詳細情報
福岡県内にお住まいの40歳未満のがん患者さんとそのご家族へ。住み慣れたご自宅での療養生活には、多くの希望と共に経済的な不安が伴うことも少なくありません。そんな不安を和らげ、安心して在宅療養に専念できるよう、福岡県と県内の多くの市町村が「小児・AYA世代がん患者在宅療養生活支援事業」を実施しています。この制度は、訪問介護や福祉用具のレンタル・購入にかかる費用の一部を、月最大5万4千円まで助成するものです。この記事では、制度の対象者、利用できるサービス、申請方法からよくある質問まで、あなたが知りたい情報を網羅的に、そして分かりやすく解説します。ご自身やご家族が対象かもしれないと感じたら、ぜひ最後までお読みいただき、この心強い支援制度をご活用ください。
制度の概要｜小児・AYA世代がん患者在宅療養生活支援事業とは？
まずは、この支援事業がどのようなものなのか、基本的な情報を確認しましょう。
正式名称
小児・AYA世代がん患者在宅療養生活支援事業
実施組織
福岡県及び県内の実施市町村
（事業の実施主体は各市町村となり、福岡県がその取り組みを支援しています。申請窓口はお住まいの市町村となります。）
目的・背景
この事業は、小児がんやAYA世代（15歳～39歳の思春期・若年成人）のがん患者さんが、治療と向き合いながらも、可能な限り住み慣れた自宅で自分らしく、安心して療養生活を送れるように支援することを目的としています。40歳未満の方は介護保険の対象外となるケースが多く、在宅での介護サービスを利用する際の経済的負担が大きくなる傾向があります。その負担を軽減し、患者さんとご家族の生活の質（QOL）を維持・向上させるための重要な制度です。
どのくらい助成される？助成金額・補助率
この制度の最も重要なポイントである助成額について、具体的に見ていきましょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助率 | サービス利用料の9割（生活保護世帯の方は10割） |
| 自己負担 | サービス利用料の1割 |
| 助成対象となる利用料の上限 | 1ヶ月あたり 60,000円 |
| 助成額の上限 | 1ヶ月あたり 54,000円（60,000円 × 90%） |
計算例で理解を深めよう
例1：1ヶ月のサービス利用料が40,000円だった場合
助成額：40,000円 × 90% = 36,000円
自己負担額：40,000円 – 36,000円 = 4,000円
例2：1ヶ月のサービス利用料が70,000円だった場合
助成対象となるのは上限の60,000円までです。
助成額：60,000円 × 90% = 54,000円（上限額）
自己負担額：70,000円 – 54,000円 = 16,000円
（上限を超えた10,000円分は全額自己負担となります）
あなたは対象？対象者・条件をチェック
この助成金を利用するには、以下のすべての要件を満たす必要があります。ご自身が該当するかどうか、一つずつ確認してみましょう。
- 年齢・住所要件：お住まいの市町村に住所を有する40歳未満の方
- 病状要件：がん患者であること。具体的には、介護保険における特定疾病としての「がん」の定義・診断基準（医師が医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したもの）に該当する方
- 生活状況要件：在宅での療養生活において、生活支援や介護が必要な状態である方
- 他制度との関連要件：他の公的な事業（障害者総合支援法など）で、この事業と同様のサービス（助成）を受けることができない方
何に使える？対象となるサービス（補助対象経費）
助成の対象となるのは、在宅療養を支えるための以下の3つのサービスです。
1. 訪問介護
ヘルパーが自宅を訪問し、日常生活のサポートを行います。
- 身体介護：食事、入浴、排せつ、着替えなどの介助
- 生活援助：掃除、洗濯、調理、買い物などの家事援助
- 通院等乗降介助：通院時の車両への乗り降りの介助
2. 訪問入浴介護
自宅の浴槽での入浴が困難な場合に、専門のスタッフが専用の浴槽を自宅に持ち込んで入浴の介助を行います。
3. 福祉用具の貸与・購入
在宅療養を安全・快適にするための福祉用具のレンタルや購入費用が対象です。
- 車いす（付属品を含む）
- 特殊寝台（介護用ベッド、付属品を含む）
- 床ずれ防止用具（エアマットなど）
- 体位変換器（起き上がり補助装置を含む）
- 手すり（工事を伴わないもの）
- スロープ（工事を伴わないもの）
- 歩行器、歩行補助つえ
- 移動用リフト
- 自動排泄処理装置
- 腰掛便座、入浴補助用具、簡易浴槽 など
