詳細情報
山口県内で事業を営む中小企業の経営者の皆様、人材の確保や若手社員の定着にお悩みではありませんか?物価高騰が続くなか、従業員の生活を支え、企業の競争力を高めるための「賃上げ」は重要な経営課題です。しかし、厳しい経営環境の中で賃上げに踏み切るのは容易ではありません。そんな企業を力強く後押しするため、山口県が「初任給等引上げ応援奨励金」を実施しています。この制度は、初任給や若年層の賃金を引き上げた中小企業に対し、従業員1人あたり10万円、最大で100万円を支給するものです。本記事では、この魅力的な奨励金の概要から、具体的な申請手順、採択されるためのポイントまで、どこよりも詳しく、そして分かりやすく解説します。この記事を読めば、制度を最大限に活用し、人材確保と組織力強化を実現するための具体的なステップが明確になります。
この記事でわかること
- ✅ 山口県「初任給等引上げ応援奨励金」の詳しい制度内容
- ✅ 支給対象となる企業や従業員の具体的な条件
- ✅ 1人あたり10万円、最大100万円の奨励金の詳細
- ✅ 申請から受給までの具体的なステップと必要書類
- ✅ 申請で失敗しないための重要なポイントと注意点
初任給等引上げ応援奨励金とは?制度の概要
まずは、本奨励金の基本的な内容を正確に理解しましょう。どのような目的で、誰が実施している制度なのかを把握することが、活用の第一歩です。
正式名称と実施組織
- 正式名称: 初任給等引上げ応援奨励金
- 実施組織: 山口県(産業労働部 労働政策課)
- 申請窓口・事務局: やまぐち働き方改革支援センター
目的・背景
この奨励金は、全国的な賃上げ機運が高まる一方で、物価高騰に賃金上昇が追いついていない現状を踏まえて設立されました。特に経営環境が厳しい県内の中小企業において、将来を担う若手人材の確保と定着は喫緊の課題です。そこで、企業が思い切って初任給や若年層の賃金を引き上げることを支援し、県内企業の安定的な人材確保・定着を促進することを目的としています。また、この事業は国の地方創生臨時交付金を活用しており、地域経済の活性化にも繋がる重要な取り組みです。
奨励金額・支給額
本奨励金の最大の魅力である支給額について、詳しく見ていきましょう。
対象従業員 1人につき10万円
1事業者あたりの上限額 100万円
これは、最大で10人分の賃上げに対して奨励金が支給されることを意味します。企業の規模に応じて、非常に大きな支援となる可能性があります。
支給額の計算例
| 賃上げ対象人数 | 計算式 | 支給額 |
|---|---|---|
| 3人 | 10万円 × 3人 | 30万円 |
| 8人 | 10万円 × 8人 | 80万円 |
| 10人 | 10万円 × 10人 | 100万円 |
| 12人 | 10万円 × 12人 → 上限適用 | 100万円 |
対象者・支給要件
奨励金を受け取るためには、定められた要件をすべて満たす必要があります。自社が対象となるか、ここでしっかりと確認しましょう。
対象となる事業者(中小企業等)
以下の2つの条件を満たす中小企業等が対象です。
- 山口県内に事業所を有していること
- 常時雇用する従業員が1名以上いること
「中小企業等」の具体的な範囲は、業種ごとに資本金の額または従業員数で定められています。詳細は募集要項で確認が必要ですが、主な業種の定義は以下の通りです。
| 業種分類 | 資本金の額・出資の総額 | 常時使用する従業員の数 |
|---|---|---|
| 製造業、建設業等 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
※医療法人、社会福祉法人、NPO法人なども対象に含まれます。詳しくは必ず公式の募集要項をご確認ください。
必ず満たすべき4つの支給要件
奨励金を受給するためには、以下の4つの要件をすべてクリアする必要があります。
- 対象従業員の特定: 支給対象となるのは、県内事業所に勤務する若年層の常時雇用する従業員です。
- 4.0%以上の賃上げ: 賃上げ実施日において、所定内賃金(月額)を前月分(初任給の場合は採用時提示額)より、定期昇給分を除いて4.0%以上引き上げていること。
- 行動計画の策定: 働きやすい職場環境づくりに向けた行動計画を策定すること。
- 雇用継続の誓約: 賃上げ実施日から1年間は賃金を引き下げることなく雇用を継続することについて誓約すること。
対象となる賃上げの内容
この奨励金は、特定の経費を補助するものではなく、「賃上げ」という行為そのものを支援するものです。そのため、「どのような賃上げが対象になるのか」を正しく理解することが極めて重要です。
- 対象となる賃金: 基本給や諸手当など、毎月決まって支払われる「所定内賃金」が対象です。時間外手当や賞与(ボーナス)などは含まれません。
- 除外されるもの: 毎年の「定期昇給」分は、4.0%の計算から除外する必要があります。ベースアップ(ベア)など、定期昇給とは別枠での賃金改善分が対象となります。この計算については専用の様式が用意されています。
- 対象となる従業員: 正社員など、期間の定めのない労働契約を締結している「常時雇用する従業員」のうち、「若年層」に該当する方が対象です。「若年層」の具体的な年齢定義については、最新の募集要項で必ずご確認ください。
申請方法・手順
申請は、以下のステップで進めます。流れを把握し、計画的に準備を進めましょう。
ステップ1:賃上げの実施と行動計画の策定
まず、社内で賃上げを決定し、就業規則や賃金規程を改定します。同時に、「働きやすい職場環境づくりに向けた行動計画」を策定します。行動計画の策定にあたっては、県の事業として社会保険労務士等の専門家による無料の相談・派遣支援も利用できるため、積極的に活用することをお勧めします。
