新型コロナウイルス感染症の影響に対応するため、中小企業の思い切った事業再構築を支援する大型補助金「事業再構築補助金」。最大1億円という規模で大きな注目を集めましたが、残念ながら第13回公募をもって新規の応募申請受付は終了しました。しかし、この補助金の仕組みや求められた事業計画は、今後の補助金申請戦略を立てる上で非常に参考になります。
この記事のポイント
- 事業再構築補助金の目的と概要を分かりやすく解説
- 補助額・補助率、対象経費など過去の公募情報を整理
- 過去の採択率(約45%)と採択される計画の傾向を分析
- 今後の補助金活用に活かせるポイントを紹介
事業再構築補助金とは?
事業再構築補助金は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中で、ウィズコロナ・ポストコロナ時代の経済社会の変化に対応するため、新分野展開、業態転換、事業・業種転換等の思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援することを目的とした制度です。単なる設備投資だけでなく、企業のビジネスモデルそのものの変革を促す、非常に大規模な補助金でした。
【重要】新規公募は終了しています
事業再構築補助金の新規応募申請受付は、2025年1月10日開始の第13回公募をもって終了となりました。現在、新たな公募は行われていません。本記事は、過去の制度内容を解説し、今後の補助金申請の参考としていただくためのものです。
補助金の概要(過去の公募情報より)
過去の公募要領(第2回公募等)を基に、事業再構築補助金の概要をまとめました。
項目 | 内容 |
---|---|
補助対象者 | 新型コロナの影響で売上が減少した中小企業者等及び中堅企業等 |
補助額 | 【通常枠】 ・中小企業者等:100万円~6,000万円 ・中堅企業等:100万円~8,000万円 【卒業枠】6,000万円超~1億円 ※その他、複数の枠がありました。 |
補助率 | 【通常枠】 ・中小企業者等:2/3 ・中堅企業等:1/2 【緊急事態宣言特別枠】 ・中小企業者等:3/4 ・中堅企業等:2/3 |
主な申請要件 | ①売上高減少要件(例:2020年10月以降の連続する6ヶ月間のうち任意の3ヶ月の合計売上高が、コロナ以前の同3ヶ月と比較して10%以上減少) ②事業再構築指針に沿った事業計画を認定経営革新等支援機関と策定すること ③付加価値額の増加目標を達成する計画であること |
補助対象経費 | 建物費、機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、広告宣伝・販売促進費、研修費など |
事業再構築の5つの類型
本補助金では、以下のいずれかの類型に該当する事業計画が求められました。
- 新分野展開:主たる業種や事業を変更せず、新たな製品・サービスで新たな市場に進出する。
- 事業転換:新たな製品・サービスで、主たる業種は変えずに主たる事業を変更する。
- 業種転換:新たな製品・サービスで、主たる業種を変更する。
- 業態転換:製品・サービスの製造方法や提供方法を相当程度変更する。
- 事業再編:会社法上の組織再編等を行い、新たな事業形態で上記いずれかを行う。
申請のポイントと採択率
採択されるための重要ポイント
過去の公募から、採択される事業計画には以下の共通点がありました。
- 事業再構築指針との適合性:国の示す指針に沿った、思い切った変革であること。
- 認定支援機関との連携:専門家である認定経営革新等支援機関と二人三脚で、客観的で実現可能性の高い計画を策定すること。
- 具体的で説得力のある計画:市場ニーズ、自社の強み、競合分析、収益計画などが具体的に示されていること。
- 付加価値額の目標:補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%以上増加など、明確な数値目標とその達成根拠を示すこと。
過去の採択率
採択率は公募回によって変動しましたが、例えば第4回公募では、応募総数19,673者に対し、採択者数は8,810者でした。
第4回公募の採択率: 約44.8%
半数近くが採択されており、一見すると採択されやすいように見えます。しかし、これは質の高い事業計画を練り上げた上での数字であり、計画策定の難易度は高かったと言えます。
申請から受給までの流れ(参考)
事業再構築補助金の一般的なプロセスは以下の通りでした。これは他の多くの補助金でも共通する流れです。
- 1GビズIDの取得:電子申請の基盤となるGビズIDプライムアカウントを取得します。
- 2事業計画の策定:認定経営革新等支援機関と相談しながら事業計画書を作成します。
- 3電子申請:公募期間内に電子申請システム(jGrants)で必要書類を提出します。
- 4採択発表:事務局による審査後、採択結果が公表されます。
- 5交付申請・決定:採択後、補助対象経費を精査し、交付申請を行います。審査を経て交付決定額が通知されます。
- 6補助事業の実施:交付決定後、計画に沿って設備投資や建物の改修などを実施します。
- 7実績報告:事業完了後、実績報告書を提出し、事務局による確定検査を受けます。
- 8補助金の受給:確定検査後、補助金を請求し、指定口座に振り込まれます(精算払い)。
- 9事業化状況報告:補助事業完了後5年間、事業の状況を報告する義務があります。
まとめ:今後の補助金戦略への活かし方
事業再構築補助金の新規公募は終了しましたが、この補助金が目指した「社会構造の変化に対応するビジネスモデルの変革」というテーマは、今後も様々な形で国の支援対象となる可能性が高いです。ものづくり補助金やIT導入補助金、小規模事業者持続化補助金など、他の補助金においても、DX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(グリーントランスフォーメーション)といった要素が重視される傾向にあります。
今回の事業再構築補助金から学べる教訓を活かし、日頃から自社の事業環境を分析し、将来を見据えた事業計画を準備しておくことが、次のチャンスを掴む鍵となるでしょう。
お問い合わせ先(参考)
事業再構築補助金事務局コールセンター
ナビダイヤル: 0570-012-088
IP電話用: 03-4216-4080
受付時間: 9:00~18:00(土・日・祝日を除く)
※コールバック予約システムは2025年9月30日で終了しています。