詳細情報
近年、企業を狙ったサイバー攻撃は巧妙化・悪質化しており、中小企業も例外ではありません。しかし、本格的なセキュリティ対策には多額のコストがかかるため、導入をためらっている経営者の方も多いのではないでしょうか。そんな悩みを解決するのが、東京都が実施する「サイバーセキュリティ対策促進助成金」です。この制度を活用すれば、最大1500万円、経費の1/2の助成を受けて、UTM(統合脅威管理)やウイルス対策ソフトなどのセキュリティ設備を導入できます。この記事では、助成金の対象者や経費、複雑な申請手順から採択されるためのポイントまで、どこよりも詳しく解説します。自社の情報資産を守り、事業を安定させるための第一歩を踏み出しましょう。
この記事のポイント
- 東京都の中小企業向け、最大1500万円のサイバーセキュリティ対策助成金
- UTMやウイルス対策ソフト、クラウド利用料などが費用の1/2まで補助対象
- 申請には「SECURITY ACTION ★★二つ星」の宣言が必須条件
- 申請エントリーとJグランツによる電子申請の2段階プロセスを徹底解説
- 採択率を上げるための事業計画書の書き方や注意点を網羅
サイバーセキュリティ対策促進助成金(東京都)の概要
まずは、本助成金の基本的な情報について確認しましょう。どのような目的で、誰が実施している制度なのかを理解することが、申請の第一歩です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 令和7年度 サイバーセキュリティ対策促進助成金 |
| 実施組織 | 公益財団法人東京都中小企業振興公社 |
| 目的・背景 | 都内中小企業者等が自社の企業秘密や個人情報等を保護する観点から、サイバーセキュリティ対策を実施するための設備等の導入を支援し、セキュリティレベルの向上を図ることを目的としています。 |
| 公式サイト | 東京都中小企業振興公社 公式サイト |
助成金額・補助率
本助成金の最大の魅力は、その手厚い支援内容です。具体的な金額や補助率を把握し、自社の投資計画に役立てましょう。
助成額と補助率の詳細
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 補助率 | 助成対象経費の1/2以内 |
| 助成上限額 | 1,500万円 |
| 助成下限額 | 10万円 |
計算例
例えば、総額800万円のセキュリティシステム(UTM、サーバー、ソフトウェア等)を導入する場合、以下のように計算されます。
- 対象経費: 800万円
- 補助率: 1/2
- 計算式: 800万円 × 1/2 = 400万円
- 助成金額: 400万円(上限1500万円の範囲内)
- 自己負担額: 800万円 – 400万円 = 400万円
このように、実質半額で高度なセキュリティ対策が実現可能となります。
対象者・申請条件
本助成金は、誰でも申請できるわけではありません。特に重要な要件がありますので、自社が該当するかを必ず確認してください。
主な対象要件
- 東京都内に主たる事業所または従たる事業所を有する中小企業者、中小企業団体、中小企業グループであること。
- IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が実施している「SECURITY ACTION」の二段階目(★★二つ星)を宣言していること。
- 助成対象事業を助成対象期間内に完了できること。
最重要ポイント:SECURITY ACTION ★★二つ星宣言
この助成金申請における最大のハードルとも言えるのが「SECURITY ACTION ★★二つ星」の宣言です。これは、自社で「情報セキュリティ基本方針」を策定し、それを外部に公開することが条件となります。まだ宣言していない企業は、申請準備の第一歩として、まずこの宣言から取り組む必要があります。東京都中小企業振興公社では、この基本方針策定を支援する専門家派遣事業も行っているため、活用を検討しましょう。
補助対象経費
どのような費用が助成金の対象になるのでしょうか。対象経費を正しく理解し、無駄のない事業計画を立てることが重要です。
対象となる経費リスト
サイバーセキュリティ対策を実施するために必要となる下記の機器等の導入、およびクラウド利用に係る経費が対象です。
- ① 統合型アプライアンス(UTM等): ファイアウォール、VPN、アンチウイルスなど複数のセキュリティ機能を一つにまとめた機器。
- ② ネットワーク脅威対策製品: ファイアウォール(FW)、VPN、不正侵入検知システム(IDS/IPS)など。
- ③ コンテンツセキュリティ対策製品: ウイルス対策ソフト、スパム対策ソフトなど。
- ④ アクセス管理製品: シングルサインオン(SSO)、多要素認証(MFA)などの本人認証システム。
- ⑤ システムセキュリティ管理製品: PCやサーバーの操作ログを監視・管理するアクセスログ管理ツールなど。
- ⑥ 暗号化製品: ファイルやフォルダを暗号化するソフトウェアなど。
- ⑦ サーバーOS及びインストール作業費用: サーバー入れ替えに伴うOSの更新費用も含まれます。
- ⑧ 標的型メール訓練: 従業員のセキュリティ意識向上のための訓練サービス利用料。
対象外となる経費の例
- パソコン、スマートフォン、タブレット等の汎用性が高い機器
- 保守費用、ライセンスの更新費用などの維持管理費
- 消費税及び地方消費税
- 国や他の地方公共団体から補助金を受けている経費
