「新しい顧客を獲得したい」「生産性を上げて事業を拡大したい」とお考えの小規模事業者様へ。その挑戦を力強く後押しするのが「小規模事業者持続化補助金」です。本記事では、補助金の専門家が、制度の概要から対象経費、申請の流れ、採択されるためのポイントまで、どこよりも分かりやすく解説します。
この記事のポイント
- 持続化補助金の基本から特別枠まで、全体像がわかる!
- チラシ作成、ウェブサイト制作、店舗改装など、対象経費の具体例がわかる!
- 申請準備から補助金入金までの全10ステップを徹底解説!
- 採択率を上げるための審査のポイントと加点項目がわかる!
小規模事業者持続化補助金とは?
小規模事業者持続化補助金(通称:持続化補助金)は、小規模事業者が自社の経営を見直し、持続的な経営に向けた経営計画を作成した上で行う販路開拓や生産性向上の取組を支援する制度です。商工会・商工会議所のサポートを受けながら事業計画を策定し、それに沿った取り組みの経費の一部が補助されます。
重要:補助金・助成金・給付金の違い
補助金: 申請内容が審査され、評価の高い順に採択者が決まります。要件を満たしても必ず採択されるわけではありません。原則として、事業完了後の後払いです。
助成金・給付金: 申請要件を満たせば原則として受給できます。審査がない、または形式的な審査のみの場合が多いです。
補助対象者と要件
対象となる事業者規模
以下の常時使用する従業員数の要件を満たす、法人、個人事業主、特定非営利活動法人が対象です。
業種 | 常時使用する従業員の数 |
---|---|
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) | 5人以下 |
宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
製造業その他 | 20人以下 |
※常時使用する従業員には、会社役員や個人事業主本人、一定条件を満たすパートタイム労働者は含みません。
その他の主要な要件
- 資本金又は出資金が5億円以上の法人に100%株式保有されていないこと(法人のみ)。
- 直近過去3年分の課税所得の年平均額が15億円を超えていないこと。
- 過去に持続化補助金で採択・実施した場合、事業効果報告書が受領されていること。
- 「卒業枠」で採択され事業を実施した事業者ではないこと。
補助額と補助率
申請する枠によって補助上限額が異なります。いずれか1つの枠のみ申請可能です。
類型 | 補助上限 | 補助率 | 概要 |
---|---|---|---|
通常枠 | 50万円 | 2/3 | 基本的な販路開拓等の取組を支援。 |
賃金引上げ枠 | 200万円 | 2/3 (赤字事業者は3/4) |
事業場内最低賃金を地域別最低賃金より+30円以上とする事業者。 |
卒業枠 | 200万円 | 2/3 | 雇用を増やし小規模事業者の規模を超える事業者。 |
後継者支援枠 | 200万円 | 2/3 | アトツギ甲子園のファイナリスト等に選ばれた事業者。 |
創業枠 | 200万円 | 2/3 | 特定創業支援等事業の支援を受け、過去3年以内に開業した事業者。 |
インボイス特例で上限額が50万円アップ!
