詳細情報
はじめに:福岡県の医療的ケア児支援を担う人材を育成しませんか?
近年、医療技術の進歩に伴い、在宅で生活する「医療的ケア児」が増加しています。たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアを必要とする子どもたちが、地域で安心して暮らすためには、専門的な知識と技術を持った支援者の存在が不可欠です。しかし、多くの障がい福祉サービス事業所では、医療的ケアに対応できる人材の確保や育成が大きな課題となっています。
こうした課題を解決し、福岡県内の医療的ケア児支援体制を強化するため、福岡県は「医療的ケア児支援人材育成研修費補助金」制度を設けています。この制度は、事業所の介護職員等が「喀痰吸引等研修(第3号研修)」を受講する際の費用を最大3万円まで、補助率10/10(全額)で支援するものです。職員のスキルアップを通じて、事業所のサービス品質向上と事業拡大にも繋がる絶好の機会です。本記事では、この補助金の詳細から申請方法、採択のポイントまでを徹底的に解説します。
福岡県医療的ケア児支援人材育成研修費補助金の概要
まずは、本補助金の全体像を把握しましょう。制度の目的や基本的な情報を表にまとめました。
制度の目的と背景
この補助金は、喀痰吸引等を必要とする在宅の医療的ケア児を支援する体制の強化を目的としています。障がい福祉サービス事業所等に所属する介護職員等が、特定の利用者に対して喀痰吸引等を行うために必要な研修(第3号研修)を受講する費用を助成することで、専門的なスキルを持つ人材を育成し、医療的ケア児が地域で安全かつ快適に生活できる環境を整備することを目指しています。
補助金の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 福岡県医療的ケア児支援人材育成研修費補助金 |
| 実施機関 | 福岡県(担当:障がい福祉課 自立支援係) |
| 対象研修 | 喀痰吸引等研修(第3号研修) |
| 補助上限額 | 従業員1人あたり最大3万円 |
| 補助率 | 10/10(全額補助) |
| 申請期間(令和7年度) | 2025年4月1日 ~ 2026年3月31日(要確認) |
| 公式サイト | 福岡県庁公式サイト |
補助金額と補助率について
本補助金は、研修費用の負担を大幅に軽減できる非常に魅力的な制度です。ここでは、具体的な補助金額の計算方法と計算例を詳しく見ていきましょう。
補助額の計算方法
補助金の額は、以下の2つの金額を比較し、いずれか低い方の額が適用されます。
- 補助対象経費の実支出額:事業所が実際に支払った研修費用(テキスト代、保険料含む)
- 補助基準額:3万円 × 研修を修了した従業員の人数
そして、算出された金額に対して補助率10/10(100%)が適用されるため、上限額の範囲内で全額が補助されます。ただし、1,000円未満の端数は切り捨てとなります。
具体的な計算例
【ケース1】職員1名の研修費用が24,000円だった場合
- 補助対象経費:24,000円
- 補助基準額:30,000円 × 1名 = 30,000円
- 比較:24,000円 < 30,000円 → 低い方の24,000円が補助額となります。
【ケース2】職員1名の研修費用が40,000円だった場合
- 補助対象経費:40,000円
- 補助基準額:30,000円 × 1名 = 30,000円
- 比較:40,000円 > 30,000円 → 低い方の30,000円が補助額となります。
【ケース3】職員2名の研修費用がそれぞれ25,000円だった場合(合計50,000円)
- 補助対象経費:50,000円
- 補助基準額:30,000円 × 2名 = 60,000円
- 比較:50,000円 < 60,000円 → 低い方の50,000円が補助額となります。
補助対象者と詳しい条件
この補助金を利用するためには、いくつかの要件を満たす必要があります。自社が対象となるか、ここでしっかりと確認しましょう。
対象となる事業者