注意点:主たる目的がサイバーセキュリティの向上であることが必須です。例えば、サーバーを入れ替える場合でも、単なる老朽化対応ではなく、「OSのサポート終了に伴うセキュリティリスクを回避するため」といった明確な理由付けが求められます。
申請方法・手順
申請プロセスは複数のステップに分かれており、期限も厳格です。以下の手順をよく確認し、計画的に準備を進めましょう。
申請スケジュール(令和7年度予定)
| 回 | 申請エントリー・電子申請受付期間 | 助成対象期間 |
|---|---|---|
| 第1回 | 令和7年5月14日(水)~5月20日(火) | 令和7年8月1日~11月30日 |
| 第2回 | 令和7年9月10日(水)~9月17日(水) | 令和7年12月1日~令和8年3月31日 |
| 第3回 | 令和8年1月7日(水)~1月14日(水) | 令和8年4月1日~7月31日 |
※発注・契約・購入・支払のすべてを助成対象期間内に行う必要があります。交付決定前に契約したものは対象外となるため、絶対に注意してください。
申請のステップ・バイ・ステップ
申請は大きく分けて3つのステップで進みます。
- 【STEP 0】事前準備:GビズIDプライムアカウントの取得
電子申請システム「Jグランツ」を利用するために必須です。取得には2~3週間かかるため、申請期間が始まる前に必ず取得しておきましょう。 - 【STEP 1】申請エントリー(必須)
公社のウェブサイトから「ネットクラブ会員」に登録し、指定された期間内に申請エントリーを行います。これを忘れると、次のステップに進めません。 - 【STEP 2】申請書類の提出(Jグランツによる電子申請)
エントリーと同じ期間内に、Jグランツで申請書類を提出します。募集要項を熟読し、必要な書類をすべて揃えてアップロードします。
必要書類一覧
- 助成金交付申請書
- 法人(個人)の履歴事項全部証明書(発行後3か月以内)
- 法人事業税・法人都民税の納税証明書
- SECURITY ACTION「★★二つ星」を宣言したことがわかる書類(自己宣言IDが記載された申込完了メールの写し等)
- 導入する機器やサービスの見積書
- (法人の場合)直近1期分の決算書
- その他、公社が指定する書類
採択されるためのポイント
申請すれば必ず採択されるわけではありません。審査を通過し、助成金を獲得するための重要なポイントを解説します。
① 事業計画の具体性と妥当性
申請書では、「なぜそのセキュリティ対策が必要なのか」を具体的に示す必要があります。自社の事業内容、取り扱う情報の種類、想定されるサイバーリスクを明確にし、導入する設備がそのリスクをどのように低減するのかを論理的に説明しましょう。「みんなやっているから」ではなく、「当社の顧客情報を守るために、このUTMが必要不可欠だ」というストーリーが重要です。
② 「当然備えるべき対策」と見なされない工夫
募集要項には「主たる事業の業態から、当然備えるべきセキュリティ対策として判断した場合、不採択となります」という注意書きがあります。これは、例えば基本的なウイルス対策ソフトの導入だけでは、助成の対象として弱いと判断される可能性があることを示唆しています。現在の対策レベルから一歩進んだ、より高度な対策(例:EDRの導入、多要素認証の強化など)を計画に盛り込むことで、事業の必要性をアピールできます。
③ 書類の不備をなくす
基本的なことですが、書類の不備は不採択の大きな原因となります。募集要項や記入例を隅々まで読み込み、誤字脱字、提出書類の漏れがないように何度も確認しましょう。特に、見積書の要件(社印があるか、有効期限内かなど)は細かくチェックしてください。
【参考】その他の地域のサイバーセキュリティ補助金
今回は東京都の制度を詳しく解説しましたが、他の自治体でも同様の補助金が実施されています。ここでは一例として山口県の制度をご紹介します。
山口県「サイバーセキュリティ対策促進補助金」
- 実施組織: 公益財団法人やまぐち産業振興財団
- 対象者: 山口県内に事業所を有する中小企業者
- 補助率: 1/2
- 補助上限額: 50万円
- 対象経費: セキュリティ対策に関する機器設備費、委託費など
東京都の制度と比較すると上限額は低いですが、地域の中小企業にとっては非常に有用な制度です。お住まいの都道府県や市区町村でも同様の制度がないか、ぜひ一度調べてみることをお勧めします。
よくある質問(FAQ)
まとめと次のアクション
この記事では、東京都の「サイバーセキュリティ対策促進助成金」について詳しく解説しました。最後に重要なポイントを再確認しましょう。
- 支援内容: 最大1500万円、補助率1/2の大型助成。
- 必須条件: 「SECURITY ACTION ★★二つ星」の宣言が不可欠。
- 申請準備: GビズIDプライムの早期取得が成功の鍵。
- 申請プロセス: 「申請エントリー」と「Jグランツ申請」の2段階。期限厳守。
- 採択のコツ: 自社のリスクに基づいた具体的で説得力のある事業計画を作成する。
サイバー攻撃のリスクは待ってくれません。この機会に助成金を最大限に活用し、企業の未来を守るための強固なセキュリティ体制を構築してください。
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問い合わせ先
公益財団法人東京都中小企業振興公社 企画管理部 設備支援課
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