小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が経営計画を策定して取り組む販路開拓や生産性向上の取り組みを支援する制度です。本記事では、制度の概要から対象者、補助対象経費、申請の流れまで、専門家が分かりやすく解説します。
小規模事業者持続化補助金とは?
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が直面する制度変更(インボイス制度、働き方改革など)に対応しつつ、持続的な経営を行うために、地道な販路開拓や業務効率化の取り組みにかかる経費の一部を補助するものです。地域の商工会や商工会議所のサポートを受けながら事業計画を作成し、実行していく点が大きな特徴です。
この補助金の3つのポイント
- 幅広い経費が対象:チラシ作成やウェブサイト構築、店舗改装など、販路開拓に必要な多様な経費が対象になります。
- 商工会・商工会議所のサポート:専門家の助言を受けながら、実効性の高い経営計画を作成できます。
- 返済不要:補助金のため、原則として返済の必要はありません(収益納付等の例外あり)。
補助金の概要(補助上限額・補助率)
申請する枠によって補助上限額が異なります。自社の状況に合わせて最適な枠を選択することが重要です。
申請類型 | 補助上限額 | 補助率 | 概要 |
---|---|---|---|
通常枠 | 50万円 | 2/3 ※賃金引上げ枠の 赤字事業者は3/4 |
基本的な販路開拓等の取り組み |
賃金引上げ枠 | 200万円 | 事業場内最低賃金を地域別最低賃金より+30円以上とした事業者 | |
卒業枠 | 200万円 | 雇用を増やし小規模事業者の従業員数を超えて事業規模を拡大する事業者 | |
後継者支援枠 | 200万円 | アトツギ甲子園のファイナリスト | |
創業枠 | 200万円 | 特定創業支援等事業の支援を受け創業した事業者 | |
インボイス枠 | 100万円 | インボイス発行事業者に転換した事業者 |
補助対象者
補助金の対象となるのは、以下の要件を満たす法人、個人事業主、特定非営利活動法人です。
対象となる事業者規模
- 商業・サービス業(宿泊・娯楽業除く):常時使用する従業員の数 5人以下
- 宿泊業・娯楽業:常時使用する従業員の数 20人以下
- 製造業その他:常時使用する従業員の数 20人以下
※常時使用する従業員には、会社役員や個人事業主本人、一定条件を満たすパートタイム労働者は含みません。
その他の主な要件
- 資本金又は出資金が5億円以上の法人に100%株式保有されていないこと(法人のみ)。
- 直近過去3年分の課税所得の年平均額が15億円を超えていないこと。
- 本補助金の受付締切日の前10か月以内に、持続化補助金で採択されていないこと。
補助対象経費
補助対象となる経費は以下の11項目です。販路開拓や生産性向上のために必要な経費が幅広く認められています。
経費科目 | 活用事例 |
---|---|
①機械装置等費 | 製造装置の購入、顧客管理ソフトの導入 |
②広報費 | チラシ作成・配布、看板設置 |
③ウェブサイト関連費 | ウェブサイトやECサイトの構築・改修 |
④展示会等出展費 | 展示会や商談会の出展料 |
⑤旅費 | 販路開拓のための交通費・宿泊費 |
⑥開発費 | 新商品の試作品開発 |
⑦資料購入費 | 補助事業に関連する資料・図書 |
⑧雑役務費 | 臨時で雇用したアルバイト代 |
⑨借料 | 機器・設備のリース・レンタル料 |
⑩設備処分費 | スペース確保のための設備処分費用 |
⑪委託・外注費 | 店舗改装など自社で困難な業務の外注 |
経費に関する重要注意点
- ウェブサイト関連費:補助金申請額の1/4が上限です。ウェブサイト関連費のみでの申請はできません。
- 汎用性の高いもの:パソコン、タブレット、文房具、自動車などは原則対象外です。
- 支払い方法:原則として銀行振込です。10万円を超える現金払いは対象外となります。
申請から入金までの流れ
申請準備から補助金の入金まで、全体の流れを把握しておきましょう。
- 1申請の準備:公募要領を確認し、経営計画書・補助事業計画書を作成します。
- 2商工会/商工会議所へ相談:作成した書類を持参し、支援を受け「事業支援計画書(様式4)」の交付を依頼します。
- 3申請手続き:必要書類を揃え、電子申請(Jグランツ)または郵送で事務局に提出します。
- 4審査・採択・交付決定:外部有識者による審査が行われ、採択者が決定します。その後「交付決定通知書」が届きます。
- 5補助事業の実施:「交付決定通知書」の日付以降に事業を開始します。これ以前の発注・支払いは対象外です。
- 6実績報告:事業完了後、期限内に実績報告書と経費の証拠書類を提出します。
- 7確定検査・金額確定:事務局が報告書を検査し、補助金額が確定します。
- 8補助金の請求・入金:確定した金額を請求し、後日、指定口座に補助金が振り込まれます。
- 9事業効果報告:補助事業完了から1年後に、事業効果の報告が必要です。
最新の公募情報とスケジュール
公募は不定期に実施されます。常に最新の情報を公式サイトで確認するようにしましょう。以下は第18回公募のスケジュール(予定)です。
申請受付開始 | 2025年 10月3日(金) |
申請受付締切 | 2025年 11月28日(金) 17:00 |
事業支援計画書(様式4)発行の受付締切 | 原則 2025年 11月18日(火) |
※上記は商工会議所地区の第18回公募の情報です。予定は変更される可能性があるため、必ず公式サイトをご確認ください。
申請方法と採択のポイント
申請方法
最新の公募回では電子申請(Jグランツ)が基本となっています。Jグランツの利用には「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要で、発行に数週間かかる場合があるため、早めに準備を進めましょう。
審査のポイントと加点項目
本補助金は申請すれば必ず採択されるわけではありません。審査では、計画の具体性や実現可能性などが評価されます。
- 自社の強みと市場の特性を理解しているか
- 経営計画と補助事業計画に一貫性があるか
- 補助事業計画に創意工夫やIT活用の視点があるか
- 事業費の積算が正確・明確であるか
さらに、以下の項目に該当する場合、審査で加点され、採択に有利になる可能性があります。
- 電子申請加点
- 赤字賃上げ加点
- 経営力向上計画加点
- 事業承継加点
- 過疎地域加点 など
まとめ
小規模事業者持続化補助金は、販路開拓や生産性向上を目指す事業者にとって非常に強力な支援策です。計画書の作成など手間はかかりますが、商工会・商工会議所のサポートを活用しながら、自社の持続的な成長につなげることができます。
公募期間は限られていますので、興味のある方は早めに準備を始めましょう。まずは管轄の商工会・商工会議所に相談することをお勧めします。