詳細情報
キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)は、年収の壁に対応し、従業員の社会保険加入を促進するための助成金です。この助成金は、短時間労働者の労働時間延長や賃上げを通じて、社会保険適用後の手取り収入を維持・向上させることを目的としています。中小企業にとって、従業員のモチベーション向上や人材確保に繋がる魅力的な制度です。本記事では、助成金の概要から申請方法、活用事例までを詳しく解説します。
キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)の概要
正式名称
キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)
実施組織
厚生労働省
目的・背景
この助成金は、いわゆる「年収の壁」に対応するために設けられました。年収が一定額を超えると社会保険料が発生し、手取り収入が減少するため、就業時間を調整する人がいます。この助成金は、企業が従業員の労働時間延長や賃上げを支援することで、社会保険加入後も手取り収入が減らないようにすることを目的としています。
対象者の詳細
対象となるのは、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者などの非正規雇用労働者です。これらの労働者を新たに社会保険に加入させ、かつ、労働時間延長や賃上げなどの処遇改善を行う事業主が対象となります。
助成金額・補助率
具体的な金額(上限・下限)
助成金額は、取り組み内容によって異なりますが、労働者1人あたり最大50万円が支給されます。
- 手当等支給メニュー: 1年目・2年目は賃金の15%以上を手当として支給した場合、1人あたり20万円。3年目は賃金を18%以上増額した場合、1人あたり10万円。
- 労働時間延長メニュー: 所定労働時間を延長し、社会保険を適用させた場合、1人あたり30万円。
- 併用メニュー: 手当等支給メニューと労働時間延長メニューを組み合わせた場合、最大50万円。
補助率の説明
この助成金は、補助率という概念ではなく、一定の要件を満たした場合に定額が支給される仕組みです。例えば、手当等支給メニューでは、賃金の15%以上を手当として支給した場合に、1人あたり20万円が支給されます。
計算例
例えば、週20時間勤務のパートタイマーの賃金を15%増額し、社会保険に加入させた場合、手当等支給メニューで20万円、労働時間延長メニューで30万円、合計50万円の助成金が支給されます。
助成金額一覧表
| メニュー | 助成内容 | 助成金額(1人あたり) |
|---|---|---|
| 手当等支給メニュー | 賃金の15%以上を手当として支給 | 20万円(1年目・2年目)/ 10万円(3年目) |
| 労働時間延長メニュー | 所定労働時間を延長し、社会保険を適用 | 30万円 |
| 併用メニュー | 手当等支給メニューと労働時間延長メニューを組み合わせ | 最大50万円 |
対象者・条件
詳細な対象要件
対象となる事業主は、以下の要件を満たす必要があります。
- 雇用保険適用事業所であること
- キャリアアップ計画を作成し、労働局に提出していること
- 対象労働者を新たに社会保険に加入させること
- 対象労働者の賃金を引き上げること、または労働時間を延長すること
- 労働関係法令を遵守していること
業種・規模・地域制限
この助成金は、業種による制限はありません。中小企業だけでなく、大企業も対象となります。地域制限も特になく、全国の事業主が申請可能です。
具体例を複数提示
以下は、助成金の対象となる具体例です。
- 週20時間勤務のパートタイマーを週30時間勤務に増やし、社会保険に加入させた。
- 時給1,000円のアルバイトの時給を1,150円に引き上げ、社会保険に加入させた。
- 有期雇用契約の契約社員を正社員に転換し、社会保険に加入させた。
補助対象経費
対象となる経費の詳細リスト
この助成金は、特定の経費を補助するものではなく、労働者の処遇改善に対する助成金です。したがって、直接的な補助対象経費はありません。ただし、賃上げや労働時間延長にかかる費用が、間接的な経費となります。
対象外経費の説明