ステップ2:必要書類の準備
申請には以下の書類が必要です。県の公式サイトから様式をダウンロードし、漏れなく準備しましょう。
- 支給申請書(様式あり)
- 誓約書(様式あり)
- 行動計画(様式あり)
- 定期昇給相当分確認様式(様式あり)
- 常時雇用する従業員であることが確認できる書類(例:労働条件通知書の写し)
- 生年月日が確認できる書類(例:労働者名簿の写し)
- 賃金引上げ前後の賃金支給額が確認できる書類(例:賃金台帳の写し)
ステップ3:申請書類の提出
準備した書類を、以下のいずれかの方法で提出します。
- オンライン申請: やまぐち働き方改革支援センターのウェブサイトにある申請フォームから提出します。
- 郵送: 事務局宛に郵送します。
申請期限・スケジュール
最終申請期限:令和8年(2026年)2月27日(金曜日)
ただし、「賃上げ実施後の賃金を支給した日から起算して3箇月以内」という期限もあります。この2つのうち、いずれか早い日までに申請する必要がありますので、賃上げ実施後は速やかに申請準備を進めましょう。
また、県の予算の上限に達した場合は、期限前に受付が締め切られることがあります。早めの対応が肝心です。
採択されるための重要ポイント
要件を満たしていても、書類の不備などで不支給となっては元も子もありません。確実に奨励金を受給するために、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 募集要項の熟読: 最も基本的なことですが、公式の募集要項やQ&Aを隅々まで読み込み、要件を正確に理解することが不可欠です。
- 書類の正確な作成: 申請書や計算様式に記入ミスや計算間違いがないか、ダブルチェックを徹底しましょう。特に「定期昇給分を除く」計算は間違いやすいポイントです。
- 根拠資料の準備: 賃金台帳や労働条件通知書など、申請内容を裏付ける証拠書類をきちんと揃えて提出することが求められます。
- 具体的で実行可能な行動計画: 「働きやすい職場環境づくり」の行動計画は、自社の課題に即した具体的で、実行可能な目標を設定しましょう。県の例示集も参考にすると良いでしょう。
- 早期申請を心がける: 予算には限りがあります。賃上げを実施したら、3ヶ月の期限を待たずに、できるだけ早く申請手続きを進めることを強くお勧めします。
よくある質問(FAQ)
Q1. 「若年層」とは具体的に何歳までを指しますか?
A1. 令和7年度の募集要項では「賃上げ実施日に若年層であること」と記載されています。過去の事業では「34歳以下」と明記されていた例もありますが、年度によって定義が異なる可能性があるため、必ず最新の募集要項で対象となる年齢の定義を確認してください。不明な場合は事務局への問い合わせが確実です。
Q2. パートタイマーや契約社員の賃上げは対象になりますか?
A2. この奨励金の対象は「常時雇用する従業員」とされています。一般的にこれは、期間の定めのない労働契約を結んでいる正社員等を指します。パートタイマーや有期契約社員が対象に含まれるかどうかの詳細な判断は、雇用契約の実態によりますので、募集要項を確認するか、事務局にご相談ください。
Q3. 行動計画はどのような内容を書けば良いですか?
A3. 従業員が働きやすいと感じる環境を作るための具体的な取り組みを計画します。例えば、「時間外労働の削減目標(例:月平均〇時間以内)とノー残業デーの導入」「年次有給休暇の取得率目標(例:〇%以上)と計画的付与制度の導入」「テレワーク制度の導入・拡充」などが考えられます。県の公式サイトに「行動計画例示集」が掲載されているので、そちらを参考に自社の状況に合わせて作成してください。
Q4. 賃上げを実施しましたが、業績悪化で1年以内にやむを得ず賃下げをした場合はどうなりますか?
A4. 支給要件に「賃上げ実施日後1年間は賃金を引き下げることなく雇用を継続することについて誓約していること」とあります。この誓約に反した場合、奨励金の返還を求められる可能性があります。申請前に、1年間の賃金維持が可能かどうかを慎重に検討する必要があります。
Q5. 申請について相談したい場合、どこに連絡すればよいですか?
A5. 申請に関する問い合わせや相談は、専門の事務局である「やまぐち働き方改革支援センター」が対応しています。電話での問い合わせが可能ですので、不明点があれば遠慮なく連絡しましょう。
【お問い合わせ先】初任給等引上げ応援奨励金事務局 Tel:(083)974-2050
まとめ:奨励金を活用して企業の未来を創る
山口県の「初任給等引上げ応援奨励金」は、単なる資金的な支援にとどまりません。この制度を活用することは、従業員のエンゲージメントを高め、優秀な人材を惹きつけ、企業の持続的な成長を促すための戦略的な一手となり得ます。最大100万円という支援は、賃上げに伴う企業の負担を大きく軽減してくれるでしょう。
重要ポイントの再確認
- 対象: 山口県内の中小企業
- 内容: 若年層の常時雇用者の所定内賃金を4.0%以上(定昇除く)引き上げる
- 支給額: 1人あたり10万円(上限100万円/1社)
- 期限: 2026年2月27日(ただし賃上げ後3ヶ月以内、予算上限あり)
- 必須事項: 「行動計画」の策定と「1年間の雇用・賃金維持」の誓約
この記事を参考に、まずは山口県の公式サイトから最新の募集要項をダウンロードし、自社が対象となるかをご確認ください。そして、計画的な賃上げと申請準備を進め、この絶好の機会を最大限に活用しましょう。