事業承継・引継ぎ補助金とは?中小企業のM&Aを国が強力支援
後継者不足や事業の将来性に悩む中小企業経営者にとって、事業承継やM&Aは重要な経営戦略です。しかし、専門家への依頼費用や事業革新のための投資がネックになることも少なくありません。そんな課題を解決するために、国が強力に推進しているのが「事業承継・引継ぎ補助金」です。
この補助金は、事業承継やM&Aをきっかけに行う新たな取り組み(経営革新)や、M&Aにかかる専門家費用(仲介手数料、デューデリジェンス費用など)を幅広く支援する制度です。政府の「中小M&A推進計画」の中核をなす施策であり、高い採択率が期待できる注目の補助金と言えるでしょう。
この補助金の3つのポイント
- ✓M&Aの仲介手数料など、これまで対象になりにくかった経費が補助対象に!
- ✓事業承継後の設備投資や販路開拓など、新たなチャレンジを後押し!
- ✓買い手(譲受企業)だけでなく、売り手(譲渡企業)も申請可能!
補助金の概要をチェック!
まずは、事業承継・引継ぎ補助金の全体像を把握しましょう。主な申請類型や補助額を以下の表にまとめました。
項目 | 内容 |
---|---|
補助金名 | 事業承継・引継ぎ補助金 |
目的 | 事業再編、事業統合を含む事業承継を契機として経営革新等を行う中小企業・小規模事業者や、事業承継に伴う専門家活用費用を支援することで、中小企業の円滑な世代交代を促進する。 |
主な申請類型 | 1. 経営革新事業 事業承継・M&A後の設備投資、販路開拓等を支援 2. 専門家活用事業 M&A時の専門家費用(仲介手数料等)を支援 3. 廃業・再チャレンジ事業 事業承継に伴う廃業費用等を支援 |
補助上限額 | 最大600万円~800万円(類型や上乗せ要件により変動) |
補助率 | 原則 1/2以内(賃上げ要件等を満たす場合、一部2/3以内) |
申請方法 | Jグランツによる電子申請 |
2つの主要な申請類型を深掘り解説
特に利用されることの多い「経営革新事業」と「専門家活用事業」について、詳しく見ていきましょう。
1. 経営革新事業
事業承継やM&Aを機に、新たな設備投資や販路開拓、新商品開発などに取り組む場合に活用できます。単に事業を引き継ぐだけでなく、事業をさらに成長させるための「攻めの投資」を支援するものです。
対象経費の例
- 設備投資費、店舗・事務所の改修費
- マーケティング調査費、広報費、展示会出展費
- 新商品・サービスの開発にかかる費用
- Webサイトやシステムの構築費用
2. 専門家活用事業
M&Aを進める上で避けて通れないのが、M&A仲介会社やファイナンシャルアドバイザー(FA)、弁護士、税理士といった専門家の活用です。この類型では、M&Aプロセスで発生する専門家への支払い費用が補助対象となります。売り手・買い手の双方が申請可能です。
対象経費の例
- M&A支援業者への仲介手数料・着手金・成功報酬
- デューデリジェンス(DD)費用
- 企業価値評価(バリュエーション)費用
- 契約書作成などの法務費用
- 表明保証(W&I)保険の保険料
⚠️ 注意点:補助金は後払いです
補助金は、採択決定後に事業を実施し、その実績報告が承認された後に支払われる「精算払い(後払い)」が原則です。M&Aの実行や設備投資に必要な資金は、一旦自己資金や融資で立て替える必要があるため、資金計画には十分注意してください。
申請から交付までの流れ
補助金の申請は、以下のステップで進みます。電子申請が基本となるため、事前の準備が重要です。
- STEP 1: 公募要領の確認と準備
公式サイトで最新の公募要領を確認し、自社が要件に合致するか、必要な書類は何かを把握します。 - STEP 2: gBizIDプライムアカウントの取得
電子申請システム「Jグランツ」を利用するために必須のアカウントです。取得には2〜3週間かかる場合があるため、早めに手続きしましょう。 - STEP 3: 事業計画書の作成と電子申請
補助金の目的や自社の強み、事業承継後の成長戦略などを盛り込んだ事業計画書を作成し、Jグランツから申請します。 - STEP 4: 審査・採択
事務局による審査が行われ、採択・不採択が決定します。結果はJグランツを通じて通知されます。 - STEP 5: 補助事業の実施と実績報告
交付決定後、計画に沿って事業(設備投資や専門家への支払い等)を実施します。期間終了後、かかった経費の証憑とともに実績報告書を提出します。 - STEP 6: 補助金の交付
実績報告が承認されると、補助金額が確定し、指定の口座に振り込まれます。
まとめ:事業承継・M&Aを成功させる強力な味方
事業承継・引継ぎ補助金は、コスト面で事業承継やM&Aに踏み出せなかった経営者にとって、非常に価値のある制度です。特にM&Aの専門家費用が対象となる点は、他の補助金にはない大きな魅力です。
ただし、採択されるためには、説得力のある事業計画書の作成が不可欠です。自社の未来を切り拓くため、この機会に専門家へ相談し、補助金の活用を検討してみてはいかがでしょうか。