販路開拓や生産性向上を目指す小規模事業者や個人事業主の皆様へ。最も人気が高く、使いやすい補助金の一つである「小規模事業者持続化補助金<一般型>」について、専門家が分かりやすく徹底解説します。この記事を読めば、制度の概要から申請のポイントまで全てがわかります。
この記事のポイント
- ✓ 販路開拓や業務効率化に使える補助金の概要がわかる
- ✓ 補助上限額や対象経費、申請できる事業者の条件がわかる
- ✓ 申請から補助金受給までの具体的な流れがわかる
- ✓ 申請前に知っておくべき重要な注意点がわかる
小規模事業者持続化補助金<一般型>とは?
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が直面する制度変更(働き方改革、インボイス制度導入など)に対応しつつ、持続的な経営を行うために支援する制度です。具体的には、事業者が自ら作成した経営計画に基づく、地道な販路開拓や、業務効率化(生産性向上)の取組にかかる経費の一部を補助してくれます。
例えば、「新しい顧客層にアピールするためのチラシを作りたい」「ネット販売を始めるためにECサイトを構築したい」「店舗を改装して集客力を上げたい」といった前向きな投資を後押ししてくれる、非常に人気の高い補助金です。
補助額・補助率の概要
申請する枠によって補助上限額が異なります。自社の状況や計画に合わせて最適な枠を選びましょう。
申請枠 | 補助上限額 | 補助率 | 概要 |
---|---|---|---|
通常枠 | 50万円 | 2/3 (賃金引上げ枠の 赤字事業者は 3/4) |
基本的な販路開拓の取組 |
賃金引上げ枠 | 200万円 | 事業場内最低賃金を地域別最低賃金より+30円以上とした事業者 | |
卒業枠 | 200万円 | 雇用を増やし小規模事業者の定義を超える事業者 | |
後継者支援枠 | 200万円 | アトツギ甲子園のファイナリスト等になった事業者 | |
創業枠 | 200万円 | 特定創業支援等事業の支援を受け創業した事業者 |
💡 インボイス特例でさらに50万円上乗せ!
免税事業者からインボイス発行事業者に転換する事業者は、上記の全ての枠で補助上限額が50万円上乗せされます。例えば、創業枠でインボイス特例を適用すると、最大250万円の補助が受けられます。
申請できる事業者の条件(補助対象者)
従業員数の要件
「小規模事業者」であることが大前提です。業種によって常時使用する従業員の数が定められています。
業種 | 常時使用する従業員の数 |
---|---|
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) | 5人以下 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
製造業その他 | 20人以下 |
※会社役員や個人事業主本人、一定条件を満たすパートタイム労働者は従業員数に含みません。
その他の主な要件
- 日本国内に所在する個人事業主、または会社等の法人であること。
- 資本金または出資金が5億円以上の法人に100%株式保有されていないこと(法人のみ)。
- 直近過去3年分の課税所得の年平均額が15億円を超えていないこと。
- 申請時点で開業しており、事業実態があること。
⚠️ 注意:創業予定者は対象外
申請時点で開業届を提出していても、開業日が未来の日付であるなど、事業を開始していない「創業予定者」は対象外となりますのでご注意ください。
何に使える?補助対象経費を解説
補助対象となる経費は幅広く、販路開拓や生産性向上に繋がる様々な取り組みに活用できます。
補助対象経費一覧と活用例
- ① 機械装置等費:
例:業務用のオーブンや冷蔵庫の購入、顧客管理ソフトの導入 - ② 広報費:
例:新商品を紹介するチラシやカタログの作成・発送、看板の設置 - ③ ウェブサイト関連費:
例:ECサイトの構築・改修、インターネット広告の出稿、SEO対策 - ④ 展示会等出展費:
例:国内外の展示会や商談会への出展料 - ⑤ 旅費:
例:展示会出展や販路開拓のための調査に伴う交通費・宿泊費 - ⑥ 開発費:
例:新商品の試作品開発、新しいパッケージデザインの費用 - ⑦ 資料購入費:
例:補助事業に関連する専門書や図書の購入 - ⑧ 雑役務費:
例:販促イベント実施のための臨時アルバイト代 - ⑨ 借料:
例:事業に必要な機器のリース・レンタル料、イベント会場費 - ⑩ 設備処分費:
例:販路開拓のために作業スペースを確保するための設備処分費用 - ⑪ 委託・外注費:
例:集客力向上のための店舗改装工事、専門家へのコンサルティング依頼
⚠️ 対象外となる経費の注意点
汎用性が高く、他の目的にも使用できるもの(例:パソコン、タブレット、スマートフォン、文房具など)は原則として補助対象外です。
また、ウェブサイト関連費は補助金申請額の1/4が上限となるなど、費目ごとに細かいルールがあるため、公募要領をよく確認しましょう。
申請の5つのステップ
申請は以下の流れで進みます。特に商工会・商工会議所との連携が重要です。
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1経営計画・補助事業計画の作成
自社の強みや市場の特性を分析し、どのような販路開拓を行うかの計画書を作成します。補助金の採択を左右する最も重要な部分です。
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2地域の商工会・商工会議所へ相談
作成した計画書を持参し、地域の商工会または商工会議所に相談します。内容の確認を受け、「事業支援計画書(様式4)」を発行してもらうことが必須です。締切直前は混み合うため、早めに相談しましょう。
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3申請書類の提出
必要な書類をすべて揃え、受付期間内に提出します。近年は電子申請システム「Jグランツ」での申請が主流・推奨されています。利用には「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要で、数週間かかる場合があるため、事前の準備が不可欠です。
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4採択・交付決定 〜 事業実施
審査を経て採択されると「採択通知書」、その後「交付決定通知書」が届きます。経費の契約・発注・支払いは必ず「交付決定通知書」の日付以降に行う必要があります。これ以前の支払いは補助対象外です。
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5実績報告と補助金請求
計画した事業が完了したら、期限内に実績報告書と経費の証拠書類(見積書、請求書、領収書など)を提出します。内容が審査され、補助金額が確定した後に請求を行い、指定口座に補助金が振り込まれます。
申請スケジュールと重要注意点
公募スケジュールについて
小規模事業者持続化補助金は、年に数回、不定期に公募が行われます。公募期間は1〜2ヶ月程度と短い場合が多いため、常にアンテナを張り、公式サイトで最新の公募情報を確認することが重要です。
申請前に必ず知っておくべき3つのこと
- 補助金は後払いです:事業実施に必要な資金は、一旦全額自己資金で立て替える必要があります。補助金は事業完了後の精算払いです。
- 審査があり、必ず採択されるわけではありません:申請要件を満たしていても、事業計画の内容が評価されなければ不採択となる場合があります。
- 悪質なコンサルタントにご注意ください:高額な成功報酬を請求する業者も存在します。この補助金は事業者自身が経営を見つめ直すことが趣旨であり、商工会・商工会議所が無料で手厚いサポートをしてくれます。
まとめと公式情報
小規模事業者持続化補助金は、販路開拓や生産性向上を目指す事業者にとって、非常に強力なツールです。計画書の作成は大変ですが、自社の経営を見つめ直す良い機会にもなります。ぜひこの制度を活用して、事業の持続的発展を目指しましょう。
申請にあたっては、必ずご自身の事業所が所在する地域の管轄(商工会か商工会議所か)を確認し、それぞれの公式サイトから最新の公募要領をダウンロードしてください。