企業立地で最大10億円超!工場・研究所の新設を支援する補助金とは?

新たに工場や研究所、物流施設を建設・増設する企業にとって、初期投資は大きな負担となります。しかし、多くの自治体では地域経済の活性化や雇用創出を目的として、大規模な企業立地補助金制度を設けています。これらの制度をうまく活用することで、設備投資や用地取得のコストを大幅に削減することが可能です。

この記事では、静岡県裾野市の最大5億円の補助金を具体例に、静岡県や全国の原子力発電所周辺地域で実施されている企業立地支援制度を徹底解説します。申請要件や対象経費、申請時の注意点まで網羅的にご紹介しますので、事業拡大を検討中の経営者様はぜひ参考にしてください。

この記事のポイント

  • 静岡県裾野市の最大5億円の企業立地補助金の詳細
  • 静岡県の最大10億円超の新規産業立地支援制度
  • 電気料金が補助対象になる全国規模の「F補助金」
  • 企業立地補助金申請における共通の要件と注意点

【具体例】静岡県裾野市の企業立地促進事業費補助金

まず、非常に手厚い支援制度を持つ静岡県裾野市の例を見ていきましょう。この補助金は、市内に工場や研究所などを新増設する企業を対象に、最大5億円を助成するものです。

【重要なお知らせ】
令和8年度中にこの補助金の申請を希望する場合、令和7年7月31日(木)までに事前エントリー(企業等概要調書の提出)が必要です。計画がある場合は早めに準備を進めましょう。

2つの補助メニュー

裾野市の制度は、大きく分けて「用地取得・新規雇用補助」と「建物建設・設備取得補助」の2種類があります。

1. 用地取得・新規雇用補助

土地を取得して工場などを新設・増設する場合に適用されます。用地取得費と新規雇用にかかる経費が対象です。

項目 内容
対象事業 工場、物流施設、研究所の新設・増設
主な要件 ・用地面積: 1,000㎡以上
・設備投資額: 1億円以上(用地面積により変動)
・新規従業員数: 10人以上(研究所は研究員5人以上)
補助額 【用地取得費】取得費の20%~40%
【新規雇用経費】市内居住の新規雇用者1人あたり50万円
補助限度額 合計 最大4億円(成長分野かつ特定区域内の場合)

2. 建物建設・設備取得補助

自社有地などで建物を建設したり、機械設備を新たに取得したりする場合に適用されます。

項目 内容
対象事業 工場、物流施設、研究所の建物建設・設備取得
主な要件 ・設備投資額: 2億円以上(中小企業は5,000万円以上)
・新規従業員数: 10人以上(中小企業は5人以上)
補助率 設備投資費の3.5%~5%
補助限度額 1億円

※注釈: 上記は概要です。成長分野(食品・医薬品等)や特定区域内での立地など、条件によって補助率や限度額が変動します。詳細は必ず裾野市の公式サイトでご確認ください。

【連携】静岡県新規産業立地事業費補助金(最大10億円以上)

裾野市が位置する静岡県でも、大規模な企業立地支援制度を実施しています。こちらは最大10億円以上という、さらに高額な助成が受けられる可能性があります。裾野市の制度とは重複できないケースもあるため、どちらが自社の計画にとって有利か比較検討することが重要です。

  • 対象: 製造工場、物流施設、研究所など
  • 補助率: 設備投資額の7%~10%
  • 限度額: 最大10億円(設備投資額100億円超の場合は知事特認あり)
  • 対象経費: 建物建設費、機械設備購入費など

【全国規模】原子力発電施設等周辺地域企業立地支援事業(F補助金)

一般財団法人電源地域振興センターが実施するこの補助金は、原子力発電所などの周辺地域に立地した企業を支援するユニークな制度です。最大の特徴は、支払った電気料金等に基づいて補助金が交付される点です。電力消費の多い製造業などにとっては、大きなメリットとなり得ます。

  • 対象地域: 北海道、青森、宮城、福島、茨城、石川、福井、静岡、京都、島根、愛媛、佐賀、鹿児島などの指定地域
  • 支援内容: 支払った電気料金や雇用状況に応じて、道府県が補助金を交付
  • 募集期間: 年2回(上期・下期)で募集されることが多く、期間が短いため注意が必要

企業立地補助金を申請する際の重要ポイント

これまで見てきたように、企業立地補助金は非常に魅力的ですが、申請にはいくつかの共通した重要なポイントがあります。

ポイント1:事業着手前の申請が原則

北海道の制度で明記されているように、多くの企業立地補助金では「工場等の工事着手前」に申請し、認定を受けることが絶対条件です。土地の売買契約や工事契約を結んだ後では、補助金の対象外となる可能性が非常に高いため、計画段階での情報収集と早めの相談が不可欠です。

ポイント2:投資額と雇用人数の要件

ほとんどの制度で、補助対象となるための最低設備投資額や新規雇用者数が定められています。自社の事業計画がこれらの要件を満たしているか、事前にしっかりと確認しましょう。

ポイント3:自治体への事前相談

制度が複雑であったり、要件の解釈が難しい場合も多々あります。計画の初期段階で、立地を検討している都道府県や市区町村の担当課(商工課、企業立地推進課など)に相談することが、スムーズな申請への一番の近道です。

まとめ

工場や研究所の新設・増設は、企業にとって大きな飛躍のチャンスであると同時に、多額の資金を要する一大プロジェクトです。今回ご紹介した裾野市や静岡県、そして全国の電源地域で実施されているような企業立地補助金を最大限に活用することで、その負担を大きく軽減し、より積極的な投資判断を下すことが可能になります。

成功の鍵は、計画段階での徹底した情報収集と、自治体担当者への早期の相談です。自社の事業計画に合致する最適な補助金を見つけ、事業拡大を実現させましょう。