に基づき、指定した口座に補助金が振り込まれます。
主な必要書類リスト
申請段階ごとに様々な書類が必要です。ここでは交付申請時の主なものを紹介します。詳細は必ず市のホームページや窓口で確認してください。
- 補助金交付申請書(第2号様式)
- 工事実施計画書(第3号様式)
- 跡地の利用計画書(第4号様式)
- 解体工事の見積書の写し(内訳がわかるもの)
- 土地及び建物の登記事項証明書
- 賃貸住宅であったことを証明する書類(賃貸借契約書の写し等)
- 共有者がいる場合は全員の同意書(第5号様式)
- その他、市が必要と認める書類
採択されるための3つの重要ポイント
この補助金を確実に受けるためには、いくつかの重要なポイントがあります。
1. とにかく早めに「事前協議」を始める
この補助金は予算がなくなり次第終了します。また、跡地利用計画の策定には時間がかかります。年度末に慌てないよう、補助金の利用を決めたらすぐにでも市の窓口に相談し、事前協議を開始しましょう。
2. 実現可能で具体的な「跡地利用計画」を立てる
補助金の交付条件として跡地利用が義務付けられているため、計画の具体性と実現可能性が審査の重要なポイントになると考えられます。「ゆとりある住宅を建てる」「地域貢献のための広場にする」など、市の求める「良好な住環境の形成」に合致する計画を、市としっかり協議しながら策定しましょう。
3. 書類の不備をなくし、スケジュールを厳守する
申請には多くの書類が必要であり、提出期限も厳格に定められています。様式の記入漏れや添付書類の不足がないよう、提出前には必ず複数回チェックしましょう。特に、完了報告の期限は忘れがちなので注意が必要です。スケジュール管理を徹底することが、スムーズな受給への近道です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 解体後の土地の固定資産税はどうなりますか?
A1. 建物がなくなることで、土地の固定資産税・都市計画税の「住宅用地特例」が適用されなくなり、税額が上がる可能性が高いです。ただし、建て替えの要件を満たす場合は特例が継続されることもあります。詳しくは、尼崎市資産税課(06-6489-6264)にご確認ください。
Q2. 建物にまだ入居者がいるのですが、申請できますか?
A2. この解体費用補助金は、申請時点で建物が空き家であることが条件です。入居者がいる場合は、まず退去していただく必要があります。なお、尼崎市には入居者の住み替え費用を補助する別の制度(不良木造賃貸住宅の除却の促進に係る補助金)もありますので、併せて市の窓口にご相談ください。
Q3. 複数の業者から見積もりを取る必要はありますか?
A3. 制度上は1社の見積書で申請可能ですが、適正な工事価格を把握し、補助金を最大限に活用するためにも、複数の解体業者から相見積もりを取ることを強く推奨します。これにより、工事費用の比較検討ができ、コスト削減につながる可能性があります。
Q4. 跡地を駐車場として活用したいのですが、対象になりますか?
A4. 「その他の良好な住環境の形成に資する跡地の利用」に該当するかは、周辺環境などを考慮して個別に市が判断します。単なる月極駐車場では認められない可能性もあります。どのような活用方法が考えられるか、事前協議の段階で市の担当者と十分に相談してください。
Q5. 相続したばかりで、まだ登記が済んでいません。申請できますか?
A5. 申請者は建物の所有者である必要があります。未登記の場合は、遺産分割協議書の写しや戸籍謄本など、所有権を証明する書類を提出することで申請できる場合があります。まずは市の窓口でご相談ください。
まとめと問い合わせ先
尼崎市の「不良木造賃貸住宅の除却に係る補助金」は、老朽化した賃貸住宅の解体を考えているオーナーにとって非常に魅力的な制度です。最後に重要なポイントをまとめます。
- 最大500万円の解体費用補助が受けられる。
- 対象は昭和56年5月31日以前に建築された、一定規模以上の木造賃貸住宅。
- 跡地の有効活用計画が必須条件。違反すると補助金返還の対象に。
- 工事着工前の事前協議と交付申請が絶対条件。
- 予算に限りがあるため、早めの行動が鍵。
この補助金を活用して、長年の懸案事項であった老朽物件を整理し、新たな土地活用への一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。まずは、下記の相談窓口へ連絡し、「事前協議」の予約をすることから始めましょう。
申請・問い合わせ先
尼崎市 住まいと空き家の相談窓口
所在地: 〒660-8501 兵庫県尼崎市東七松町1丁目23番1号 本庁北館5階
電話番号: 06-6489-6511
FAX番号: 06-6489-6544
公式サイト: 不良木造賃貸住宅の除却(解体費用)に係る補助金