注意点：対象となるサービスや福祉用具の詳細は、お住まいの市町村によって若干異なる場合があります。利用を開始する前に、必ず市町村の担当窓口にご確認ください。
申請から助成金受け取りまでの5ステップ
助成を受けるための手続きは、主に以下の流れで進みます（償還払いの例）。
- 【ステップ1】利用申請（事前申請）
サービスの利用を開始する前、または開始後速やか（例：福岡市では開始後30日以内）に、お住まいの市町村の担当窓口へ必要書類を提出します。
【主な必要書類】
・利用申請書（各市町村の様式）
・医師の意見書（各市町村の様式）
・本人確認書類の写し（運転免許証、マイナンバーカードなど） - 【ステップ2】利用決定の通知
市町村が申請内容を審査し、助成が決定すると「利用決定通知書」が送られてきます。 - 【ステップ3】サービスの利用と支払い
決定通知を受け取ったら、介護サービス事業者と契約し、サービスを利用します。利用料は、一旦全額を事業者へ支払います。 - 【ステップ4】助成金の請求
サービス利用料を支払った後、市町村へ助成金の請求手続きを行います。複数月分をまとめて請求することも可能です。
【主な必要書類】
・費用請求書（各市町村の様式）
・サービス事業者発行の領収書の写し
・サービス内容がわかる明細書の写し
・振込先口座の通帳の写し（初回請求時のみ） - 【ステップ5】助成金の振り込み
市町村が請求内容を審査し、問題がなければ指定した口座に助成金（利用料の9割）が振り込まれます。
申請の前に確認！実施市町村と問い合わせ先
この事業は福岡県内のすべての市町村で実施されているわけではありません。2025年4月時点で事業を実施している市町村は以下の通りです。最新の情報や詳細については、必ずお住まいの市町村の担当窓口にご確認ください。
まずは、お住まいの市町村の担当窓口へ！
申請手続きや必要書類は市町村によって異なります。まずはご自身の住民票がある市町村の担当課（健康課、福祉課など）へ電話で問い合わせるのが最も確実です。「小児・AYA世代がん患者の在宅療養支援事業について」と伝えれば、スムーズに担当者につながります。
福岡県の公式サイトでは、実施市町村の一覧と各担当部署の連絡先が公開されています。こちらも併せてご確認ください。
▶ 福岡県公式サイト：小児・ＡＹＡ世代がん患者在宅療養生活支援事業のご案内
よくある質問（FAQ）
Q1. 申請してからどのくらいで助成金が振り込まれますか？
A1. 市町村の審査期間によりますが、一般的に請求書を提出してから1〜2ヶ月程度かかることが多いです。具体的な期間は、申請先の市町村にご確認ください。
Q2. 複数のサービスを同時に利用できますか？
A2. はい、利用できます。例えば、「訪問介護」と「福祉用具の貸与」を組み合わせて利用することも可能です。ただし、1ヶ月のサービス利用料の合計額が6万円を超えた分は助成の対象外となります。
Q3. 申請は家族が代理で行えますか？
A3. はい、多くの市町村で家族による代理申請が認められています。また、助成金の請求や受領を家族に委任することも可能です。その際は委任状が必要になる場合がありますので、事前に市町村にご確認ください。
Q4. 医師の意見書は、どこの病院の医師に書いてもらえばいいですか？
A4. 主治医に作成を依頼してください。がんの診断や在宅療養の必要性について記載してもらう必要があります。なお、意見書の作成にかかる文書料は自己負担となります。
Q5. 介護保険との違いは何ですか？
A5. 介護保険は原則として65歳以上の方、または40歳から64歳で特定の16疾病に該当する方が対象です。この事業は、介護保険の対象とならない40歳未満のがん患者さんを対象とし、介護保険と同等のサービス利用を支援する制度です。そのため、介護保険の対象となる方は、この事業を利用することはできません。
まとめ：一人で抱え込まず、まずは相談を
今回は、福岡県で実施されている「小児・AYA世代がん患者在宅療養生活支援事業」について詳しく解説しました。最後に、この制度の重要なポイントを振り返ります。
- 対象者：福岡県内の実施市町村に住む40歳未満のがん患者さん
- 助成額：在宅サービス利用料の9割、月最大5万4千円
- 対象サービス：訪問介護、訪問入浴介護、福祉用具の貸与・購入
- 手続き：事前にお住まいの市町村へ申請が必要
在宅での療養は、身体的、精神的、そして経済的にも大きな負担がかかることがあります。この制度は、そうした負担を少しでも軽くし、患者さんとご家族が安心して療養生活を送るためのものです。ご自身やご家族が対象かもしれないと思ったら、決して一人で抱え込まず、まずはお住まいの市町村の担当窓口へ気軽に相談してみてください。専門の職員が、あなたの状況に合わせたサポートを一緒に考えてくれるはずです。