補助金の対象となるのは、福岡県内に所在し、福岡県内に居住する医療的ケア児に対して喀痰吸引等を行うことを予定している事業者で、以下のいずれかの事業を実施している必要があります。
- 障害福祉サービス(障害者総合支援法)
※ただし、療養介護及び施設入所支援は除く。 - 障害児通所支援(児童福祉法)
※ただし、医療型児童発達支援は除く。 - その他、医療的ケア児の日常生活を支援するため、知事が特に必要と認める事業
対象事業者の具体例
上記に該当する事業所の具体例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 児童発達支援事業所
- 放課後等デイサービス
- 居宅介護事業所
- 重度訪問介護事業所
- 短期入所(ショートステイ)事業所
- 生活介護事業所
対象外となるケース
交付要綱に基づき、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に規定する暴力団や、暴力団員と密接な関係を有する事業者は補助の対象となりません。申請時には、これらに該当しない旨の誓約が必要となります。
補助の対象となる経費・ならない経費
申請する経費が補助対象になるかどうかを事前に把握しておくことは非常に重要です。対象外の経費を申請しないよう、注意しましょう。
補助対象経費
補助の対象となるのは、事業所が負担した喀痰吸引等研修(第3号研修)の受講に係る以下の費用です。
- 基本研修の受講費用(テキスト代及び保険料を含む)
- 実地研修の受講費用(テキスト代及び保険料を含む)
補助対象外経費
一方で、以下の費用は補助の対象となりませんのでご注意ください。
- 研修受講に係る従業員の人件費及び交通費
- 認定特定行為業務従事者認定証の交付申請に係る費用
- 事業者登録に係る費用
- その他、知事が適当でないと認める経費
申請方法と手続きの流れを5ステップで解説
補助金を受け取るまでの手続きの流れを、5つのステップに分けて分かりやすく解説します。スムーズな申請のために、各ステップの内容をしっかり確認してください。
【重要】この補助金は「精算払」です。原則として、研修受講前に申請を行い、県の交付決定を受けてから研修を受講し、その後実績報告を経て補助金が支払われます。交付決定前に支払った経費が対象になる場合もありますが、確実を期すため、事前に県の担当窓口に手続きの流れを確認することを強く推奨します。
Step 1: 研修機関の選定と受講計画
まず、職員に受講させる「喀痰吸引等研修(第3号研修)」を実施している研修機関を探します。福岡県が登録している研修機関の一覧が公式サイトで公開されていますので、そちらを参考に選定しましょう。受講日程や費用を確認し、計画を立てます。
Step 2: 交付申請書類の準備
次に、福岡県の公式サイトから申請様式をダウンロードし、必要書類を準備します。主な必要書類は以下の通りです。
- 福岡県医療的ケア児支援人材育成研修費補助金交付申請書(様式第1号)
- 事業計画書
- 収支予算書
- 研修の受講費用がわかる書類(研修機関の見積書の写し等)
- 誓約書(暴力団排除条項に関するもの)
- その他、知事が必要と認める書類
Step 3: 申請書類の提出と交付決定
準備した書類を、担当窓口である「福岡県 障がい福祉課 自立支援係」に提出します。提出後、県による審査が行われ、内容が適当と認められると「交付決定通知書」が送付されます。この通知書を受け取ってから、正式に事業(研修受講)を開始するのが原則的な流れです。
Step 4: 研修の受講と実績報告
交付決定後、計画通りに職員が研修を受講し、修了します。研修費用を支払った際の領収書や、研修の修了証明書は必ず保管しておいてください。研修完了後、速やかに実績報告書を作成し、証拠書類とともに県に提出します。
実績報告の提出期限は、事業完了日(研修修了日)から1ヶ月を経過した日、または翌年度の4月10日のいずれか早い日です。
Step 5: 補助金の額の確定・請求・受領
