障害者作業施設設置等助成金とは?

障害者作業施設設置等助成金は、障害のある方を雇用する事業主が、その方が働きやすいように職場環境を整備する際の費用の一部を国が助成する制度です。障害の特性に合わせた施設や設備の導入を支援し、障害者の雇用促進と職場定着を図ることを目的としています。

運営は独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が行っており、財源は事業主が納める障害者雇用納付金から賄われています。

助成金の主な種類

この助成金は、施設・設備の導入方法によって大きく2つの種類に分かれています。この記事では、特に利用されることの多い「第1種」を中心に解説します。

  • 第1種作業施設設置等助成金
    施設や設備の購入・建築・改修によって整備する場合に利用できます。
  • 第2種作業施設設置等助成金
    施設や設備を賃借(リース)によって整備する場合に利用できます。

第1種作業施設設置等助成金の詳細

支給対象となる事業主

以下の要件を満たす事業主が対象です。

  • 障害者を常用労働者として雇用している、または新たに雇用する事業主
  • 対象の施設・設備を整備しなければ、対象障害者の雇用や雇用の継続が困難であると認められること

※国の機関、地方公共団体、一部の独立行政法人などは対象外です。

対象となる障害者

以下のいずれかに該当する常用労働者(週の所定労働時間が20時間以上)が対象です。

  • 身体障害者
  • 知的障害者
  • 精神障害者

原則として、雇入れ日から6ヶ月以内に申請する必要がありますが、中途障害(雇用後に障害者となった場合)や人事異動などのケースでは、6ヶ月を超えていても対象となる場合があります。

支給額と助成率

支給額は、対象となる費用の3分の2です。ただし、上限額が設定されています。

項目 支給限度額
作業施設・附帯施設 対象障害者1人につき 450万円
作業設備 対象障害者1人につき 150万円
同一事業所の年間上限 4,500万円

※短時間労働者(重度障害者等を除く)の場合は、限度額が半額になります。
※中途障害者の職場復帰のための設備設置の場合は、特例があります。

対象となる施設・設備の具体例

助成の対象となるのは、障害の特性による困難を解消するために必要不可欠と認められるものです。単なる業務効率化や、事業に本来必要な設備は対象外となる場合があります。

対象となる可能性が高い例

  • 作業施設: 聴覚過敏のある方のための防音個室、視覚障害のある方のための照度調整が可能な照明設備の設置など
  • 附帯施設: 車いす利用者のためのスロープ設置、トイレのバリアフリー改修、廊下への手すり設置、視覚障害者用の音声案内装置など
  • 作業設備: 視覚障害者用の拡大読書器や点字ディスプレイ、肢体不自由のある方が運転するための手動装置付き社用車の改造部分、重度障害者用の作業椅子など

対象とならない可能性が高い例

  • 事業を行う上で本来必要な汎用的なパソコンや机
  • 単に作業効率を上げるための最新機器
  • 建物の新築に伴うバリアフリー法で標準とされる設備の設置
  • 中古品や自社製品の購入

申請手続きの流れと注意点

申請手続きは大きく分けて「認定申請」と「支給請求」の2段階で行います。

  1. 都道府県支部への事前相談: 計画段階で、管轄のJEED都道府県支部に相談することを強く推奨します。
  2. 受給資格認定申請: 必要な書類を揃え、JEEDに「助成金を受ける資格があるか」の認定を申請します。
  3. 認定通知の受領: 審査後、JEEDから認定通知書が届きます。
  4. 施設・設備の設置・整備に着手: 原則として、認定通知を受け取った後に、発注や契約を行います。
  5. 支払い完了: 整備が完了し、業者への支払いを済ませます。
  6. 支給請求: 支払いを証明する書類などを添えて、JEEDに助成金の支給を請求します。
  7. 助成金の受給: 審査後、指定の口座に助成金が振り込まれます。

【最重要】事前着手は原則禁止!

この助成金で最も注意すべき点は「事前着手」です。JEEDからの認定を受ける前に、設備の発注や工事の契約をしてしまうと、原則として助成金は受け取れません。

やむを得ない事情がある場合は「事前着手申出書」を認定申請と同時に提出することで、申請日以降の着手が認められることもありますが、リスクを避けるためにも、必ず認定を受けてから行動するようにしてください。

まとめ

障害者作業施設設置等助成金は、障害のある方が安心して能力を発揮できる職場環境を整えるための強力なサポート制度です。スロープの設置から専門的な作業機器の導入まで、幅広いニーズに対応しています。

ただし、申請には事業計画書の作成や多くの添付書類が必要となり、手続きも複雑です。「どのような設備が対象になるか」「申請のタイミングはいつか」など、不明な点は必ず事前に管轄のJEED都道府県支部に相談しましょう。専門家のアドバイスを受けながら、計画的に進めることが成功の鍵です。