宮城県石巻市で陸上養殖事業を検討中の事業者様へ。地球温暖化や海洋環境の変化に対応する新たな水産業の形として注目される「陸上養殖」。石巻市では、その導入を力強く後押しするため、最大300万円を補助する「陸上養殖システム導入支援事業」を実施しています。この記事では、制度の概要から対象経費、申請のポイントまで、専門家が分かりやすく解説します。
石巻市陸上養殖システム導入支援事業とは?
「石巻市陸上養殖システム導入支援事業」は、地球温暖化や黒潮の大蛇行などによる海水温の上昇といった海洋環境の変化に対応するため、その影響を受けにくい陸上養殖の普及を促進することを目的とした補助金制度です。市内で新たに陸上養殖に取り組む事業者を対象に、システム導入にかかる経費の一部を補助することで、持続可能な水産業の振興を目指しています。
東日本大震災からの復興を進める石巻市にとって、新たな産業の創出は重要な課題です。陸上養殖は、安定した生産が見込めるだけでなく、付加価値の高い魚種を計画的に生産できるため、地域の新たな核となる産業としての期待が寄せられています。
制度の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助金額 | 最大300万円(1事業者・1年度あたり) |
| 補助率 | 補助対象経費の1/2以内 |
| 対象者 | 石巻市内で陸上養殖に取り組む事業者 |
| 対象事業 | 閉鎖循環式、半循環式、かけ流し型の陸上養殖システムの導入 |
| 受付期間 | 随時(予算がなくなり次第終了) |
| 問い合わせ先 | 石巻市 産業部 水産課 (0225-95-1111) |
補助の対象となる経費詳細
本補助金では、陸上養殖の開始に直接必要な設備投資が主な対象となります。具体的にどのような経費が対象になるのか、また対象外となる経費についても確認しておきましょう。
補助対象経費
- 陸上養殖システムの構成機器導入費
陸上養殖の根幹をなすシステム機器の購入費用です。
具体例: 水槽、海水汲み上げポンプ、ろ過装置、殺菌装置など - 運営費削減に繋がる機器の導入費
上記システムと併せて導入する場合に限り、ランニングコストの削減に貢献する省エネ設備なども対象となります。
具体例: ソーラーシステム機器、蓄電池、高効率ボイラーなど
【重要】当事業で導入した機器は、石巻市内に設置する必要があります。
補助対象外となる経費
以下の経費は補助の対象となりませんので、資金計画を立てる際に注意が必要です。
- 建物及び用地の賃借料・取得費
- 養殖生産に直接要する経費(種苗代、餌代など)
- 運転経費(人件費、電気代、水道代など)
- 汎用性が高く、他の目的にも使用できるもの(パソコン、車両など)
なぜ今、石巻で陸上養殖なのか?事業成功のポイント
補助金を活用するだけでなく、事業そのものを成功させることが最も重要です。復興庁の支援事業レポートなどを参考に、石巻市における陸上養殖事業のポイントを探ります。
陸上養殖のメリット
- 環境変動に強い:天候や海水温の変化、赤潮などの影響を受けず、計画的・安定的な生産が可能です。
- 安全・安心:閉鎖された環境で飼育するため、伝染病のリスクが小さく、抗生物質などを使わない安全な養殖が実現できます。
- 立地自由度が高い:海から離れた場所でも養殖が可能で、消費地に近い場所での生産も検討できます。
- 付加価値の創出:「石巻育ち」「無投薬」といったブランド化により、高付加価値な商品開発が期待できます。
【事例】バナメイエビ養殖の可能性
過去の復興庁のプロジェクトでは、石巻市での陸上養殖魚種として「バナメイエビ」が提案されました。その理由は、事業性の高さにあります。
- 市場性が高い:エビは日本での年間消費量が多く、安定した需要が見込めます。
- 成長が早い:約18週という短期間で出荷サイズまで成長するため、投資回収が早く、リスクを軽減できます。
- 既存漁業との競合が少ない:多くを輸入に頼っているため、国内の既存漁業との競合が起こりにくいです。
- 高い付加価値:国産・無投薬の新鮮なエビは、輸入品の数倍の価格で取引される事例もあり、食材にこだわるレストランなどへの販路開拓が期待できます。
もちろん、バナメイエビ以外にもトラフグやアワビなど、様々な魚種が陸上養殖の対象となります。自社の強みやマーケティング戦略に合わせて、最適な魚種を選定することが成功の鍵となります。
申請手続きと注意点
申請の基本的な流れ
- 事前相談:まずは石巻市水産課に事業計画について相談することをおすすめします。
- 申請書類の準備:市のウェブサイトから様式をダウンロードし、事業計画書や見積書などを準備します。
- 申請:準備した書類を水産課の窓口に提出します。
- 審査・交付決定:市による審査が行われ、採択されると交付決定通知が届きます。
- 事業開始:交付決定後に、設備の契約・発注・設置を行います。(※交付決定前の発注は対象外です)
- 実績報告:事業完了後、実績報告書を提出します。
- 補助金交付:報告書の内容が確定した後、補助金が交付(振り込み)されます。
注意点とポイント
- 採択件数に上限あり:1年度につき原則3件までとされているため、早めの相談・申請が有利になる可能性があります。
- 継続利用も可能:補助対象事業を継続する場合、3か年度を限度に利用できる可能性があります。大規模な計画も段階的に進めることが可能です。
- 事業計画の具体性:なぜ陸上養殖なのか、どのような魚種を、どのように生産し、どこへ販売するのか、具体的で実現可能性の高い事業計画が審査の重要なポイントとなります。
まとめ
石巻市の「陸上養殖システム導入支援事業」は、海洋環境の変化という課題を乗り越え、新たな水産業の可能性を切り拓く事業者にとって、非常に魅力的な制度です。最大300万円という手厚い支援は、初期投資の負担を大幅に軽減してくれます。
この機会に、安定生産と高付加価値化を実現する陸上養殖への挑戦を検討してみてはいかがでしょうか。まずは、本記事を参考に事業計画を練り、石巻市水産課へ相談することから始めてみましょう。
公式情報・お問い合わせ先
詳細な要綱や申請様式は、必ず公式サイトでご確認ください。
部署名: 石巻市 産業部 水産課
電話番号: 0225-95-1111
公式サイト: 石巻市陸上養殖システム導入支援事業について
対象者・対象事業
市内において、閉鎖循環式陸上養殖システム若しくは半循環式型陸上養殖システム又は地下海水等を用いたかけ流し型陸上養殖システムを導入し、陸上養殖に取り組む事業者
必要書類(詳細)
交付申請書(様式第1号)、事業計画書、収支予算書、導入する機器の見積書の写し、その他市長が必要と認める書類
対象経費(詳細)
(1)陸上養殖に必要なシステムを構成する機器の導入費(例:水槽、海水汲み上げポンプ)
(2)陸上養殖システムに係る運営費の削減に繋がる機器の導入費(ただし、(1)と併せて導入する場合に限る。例:ソーラーシステム機器、蓄電池)