提出された実績報告書を県が審査し、補助金の額が最終的に確定します。その後、「額の確定通知書」が届きますので、内容を確認し、同封されている案内に従って「請求書」を提出します。請求書提出後、指定した金融機関の口座に補助金が振り込まれます。
採択されるための重要なポイント
本補助金は要件を満たせば採択されやすいと考えられますが、申請を成功させるためにはいくつかのポイントがあります。
申請要件を確実に満たす
最も基本的なことですが、自社が「対象事業者」の要件を満たしているか、受講する研修が「第3号研修」であるか、支援対象の「医療的ケア児」が福岡県在住であるかなど、公募要領や交付要綱を熟読し、すべての要件を満たしていることを確認してください。
書類の不備をなくす
申請書類の記入漏れや押印忘れ、添付書類の不足は、審査の遅れや不採択の直接的な原因となります。提出前には、必ず複数人でダブルチェックを行い、完璧な状態で提出しましょう。特に、金額の記載ミスは厳禁です。
よくある不採択・返戻理由
- 申請額が補助基準額(3万円/人)を超えている。
- 交通費や人件費など、補助対象外の経費が含まれている。
- 提出期限を過ぎてしまっている。
- 添付された領収書や修了証の記載内容が不鮮明、または不足している。
よくある質問(FAQ)
- Q1: 研修を受ける前に申請が必要ですか? それとも受けた後ですか?
- A1: 原則として、研修受講前に交付申請を行い、県の交付決定を受けてから事業(研修受講)を開始します。ただし、交付決定があった年度内(4月1日~3月31日)に実施・完了する研修であれば対象となるため、手続きの詳細は必ず福岡県障がい福祉課にご確認ください。
- Q2: 複数の職員が研修を受ける場合、まとめて申請できますか?
- A2: はい、可能です。申請書の研修修了者数の欄に対象人数を記載し、合計額で申請します。職員ごとの研修費用がわかる書類(見積書や領収書の内訳など)を添付してください。
- Q3: 研修費用をクレジットカードで支払いました。領収書がありませんが、どうすればよいですか?
- A3: クレジットカードの利用明細と、研修機関が発行した受講料がわかる書類(請求書や受講申込書の写しなど)を合わせて提出することで認められる場合があります。事前に県の担当窓口に確認することをおすすめします。
- Q4: 「第3号研修」とは何ですか?
- A4: 喀痰吸引等研修には、不特定の多数の者を対象とする「第1号・第2号研修」と、特定の利用者一人に対して特定の行為のみを実施するための「第3号研修」があります。この補助金は、特定の医療的ケア児への支援を目的とした「第3号研修」のみが対象です。
- Q5: 補助金の申請は毎年できますか?
- A5: はい、予算の範囲内で毎年度実施される予定です。交付要綱では令和9年度までの適用が定められています。ただし、同一の従業員がこの補助金を受けられるのは、1年度につき1回までとされています。
まとめ:スキルアップとサービス拡充のために補助金を活用しよう
今回は、「福岡県医療的ケア児支援人材育成研修費補助金」について詳しく解説しました。最後に、本制度の重要なポイントを振り返ります。
- 対象者:福岡県内の障がい福祉サービス事業所等
- 目的:医療的ケア児支援のための「喀痰吸引等研修(第3号研修)」受講を支援
- 補助額:職員1人あたり最大3万円
- 補助率:10/10(全額補助)
- 注意点:人件費や交通費は対象外。手続きの流れを事前に確認することが重要。
この補助金を活用することは、職員個人のスキルアップだけでなく、事業所として医療的ケア児を積極的に受け入れる体制を整え、サービスの質を向上させる大きな一歩となります。地域で暮らす医療的ケア児とその家族にとって、貴事業所がかけがえのない存在となるために、ぜひ本制度の活用をご検討ください。
【お問い合わせ先】
福岡県 福祉労働部 障がい福祉課 自立支援係
電話番号:092-643-3263
Fax番号:092-643-3304
まずは公式サイトをご確認の上、不明な点があれば担当窓口へお問い合わせください。