長野県では、男性の育児休業取得を強力に推進するため、「パパ育休応援奨励金」制度を開始しました。男性従業員が育休を取得した県内の中小企業等に対し、最大30万円の奨励金を支給します。この記事では、制度の概要から複雑な申請要件、具体的な手続きの流れまで、専門家が分かりやすく解説します。
長野県パパ育休応援奨励金の概要
本制度は、男性従業員が育児休業を取得しやすい職場環境づくりを後押しし、「共働き・共育て」を推進することを目的としています。男性従業員が14日以上の育休を取得し、職場復帰した場合に、事業主へ奨励金が支給されます。
制度基本情報 | |
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奨励金額 | 最大30万円(取得期間等により変動、1企業3回まで) |
対象事業者 | 長野県内に本社または主たる事務所を有する中小企業等 |
対象となる育休 | 令和6年4月1日以降に開始した、通算14日以上の育児休業(産後パパ育休含む) |
申請期限 | 職場復帰後1か月経過日から2か月以内、または復帰日が属する年度の3月31日のいずれか早い日まで |
実施機関 | 長野県 産業労働部 労働雇用課 |
支給額の詳細
奨励金の額は、育休の取得期間と、対象となる従業員が何人目かによって変動します。
取得期間(分割取得の場合は通算) | 対象従業員が1人目の場合 | 対象従業員が2人目、3人目の場合 |
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14日以上28日未満 (所定労働日を8日以上含む) |
10万円 | 7万5千円 |
28日以上3か月未満 (所定労働日を16日以上含む) |
20万円 | 15万円 |
3か月以上 (所定労働日を16日以上含む) |
30万円※ | 25万円※ |
※国の両立支援等助成金(育児休業等支援コース「育休取得時」)を受給している場合は20万円となります。
【加算措置】さらに2万円アップ!
「職場いきいきアドバンスカンパニー」「くるみん」「えるぼし」のいずれかの認証を受けている場合、2万円が加算されます(1企業1回限り)。
申請のための必須要件
本奨励金は、申請前にクリアすべき要件が複数あります。特に重要なポイントを解説します。
対象事業者の主な要件
- 長野県内に本社または主たる事務所がある中小企業等であること。
- 【重要】「長野県パパママ育休実践企業登録制度」に登録し、3年間継続する意思があること。
- 【重要】次世代育成支援対策推進法に基づく「一般事業主行動計画」を策定し、労働局へ届け出ていること。
- 育休を取得しやすい職場環境整備(研修実施、相談窓口設置など)を2つ以上実施していること。
- 業務代替者の負担を抑える引継体制を整備していること。
- 長野県税に未納がないこと。
対象従業員の主な要件
- 雇用保険の被保険者であること。
- 養育する子が原則1歳になるまでの間に、令和6年4月1日以降に開始した育休を通算14日以上取得していること。
- 長野県内の事業所に勤務していること。
- 育休終了後、原則として原職に復帰し、申請日まで雇用が継続していること。
申請から支給までの5ステップ
申請手続きは計画的に進める必要があります。大まかな流れを把握しておきましょう。
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1
事前の準備「社員の子育て応援宣言」「パパママ育休実践企業登録制度」への登録、および「一般事業主行動計画」の策定・届出を完了させます。これらは育休開始前に必要です。
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2
職場環境の整備育休取得促進のための研修実施や、業務引継体制の整備など、要件を満たす取り組みを対象従業員の育休開始前までに実施します。
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3
育休取得・職場復帰対象の男性従業員が、要件を満たす育児休業を取得し、その後、原職等へ復帰します。
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4
申請書類の提出職場復帰後、定められた期間内に必要書類を揃え、電子メール、郵送、または持参にて提出します。申請総額が予算に達した時点で受付終了となるため、早めの申請が推奨されます。
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5
審査・支給県による審査(約1か月)を経て、交付が決定されると通知が届き、指定口座に奨励金が振り込まれます。
注意:国の助成金との併用について
厚生労働省の「両立支援等助成金(育児休業等支援コース「育休取得時」)」との併給は原則できません。ただし、一部例外があるため、両方の受給を検討している場合は、必ず県の募集要項を確認するか、担当窓口にご相談ください。
まとめ:計画的な準備で奨励金を活用しよう
長野県パパ育休応援奨励金は、男性の育休取得を促進する企業にとって非常に魅力的な制度です。しかし、申請には計画的な事前準備が不可欠です。特に「パパママ育休実践企業登録」や「一般事業主行動計画の策定」は時間がかかるため、育休取得予定の従業員がいる場合は、早めに着手しましょう。
この奨励金を活用することで、従業員の満足度向上、企業のイメージアップ、そして優秀な人材の確保・定着にも繋がります。ぜひ、制度の詳細を公式サイトで確認し、積極的にご活用ください。