免税事業者からインボイス発行事業者に転換する小規模事業者は、全ての枠で補助上限額が一律50万円上乗せされます。2021年9月30日から2023年9月30日の課税期間で一度でも免税事業者であった事業者が対象です。
補助対象となる経費
販路開拓や生産性向上のための幅広い経費が対象となります。主な経費は以下の通りです。
経費科目 | 活用事例 |
---|---|
①機械装置等費 | 製造装置の購入、サービス提供用の機材導入など |
②広報費 | 新サービスを紹介するチラシ作成・配布、看板の設置など |
③ウェブサイト関連費 | ウェブサイトやECサイトの開発、更新、改修、運用など |
④展示会等出展費 | 展示会・商談会の出展料など |
⑤旅費 | 販路開拓のための交通費・宿泊費など |
⑥開発費 | 新商品の試作品開発に伴う経費など |
⑦資料購入費 | 補助事業に関連する資料・図書など |
⑧雑役務費 | 補助事業のために臨時雇用したアルバイト費用など |
⑨借料 | 機器・設備のリース・レンタル料など |
⑩設備処分費 | 新サービスのためのスペース確保を目的とした設備処分など |
⑪委託・外注費 | 店舗改装など自社で困難な業務を第三者に依頼する経費 |
経費に関する重要注意点
- ウェブサイト関連費: 補助金総額の1/4(最大50万円)が上限です。ウェブサイト関連費のみでの申請はできません。
- 設備処分費: 補助対象経費総額の1/2が上限です。設備処分費のみでの申請はできません。
- 対象外経費: パソコン、車、文房具など汎用性が高く目的外使用になりえるものは対象外です。
- 支払い方法: 原則として銀行振込です。10万円を超える現金払いは対象外となる場合があります。
- 相見積もり: 100万円(税込)を超える支払いには、2社以上の見積もりが必要です。
申請から入金までの流れ【10ステップ】
補助金の申請から入金までは、計画的に進めることが重要です。全体の流れを把握しておきましょう。
- ステップ1:申請の準備
公募要領を熟読し、必要書類を確認します。最も重要な「経営計画書」「補助事業計画書」の作成に着手します。 - ステップ2:商工会・商工会議所への相談
作成した計画書を持参し、地域の商工会・商工会議所に相談します。計画内容のブラッシュアップを行い、申請に必須の「事業支援計画書(様式4)」の作成・交付を依頼します。締切の1週間前までには依頼しましょう。 - ステップ3:申請手続き
原則として電子申請システム「Jグランツ」で申請します。利用には「GビズIDプライムアカウント」が必要で、取得に数週間かかるため、早めに準備しましょう。 - ステップ4:申請内容の審査
外部有識者等により、計画の具体性、実現可能性、創意工夫、IT活用などが審査されます。評価の高い案件から採択されます。 - ステップ5:採択・交付決定
採択結果が通知され、その後「交付決定通知書」が届きます。この通知書の日付以降に発注・契約・支払いを行った経費が補助対象となります。 - ステップ6:補助事業の実施
交付決定後、計画に沿って事業を実施します。事業は定められた補助事業実施期限までに完了させる必要があります。 - ステップ7:実績報告書の提出
事業完了後、30日以内または最終提出期限のいずれか早い日までに、実施内容と経費内容をまとめた実績報告書と証拠書類(見積書、契約書、請求書、領収書など)を提出します。 - ステップ8:確定検査・補助金額の確定
事務局が実績報告書と証拠書類を審査し、補助金額を確定します。不備があると差し戻しや減額の可能性があります。 - ステップ9:補助金の請求
「補助金確定通知書」を受け取ったら、補助金の精算払請求を行います。 - ステップ10:補助金の入金・事業効果報告
請求後、指定の口座に補助金が振り込まれます。さらに、事業完了から1年後には「事業効果報告」の提出が必要です。
採択率を上げるための審査のポイント
審査では、経営計画書と補助事業計画書の内容が重視されます。以下のポイントを意識して作成しましょう。
- 自社の経営状況や強みを適切に把握しているか。
- 経営方針・目標が、自社の強みや市場の特性を踏まえているか。
- 補助事業計画が具体的で、実現可能性が高いか。
- 補助事業が経営計画の目標達成に必要かつ有効か。
- 小規模事業者ならではの創意工夫があるか。
- ITを有効に活用する取組が見られるか。
- 事業費の積算が正確・明確で、真に必要な金額か。
加点項目を活用しよう
特定の政策目標に合致する事業者には、審査で加点措置が講じられます。該当するものがあれば積極的に活用しましょう。(例:赤字賃上げ加点、事業承継加点、過疎地域加点など)
申請スケジュールと問い合わせ先
申請スケジュール
小規模事業者持続化補助金は、年に数回の公募が行われます。直近の締切は過ぎていますが、今後も公募が予定されています。スケジュールは変更されることがあるため、必ず公式サイトで最新情報を確認してください。
【参考】第16回受付締切:2024年5月27日(月) ※公募終了
次回の公募スケジュールは公式サイトで発表されます。
問い合わせ先・公式サイト
事業所の所在地によって申請先・問い合わせ先が「商工会地区」と「商工会議所地区」に分かれます。ご自身の地区を確認の上、お問い合わせください。