直接的な補助対象経費がないため、対象外経費という概念もありません。ただし、社会保険料の事業主負担分は、助成金の対象とはなりません。
具体例
例えば、従業員の賃上げにかかる費用や、労働時間延長に伴う残業代などは、間接的な経費として考えられます。
申請方法・手順
ステップバイステップの詳細手順
申請は以下の手順で行います。
- キャリアアップ計画を作成する。
- キャリアアップ計画を労働局に提出する。
- 対象労働者の処遇改善(賃上げ、労働時間延長など)を実施する。
- 支給申請書を作成し、必要書類を添付して労働局に提出する。
- 労働局の審査を受ける。
- 助成金が支給される。
必要書類の完全リスト
申請に必要な書類は以下の通りです。
- キャリアアップ助成金支給申請書
- キャリアアップ計画書
- 雇用契約書または労働条件通知書
- 賃金台帳
- 出勤簿
- その他、労働局が必要と認める書類
申請期限・スケジュール
申請期限は、処遇改善措置を実施した日から起算して2か月以内です。具体的なスケジュールは、厚生労働省の公式サイトで確認してください。
オンライン/郵送の詳細
申請は、原則として郵送で行います。ただし、一部の労働局では、オンライン申請も可能です。詳細は、管轄の労働局にお問い合わせください。
採択のポイント
審査基準
審査では、以下の点が重視されます。
- キャリアアップ計画の内容が適切であるか
- 処遇改善措置が、対象労働者のキャリアアップに繋がるか
- 申請書類に不備がないか
- 労働関係法令を遵守しているか
採択率の情報
キャリアアップ助成金全体の採択率は、約80%程度と言われています。ただし、社会保険適用時処遇改善コースは、比較的新しい制度であるため、具体的な採択率は公表されていません。
申請書作成のコツ
申請書を作成する際は、以下の点に注意しましょう。
- キャリアアップ計画の内容を具体的に記載する。
- 処遇改善措置が、対象労働者のキャリアアップにどのように繋がるかを説明する。
- 申請書類に不備がないように、十分に確認する。
よくある不採択理由
よくある不採択理由は、以下の通りです。
- キャリアアップ計画の内容が不十分である。
- 処遇改善措置が、対象労働者のキャリアアップに繋がらない。
- 申請書類に不備がある。
- 労働関係法令を遵守していない。
よくある質問(FAQ)
Q1: キャリアアップ助成金は、労働者個人に支給されるのですか?
A1: いいえ、キャリアアップ助成金は、事業主に対して支給されるものであり、労働者個人には支給されません。
Q2: 社会保険適用時処遇改善コースは、いつから申請できますか?
A2: 社会保険適用時処遇改善コースは、令和5年10月1日から遡及して適用されます。同日以降に新たに社会保険の適用となった労働者を対象とすることができます。
Q3: キャリアアップ計画書は、対象労働者ごとに作成する必要がありますか?
A3: いいえ、キャリアアップ計画書は、対象労働者ごとに作成する必要はなく、事業所ごとに1部作成する必要があります。
Q4: 助成金の詳しい問い合わせ先はどこですか?
A4: 管轄の都道府県労働局またはハローワークにお問い合わせください。
Q5: 社会保険適用促進手当は、割増賃金や平均賃金の算定基礎に算入されますか?
A5: 社会保険適用促進手当が毎月支払われる場合には、割増賃金や平均賃金の算定基礎に算入されます。ただし、臨時に支払われた賃金や1か月を超える期間ごとに支払われる賃金に該当する場合には、算入されません。
まとめ・行動喚起
キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)は、年収の壁に対応し、従業員の社会保険加入を促進するための有効な制度です。この助成金を活用することで、企業は従業員のモチベーション向上や人材確保に繋げることができます。申請を検討されている事業主の方は、厚生労働省の公式サイトで詳細を確認し、早めに申請準備を始めましょう。
次のアクション:
- 厚生労働省の公式サイトで詳細を確認する。
- キャリアアップ計画を作成する。
- 管轄の労働局またはハローワークに問い合わせる。
問い合わせ先:
管轄の都道府県労働局またはハローワーク
「年収の壁突破・総合相談窓口」:0120-030-045